The IT Lab「唾液がんリスク検査」を研究

株式会社The IT Lab(ザ・アイティラボ)

The IT Lab「唾液がんリスク検査」を研究

企業紹介|株式会社The IT Labとは?

唾液でがんのリスクを調べ、検査を受ける負担を減らそうとする「唾液がんリスク検査」。株式会社The IT Labは、その検査を2025年8月に発売した、バイオ・ヘルスケア系ディープテック企業です。糖鎖(糖が鎖状につながった分子)を目印に、がん細胞由来の微小な粒子を捕らえる技術をもとに、検査キット「GlycoChecker」を提供しています。

キーワード「唾液がんリスク検査」

「唾液がんリスク検査」は、唾液に含まれる腫瘍マーカー(がんがあると増えやすい物質)を測り、がんにかかるリスクの傾向を調べる検査です。「GlycoChecker」は、胃・大腸・すい臓・肺・乳・食道・胆道・子宮体・口腔の9種類のがんが対象で、診断ではなく傾向を知るための検査です。郵送で受けられ、通院は不要。

市場課題|がん検査は受けにくさが壁になる

現状のがん検査の課題

検査を受けにくい

同社は、がんは早期に見つけることが重要としていますが、検査には「痛そう」「病院へ行く時間がとれない」「高そう」といった不安があると、同社は紹介しています。同社は、国立がん研究センターの資料を引き、病期(がんの進み具合)が進むほど5年生存率が下がると紹介し、がんの種類によってはI期とIV期で最大約14倍の差があるとしています。病期による生存率の差が大きいため、気軽に受けられる検査が求められている状態です。

がん由来を選べない

検査の目印にするエクソソームは、がん由来のものを選んで集めることが課題です。エクソソームとは、細胞が分泌する、脂質の膜に包まれた粒のことです。同社は、がん細胞が出すエクソソームに、がん特有の糖鎖があることに着目しています。

他にも、痛みへの不安、通院の時間、費用の負担、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • エクソソーム細胞が分泌する、直径30〜150nmの脂質の膜に包まれた粒である。内部にタンパク質や核酸を含み、細胞どうしの情報のやり取りに関わると考えられている。

The IT Labの強み|「唾液がんリスク検査」を研究

The IT Labが「唾液がんリスク検査」を研究

糖鎖でがん由来を捕らえる

がん由来のエクソソームだけを選んで捕捉・濃縮する技術が、望まれています。

「GlycoCapture」は、シリカモノリス(多孔質の素材)に、レクチン(糖鎖に結合するタンパク質)「OAA」を高密度に固定したカラムです。同社が標的とするのは、がん特異的な糖鎖。公式サイトは、がん細胞を使った研究用カラムの実験で、市販品よりmiRNA(細胞が出す小さなRNA)の相対発現量が約7〜10倍だったと紹介しています。ただし研究用カラムでの結果で、検査の性能は別に確かめる段階です。発現量の増加が検査の感度の向上につながるかは、今後の検証事項です。

自宅でできる唾液検査

従来のがん検査は、病院へ行く時間や痛みへの抵抗感が、受けるまでの壁になりがちです。

同社の「GlycoChecker」は、唾液を採取して郵送するだけで、がんのリスクの傾向を調べるキットです。対象は、胃・大腸・すい臓・肺・乳・食道・胆道・子宮体・口腔の、9種類のがん。採取した唾液は2日以内に郵送し、結果は検体の到着から約3週間後に郵送で届きます。どのがん種かは特定できず、診断でも医療機器でもなく、公的医療保険の対象外です。通院せずに自宅で受けられるため、検査を受けるまでの負担を抑えられます。

FrontJournalの解説
  • レクチン特定の糖鎖に結合するタンパク質の総称である。糖鎖の種類を見分ける「目印の読み取り役」として使われる。

唾液がんリスク検査の未来|早期発見の機会を広げる

唾液がんリスク検査が変える未来

出資から発売まで

同社は、2024年11月の出資を経て、2025年8月に「GlycoChecker」を発売しました。出資したのはTohokuライフサイエンス・インパクトファンド(運営:FVC Tohoku)で、発表時点では、ドラッグストアなどで買えるキットを提供する計画でした。2026年8月5日付の発表では、EC(インターネット通販)サイトでの改良版の販売開始が案内されています。販売は、株式会社TOLIMS(販売元の企業)が担っています。

研究用キットと受託開発

事業の柱は、がんリスク検査のほか、研究用キットの販売と、体外診断向けの受託開発です。研究用キットの「GlycoCapture」は、研究者がエクソソームを捕らえるときに使うカラム。体外診断とは、体の外で血液や唾液などを調べる検査のことです。受託開発では、顧客とともに、バイオマーカー(病気の目印となる物質)の探索とデバイスの開発を行います。

早期発見の拡大を目指す

同社は、がんの兆候を早い段階で知る機会を広げることを目指しています。2026年2月には、マレーシアでAI解析による非侵襲(体を傷つけない)がんマーカー診断支援のSaaS(インターネット経由のソフト)を構築するための実証調査が、経済産業省の補助事業に採択されました。この調査は、株式会社TOLIMSとともに行います。FS(実現可能性を確かめる調査)として、海外で診断支援サービスを成り立たせられるかを確かめる段階の取り組みです。

会社概要|The IT Labの事業内容・設立背景

2022年に設立

株式会社The IT Labは、2022年4月19日に設立された、岩手県盛岡市の企業です。代表取締役は田口好弘氏、取締役兼CTOは上山忠孝氏で、技術顧問として、広島大学名誉教授の堀貫治氏と、黒川洋氏を迎えています。資本金は2530万円です。

採択・連携

同社は、2025年12月に「2025年下期 K-NIC Startup Hands on Program」の支援対象者に採択されました。2026年には、「令和7年度(22次)ものづくり補助金(グローバル枠)」、いわて希望応援ファンド地域活性化支援事業助成金、「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」などにも採択されています。2026年2月には、「リエゾン-I」研究開発事業化育成資金(100万円)の贈呈先に選ばれ、岩手大学を共同研究機関としています。

事業と技術

事業は、がんリスク検査、研究用キット販売、体外診断向け受託開発の3つです。主力の技術は、糖鎖を認識するデバイス「GlycoCapture」です。同社の公式サイトは、同社のがん検出技術に関する論文として、2025年7月にFrontiers in Oncology誌に掲載された研究を紹介しています。共著者にはAlps Alpineや広島大学などの研究者が含まれ、早期大腸がん患者の血漿(血液の液体成分)から捕捉した細胞外小胞のmiRNAを調べたものです。唾液検査そのものを検証した論文ではありません。

会社情報

会社名株式会社The IT Lab(ザ・アイティラボ)
所在地岩手県盛岡市北飯岡2-4-23
設立2022年4月19日
代表代表取締役 田口好弘
資本金2530万円
調達FVC東北 Tohokuライフサイエンス・インパクトファンド(運営:FVC Tohoku株式会社、2024年11月)
事業がんリスク検査、研究用キット販売、体外診断向け受託開発
技術領域糖鎖認識によるエクソソームの捕捉・濃縮
連携岩手大学(リエゾン-I)、広島大学名誉教授の堀貫治氏(技術顧問)、株式会社TOLIMS
採択Go-Tech事業(2026年)、ものづくり補助金グローバル枠(2026年)、リエゾン-I研究開発事業化育成資金(2026年)
URLhttps://www.the-itlab.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

がん検査に、痛みや時間、費用の壁を感じる人は少なくありません。The IT Labの取り組みは、唾液を郵送するだけという入口を用意しつつ、その裏では糖鎖でがん由来の粒子を選んで集める技術を磨いている点が印象的です。検査の入口を広げる工夫といえます。

とくに注目したのは、診断ではなくリスクの傾向を知る検査と位置づけ、できることの範囲を明示している姿勢です。検査を受けるきっかけを生む試みとして、今後の展開を見守りたい取り組みといえます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。