ポッドテック株式会社は現場のデータ整備を手がける筑波大学発スタートアップ

ポッドテック株式会社

ポッドテック「現場のデータ整備」を研究|研究領域=社内の情報を機械が読める形へ/強み=帳票の構造化から共通IDの付与まで/将来性=特化型のAIを業種ごとに広げる

企業紹介|ポッドテック株式会社とは?

生成AIを業務へ取り入れる前に、社内の情報を機械が読める形式へ変換する工程として、注目を集める「現場のデータ整備」。ポッドテック株式会社は、その「現場のデータ整備」を伴走型で請け負う、筑波大学発のスタートアップです。帳票やExcelの構造化から名寄せ(表記の異なる同一の対象を1件にまとめる作業)、データ基盤の構築までを、卸売や製造の現場へ提供しています。

キーワード「現場のデータ整備」

現場のデータ整備」とは、社内に散らばったデータを、機械が処理できる形式へ統合する作業です。従来はExcel上で担当者が手作業により修正することが多く、人によって書式や判断が異なりやすいといわれています。整備した後は、表記の揺れや重複が解消され、複数のシステムを共通のIDで横断して参照できる状態になります。

市場課題|社内データが散在し活用しにくい

現状の社内データの課題|部署ごとに分散し集計が長期化/手書き帳票は機械で読み取り難い

部署ごとの分散で集計が長期化

企業のデータは部署やシステムごとに分かれて保管され、全体の集計に日数がかかります。販売管理や会計のシステムは別々の時期に導入され、取引先や商品の登録方法も個別に決まりました。同じ取引先が複数の名称でマスタ(取引先や商品の基本情報の台帳)に残ると、突き合わせの手間が増え、売上の集計はさらに長期化します。

手書き帳票は機械で読み取り難い

現場の手書きの検査票やExcelの帳票は、人が読む前提で作られ、機械では読み取りにくい形式です。同じ項目でも列の位置や表記が帳票ごとに異なり、単位や日付の書式も不統一です。情報は紙とExcelに残り、分析に使えるデータとして蓄積しにくくなります。

他にも、退職や異動で失われる入力ルールの引き継ぎや、システム更新で生じる項目名の対応づけがあります。外部リストと社内マスタの照合、部署ごとに異なる集計の基準といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 名寄せ表記や登録内容の異なる複数のデータを突き合わせ、同じ対象を1件にまとめる作業を指す。取引先名の全角と半角、法人格の有無などの違いを吸収し、集計の基準を統一する土台となる。

ポッドテックの強み|共通IDと帳票の構造化

ポッドテックが「現場のデータ整備」を開発|共通IDでマスタを統合し横断参照/OCRで帳票を構造化し自動化

共通IDでマスタを統合

取引先マスタの統合は、担当者が表記の揺れを目視で判断しながら進めるため、システムの数が増えるほど作業量が膨らみます。

同社は、データの棚卸しから共通ID(全社で同じ対象を1件と見なす番号)の付与までを設計し、散らばったマスタを1つに束ねます。最初に行うのは、社内外のデータ源を洗い出し、品質・鮮度・利用可能性を評価する診断です。次の工程は、取引先や商品、人物のマスタを突き合わせ、表記の揺れと重複を解消する名寄せです。欠損や異常値は、ルールと統計、機械学習で検知し、補完の方法まで設計します。実際に、5つの業務システムで別々に管理されていた取引先マスタを統合し、全社での横断参照まで伴走した実績があります。

OCRで帳票を構造化

手書きの検査票をExcelへ転記する方法では、入力の負担が現場に残り、記入の間違いも見つけにくくなります。

同社は、入力の段階から構造化データ(項目ごとに値が並び、機械が処理できるデータ)として蓄積します。手書きの検査票はiPadでの入力とOCR(画像の文字を機械が読める文字データへ変換する技術)へ切り替えます。OCRが返すのは文字の並びのため、これを日付や測定値といった項目へ切り分けるのがパーサーです。整えたデータはETL/ELT(データを抽出し、変換と基盤への格納を行う処理)へ流し、更新のたびに同じ手順で反映します。支援した製造業の現場では、品質モニタリング月次レポートが自動化されました。

FrontJournalの解説
  • ETL/ELTデータを抽出し、業務で使える形へ変換して、分析用の基盤へ格納する一連の処理を指す。ELTは変換を格納の後に行う方式で、大量のデータを扱う場合に選ばれる。整備したデータを流し続ける中核の仕組み。

現場のデータ整備の未来|生成AIの活用へ

現場のデータ整備が生成AIを支える|顧客データを整えて推薦の土台に/観光の旅程を多言語で自動生成/業種に合わせたAIを製造の現場へ

顧客データの整備で推薦の基盤へ

サービス業の事例では、同社が顧客データを整備し、AIによる商品の推薦を追加できる基盤の構築まで進みました。対象となった顧客データは表記の揺れが多く、同じ取引先が別々に登録された状態でした。整えたデータは、RAG(外部データを参照して回答を生成する手法)などを通じて生成AIが参照できる状態になります。推薦の精度は、土台となるデータの品質に左右されるといわれています。

観光の旅程を多言語で自動生成

同社は、観光の分野に特化した大規模言語モデル(大量の文章を学習し、文章の生成や理解を行うAI)の開発を進めています。つくば市の「つくばスマートシティ社会実装トライアル支援事業」に、「日中韓言語対応のつくば観光地の旅程自動生成サービス」が採択されました。日本の観光情報は自治体や施設ごとに分散しているため、同社は観光地や施設、文化の情報を収集し、整理して分類する作業から始めます。日本語、中国語、韓国語に対応した旅程の自動生成を、つくば市の観光地を対象に実証します。

製造業の現場への展開を目指す

同社が目指しているのは、ドメイン特化型の生成AIを製造の現場へ届けることです。その出発点にあるのは、製造の現場に関わった経験と、自然言語処理を学んだことです。この経験と学びを組み合わせ、業種ごとの言葉づかいや帳票の形式に合わせたAIの構築を進めます。データを整える工程から運用の監視までを一続きで支える体制を、対象の業種を広げながら築くことを目指しています。

会社概要|ポッドテックの事業内容

筑波大学の在学中に創業

ポッドテック株式会社は、代表取締役の岡村柾紀氏が筑波大学の大学院に在学中だった2024年1月に、茨城県つくば市で設立されました。起業の領域に選んだのは、AIの導入支援です。在学中には、工場を自動化するロボットのスタートアップに関わり、製造業の課題を学んだ経験があります。あわせて大学の授業やプロジェクトで、大規模言語モデルのもとになる自然言語処理を学んでいました。

採択・連携

2024年12月に、筑波大学から大学発ベンチャーとして認定されました。認定時の事業内容は、大規模言語モデルの開発、そのデータセットの開発、大規模言語モデルを活用したソフトウェアアプリの開発です。2025年度には、つくば市の「つくばスマートシティ社会実装トライアル支援事業」に採択されています。同社は、つくば市産業振興センター内の「つくばスタートアップパーク」に入居しています。2025年には、起業家の育成プログラム「KOIL STARTUP PROGRAM」にも参加しました。

伴走型のビジネスモデル

同社の提供方法は、データ整備に伴走するコンサルティングです。導入は「Phase 0 から 5 へ」と段階を追うロールアウト方式で、既存のシステムを置き換えずに進めます。運用が始まった後も、品質モニタリングまでが継続的な支援の対象です。採用では、SQLやPythonに加え、BigQueryなどのクラウドDWH(分析用に大量のデータを蓄える基盤)を扱う人材を求めています。

会社情報

会社名ポッドテック株式会社(Podtech Corp.)
所在地茨城県つくば市吾妻2-5-1 つくば市産業振興センター
設立2024年1月
代表代表取締役:岡村 柾紀
事業データ整備の伴走支援(棚卸し・診断。帳票とExcelの構造化。名寄せ。欠損・異常値の検知。マスタ統合。ETL/ELTパイプラインの構築)。ドメイン特化型の大規模言語モデルとデータセットの開発
技術領域データクレンジング、名寄せ、マスタ統合、OCR、ETL/ELT、大規模言語モデル、RAG
連携筑波大学/つくばスタートアップパーク
採択筑波大学発ベンチャー認定(2024年12月)/つくばスマートシティ社会実装トライアル支援事業(2025年度)
URLhttps://podtech.tech/

編集後記|FrontJournal編集部より

生成AIの導入は、モデルを選ぶ話として語られがちです。ポッドテックが向き合っているのは、その手前にある社内データの状態という、手間のかかる領域です。表記の揺れを解消し、共通IDを付け、更新のたびに同じ手順で流し込みます。この積み重ねがなければ、どれほど高性能なモデルを載せても、返ってくる答えは現場の実態から離れていきます。

注目したいのは、整える工程と使う工程の両方を、同じ会社が担っている点です。データ整備の先に、観光という具体的な分野の特化型モデルを置き、自治体の実証という形で検証を始めています。整えたデータが何に効いたのかを、自分たちで確かめられる位置にいます。

筑波大学の研究環境から生まれた技術が、日本の現場に眠るデータをどこまで動かせるのか。今後の展開を注視したいところです。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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