車輪の移動台で動く人型ロボットを開発する Dexmate(米国発)

現場の自動化を進める「車輪型ヒューマノイド」を開発【Dexmate|米国発】

物流倉庫や工場、病院では人手に頼る作業が多く、ロボットで置き換えたくても導入までの準備が重い負担になっています。この課題に挑むのが、米国のデックスメイト(以下Dexmate)です。全方向に動く車輪の移動台に両腕を載せた「車輪型ヒューマノイド」の「VEGA」と、ロボットを開発・設定・運用できるフィジカルAIの開発基盤を一体で提供しています。2026年8月には、日本電気(NEC)のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドからの出資を受けました。

ロボット導入の課題

Dexmateの紹介と、人手不足で現場作業が滞り、ロボット導入の準備に手間がかかる課題を示す図

人手不足で現場作業が滞る

物流倉庫や工場、病院の現場では、担い手の不足が作業の滞りにつながっています。棚から商品を取り出す、箱を運ぶ、備品を補充するといった作業は、置き場所や形が日々変わるため人の手に頼る部分が多く残っています。担い手を確保しにくい状態が続けば、出荷の遅れや現場の負担増を招きやすくなります。

導入の準備に手間がかかる

ロボットを現場で使うには、機体を買うだけでなく多くの準備が要ります。NECの発表でも、センサーや制御、学習データ、シミュレーション環境(仮想空間でロボットの動きを試す仕組み)、現場での調整など多岐にわたる要素が導入の壁になると指摘されています。これらを現場ごとに一から揃える状態が続けば、ロボットを活用できる職場は広がりにくくなります。

  • シミュレーション環境
    コンピューターの中に現場を再現し、ロボットの動きを試せる仕組み。実機を壊す心配なく、動作の練習や検証を何度もくり返せる。

Dexmateが「車輪型ヒューマノイド」を開発

Dexmateが開発する車輪型ヒューマノイドの、車輪の移動台による安定した作業と開発基盤による導入の手間の削減を示す図

課題解決に挑むDexmate

Dexmateは、「車輪型ヒューマノイド」の「VEGA」とフィジカルAIの開発基盤を一体で提供する米国の企業です。2024年に設立され、カリフォルニア州サンタクララに拠点を置きます。マサチューセッツ工科大学(MIT)やカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)でロボットの手による器用な操作を研究していたタオ・チェン氏やユージャ・チン氏らが設立しました。

車輪の移動台で作業が安定

人型ロボットの「VEGA」は脚で歩く代わりに、全方向に動ける車輪の移動台で移動します。二足歩行のロボットに比べて転ばないための制御の負担が小さく、両腕に荷物を持っても姿勢を保ちやすい構成です。胴体は折りたためるため、高い棚では高さ2.2mまで届き、運ぶときは小さく畳めます。片腕でどの姿勢でも約4.5kg(10ポンド)を持ち上げられ、1回の充電で10時間以上動くとされています。

開発基盤で導入の手間を削減

同社は機体とあわせて、ロボットの開発から運用までを支える開発基盤を用意し、導入の準備を短くします。プログラミング言語Pythonから機体を操作でき、各種の仮想空間で試せる機体データも最初から用意されています。人が遠隔操作で教えられるため、VR(仮想現実)機器を使って作業の手本を記録し、AIの学習データにできます。頭脳にあたる計算機には米エヌビディアの「Jetson AGX Thor」を載せ、複数台の機体をまとめて管理する機能も備えます。

  • ヒューマノイド
    人の上半身や全身に似せた形のロボット。人向けに作られた棚や通路、道具をそのまま使えることが利点とされる。
  • フィジカルAI
    センサーで周りの状況を測り、AIが判断してロボットなどの機械を動かす技術。文章や画像を出力する生成AIと違い、物理的な行動をとる。
  • 遠隔操作
    人が離れた場所から機械を動かすこと。ロボットの分野では、人の動きを記録してAIに作業を覚えさせる手本づくりにも使われる。

車輪型ヒューマノイドの未来

車輪型ヒューマノイドが両腕作業の自動化を可能にし、人の働く現場への導入を目指し、NECのファンドから資金調達したことを示す図

両腕作業の自動化が可能に

車輪型ヒューマノイド」は、両手を使う作業を現場で自動化できる段階に近づいています。これまでの産業用ロボットは決まった場所で同じ動作をくり返すものが中心で、物を持ち替えるような両腕の作業は人が担ってきました。「VEGA」はすでに研究の現場で使われ、米アマゾンの研究チームや米カーネギーメロン大学が、人の手本から両腕の動作を学ぶ研究に活用しています。米南カリフォルニア大学は、2台の「VEGA」が人の共同作業を見て協力して動く研究を公表しました。

人の働く現場への導入を目指す

同社は、ロボットの開発から現場への導入までの工程を短くし、フィジカルAIの実用化を目指します。最高経営責任者(CEO)は、同社の基盤がロボットの開発と導入の障壁を根本から下げると述べています。人向けに作られた通路や棚をそのまま使える形のため、職場の設備を大きく作り替えずに導入できる可能性があります。倉庫の品出しや工場の部品運びをロボットが担えば、人は判断が要る仕事に時間を振り向けやすくなります。

NECのファンドから資金調達

同社は2026年8月、NECが出資するCVCファンド「NEC Orchestrating Future Fund」から資金調達しました。金額は公表されていませんが、米証券取引委員会(SEC)への届け出では、2026年2月以降に約4,100万ドル(約62億円)の株式を発行しています。NECは、Dexmateが持つ技術と自社の先端技術や事業の知見を組み合わせ、協業の可能性を検討するとしています。日本企業との協業が進めば、国内の物流や製造の現場でもロボット導入の選択肢が増えます。

  • コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)
    事業会社が自社の資金でスタートアップに出資する仕組み。資金を出すだけでなく、自社の事業との協業を探る目的をあわせ持つことが多い。

まとめ

「車輪型ヒューマノイド」の利点は、脚の代わりに車輪で動くことで安定した両腕の作業に力を割けることです。Dexmateは機体と開発基盤を一体で提供し、ロボット導入の準備を短くする道を示しました。研究機関での活用が広がり、NECのファンドからの出資で日本企業との接点も生まれています。人手に頼る現場が多い日本にとっても、ロボット導入の選択肢が増える動きです。FrontJournal編集部は、「車輪型ヒューマノイド」が現場の作業を支える担い手の一つになることに期待しています。

※ 本記事は各社の公式発表・主要報道をもとに、FrontJournal編集部が再構成したものです。数値は各社の公表値です。ドルの円換算は1ドル=約150円で概算しています。
主な出典:Dexmate の公式サイト、NEC のプレスリリース(2026年8月25日)、米証券取引委員会(SEC)の届け出書類(Form D)。

この記事の作者

FrontJournal編集部

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