日本中性子光学「中性子の集光」を研究|磁場と鏡で中性子のビームを集めるイラスト

株式会社日本中性子光学

日本中性子光学「中性子の集光」を研究|研究領域=中性子を集める・光学素子/強み=磁場や鏡で集め・画像も測定する/将来性=検査や計測へ・事業を広げる

企業紹介|株式会社日本中性子光学とは?

電荷を持たない中性子のビームを、磁場や鏡で狙った位置へ届ける技術である「中性子の集光」。株式会社日本中性子光学は、その社会実装を目指す、名古屋大学発の計測系ディープテック企業です。「中性子磁気光学素子」や画像検出器を測定の現場へ、超伝導空洞(粒子を加速する金属製の空洞)の検査カメラ「CavCam」を加速器の現場へ、提案しています。

キーワード「中性子の集光」

「中性子の集光」は、中性子の進む向きを、磁場や物質の境界での屈折・反射で制御し、ビームを集める技術です。特徴は、光をレンズや鏡で集めるように、ビームの向きを操れる点にあります。物質の構造解析など、中性子のビームを使う測定の現場で、必要な位置にビームを集めて使えます。

市場課題|中性子は集めにくく、画像の測定にも高い性能が求められる

現状の中性子計測の課題|現状は、電場が使えず集めにくく測定の要求も高い|中性子は電場で・制御しにくい/画像検出器に・広い測定幅が必要

中性子は電場で制御しにくい

中性子は電荷を持たないため、陽子や電子のように電場で加速したり集めたりできません。加速器(粒子を高速に動かす装置)を使う中性子源で作られるビームは、物質の構造解析やがん治療などに使われています。ただし、電場が使えないため、ビームの向きや広がりを整えるには、別の原理の方法が必要です。

画像検出器に広い測定幅が必要

中性子の画像を測る検出器には、測れる強さの幅(ダイナミックレンジ)の広さと、信号と雑音の比(S/N比)の高さが求められます。ダイナミックレンジが狭い検出器は、強い部分と弱い部分を同じ画像の中で測りにくいのが課題です。S/N比が低い検出器では、弱い信号が雑音に埋もれ、画像が読み取りにくくなります。

他にも、中性子ビームの速度の制御、集めたビームの利用効率の向上、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ダイナミックレンジ検出器が測れる最小の信号から最大の信号までの幅である。幅が広いほど、強い部分と弱い部分を同じ画像の中で測ることができる。

日本中性子光学の強み|「中性子の集光」を研究

日本中性子光学が「中性子の集光」を研究|現在は、光学素子と画像検出器を提供|磁場と鏡で・中性子を集める/広い測定幅で・中性子を画像化

磁場と鏡で中性子を集める

電場で粒子の向きを整える方法は、電荷を持たない中性子には働きません。別の原理でビームを整える必要があります。

同社は、磁場で曲げる素子、物質の界面(境目)での屈折を使う素子、多層膜(薄い膜を重ねたもの)で反射する素子と、原理の異なる光学素子を扱っています。「中性子磁気光学素子」は、中性子が持つ磁気モーメント(小さな磁石としての性質)に、場所によって強さが変わる非一様磁場で力を加え、軌道を制御する素子です。像を正確に結べる点が特徴で、ビームライン(ビームを実験装置へ導く経路)の特性に応じて、超伝導磁石や永久磁石などの最適な組み合わせを提案できます。

広い測定幅で中性子を画像化

中性子の画像を測る検出器には、中性子イメージングプレート(中性子を記録する板状の検出器)があります。

同社の「中性子画像検出器」は、中性子シンチレーター(中性子が当たると光る物質)を使い、中性子の画像をリアルタイムで測る装置です。中性子が当たった場所の発光を画像として読み取るため、測定中の様子を、その場で見られます。中性子イメージングプレートよりも広いダイナミックレンジと、高いS/N比を備えた検出器です。広い測定幅により、強い部分と弱い部分が混ざった中性子の像も、同じ画像の中で測ることができます。

FrontJournalの解説
  • 磁気モーメント粒子が持つ、小さな棒磁石としての性質を表す量である。中性子は電荷を持たないが磁気モーメントを持つため、磁場を利用して運動を制御できる。

中性子計測の未来|測定・空洞検査・除染への応用

中性子の計測が変える未来|小型装置から空洞検査・除染へ広がる|手軽に中性子を・測る小型装置/空洞の検査へ・事業を広げる/除染と計測への・展開を目指す

手軽に中性子を測る小型装置

簡易中性子計には、Li6(リチウム6)中性子モニター「LiM」とHe3(ヘリウム3)中性子モニター「HeM」があり、いずれも中性子のスペクトル(エネルギーごとの分布)をリアルタイムで確認できます。「LiM」は中性子シンチレーターと光を電気信号に変えるシリコン光検出素子(MPPC)で小型にした機種で、「HeM」はHe3検出器を使う機種です。どちらも軽量コンパクトで、加速器の中性子源向けには、TOF(飛行時間)計測の機能も備えています。

空洞の検査へ事業を広げる

同社は、中性子計測用のデバイスから始め、超伝導加速器用の検査装置へ事業を広げた会社です。「CavCam」は、空洞の内壁を撮影する高解像度のカメラで、欠陥を検出し、形・大きさ・場所・数の情報とともに画像を取得します。「超伝導空洞内壁表面研磨機」は、内壁の欠陥を局所的に研磨して取り除く装置で、どちらも加速器の仕様に合わせて、空洞の大きさごとに調整できます。内壁の欠陥は到達できる加速電界を制限する要因となるため、欠陥の除去が重要です。

除染と計測への展開を目指す

放射性物質の除染方法や計測装置の開発にも、同社は複数の大学や企業と連携して取り組んでいます。同社関係者の共著論文(2018年)には、放射性セシウムを同位体(同じ元素で重さの異なる原子)ごとに、微小な範囲の分布を画像にした手法が載っています。同社は、中性子の計測から始めた事業を、中性子以外の放射線計測にも広げることが目標です。

会社概要|日本中性子光学の事業内容・設立背景

理研の研究者が2005年に設立

株式会社日本中性子光学は、2005年7月に設立されました。理化学研究所(理研)の研究者が、中性子のビームを集光するレンズやミラー、中性子検出器の製作とコンサルティングを行うために立ち上げた会社で、理研との資本関係はありません。中性子計測用のデバイスから始まり、その後は超伝導空洞の検査装置や除染関係へ事業を広げています。英語名はJapan Neutron Optics Inc.(略称J-NOP)です。代表取締役は奥村丈夫で、本社は愛知県蒲郡市にあります。

名古屋大学発の称号とJST支援

同社は、大学や研究所で開発された装置の普及に努める会社として、名古屋大学から名古屋大学発ベンチャーの称号を授与された企業です。研究開発では、JST(科学技術振興機構)の研究支援を受けています。放射性物質の除染方法や計測装置の開発では、工学院大学、名古屋大学、阿藤工務店、ピュアソンなどと連携しています。

研究者の装置を仲介して普及

同社は、研究者が開発した計測機器などの販売を仲介する事業を進めています。研究者と一緒に研究開発も行います。経営理念は、中性子を高度に利用する研究の基盤技術を、学術の研究現場から独立した立場で供給することです。

会社情報

会社名株式会社日本中性子光学(Japan Neutron Optics Inc./J-NOP)
所在地愛知県蒲郡市竹島町20番5号
設立2005年7月
代表代表取締役 奥村丈夫
資本金800万円
事業中性子の光学素子・検出器・超伝導空洞の検査装置などの製作。研究者が開発した計測機器などの販売の仲介
技術領域中性子光学(磁気光学・屈折・反射)。中性子の検出と計測。超伝導空洞の内壁の検査と研磨。放射性物質の除染と計測
連携名古屋大学(名古屋大学発ベンチャーの称号)。工学院大学、名古屋大学、阿藤工務店、ピュアソンなど(除染方法・計測装置の開発)
採択科学技術振興機構(JST)の研究支援
URLhttp://www.j-nop.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

目に見えない中性子を、磁場や鏡で狙った位置へ集める。日本中性子光学は、中性子の進路を制御する光学素子を、製品として提案している会社です。レンズやミラーで光を操るのと同じ発想を、電荷を持たない粒子へ当てはめた点に、面白さを感じました。

同じ名古屋大学発で、電子ビームを生む半導体フォトカソードを開発するPhoto electron Soulもあります。ビームを使う技術という点で、近い分野の会社です。名古屋大学発の企業は、コラム「名古屋大学発スタートアップ10選」でも読めます。

中性子のビームを集め、その像を測り、加速器の空洞も検査する。研究の足元を支える装置が、これからどう使われていくかに、今後も注目します。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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