ハイドロヴィーナス「振り子式水流発電」を開発

株式会社ハイドロヴィーナス

ハイドロヴィーナス「振り子式水流発電」を開発

企業紹介|株式会社ハイドロヴィーナスとは?

水の流れで振り子を揺らして発電し、水位や流量の計測まで担う技術として、注目を集める「振り子式水流発電」。株式会社ハイドロヴィーナスは、その社会実装を目指す、岡山大学発のエネルギー系ディープテック企業です。水流発電機「Hydro-VENUS」を使った河川の防災センシング(水位や流量を測り防災に生かす)を、岡山大学などと実証しています。

キーワード「振り子式水流発電」

「振り子式水流発電」は、流れの中に置いた振り子が水流で揺れる力を使い、電気を得る発電方式です。特徴は、プロペラを回す代わりに半円柱型の振り子をゆっくり振動させるため、漂流物が絡みにくく、落差のほとんどない水路でも動く点にあります。水路や川に置くだけで、電線のない場所でも水位や流量の計測に必要な電力を得られます。

市場課題|水路は電源が乏しく、水位や流量を測れる場所が限られる

現状の観測と発電の課題

電源のない水路は観測が難しい

河川や農業用水路では、水位や流量を測る観測機器の設置に電源が必要で、データを取れる場所が限られます。観測機器は高価で、電線や通信網のない山間部や地下の水路まで電源を引くと、さらに費用がかさむ状況です。観測点が少ないままでは増水の兆しをつかみにくく、豪雨時の対応が遅れる恐れも残ります。

水車式は漂流物の除去に手間

水車やプロペラを回す方式の小水力発電は、流木やごみを巻き込みやすく、網で防いで取り除く維持管理の作業が欠かせません。また、落差(水が落ちる高低差)を利用する従来の水力発電は、落差のほとんどない水路に設置しにくいです。維持管理の手間と設置条件の制約が残るため、電源のない水路への導入は進みにくい状況です。

他にも、水門管理の人手不足、水門操作のノウハウ継承の難しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 小水力発電大規模なダムを造らず、河川や用水路などの小さな水の流れを使って発電する水力発電である。設置場所に応じて、小型の装置で電力を得られる。

ハイドロヴィーナスの強み|「振り子式水流発電」を開発

ハイドロヴィーナスが「振り子式水流発電」を開発

発電しながら水位と流量を計測

水位や流量の観測機器は外部の電源を要し、電線のない水路では設置が難しくなります。

同社の「Hydro-VENUS」(流体動力学に基づく渦エネルギー活用システム)は、水の流れで振り子を揺らして発電し、その電力で水位や流量を計測する装置です。流れの中に半円柱型の振り子を置くと、周囲に渦ができて圧力差が生まれ、振り子が揺れ動きます。この流体励起振動(流れの中の物体が渦で揺れる現象)は、揺れがさらに渦を生むため振動が続き、発電に使える点が特徴です。計測データは無線で送信でき、電線のない水路にも観測点を増やせます。水位データでAIが到達時間を予測でき、水門操作の備えが早まります。

漂流物が絡みにくい振り子構造

プロペラ式の発電機は、羽根が漂流物を巻き込んで壊れやすく、鋭い羽根が魚を傷つける恐れもあります。

同社は、プロペラを回す代わりに頑丈な振り子をゆっくり振動させて、水の流れを電気に変えます。振り子は単純な形で、流木やごみが絡みにくく、羽根が回らないため魚を傷つける心配も小さい構造です。落差のほとんどない緩やかな流れでも動き、海の潮流では、投げ入れた瞬間から動いて発電し、設置が容易です。構造が壊れにくく、ごみも絡みにくいため、網で防いでごみを取り除く日常の作業の手間が減り、水路の管理者の負担が軽くなります。

FrontJournalの解説
  • 流体励起振動流れの中に置かれた物体の周囲に渦ができ、その圧力差で物体が揺れ動く現象である。橋などの構造物では破壊の原因になるが、同社はこの揺れを発電に使う。

振り子式水流発電の未来|水路のデータ網から海の潮流発電へ

水流発電が変える水辺の未来

香川用水で水路を可視化

岡山大学とともに、香川県の「香川用水」で同社の装置による水路の水位と流量の把握を検証し、2024年9月に発表しました。流量計を置けなかった箇所にも、電源なしで装置を多点に設置できます。集めたデータからAI(人工知能)が水の到達時間を予測し、水門の操作を支援する「水門ナビゲーション」も検証しました。水門の操作時期や開度の判断を、データで支える土台になります。

通信と連携し水辺の電源へ

同社は2026年6月、総務省が主宰する情報通信技術(ICT)の支援プログラム「ICTスタートアップリーグ」の採択企業に選ばれ、通信技術とのパッケージ化に取り組んでいます。山間部や海上など場所に応じて出力と設置方法を検証し、装置を遠隔で監視する技術を固める計画です。電気、通信、データを水辺に広げる「インフラノード」(通信とデータの拠点)としての機能を確保します。太陽光発電では電力を得にくい山間部や豪雪地帯、下水、海中では、IoT(機器をインターネットにつなぐ技術)用の電源として需要が寄せられています。

里海エネルギーの活用を目指す

水路や河川での普及を足がかりに、海の潮流を使う大規模な発電を目指します。瀬戸内海の潮流は最大で秒速およそ5mといわれ、潮流は天候に左右されず、満ち引きから発電量を予測しやすい発電源になり得ます。装置は大きさで発電量を変えられ、海では大きな電力を取り出す構想です。実現すれば、燃料が要らない国産のエネルギーを、里海(暮らしと関わりの深い沿岸の海)から得られるようになります。

会社概要|岡山大学の研究を基に2015年に設立したハイドロヴィーナス

岡山大学の研究から設立

ハイドロヴィーナスは、2015年1月に設立された岡山大学発のベンチャーです。創業者の比江島慎二氏(岡山大学教授)が発明した振り子式水流発電を実用化するために設立されました。代表取締役の上田剛慈氏は、半導体業界での勤務などを経て、産学連携の事業を探る中で比江島氏と出会い、立ち上げに参画しました。本社は岡山大学の共創イノベーションラボ「KIBINOVE」にあり、東京にもオフィスを構えます。

採択・連携

公益財団法人PwC財団の助成事業に、2021年度と2023年度に採択されています。岡山大学とともに香川用水で行った洪水予測と水門管理の実証は、2024年9月の発表です。この実証の装置筐体の製作には、クボタケミックスが協力しています。2023年10月にはJ-Startup WESTに選定され、2024年9月にはU-START UP KANSAI 2024でNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)賞を受けました。2025年2月の未来X DEMO DAY 2025では、部門別最優秀賞の未来X賞を含む4賞を受賞しています。

出資と主な動き

2025年8月、電源開発(J-POWER)が第三者割当増資(特定の相手に新株を発行する増資)の引き受けによる出資を決定しました。同社がJ-POWERとスタートアップスタジオのSpireteが運営したプログラムに採択されたことを受けた決定です。2025年12月には、建築鉄骨を主軸とする冬木工業(群馬県)からも出資を受けました。同月には一般社団法人インパクトスタートアップ協会に正会員として加盟しています。

会社情報

会社名株式会社ハイドロヴィーナス(Hydro-VENUS Co.,Ltd.)
所在地岡山本社:岡山県岡山市北区津島中3丁目1番1号(岡山大学共創イノベーションラボ KIBINOVE)。東京オフィス:東京都大田区南六郷3丁目10番16号 六郷BASE 308号室
設立2015年1月26日
代表代表取締役 上田剛慈。創業者 比江島慎二(岡山大学教授)
資本金6,330万円
調達電源開発(2025年8月に出資決定)。冬木工業(2025年12月)
事業流体動力学に基づく渦エネルギー活用システムの開発・製作・販売・施工およびコンサルティング。河川防災センシングサービス
技術領域振り子式水流発電「Hydro-VENUS」。流体励起振動を利用した発電と、水位・流量のセンシング
連携岡山大学。クボタケミックス(装置筐体の製作)
採択PwC財団の助成事業(2021年度・2023年度)。ICTスタートアップリーグ(総務省・2026年)。J-Startup WEST(2023年)。U-START UP KANSAI 2024 NEDO賞。未来X DEMO DAY 2025 未来X賞ほか
URLhttps://hydrovenus.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

水の流れが、そのまま電源と観測点になる。ハイドロヴィーナスの装置は、橋などの構造物で破壊に至る厄介な現象として知られていた流体励起振動を、発電に生かした技術です。電線の届かない水路に、設置するだけで電気と計測データを生む点に、発想の転換を感じました。

河川や用水路の管理では、電源がないために観測点を増やせないことが壁でした。同社の装置は、単なる発電機ではなく、水路の状態を見張る目として働きます。香川用水での検証は、水門の判断をデータで支える取り組みです。

将来は、同じ仕組みを海の潮流発電へ広げる構想です。小さな装置から始めて、里海のエネルギーに届くかどうかが、今後の注目点です。岡山大学ゆかりの企業は、岡山大学発スタートアップ10選でも紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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