Intelligent Style「点群ブラウザ」を研究|ノートPCの画面に点群を表示し、透明な箱に囲んだ道路標識を取り出したイラスト

Intelligent Style株式会社(インテリジェントスタイル)

Intelligent Style「点群ブラウザ」を研究|研究領域=点群を地物ごとに検索するブラウザ/強み=領域データで対象地物を取得/将来性=空間IDで位置を3次元に把握

企業紹介|Intelligent Style株式会社とは?

橋や道路の状態を、3次元の点の集まりで確かめる技術として、注目を集める「点群ブラウザ」。Intelligent Style株式会社は、その社会実装を目指す、空間情報(位置に結び付けたデータ)を扱うディープテック企業です。点群ブラウザ「3D Point Studio」を開発し、地方公共団体など道路や橋の管理者へ提供してきました。

キーワード「点群ブラウザ」

点群ブラウザ」は、点群データ(レーザ計測で得た点の集まり)を、Webブラウザなどで表示し比較できるソフトウェアです。特徴は、道路標識や電柱といった地物(道路の設備)の位置を別のデータで管理し、必要な箇所だけを取り出せる点にあります。管理者は、膨大な点群から目的の地物を探し、現場へ行く前に状況を確かめやすくなります。

市場課題|道路管理の点群データは、活用の環境が十分に整っていない

現状の点群データの課題|現状は、状況の確認に現場へ行く場面が多い|点群が膨大で・取り出しにくい/変状の前後比較に・時間がかかる

点群が膨大で取り出しにくい

点群データは、道路管理でも利用が増えた一方、膨大な量から必要な箇所を取り出しにくいデータです。納品された点群はCD・DVDなどで保管され、担当者のパソコンにビューア(表示ソフト)があるとも限りません。住民から苦情が入っても、管理者が現場へ行って初めて状況を見る場面が多くなります。

変状の前後比較に時間がかかる

路面のへこみや、法面(切土や盛土で造成した斜面)の膨らみといった変状(構造物に生じた変形や損傷)は、前後の点群を比べる作業に手間と時間がかかります。差分(前後の違い)は、業務委託して出してもらうか、点群を人手で加工して確認するため、費用と手間が負担です。変状の把握が遅れれば、補修の着手も遅れかねません。

他にも、点検写真の撮影位置の把握しにくさ、部材番号から3次元の位置を読み取る難しさ、点検調書や図面と点群を結び付ける手間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 点群データレーザスキャナなどで計測した、無数の点の3次元座標(位置)の集まりを指す。点の1つ1つは位置しか持たず、道路や構造物といったまとまりの情報は含まない。

Intelligent Styleの強み|「点群ブラウザ」を開発

Intelligent Styleが「点群ブラウザ」を開発|今後は、地物ごとの管理と差分検出が可能に|領域データで・対象地物を検索/位置誤差に強い・差分検出

領域データで対象地物を検索

点群データは位置を表す点の集まりにすぎず、道路標識や電柱といった地物との関係情報を保持していません。対象の地物だけを取り出すには、大量の点から探す作業が必要です。

同社の「3D Point Studio」は、点群とは別に、地物の位置を示す領域データを持たせて管理する点群ブラウザです。領域データは、底面の形と押し出す操作の記録で、地物を囲む範囲を表したデータです。点群そのものを加工しないためデータサイズが膨らまず、別のファイルとして交換や再利用もできます。大規模な点群から対象の地物だけを一括で取得でき、管理者は目的の地物を素早く探して、点検調書や図面、現場写真と結び付けて確認できるようになります。

位置誤差に強い差分検出

計測誤差を含む点群どうしをそのまま重ねて比べると、位置のずれが差分に混ざりかねません。

同社の点群解析は、点群から解析情報を作り、解析情報どうしを重ねて差分を検出する手法です。解析情報とは、区画ごとに算出した点群密度や、点群に当てはめた平面からの平坦性(面のばらつきの度合い)などの値です。点の位置ではなく区画ごとの値を比べるため、絶対的な位置の誤差の影響を受けにくい形で変状を検出できるとされています。適用事例は、舗装の変状や、計測機器の異なる点群で比べた法面の崩落前後です。変状の前後を比べる作業の負担を減らせる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • 領域データ点群データとは別のファイルで、道路標識や電柱といった地物の位置を、底面の形とそれを押し出す操作の記録で囲んで表すデータを指す。点群を加工せずに、対象の地物だけを取り出せる。

点群ブラウザの未来|自治体の点検から、ロボットによる維持管理へ広がる

点群ブラウザが変える未来|自治体の実務から、自律型ロボットへ広がる|空間IDで・位置を3次元把握/実務担当者と・次世代点検を試行/ロボット点検の・結果を空間IDへ

空間IDで点検箇所を3次元把握

同社は、点群ブラウザ「3D Point Studio」を空間ID(実空間の位置を共通のルールで表す識別子)に対応させ、点検箇所を3次元で把握できるようにしました。従来は、部材番号だけでは3次元の位置が分かりにくい状況でした。点検結果を空間IDに蓄積すれば、位置を手がかりに情報を続けて追加・参照できます。現地調査アプリと組み合わせた環境は、静岡県や豊田市など、4県にまたがる7団体へ先行配布されました。

実務担当者と次世代点検を試行

2025年4月の時点で、先行配布した環境は、自治体の実務担当者と協働する次世代のインフラ点検の試行に使われていました。試行では、点検項目を画像中心に記録でき、ひび割れを測る用途にも便利との意見があります。詳細に調べたいときは、その場で点群を計測できる点も、現場に合うという評価です。災害復旧では、点群から土砂の堆積量を求められれば、測量作業を省ける可能性も指摘されています。

ロボット点検との連携を目指す

想定される今後の姿は、自律型ロボットなどの点検結果を空間IDに関連付け、橋の上部工(桁や床版など)と下部工(橋脚など)の状態を管理する仕組みです。写真や帳票が別々でも、点検箇所の位置を手がかりに結び付けられます。空間IDは、ドローンなどの安全な運行にも使う共通のルールで、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業で整備が進められました。写真や帳票を探す手間が減れば、道路や橋の維持管理の負担も軽くなる可能性があります。

会社概要|大学教員の研究成果を活用するIntelligent Style

複数大学の研究者が開発に参画

点群ブラウザ「3D Point Studio」の開発には、大阪経済大学、法政大学、摂南大学、関西大学の研究者が携わりました。同社の事業の一つは、大学教員の研究成果や経験知を活用するコンサルティングです。Intelligent Style株式会社は、2018年11月に設立され、大阪市北区に本店を置いています。

代表取締役会長は、関西大学の田中成典氏です。2026年3月には、藤原利弘氏が代表取締役社長に就任しました。経済産業省の「大学発ベンチャーチームビルディング事例集」にも掲載されています。

国交省の受賞とNEDO採択

「3D Point Studio」は、2019年12月に国土交通省の「i-Construction大賞」(建設現場の生産性向上に関する優れた取り組みの表彰)で、優秀賞を受賞しました。2022年度には、NEDOの「産業DXのためのデジタルインフラ整備事業/3次元空間情報基盤に関する研究開発」の実施者に採択されました。複数の事業者との共同提案で、成果は2025年4月の成果報告会で発表されています。

点群処理と映像処理を手がける

事業は、大学教員の研究成果を生かしたコンサルティングや、情報システムの開発、研究・製品開発などです。点群処理では、UAV(ドローン)搭載型の計測ユニットと、点群から寸法値を自動で算出するCIMモデル(構造物を3次元で表すモデル)の生成システムを手がけています。計測ユニットは、標準偏差(計測値のばらつきの指標)3cmの精度を確認済みです。映像処理の製品には、スポーツ選手の動きを可視化する「xG-1」などがあります。

会社情報

会社名Intelligent Style株式会社(Intelligent Style Corporation)
所在地大阪府大阪市北区大深町3番1号 グランフロント大阪 ナレッジキャピタル コラボオフィスnx1
設立2018年11月21日
代表代表取締役会長:田中 成典。代表取締役社長:藤原 利弘(2026年3月就任)
資本金5,000万円
事業コンサルティング。情報システム開発。研究・製品開発(点群処理、映像処理)
技術領域点群データの可視化、解析、3次元モデル生成。領域データによる地物単位の点群管理
連携大阪経済大学、法政大学、摂南大学、関西大学の研究者。宇宙サービスイノベーションラボ事業協同組合、株式会社ゼンリン、LocationMind株式会社、スウィフト・エックスアイ株式会社(NEDO事業の共同提案)
採択国土交通省 i-Construction大賞 優秀賞(2019年12月)。NEDO「産業DXのためのデジタルインフラ整備事業/3次元空間情報基盤に関する研究開発」実施者(2022年度)
URLhttps://www.intelligentstyle.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

橋や道路の点検では、写真や帳票が別々に残り、あとから位置を探す手間が生まれがちです。位置を手がかりに情報を束ねるという考え方が、点群ブラウザから空間IDまで一貫している点に、素直に納得しました。この発想は、点検の現場で積み重なる記録を引き継ぐうえで、頼れる基盤になると感じます。

とりわけ印象に残ったのは、点群を加工せず、地物の位置を別のデータで持たせる設計です。点群が膨大でも、必要な地物だけを取り出せます。単なる3次元の表示ソフトでなく、点検の記録を結び付ける土台に育っている点は、注目したいところです。

複数の大学の研究者が積み重ねた成果が、自治体の点検の現場で試されるなか、道路や橋の点検が位置情報を軸に引き継ぎやすくなる未来を、見届けたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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