Amoeba Energy「組合せ最適化」を研究

Amoeba Energy株式会社(アメーバエナジー)

Amoeba Energy「組合せ最適化」を研究|研究領域=多数の選択肢から・最良の組合せ/強み=粘菌に学んだ・専用ハードウェア/将来性=半導体工場の・搬送計画で実証

企業紹介|Amoeba Energy株式会社とは?

工場の搬送や配車の計画など、膨大な選択肢から最良の組合せを選び出す技術「組合せ最適化」。Amoeba Energy株式会社は、その社会実装を目指す、慶應義塾大学発のディープテック企業です。粘菌の情報処理の原理を取り入れた専用ハードウェアを開発し、半導体工場の搬送計画向けのモデルを、自動搬送システムのメーカーと共同で開発しています。

キーワード「組合せ最適化」

「組合せ最適化」は、膨大な選択肢の組合せのなかから、決められた条件を満たす最良のものを選び出す問題や技術です。同社の方式の特徴は、粘菌の情報処理の原理から取り出した計算モデルを専用ハードウェアに組み上げ、制約をすべて満たす解にだけ到達する点にあります。同社は、搬送や勤務のスケジュールなどを用途に挙げています。

市場課題|組合せ最適化に残る、組合せの爆発と条件外の解

現状の組合せ最適化の課題|現状は、組合せの爆発で最良解を探しにくい|組合せの爆発で・最良解を探せない/条件外の解が・出ることがある

組合せの爆発で最良解を探せない

組合せ最適化では、選択肢が増えるにつれ、組合せの数が急増する組合せ爆発が起きます。巡回セールスマン問題(複数の都市を回る最短の経路を求める問題)の経路は、10都市で10万通り以上、15都市で400億通り以上です。現在普及しているコンピュータでは、答えが得られるまでに時間がかかると、同社代表の青野真士は説明しています。

条件外の解が出ることがある

北海道大学は、イジングマシンなどの新型コンピュータでは、問題を機械が扱える形式に変換することが実用上の課題だと発表しています。アニーリング方式では、目的関数を優先して解を更新するため、ときに制約を満たさない解が導かれると、同社代表の青野真士は説明しています。

他にも、搬送経路の計画、勤務スケジュールの作成、手術スケジュールの調整、配車計画、ロボットアームの動作計画、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 組合せ爆発問題の規模が大きくなるにつれ、組合せの総数が急激に増え、すべてを調べることが難しくなる現象である。巡回セールスマン問題では、都市数の増加で経路の数が急増する。

Amoeba Energyの強み|「組合せ最適化」を研究

Amoeba Energyが「組合せ最適化」を研究|これまでに、FPGAで高速化を実現|制約を先に満たす・計算で解を得る/書換え可能な回路で・高速に解く

制約を先に満たす計算で解を得る

アニーリング方式は、目的関数(良さを測る式)を先に定めて解を探す「目的関数ファースト」の方式だと、同社代表の青野真士は説明しています。

同社の「アメーバ最適化エンジン」は、粘菌の情報処理の原理から取り出した計算モデルを、専用ハードウェアに組み上げたものです。制約を先に満たす「制約ファースト」の方式で、制約をすべて満たす実行可能解にだけ到達します。制約を両端から同時に伝えて中ほどで整合させる「双方向並列伝播」が、計算の中核です。この原理は、代表の青野真士が二十年以上かけて築いた計算パラダイム「粘菌テクトニクス」にまとめられています。制約をすべて満たす解にだけ到達するため、条件を満たさない解を除く作業が要らなくなります。

書換え可能な回路で高速に解く

FPGA(製造後に回路の構成を書き換えられる集積回路)は、アルゴリズムを回路として実装し、実機で動作させられる部品です。

独自のアルゴリズム「AmoebaSAT」をFPGAに実装した「アメーバコンピュータ」が開発されました。このコンピュータは、条件をすべて満たす変数の割り当てを求める充足可能性問題(SAT)を、重み付けした問題として解く装置です。2021年3月時点で、1枚のFPGAで最大3万変数を扱え、重み付き3万変数の問題を1秒以内で解いて、同じアルゴリズムを従来型のコンピュータで実装した場合と比べて300倍以上の高速化を達成しています(同社の公表値)。計算時間を短縮できます。

FrontJournalの解説
  • FPGA製造後に回路の構成を書き換えられる集積回路である。アルゴリズムを回路として実装し、実機で動作させる用途に使われる。

組合せ最適化の未来|専用チップ化が広げる応用先

専用ハードウェアの最適化が変える未来|実証と専用チップ化で、全体調停を目指す|半導体工場の・搬送計画で実証する/専用チップ化を・見据える/全体調停の・計算基盤を目指す

半導体工場の搬送計画で実証する

同社は、半導体工場の搬送計画に特化したモデル「ATO(Amoeba Transport Optimizer)」を開発しています。自動搬送システムのメーカーとの共同開発を通じて、FPGA上のアメーバ最適化エンジンとして性能を高めている段階です。同社は、現在地を実証の途上としています。

専用チップ化を見据える

同社は公式サイトで、アメーバ最適化エンジンを将来、専用チップ(ASIC)として実装する構想を示しています。2021年3月のリリースで同社は、FPGAの構成を個別のアプリに特化させ、書換えが不要になる制約条件を固定回路にすることで、さらに数桁の速度向上が見込まれるとしています。ASICは、特定の用途に合わせて回路を固定した集積回路です。

全体調停の計算基盤を目指す

「全体調停」は、自律して動く多数の個体が限られた資源を分け合う現場で、個々の動きを調整し、全体の調停を担うことです。同社は、ロボットの協調、電力網の需給調整、データセンターの資源配分、AIエージェントの調停へ、同じ計算原理を展開する射程を持つとしています。同社は、専用ハードウェアで、この全体調停を担う計算基盤を目指しています。

会社概要|Amoeba Energyの事業内容・設立背景

慶應義塾大学の研究から設立

同社は、2018年1月11日に設立されました。代表取締役社長の青野真士は、理化学研究所、東京工業大学地球生命研究所、科学技術振興機構のさきがけ研究で、粘菌型の組合せ最適化コンピュータを研究しました。2017年に慶應義塾大学環境情報学部の准教授に着任し、2018年1月に起業しています。2019年度に准教授職を辞し、以降は事業に専念しています。

共同研究と共同開発の経緯

2020年9月には、FPGAコンピューティングの企業である株式会社ベクトロジーと、「アメーバコンピュータ」の共同開発を発表しました。同年11月には、同社と北海道大学の共同研究グループによる、アナログ電子回路で巡回セールスマン問題を解く「電子アメーバ」の成果が、論文誌『Scientific Reports』に掲載されています。同年12月には、北海道大学と同社がこれを発表しました。2021年3月には、1枚のFPGAで最大3万変数を扱える構成を発表しています。現在は、自動搬送システムのメーカーとの共同開発で、半導体工場の搬送計画向けのモデルの性能を高めています。

実証の途上にある事業の進め方

同社は、現在地を実証の途上としています。メンバーは5名で、富士通で半導体事業を率いた藤井滋が、2023年5月からムーンショット・アドバイザーを務めています。

会社情報

会社名Amoeba Energy株式会社(Amoeba Energy Co., Ltd.)
所在地東京都港区港南2-15-1 品川インターシティA棟22階
設立2018年1月11日
代表代表取締役社長 青野 真士
資本金6,648万2,000円
事業組合せ最適化の専用ハードウェア「アメーバ最適化エンジン」の開発
技術領域組合せ最適化。粘菌の情報処理原理に学んだ計算モデル
連携北海道大学(電子アメーバの共同研究)。株式会社ベクトロジー(アメーバコンピュータの共同開発)
URLhttps://amoebaenergy.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

計画の難しさは、選択肢の多さだけでなく、守るべき条件の多さにもあります。条件を先に満たす計算が使えれば、出てきた計画をそのまま現場に渡せる場面が増えます。組合せ最適化は、その土台になる技術です。

Amoeba Energyの特徴は、粘菌に学んだ計算原理を、専用ハードウェアとして組み上げようとしている点です。ソフトウェアの工夫にとどまらず、FPGAでの実装から専用チップ化までを見据える点に、長い研究の積み重ねがうかがえます。代表の青野真士が研究してきた粘菌型の最適化を、事業へ移した形です。

同社は、現在地を実証の途上としています。半導体工場の搬送計画で結果が積み上がるほど、ロボットや電力網など他の現場への広がりも見えてきます。実証の進展を、引き続き追いたい企業の一つです。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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