株式会社DigeonはAIエージェントを組み込んだ基幹システムを開発する神戸大学発の企業

株式会社Digeon(ディジョン)

Digeon「AIエージェント」を研究|研究領域=事務作業を自ら進めるAI/強み=基幹システムに最初から組み込む/将来性=転記や照合の手間を減らす

企業紹介|株式会社Digeonとは?

書類の読み取りや入力といった事務作業を自動で進める技術として、注目を集める「AIエージェント」。株式会社Digeonは、その社会実装を目指す、神戸大学発のAI系ディープテック企業です。自社で開発したAIエージェントの基盤「ENSOU AI」と、それを最初から組み込んだ基幹システム(販売や会計のデータを扱う仕組み)を、製造業や官公庁などへ提供しています。

キーワード「AIエージェント」

「AIエージェント」は、与えられた目的に向けて、必要な手順を自ら組み立てて実行するAIの仕組みです。特徴は、質問に答えるだけでなく、業務システムと連携して、データの登録や集計まで進められる点にあります。注文書を処理する受注の現場や、原価を管理する経理の現場で、転記や照合(書類とデータの突き合わせ)の手間を減らせます。

市場課題|基幹システムの周りに手作業が残る

現状の基幹システムの課題|転記や照合が手作業で残る/会社ごとの開発で手間がかさむ

転記や照合が手作業で残る

多くの基幹システムはデータの記録と表示までを担い、書類からの転記や照合は担当者の手作業として残ってきました。データが揃っていても、書類とデータを突き合わせる作業量は減りにくいままです。そのため、システムを新しくしても生産性は頭打ちになりやすいといわれています。

会社ごとの開発で手間がかさむ

会社ごとの業務に合わせて作り込んだり、独自の改修を重ねたりしたシステムは、開発や保守に手間と費用を要します。国内のユーザー企業の約61%には、レガシーシステム(老朽化や複雑化が進んだシステム)が残るとされています。仕様の管理が属人的になるとブラックボックス化(中身が分からなくなること)が進み、改修の費用がかさみかねません。

他にも、2030年に最大約79万人の不足が試算されるIT人材、部署ごとに分かれた業務データ、古いシステムのセキュリティ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 基幹システム企業の販売・購買・在庫・会計・人事など、事業の中心となる業務のデータを記録し管理するシステムを指す。日々の取引が集まるため、業務の効率はこの仕組みの作り方に大きく左右される。

Digeonの強み|「AIエージェント」を開発

Digeonが「AIエージェント」を開発|AIエージェントが照合まで実行/共通部品で開発の手間を削減

AIエージェントが照合まで実行

従来の基幹システムはデータの記録と表示を主な役割とし、対話型のAIも回答の提示が中心だったため、入力や照合の多くは担当者の作業として残りました。

同社は、自社開発のAIエージェント「ENSOU AI」を最初から組み込んだ基幹システムを構築し、受注や経理の処理までAIエージェントが担えるようにしています。受注では、メールで届いた注文書AI OCR(画像の文字を読み取る技術)で読み取り、台帳や過去の取引と照合して受注伝票を作成する仕組みです。経理では、原価差異(計画と実際の原価の差)の要因を金額の大きい順に示し、対応も提案します。担当者の転記や照合の負担が減り、判断が要る確認に時間を使えるようになります。

共通部品で開発の手間を削減

従来の個別開発では、画面や機能を案件ごとに作り直すことが多く、似た機能にも毎回手間がかかっていました。

同社は、再利用できるコンポーネント(ソフトウェアを組み立てる部品)を積み上げてシステムを構築する「積み木開発」を用いています。部品にするのは、ボタンや入力欄といった画面の要素に加え、多くのシステムで繰り返し使われる機能です。自動テストを整え、ソースコードのカバレッジ(テストで実行されたプログラムの割合)を85%に保っています。よく使う機能を毎回作り直さずに済むため、業務に合わせた基幹システムを、短い期間で組み上げることができます。

FrontJournalの解説
  • 積み木開発再利用できるプログラムの部品を組み合わせてシステムを構築する、Digeonの開発手法を指す。共通する機能を部品として使い回すため、案件ごとの作り直しが減り、開発の手間を抑えられる。

AIエージェントの未来|企業の事務作業への応用

事務を担うAIエージェントが変える未来|社内の問い合わせ対応を自動化/Excelの業務をアプリに変換/企業のAI活用の底上げを目指す

社内の問い合わせ対応を自動化

同社の「ENSOU AI」は、社内の問い合わせ対応を自動化する用途で、すでに導入されています。マニュアルや人事制度、議事録といった社内ファイルを読み込ませると、その会社に固有の内容に沿って回答を返します。議事録や報告書をWord・Excel・PowerPoint形式で作成できる点も特徴です。システム開発を手がけるさくらケーシーエスは、同サービスで月500件以上の問い合わせ対応を自動化しました。

Excelの業務をアプリに変換

新たに加えたのが、Excelで管理してきた業務をAIアプリへ置き換える「ENSOU App」です。Excelファイルをアップロードすると、AIが列の型(数値・日付・文字の区別)や見出し、データの構造を読み取り、その日から使えるアプリに変換します。アプリはチャットで話しかけて操作でき、データの登録や集計、PDFの読み取りも任せられます。同社は2026年4月にサービスを発表して事前登録を受け付け、5月に正式に提供を始めました。

企業のAI活用の底上げを目指す

同社は、日本の企業のAI利用率を、世界で最も高い水準へ引き上げることを目指しています。掲げる使命は、「息をするようにAIを使える社会をつくる」ことです。個々の業務に合わせてAIを組み込む開発と、誰でもすぐに使えるサービスの提供を両輪に、企業全体での利用を広げる考えです。AIエージェントが業務を進める基幹システムが広がれば、担当者は定型作業から離れ、判断や改善に時間を向けやすくなります。

会社概要|Digeonの設立背景と事業

神戸大学での研究から起業

株式会社Digeonは、神戸大学大学院でAIの応用を研究していた代表取締役の山﨑祐太氏が、取締役の松尾庄馬氏とともに2020年10月に神戸市で設立した企業です。山﨑氏は2018年から2020年にかけて、土木工学の分野でAIの応用研究に取り組み、図面データからの情報の抽出や、数値解析(計算で現象を予測すること)に必要な値の推定を手がけました。2025年1月には、神戸大学発ベンチャーの認定を受けています。

認証とパートナー登録で体制整備

同社は、認証の取得やパートナー制度への登録で、企業の基幹業務を預かる体制を整えています。2025年4月には、情報セキュリティの管理体制を定めた国際規格「ISO/IEC 27001」の認証を取得しました。OpenAI(対話型AI「ChatGPT」の開発元)のパートナー制度では「Select Partner」に、AWS(アマゾンのクラウドサービス)の制度では「セレクトティアサービスパートナー」に登録されています。2025年6月には、開発手法の「積み木開発」が商標として登録されました。

株式による調達なしで黒字経営

資金面では、株式による資金調達(株式と引き換えの出資)を行わず、2025年11月時点で創業から黒字経営を続けています。事業は受託開発(顧客の依頼でシステムを開発する仕事)から始まり、5期にわたってこれを柱とした後、自社サービスの「ENSOU AI」を加えました。これまでに100以上のシステムを開発し、医療専門職団体の日本臨床工学技士会のeラーニング(オンラインで学ぶ仕組み)や、山岡製作所の類似図面を探すAIなどを手がけています。

会社情報

会社名株式会社Digeon(ディジョン)
所在地兵庫県神戸市中央区浪花町64 三宮電電ビル5階
設立2020年10月28日
代表山﨑 祐太(代表取締役)。松尾 庄馬(取締役・共同創業者)
資本金1,000万円
調達株式による資金調達は行わず、創業から黒字経営(2025年11月時点)
事業基幹業務システムの開発。AIエージェント搭載基幹システムの構築。「ENSOU AI」の開発・提供・運用。生成AIの開発。ローカルLLM(社内の環境で動かす大規模言語モデル)の構築等
技術領域積み木開発(再利用できる部品を積み上げる開発手法・2025年6月に商標登録)。AIエージェントの構築・実行基盤「ENSOU AI」。情報セキュリティの国際規格ISO/IEC 27001の認証(2025年4月取得)
連携OpenAI Select Partner。AWSセレクトティアサービスパートナー
採択神戸大学発ベンチャー認定(2025年1月9日)
URLhttps://digeon.co/

編集後記|FrontJournal編集部より

AIの話題は、どれほど賢く答えるかに集まりがちです。Digeonが向き合っているのは、答えが出たあとに残る入力や照合といった、業務の最後のひと手間です。現場の担当者が毎日繰り返す作業にこそ、AIが働く余地があります。

注目したいのは、AIを後から足すのではなく、基幹システムの設計に最初から組み込むという順番です。その土台を支えるのが、部品を積み上げる開発手法です。受託開発を5期にわたり柱としたあとに自社サービスを加えた歩みにも、この会社らしさが表れています。

神戸で生まれた、AIエージェントが働く基幹システムが、全国の企業の現場へ広がることを期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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