2026.09.24 理化学研究所 元発表:2026.09.23

理化学研究所ら、ゲノムの壊れやすい場所を1細胞解析で5分類

ニュース紹介

「ゲノムの「壊れやすい場所」を一網打尽に」

理化学研究所生命機能科学研究センターの平谷伊智朗チームディレクター(神戸大学大学院医学系研究科客員教授)とジョティヴァナン・エルマライ研修生(神戸大学大学院医学研究科博士課程)の研究チームは、独自に開発した1細胞全ゲノムDNA複製解析法「scRepli-seq」を用いて、哺乳類ゲノムの壊れやすい領域を網羅的に解析したと発表しました。

従来の解析法は、多くの細胞で繰り返し起きる染色体切断は捉えやすい一方、一部の細胞でしか起きない低頻度の切断を捉えることは困難でした。研究チームはヒトのがん細胞に複製ストレスを与え、1細胞ごとのDNAコピー数の変化から切断部位を割り出しました。

検出した切断の約半数は既知の染色体脆弱部位(CFS)に当たり、残りは従来法で捉えられていなかった部位でした。研究チームは、CFSとの重なりの有無とDNA複製のタイミングから切断部位を五つのクラスに分類し、クラスごとに切断の生じ方が異なることを示しました。本成果は『Nature Communications』オンライン版に9月23日付で掲載されます。

出典:理化学研究所 2026年9月23日 プレスリリース
https://www.riken.jp/press/2026/20260923_1/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

細胞は分裂の前に、ゲノム全体のDNAをコピー(複製)します。この作業が遅れたり止まったりする状態を複製ストレスと呼び、染色体が切れる原因になります。

切れやすい場所の代表が染色体脆弱部位(CFS)です。CFSにはFHITWWOXといった大きな遺伝子が含まれ、多くのがんでこれらの領域の欠失が報告されています。そのため、どこがなぜ切れやすいのかは、がん研究の基本的な問いの一つです。

①平均をとると少数の切断が埋もれる

従来の解析は、数百万個の細胞のデータを平均して切断部位を探す方法が中心でした。多くの細胞で繰り返し切れる場所は見つかりますが、一部の細胞でしか切れない場所は平均の中に埋もれます

そのため、既知のCFSが切れやすい場所の全体像なのか、ほかにも低頻度の弱い場所があるのかは分かっていませんでした。

②1細胞ずつ見て切れ方を5種類に分ける

研究チームはscRepli-seqで1細胞ずつDNAコピー数を調べ、コピー数が変わる境目を切断部位としました。既知のCFSに加えて、これまで見逃されていた低頻度の切断部位を多数捉えています。

切断部位は、長い遺伝子の近くにあるCFS型のほか、複製タイミングが急に変わる領域に多い型や、転写とDNA複製の衝突に関わる型などに分かれました。転写を止める薬への反応もクラスごとに異なっていました。五つのクラスは、がん細胞以外のヒト培養細胞2種類とマウスES細胞でも確認されています。

編集部からひとこと

染色体の切れやすさを「決まった弱点が数か所ある」ではなく「性質の違う弱点が何種類もある」と捉え直した研究です。平均値では見えなかった少数派を数えるという、1細胞解析の強みがそのまま成果になっています。切断の分子機構の全容は今後の課題とされており、クラスごとの仕組みの解明が次の焦点になりそうです。

FrontJournal編集部

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本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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