株式会社Zene(ゼネ)|「唾液のゲノム解析」を研究

株式会社Zene(ゼネ)

Zene「唾液のゲノム解析」を研究|研究領域=唾液のゲノムを解析する技術/強み=発症前の体質を数値で示す/将来性=個別化予防を社会へ広げる

企業紹介|株式会社Zeneとは?

発症する前に体質の違いを把握し、予防へ活かす取り組みが注目されています。株式会社Zeneは、東京発の、医療・ヘルスケア系ディープテック企業です。北海道大学病院や東京大学と共同研究を重ね、日本人のデータに基づく解析を進めてきました。唾液のゲノム(細胞がもつ遺伝情報の全体)をポリジェニックリスクスコアで解析し、生活習慣病やがんの生涯発症リスクを数値で示す「Zene360」を開発しています。

キーワード「PRS」(ポリジェニックリスクスコア)

PRSは、多数の一塩基多型(SNP)の影響を統合し、病気の発症リスクを一つの点数で表す解析手法です。特徴は、多くの遺伝子がわずかずつ関与する生活習慣病やがんでも、体質の傾向を比較できる点です。点数は、唾液から読み取ったゲノムを疾患ごとの研究データと照合して算出します。Zeneはこの点数を保健事業で扱える形に整え、企業や健康保険組合へ提供しています。

市場課題|体質差が予防に生かされにくい

現状の健康診断の課題|現状は、健診が一律で重点を絞りにくい/発症するまで体質が見えにくい/年齢別の健診で重点を絞りにくい

体質が見えず予防が後手に回る

生活習慣病やがんは、症状が出てから見つかることが多く、予防の開始が遅れがちです。これらの病気には多数の遺伝子が関与するとされ、単一の遺伝子を調べる検査では傾向を捉えにくくなります。その結果、重症化してから治療を始める例も少なくありません

年齢別の健診は重点を絞りにくい

年齢と性別で対象と項目を決める健康診断では、体質差に応じた検査や指導の重点化が難しくなります。同じ年齢層なら、リスクの高い人にも低い人にも同じ案内が届き、優先順位をつける材料が乏しい状態です。対策型検診の受診率は約半数にとどまり、日本総合健診医学会でもリスク層別化による見直しが論じられています。

他にも、遺伝情報という機微なデータを安全に扱う情報管理体制の整備、検査結果を生活改善へつなげる支援の設計、日本人集団のデータが少ない疾患での解析精度の確保、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 対策型検診自治体や健康保険組合が対象者を定めて実施する検診。集団全体の死亡率を下げる目的で、対象と項目を統一して行う。
  • リスク層別化発症リスクの高さで対象者を分け、検査の頻度や方法を変える考え方。医療資源を高リスク者へ重点的に配分できる。

Zeneの強み|唾液のゲノム解析で体質を数値化

Zeneが「唾液のゲノム解析」を開発|今後は、唾液解析で発症前の予防が可能に/唾液の解析で発症前に数値化/リスク順に保健指導を重点化

唾液の解析で発症前に数値化

「Zene360」は、自宅で採取した唾液からゲノムを読み取り、発症リスクを数値で示す解析サービスです。従来の遺伝子検査は、影響の大きい単一の遺伝子を調べる方式が中心でした。同社は多数のSNPを統合するPRSに機械学習を組み合わせて解析しています。対象は、2型糖尿病や心疾患、認知症、肺がん・大腸がん・乳がんなど10疾患です。2026年8月にはベーシック解析を全面刷新し、約280項目それぞれについて、根拠となる研究の規模や日本人データの有無を示しました。

リスク順に保健指導を重点化

体質リスクが数値で示されれば、高い人から順に保健指導を重点化できます。従来の保健指導は全員へ同じ助言を届ける形になりやすく、受け手が自分事と捉えにくい課題がありました。同社は解析結果に医師への相談やセミナーを組み合わせ、特定保健指導につないでいます。2026年2月の第41回日本栄養治療学会では、松下記念病院の医師らによるランダム化比較試験(対象者を無作為に分けて効果を比べる試験)の結果が発表されました。遺伝情報を提示した群では、提示しなかった群より1日の歩数が約932歩多く、脂質の摂取量も少ないという差が示されています。

FrontJournalの解説
  • 一塩基多型(SNP)ゲノムのなかで一つの塩基が個人ごとに異なる部位。体質や病気へのなりやすさの個人差を生む要因の一つ。
  • 機械学習大量のデータから規則性を統計的に学び、予測へ用いる技術。変数の多いゲノムデータの解析に向く。
  • 特定保健指導健康診断で生活習慣病のリスクが高いと判定された人へ、保険者が行う面談や助言の制度。

ゲノム解析の未来|個別化された予防へ

予防に活かすゲノム解析が変える未来|職場の健康管理で活用が広がる/医療機関と結び行動変容を促す/日本人のデータが創薬を支える

職場の健康管理で活用が広がる

「Zene360」の利用は、全国の健康保険組合へ広がっています。2025年3月時点で、その約18%にあたる約250組合と契約し、累計の検査人数は2.3万人を超えました。2024年6月からは、株式会社QOLeadの健康支援サービス「Healstep」でも提供が始まりました。働く世代が職場で体質リスクを把握できる機会が増えています。

医療機関と結び行動変容を促す

同社は次に、健診センターや診療所と結ぶプラットフォームの構築へ進みます。2024年度には、東京都中小企業振興公社の支援事業に、新たな医療プラットフォームの創出構想が採択されました。医療機関とシステムを連携させ、受診者の行動変容と疾病予防を促す狙いです。乳がん検診では年齢一律の設計を見直す議論が進み、体質リスクの数値は対象を絞る判断材料になるとみられています。

創薬を支える基盤を目指す

同社が目指すのは、蓄積したゲノムデータを創薬(新薬の開発)研究へ活かす基盤です。2026年6月には、株式会社JMDC、マルホ株式会社と共同で、遺伝子検査データとレセプトデータから肌質など皮膚の特性の遺伝的要因を探索するプロジェクトを開始しました。同社は、処方薬の種類や使用期間をもとに対象集団を実態に近く定義し、解析のばらつきを抑える工程を担います。日本人集団のデータが増えるほど解析の精度は高まり、新たな創薬仮説の創出につながるとされています。

FrontJournalの解説
  • レセプトデータ医療機関が保険者へ請求する診療報酬明細書の情報。傷病名や処方の履歴を含み、大規模な統計解析に用いる。
  • 行動変容保健指導などをきっかけに、運動や食事といった生活習慣が実際に変わること。予防事業の成果指標に用いる。

会社概要|株式会社Zeneの事業内容・設立背景

ヤフー出身の経営陣が創業

株式会社Zeneは、2020年2月10日に東京都千代田区で設立されました。中心となったのは、ヤフー株式会社出身で、デジタルヘルス事業に携わってきた井上昌洋氏です。取締役の有地正太氏も同じくヤフー出身で、両氏はゲノム解析を日常の健康管理へ広げる目的で創業しました。2021年2月には「Zene360」を健康保険組合と企業向けにリリースしています。

大学病院と連携し認定も取得

研究機関との共同研究が、解析の精度と信頼性を支えています。2024年4月には北海道大学病院パーソナルヘルスセンターと連携し、同院の専門医の監修のもと、認知症・高血圧症・糖尿病を対象とする解析サービスを始めています。東京大学とは日本人の祖先解析で共同研究を進めてきました。2025年6月には、遺伝情報取扱協会の「遺伝情報適正取扱認定(スタンダード)」を取得しています。研究拠点は、北海道大学発スタートアップが集まるインキュベーション施設(起業を支援する共同オフィス)「北大ビジネス・スプリング」(札幌市北区)です。

累計約4億円の調達を実施

累計の調達額は、約4.01億円(2024年3月時点・借入を含む)に達しています。2021年3月には、シード期にインキュベイトファンドから5,000万円を受け入れました。2024年3月にはSpiral Capital株式会社とパナソニックくらしビジョナリーファンドから調達し、資金は情報管理体制の強化と営業体制の拡大に充てています。2025年10月には、ふくしまメディカルヒルズ投資事業有限責任組合からも投資を受けました。

会社情報

会社名株式会社Zene
所在地東京都千代田区大手町1-5-1 大手町ファーストスクエア イーストタワー4階。札幌支社:札幌市中央区。研究拠点:北大ビジネス・スプリング(札幌市北区)。
設立2020年2月10日
代表代表取締役 井上 昌洋。取締役 有地 正太。
資本金9,240万円(2025年11月時点・準備金を含む)
調達累計 約4.01億円(2024年3月時点・借入を含む)
投資家インキュベイトファンド、Spiral Capital、パナソニックくらしビジョナリーファンド、ふくしまメディカルヒルズ投資事業有限責任組合 ほか
連携北海道大学病院 パーソナルヘルスセンター(2024年4月から)。東京大学(日本人の祖先解析)。神奈川県立保健福祉大学(行動変容の研究)。株式会社JMDC・マルホ株式会社(皮膚の特性に関わる遺伝的要因の探索、2026年6月から)。
技術領域ゲノム解析。ポリジェニックリスクスコア(PRS)。一塩基多型(SNP)解析。機械学習。
採択東京都中小企業振興公社「令和6年度デジタル技術を活用した先進的サービス創出支援事業」。遺伝情報取扱協会「遺伝情報適正取扱認定(スタンダード)」(2025年6月)。
URLhttps://www.zene.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

健康診断を毎年受けても、どの病気になりやすい体質かまでは分かりにくいものです。Zeneは、唾液という身近な検体からゲノムを読み取り、傾向を数値へ置き換えてきました。見えにくかった体質を比較できる形にした点に、予防医療の入り口を広げる意味があります。

とりわけ印象的なのは、検査結果を届けて終わりにせず、行動が変わるところまで検証している点です。学会で発表された比較試験では、遺伝情報を受け取った人の歩数が増えました。結果を示すだけで終えない設計に、予防を定着させる姿勢が表れています。

唾液から始まる小さな検査が、医療を一律から個別へと近づけていきます。その静かな変化に期待しています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。