株式会社フェリクス(FELIQS)|「フェロトーシス」を研究

株式会社フェリクス(FELIQS)

フェリクス「フェロトーシス」を研究|研究領域=脂質の酸化が、招く細胞死を研究/強み=酸化脂質を捉えて、創薬の基盤を築く/将来性=治療から予防へ、選択肢を広げる

企業紹介|株式会社フェリクスとは?

早産児の網膜を守る標的として、注目を集める「フェロトーシス」。株式会社フェリクスは、その「フェロトーシス」の制御に取り組む、九州大学発の創薬系ディープテックスタートアップです。未熟児網膜症の予防を目指す「FLQ-101」をはじめ、眼の疾患に向けた低分子医薬品の開発を進めています。

キーワード「フェロトーシス」

「フェロトーシス」は、細胞の膜にある脂質が酸化して蓄積することで起こる、鉄が関わる細胞死です。特徴は、酸化した脂質の生成を抑えることで、この細胞死を抑えられる点にあります。新生児医療眼科の現場では、網膜の細胞が失われる前に手を打つ道がひらけます。

市場課題|未熟児網膜症は小児失明の主因

現状の未熟児網膜症の課題|現状は、発症後の治療で予防が難しい/早産児の網膜で、異常な血管が増加/レーザーの治療は、近視が残る恐れ

早産児の網膜症が失明を招く

日本の小児の失明で最も多い原因が、未熟児網膜症です。在胎週数が短く、出生体重が小さいほど発症しやすく、網膜の血管が正常に伸びないまま異常な血管が増えます。重症化すれば網膜剥離に至り、視力が大きく損なわれます。

治療は発症後で予防が難しい

現在の治療は網膜症が起きてから行うものが中心で、発症そのものを防ぐ手立ては限られています。レーザー光凝固術は進行を抑えられる一方、鎮静や挿管を伴い、強い近視や周辺の視野の欠損が残りやすい点が課題です。眼球の内部へ注射する抗VEGF薬は体への負担が軽いとされる一方、レーザーより再発が起こりやすい点が議論されています。

未熟児網膜症の課題は、治療だけではありません。他にも、体重の特に小さい児の生存率が上がったことで増えつつある重症例、眼底検査を担える医師の地域差、薬の量や時期の判断が施設ごとに分かれる点、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 未熟児網膜症早産で生まれた児の網膜で血管が正常に伸びず、異常な血管が増える疾患。重症化すると網膜剥離を起こし、失明に至ることがある。
  • 抗VEGF薬血管の新生を促すタンパク質の働きを抑える薬。眼球の内部へ注射し、異常な血管の増殖を止める目的で使われている。

フェリクスの強み|フェロトーシスを標的

フェリクスが「FLQ-101」を開発|今後は、酸化脂質を抑え発症の予防が可能に/脂質の酸化を抑え、異常な血管を防ぐ/予防を狙う、低分子薬を開発

酸化脂質を抑え網膜を守る

従来の治療は、異常な血管が増えてから取り除く考え方が中心で、網膜の細胞が傷ついたあとの対応になります。

同社が標的に据えるのは、脂質の酸化によって起こる細胞死のフェロトーシスです。早産で生まれた児では子宮の中から環境が急に変わり、網膜は酸素の量が変動しやすい状態に置かれます。そこでは細胞の膜にある脂質が酸化しやすく、酸化した脂質が細胞の傷害と異常な血管新生の引き金になるとされています。九州大学大学院薬学研究院では、脂質から生じるラジカル(反応性が高く不安定な分子)を捉える手法が確立されてきました。同社はこの手法を応用し、フェロトーシスを抑える低分子を探し出す創薬スクリーニング基盤を構築しました。

予防を狙う低分子薬を開発

発症してからの治療では、視力への影響を抑えきることが難しい場合もあります。

同社が開発する「FLQ-101」は、酸化脂質を抑えることで未熟児網膜症の予防を狙う低分子医薬品です。網膜で正常な血管が伸びるのを促しつつ、炎症と異常な血管新生を抑えることを狙った作用機序です。投与の方法は、静脈内投与と経口投与の両方が検討されています。新生児が対象となるため、体への負担を抑えた設計が前提です。狙いは、増えた血管を処置することではなく、細胞が失われる前の段階で介入することにあります。

FrontJournalの解説
  • フェロトーシス脂質の酸化物が細胞の中にたまることで起こる、鉄に依存した細胞死。がんや神経の疾患との関わりも研究されている。
  • 酸化脂質細胞の膜などにある脂質が酸素と反応してできる物質。たまると細胞を傷つけ、炎症や細胞死の引き金になるとされる。
  • 低分子医薬品分子の大きさが小さい医薬品。細胞の内部まで届きやすく、注射だけでなく経口の投与にも向くという特徴がある。

フェロトーシスの未来|眼科と新生児医療へ

フェロトーシスが変える未来|眼の疾患を中心に、応用が広がる/米国で臨床試験、早産児が対象/眼の表面にできる、翼状片にも点眼薬/加齢黄斑変性へ、研究を広げる

米国で臨床試験が進行

「FLQ-101」の開発は、米国での臨床試験の段階に入っています。試験は米国テキサス州の医療機関で行われ、在胎26週0日から27週6日で生まれ、出生体重が650g以上の早産児を対象とします。用量は低いものから高いものまで段階的に設定し、安全性と体内での動き、薬の作用を確かめる計画です。目標の登録数は18例で、主要な評価項目には有害事象の頻度が置かれています。

翼状片の点眼薬を開発

同社は、酸化脂質を標的とする考え方を眼の表面の疾患へも広げ、翼状片に対して点眼で投与する「FLQ-103」を開発しています。翼状片は結膜の組織が角膜へ入り込む疾患で、進行すると乱視や視力の低下を招きます。「FLQ-103」は、いまは探索と研究の段階です。点眼で進行を抑えられれば、手術以外の選択肢が広がります。

加齢黄斑変性へ拡大を目指す

さらに同社は、加齢黄斑変性を対象とする「FLQ-105」で、候補となる化合物を絞り込むリード最適化を進めています。加齢黄斑変性は、網膜の中心にある黄斑が加齢とともに傷み、視野の中心が見えにくくなる疾患です。酸化脂質が関わる病態は眼にとどまらず、神経の疾患などにも広がるとされています。同社は、フェロトーシスを標的とする創薬をこれらの領域へ広げることを目指しています。

FrontJournalの解説
  • 翼状片白目をおおう結膜の組織が、黒目の角膜へ三角形に入り込む疾患。進行すると乱視が強まり、視力が下がることがある。
  • 加齢黄斑変性網膜の中心にある黄斑が傷む疾患。日本では高齢化とともに患者が増えるとされ、読み書きに必要な中心の視力が下がる。

会社概要|フェリクスの事業内容・設立背景

九州大学の研究から創業

株式会社フェリクスは、九州大学の研究成果を医薬品として実用化するため、2019年2月に福岡県久留米市で設立されました。創業の基盤となったのは、九州大学大学院薬学研究院の山田健一主幹教授が進めてきた酸化脂質とフェロトーシスの研究です。2025年には、リソソーム(細胞の中で不要な物質を分解する小器官)で脂質が酸化してフェロトーシスが起こる仕組みが、「Nature Communications」(自然科学の専門誌)で報告されました。代表取締役は國信 健一郎が務めています。

米国で希少疾病薬に指定

米国食品医薬品局(FDA)は2024年、「FLQ-101」を「ファストトラック」と「希少疾病用医薬品」に指定しました。ファストトラックは重い疾患の治療薬の審査を早める制度で、希少疾病用医薬品は患者数の少ない疾患を対象とする指定です。同社は米国に法人を置き、現地の医療機関と組んで臨床試験を実施しています。

12.5億円の調達を完了

同社は2025年7月、シリーズAとして12.5億円の調達を完了しました。シリーズAは、研究の成果を事業として本格的に前へ進める段階の資金調達にあたります。引受先には、米国の製薬企業、Beyond Next Ventures、慶應イノベーション・イニシアティブ、三菱UFJキャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズ、国立研究開発法人科学技術振興機構という複数の投資家が並びます。

会社情報

会社名株式会社フェリクス(FELIQS Corporation)
所在地福岡県久留米市百年公園1番1号(久留米リサーチ・パーク)。米国拠点=10900 NE 4th Street, Suite 2300, Bellevue, WA 98004
設立2019年2月
代表代表取締役 國信 健一郎
資本金5,000万円
調達2025年7月にシリーズAで12.5億円(第三者割当増資)
投資家米国の製薬企業、Beyond Next Ventures、慶應イノベーション・イニシアティブ、三菱UFJキャピタル、FFGベンチャービジネスパートナーズ、国立研究開発法人科学技術振興機構
技術領域酸化脂質とフェロトーシスを標的とする創薬スクリーニング。未熟児網膜症の予防を目指す「FLQ-101」、翼状片の「FLQ-103」、加齢黄斑変性の「FLQ-105」等の研究開発
URLhttps://feliqs.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

未熟児網膜症は、生まれてまもない時期に視力の土台が損なわれる疾患です。同社が向き合っているのは、その入り口にあたる細胞が失われる過程そのものでした。酸化した脂質を抑えるという一点から、眼科の複数の疾患へ道が伸びています。

目を引くのは、これが治療ではなく予防を狙う薬だという点です。発症してから取り除くのではなく、失われる前に守るという発想は、患者にとっての意味を大きく変えます。基礎研究で積み上げた酸化脂質を捉える技術が、そのまま創薬の入り口になりました。

小さな体で治療を受ける子どもたちの視力が、少しでも多く守られる日を期待しています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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