C4U株式会社|狙った遺伝子の上流側を広く削るゲノム編集技術CRISPR-Cas3を開発する大阪大学発ディープテック

C4U株式会社(シーフォーユー)

C4U「CRISPR-Cas3」を研究|研究領域=ゲノムを狙って書き換える技術/強み=狙った位置からまとめて削れる/将来性=医療から農業や環境へ広がる

企業紹介|C4Uとは?

狙った遺伝子の周辺まで、まとめて削り取れるゲノム編集ツール「CRISPR-Cas3」。C4Uは、その「CRISPR-Cas3」の社会実装を目指す、大阪大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。製薬や診断薬、試薬、農業や環境の企業へゲノム編集の実施権を許諾し、共同研究も進めています。

キーワード「CRISPR-Cas3」

「CRISPR-Cas3」は、大腸菌が持つ免疫の仕組みを応用したゲノム編集ツールです。特徴は、狙った配列の上流側(標的を見分ける目印となる配列の側)を、数百から数千塩基にわたって一方向へ削り取れる点にあります。大きな欠損を伴う遺伝性疾患の治療研究や、動植物の品種改良の現場で活用が進みます。

市場課題|遺伝性疾患は治療手段が限られる

現状のゲノム編集の課題|現状は、ゲノム編集で削れる幅が狭い/遺伝性疾患は根治的治療が乏しい/従来の編集は削れる範囲が狭い

遺伝性疾患は根治的治療が乏しい

患者数の少ない遺伝性疾患の多くで、原因を取り除く根治的な治療が乏しい状況が続いています。原因となる変異は疾患ごとに異なり、治療は症状を和らげる対症療法が中心です。原因そのものを取り除く治療法が広がらないかぎり、患者は生涯にわたって症状の管理を続けることになります。

従来の編集は削れる範囲が狭い

遺伝子を書き換えるゲノム編集でも、広い範囲が失われた変異は扱いにくい面があります。広く使われてきた「CRISPR-Cas9」は二本鎖を一か所で切る方式のため、一度に削り取れる範囲が限られるからです。加えて、標的以外の場所を書き換えるオフターゲット変異への懸念から、医療に使うには高い特異性の検証も求められています。

他にも、患者数が少なく開発費を回収しにくい採算の壁、ゲノム編集ツールを届ける運搬手段の少なさ、海外に集中する基本特許の使用条件、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • オフターゲット変異ゲノム編集の際に、狙った場所以外の配列が書き換わってしまう現象を指す。医療で使う場合は安全性に直結するため、どの程度起こるかの検証が実用化の前提になる。

C4Uの強み|CRISPR-Cas3

C4Uが「CRISPR-Cas3」を開発|今後は、広く削り変異の除去が可能に/狙った位置からまとめて削る/27塩基を認識し狙いを外しにくい

上流側を広く削り変異を除く

失われた領域が広い変異を扱うには、一か所を切る方式では、取り除きたい範囲の両端に切断点を2か所別々に設計する必要があり、工程が増えるといわれています。

「CRISPR-Cas3」は、大腸菌が持つクラス1のType I(複数のタンパク質が組で働く型)のCRISPRシステムを利用したゲノム編集ツールです。標的を見つけると、ヘリカーゼ(二本鎖をほどく酵素)の働きで鎖をほどきながら、上流側へ順に切り進めます。狙った位置から数百から数千塩基にわたって一度に削り取れる点が特徴です。遺伝子は塩基(DNAの部品)の並びを3つずつ読み取って働くため、変異を含む領域をまとめて取り除き、読み取りの区切りをそろえられれば、正しく読み取られる状態へ戻せる場合があります。

27塩基の認識で特異性が高い

狙った場所以外が書き換わるオフターゲット変異は、ゲノム編集を医療へ用いるうえで長く検証の対象でした。

標的を見分けるcrRNA(案内役のRNA)は27塩基を認識し、「CRISPR-Cas9」の20塩基より長い設計です。認識する塩基が7つ多いぶん、同じ並びが偶然一致する確率は下がります。crRNAは単独では働かず、複数のタンパク質が組んだCascade(カスケード=標的を探す複合体)に収まってはじめて配列を照合します。照合が成立するとCas3が呼び寄せられ、そこから切断が始まる仕組みです。全ゲノムと100か所以上の類似領域の検証では、オフターゲット変異は確認されなかったといわれています。

FrontJournalの解説
  • crRNAゲノムの狙った配列までタンパク質を導く、案内役の短いRNAを指す。認識する塩基の数が多いほど、似た配列を取り違える確率は下がる。

CRISPR-Cas3の未来|医療から農業へ

広く削るゲノム編集が変える未来|医療から農業まで、使われる場面が広がる/試薬や実験動物にすでに使われる/細胞医薬と遺伝子治療へ応用/農業や環境へも展開を目指す

試薬と実験動物で実用化

「CRISPR-Cas3」は、研究の現場で使う試薬や実験動物としてすでに実用化されています。タウンズとは2021年6月に、新型コロナウイルスの診断薬を共同開発する契約を結びました。同年11月にはニッポンジーンと、この技術を用いた研究用試薬の開発と販売で契約を結んでいます。日本クレアとは重度免疫不全ラット(免疫の機能をほとんど持たないラット)の生産と販売で提携しており、医療の周辺領域から実装が始まっています。

細胞医薬と遺伝子治療へ応用

細胞医薬と遺伝子治療への応用に向けた研究が進んでいます。感染症を繰り返す原発性免疫不全症では、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、広島大学などと遺伝子治療を探索しています。固形がんを対象に、他家CAR-T細胞療法(他者由来の免疫細胞から製造する薬)でノイルイミューン・バイオテックと共同研究とライセンスの契約を結びました。中枢神経系疾患では住友ファーマなどが設立したRACTHERAへ技術を提供するほか、京都大学iPS細胞研究所とはデュシェンヌ型筋ジストロフィーの探索研究を進めています。

非医療分野への展開を目指す

同社が目指すのは、医療にとどまらない産業全体への展開です。植物分野ではインプランタイノベーションズと、微細藻類ではユーグレナと共同研究を進めてきました。ユーグレナとは研究の成功を経て、2026年1月に実施権の許諾契約を結んでいます。食料や環境の分野まで含め、国産のゲノム編集基盤として広く使われる状態を目指します。

会社概要|C4U株式会社の事業内容

大阪大学の研究から事業化

C4Uは、2018年3月に大阪府豊中市で設立されました。基盤となったのは、大阪大学で動物のゲノム編集を研究してきた真下知士氏らが見いだした「CRISPR-Cas3」の成果です。2019年3月に基本特許が成立し、同年5月には大阪大学のキャンパス内にある吹田市のテクノアライアンスC棟へ本社を移しました。代表取締役には、2020年8月に平井昭光氏が就任しました。2024年5月には東京・新木場へ東京ラボを開設しています。

独占実施権と特許網を確保

事業の土台は、大学から受けた独占実施権にあります。2019年10月に大阪大学と独占実施許諾契約を結び、「CRISPR-Cas3」の特許群を全世界で独占的に使う立場を得ました。特許は日本・米国・中国・欧州などで登録が進んでいます。共同研究は、東京大学医科学研究所や理化学研究所、京都大学、国立成育医療研究センター、広島大学など複数の研究機関に広がります。2025年6月にはAMEDの「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」へ採択され、2026年5月にはステージゲート審査(中間審査)を通過しました。

シリーズA・Bで約24億円

資金は、設立の年から段階的に調達してきました。2018年8月に大阪大学ベンチャーキャピタルから調達しました。2021年8月にはシリーズAで総額9.3億円を集めています。2023年5月にはシリーズBで総額15億円を調達し、公表されている2つのラウンドの合計は約24億円です(2023年5月時点)。調達した資金は、研究開発体制の強化と国内外への技術展開に充てられています。

会社情報

会社名C4U株式会社(C4U Corporation)
所在地大阪府吹田市山田丘2番8号 テクノアライアンスC棟7階。東京ラボは東京都江東区新木場1-17-8 三井リンクラボ新木場2
設立2018年3月(大阪府豊中市。2019年5月に吹田市へ移転)
代表平井 昭光(代表取締役・2020年8月就任)
従業員23名(2024年12月末時点)
調達シリーズA 総額9.3億円(2021年8月)、シリーズB 総額15億円(2023年5月)。合計 約24億円(2023年5月時点)。引受先は大阪大学ベンチャーキャピタル、ニッセイ・キャピタル、三菱UFJキャピタル、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、みずほライフサイエンス、科学技術振興機構、SMBCベンチャーキャピタル、大和日台バイオベンチャーファンドほか
技術領域ゲノム編集、CRISPR-Cas3、遺伝子治療、細胞医薬、診断薬、研究用試薬、実験動物、植物・微細藻類のゲノム編集
連携東京大学医科学研究所、大阪大学、理化学研究所、京都大学、国立成育医療研究センター、広島大学ほか。事業提携はタウンズ、ニッポンジーン、日本クレア、リジェネフロ、ノイルイミューン・バイオテック、RACTHERA、インプランタイノベーションズ、ユーグレナほか
採択AMED「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」(2025年6月採択・2026年5月にステージゲート審査(中間審査)を通過)。J-Startup KANSAI 2025に選定
URLhttps://www.crispr4u.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

ゲノム編集という言葉は、この10年で一般の報道でも見かけるようになりました。ただし実際に使われてきた道具は、その多くが海外で生まれた技術です。C4Uが手がける「CRISPR-Cas3」は、日本の研究室で見いだされたゲノム編集の基盤技術です。

興味深いのは、この技術が得意とする仕事の形です。狙った一点を精密に直すのではなく、上流側へ向かって広く削ります。単なる代替品ではなく、既存の道具では届きにくかった領域を受け持つ技術として位置づけられています。

試薬や実験動物として現場に入り、細胞医薬や農業へと裾野が広がってきました。国産の基盤技術が世界の研究室で当たり前に使われる日を、楽しみに待ちたいと思います。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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