フィールドワーカーズ「マダニ判別AI」を研究|マダニの画像を映すノートパソコンとカメラ、マダニのイラスト

株式会社フィールドワーカーズ

フィールドワーカーズ「マダニ判別AI」を研究|研究領域=画像から・マダニの種類を判別/強み=専門家の判定を・AIが学習/将来性=感染症対策や・畜産の現場へ

企業紹介|株式会社フィールドワーカーズとは?

マダニの画像からその種類を見分け、感染症のリスクを把握するための技術として、研究が進められている「マダニ判別AI」。株式会社フィールドワーカーズは、その社会実装を目指す、長崎大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。蚊やマダニを採集して種類を確かめる調査の知見をもとに、研究機材の製造とAIの開発に取り組んでいます。

キーワード「マダニ判別AI」

「マダニ判別AI」は、マダニを写した画像から、その種類を判別する人工知能です。SFTSウイルスを媒介するマダニの種類は限られており、種類の違いが感染の危険に関わるため、どこにどの種類がいるかの把握が感染症対策の基礎になります。判別には、深層学習(画像などの特徴を多段階で学習する機械学習の手法)の技術が使われます。

市場課題|マダニ対策が要る地域が広がる一方、種類の判別には専門家の目が欠かせない

現状のマダニ対策の課題|現状は、地域が広がる一方で判別に手間がかかる|マダニ感染症の・地域が拡大/専門家の判別に・手間がかかる

マダニ感染症の地域が拡大

マダニが媒介するSFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、国内で報告される地域が広がっている感染症です。2025年には関東地方と北海道で感染したと推定される患者が初めて報告され、国内での致命率(感染者のうち亡くなった人の割合)は27%とされています。感染の起こりうる範囲が広がれば、各地でマダニの種類を確かめて危険を見積もる必要が増えます。

専門家の判別に手間がかかる

マダニの種類を見分ける同定は、専門家の観察を必要とする作業です。経験を積んだ専門家にとっても、マダニの同定は手間のかかる作業とされています。このため、各地で集めたマダニの種類を速く確かめることが難しい状況です。

他にも、温暖化の影響もあって全国へ広がるマダニ感染症への備え、野外での調査技術の次世代への継承、蚊が媒介する感染症への対策、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • SFTS重症熱性血小板減少症候群の略称で、SFTSウイルスによる感染症である。主にウイルスを持つマダニに咬まれることで感染する。発熱などの症状に加え、血液中の血小板が減少する。

フィールドワーカーズの強み|「マダニ判別AI」を研究

フィールドワーカーズが「マダニ判別AI」を研究|今後は、画像による種類の判別が可能に|画像から・種類を判別/専門家の判定を・AIが学習

画像から種類を判別

従来の同定は、採集した個体を専門家が観察して種類を決める方法で、結果が出るまでに専門家の手を要します。

同社が研究するのは、マダニの画像から種類を判別するAIです。判別には、深層学習のモデル「ResNet-50」(画像認識に広く使われるAIモデルの一つ)を使います。評価の対象は、長崎県と佐賀県で採集したマダニです。画像から種類を判別するモデルを開発し、その性能を確かめてきました。実用化すれば、専門家がいない現場でも種類を早く把握できるようになり、感染症の危険を見積もる調査を各地へ広げやすくなります。

専門家の判定をAIが学習

画像から種類を判別するAIは、正しい種類の名前(正解ラベル)が付いた画像から特徴を学ぶため、正解の確かな画像を大量にそろえなければ精度が上がりません。

同社の判別AIは、種類の名前が付いたマダニの画像を学習させて開発中です。強みは、野外でマダニを採集する技術、専門家による同定、1万枚を超えるマダニの画像データです。画像に加工を加えて枚数を増やすデータ拡張では、精度の向上が報告されました。ただし概念実証の段階で、評価の数値は過大になりうる点が、今後の検証課題とされています。専門家の知見を取り入れたAIが同定を補えば、同定にかかる手間を減らせると期待されます。

FrontJournalの解説
  • データ拡張AIの学習に使う画像を、反転や明るさの変更といった加工で増やす手法である。元の画像が少なくても、多様な見え方を学習させられる。判別の精度を高める目的で使われる。

マダニ判別AIの未来|調査の道具から、判別を誰もが使える技術へ

身近なマダニ判別AIが変える未来|調査の道具から誰もが使える技術へ|研究用の機材を・製造販売/マダニ判別AIを・実用へ/判別の大衆化を・目指す

研究用の機材を製造販売

同社は、蚊やマダニの研究に使う機材を、研究者向けに販売してきました。3Dプリンターで研究機材を製造しているほか、蚊のような小型の昆虫を吸い込んで取り出す吸引排出装置の販売も手がけてきました。棒に固定した白い布を草の上で往復させてマダニを集めるフラッギング法の調査用スターターセットも、同社が販売してきた機材の一つです。

マダニ判別AIを実用へ

同社は、マダニ判別AIの実用化に向けた開発を続けています。開発では長崎県のAI企業であるLAplustの画像認識技術を活用しており、同社とLAplust、カンボジアのパスツール研究所による共同研究の成果は、2026年に論文として発表されました。2026年4月には「SusHi Tech Tokyo 2026」で、代表の星友矩氏が迅速なマダニの判別に向けた取り組みを紹介しています。研究で確かめた判別の仕組みを、現場で使える道具にするための開発段階です。

判別の大衆化を目指す

専門家でなくてもマダニの種類を見分けられるよう、同社はAIによる判別を広く普及させることを目指しています。マダニを見分けることは、感染症のリスクを見分けることにつながるからです。対象には、人の感染症対策に加えて、動物衛生や畜産の分野も見据えています。実現すれば、各地でマダニの分布を把握しやすくなり、ダニ媒介感染症の予防に役立つと期待されます。

会社概要|長崎大学熱帯医学研究所の研究から生まれたフィールドワーカーズ

熱帯医学研究所発として創業

株式会社フィールドワーカーズは、2022年6月6日に、長崎大学熱帯医学研究所発のスタートアップとして設立されました。創業者で代表取締役の星友矩氏は医学博士で、長崎大学熱帯医学研究所の助教を務める研究者です。同研究所は1942年から感染症の研究を続けてきた機関で、同社はその野外研究の知見をもとに、研究の技術や機材を新しくする事業に取り組んでいます。

受賞と海外での活動

同社は、2025年1月に中小機構(中小企業基盤整備機構)のアクセラレーションプログラム(起業家を約1年間支援する育成プログラム)「FASTAR」の10期生として、不妊化したオスの蚊を放って蚊を減らす事業構想を発表し、「ANAホールディングス賞」を受賞しました。シンガポールで開かれた国際シンポジウムでも、開発中のマダニ同定システムの発表を2025年8月に公表しています。2025年11月と2026年2月には、JICA(国際協力機構)が主催するマレーシアと中央アジアのビジネススタディツアーに参加しています。

事業の軸は機材と調査

事業の中心は、研究機材の製造販売と、衛生害虫(蚊やマダニのように感染症を運ぶ害虫)の調査です。機材の分野では、3Dプリンターによる研究機材の製造に加え、海外製の人工吸血装置の輸入販売にも対応する体制です。調査の分野では、蚊やマダニの調査や種類の同定、駆除に関する助言、飼育した個体の販売、野外調査のデータ解析を請け負っています。蚊やマダニに関する製品開発の相談に応じるコンサルティングや、科学書籍の出版も手がけています。

会社情報

会社名株式会社フィールドワーカーズ(FIELDWORKERS Co., Ltd.)
所在地長崎県長崎市文教町1番14号
設立2022年6月6日
代表代表取締役 星友矩(長崎大学熱帯医学研究所 助教)
事業研究関連商品の企画・製造・販売・輸出入。衛生動物の調査・同定・駆除の助言・飼育・販売。野外調査とデータ解析。蚊・マダニに関する製品開発のコンサルティング
技術領域画像認識AIによるマダニの種の判別。3Dプリンターによる研究機材の製造。蚊の大量飼育
連携長崎大学熱帯医学研究所。LAplust(画像認識AI)。Institut Pasteur du Cambodge(カンボジア・パスツール研究所)
採択中小機構 FASTAR 10期 ANAホールディングス賞(2025年)。JICA九州 マレーシア・ビジネススタディツアー(2025年)。JICAキルギス共和国事務所 カザフスタン・キルギス ビジネススタディツアー(2026年)
URLhttps://www.fieldworkers.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

「マダニを見分けること、それは、感染症のリスクを見分けること」。同社のこの考え方は、種類の同定という地道な作業が、感染症対策の入り口にあることを教えてくれます。専門家の目で行ってきた判別をAIで支え、専門家のいない現場にも広げようとする挑戦に、研究と社会をつなぐ発想を感じました。

社名には、生き物の住む野外で学ぶことを大切にする考えが込められています。白い布を草の上で往復させてマダニを集める昔ながらの調査と、画像を学習するAIが一つの会社の中で結びついている点に、この会社らしさが表れていると思います。3Dプリンターで研究機材を製造しながら判別AIも研究する事業の組み合わせも、野外の調査を重んじる姿勢の表れです。

野外で集めた一匹一匹の記録が、AIを通じて各地の感染症対策に役立つ日を楽しみに待ちたいと思います。長崎大学から生まれたほかの企業は、長崎大学発スタートアップ10選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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