株式会社サリバテックはだ液の代謝物からがんリスクを調べる検査を開発する慶應義塾大学発の企業

株式会社サリバテック

サリバテック「だ液がんリスク検査」を研究|研究領域=だ液に含まれる代謝物の解析/強み=数分の採取で複数のがん種を評価/将来性=がん以外の疾患へ応用を目指す

企業紹介|株式会社サリバテックとは?

体への負担を抑えてがんの早期発見につなげる技術として、注目を集める「だ液がんリスク検査」。株式会社サリバテックは、その社会実装を目指す、慶應義塾大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。検査サービス「サリバチェッカー」を、個人や法人の健康経営、医療機関へ提供しています。

キーワード「だ液がんリスク検査」

「だ液がんリスク検査」は、だ液に含まれる代謝物(体内で物質が変化する過程で生じる小さな分子)の量から、がんのリスクを調べるスクリーニング検査です。特徴は、ストローで約0.1ccのだ液を採るだけで、複数のがん種のリスクを一度に評価できる点にあります。土台にあるのは、慶應義塾大学先端生命科学研究所の質量分析の研究です。

市場課題|見つけにくい早期のがん

現状のがん検診の課題|受診率が伸びにくく発見が遅れる/膵がんは早期発見の手段が乏しい

受診率が伸びにくく発見が遅れる

日本のがん検診の受診率は、第4期がん対策推進基本計画が掲げる60%の目標に届いていません。2022年の国民生活基礎調査にもとづく推計では、胃・大腸・肺・乳房・子宮頸部のいずれも、この水準を下回りました。内視鏡や画像診断は時間と負担をともなうため受診が後回しになりやすく、症状が出てから見つかる例が増えかねません。

膵がんは早期発見の手段が乏しい

胃の後ろにある膵臓のがんは、早期に見つける手段が乏しいままです。指針として定められた検診がなく、市区町村の対策型検診の対象に含まれていません。症状が出にくく、見つかった時点で進行している例が多いため、5年生存率は低い水準にとどまるといわれています。

検査は部位ごとに分かれ、複数のがんを調べるには何度も受診する必要があります。他にも、医療機関へ足を運ぶ時間の確保、地域による受診環境の差、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 対策型検診市区町村などが住民に提供する公共政策としてのがん検診である。死亡率を下げる効果が科学的に確かめられた方法だけが国の指針に定められ、胃・大腸・肺・乳房・子宮頸部を対象とする。

サリバテックの強み|だ液の代謝物を解析

サリバテックが「だ液がんリスク検査」を開発|だ液の採取は数分で完了/代謝物の組み合わせで部位ごとに評価

だ液の採取は数分で完了

内視鏡画像診断は、装置を備えた医療機関でしか実施できず、絶食などの前処置も必要になります。

サリバチェッカー」は、ストローで約0.1ccのだ液を容器に採り、その中の代謝物を測る検査です。採取は数分間で終わり、針を使う採血も、体内へ器具を入れる操作も伴いません。キャピラリー電気泳動質量分析法(CE-MS、微量の物質を電気で分離し質量から特定する方法)を用いると、だ液の多数の代謝物を同時に測定できます。慶應義塾大学先端生命科学研究所の研究では、口腔がん・乳がん・膵がんの患者と健康な人でだ液の代謝物の量に違いがあることが、2010年に専門誌『Metabolomics』で報告されました。

複数のがん種を一度に評価

部位ごとに検査が分かれる方式では、膵がんのように指針の定まらない部位が検診のメニューに載らず、受ける機会そのものが限られていました。

同社は、だ液の代謝物の組み合わせからがんリスクを推定する学習モデルを構築しました。土台は、がんの患者と健康な人のだ液を比べた臨床研究のデータで、細胞の増殖に関わるポリアミンなどの違いを手掛かりにします。1回の採取で調べるのは、男性は肺がん・膵がん・胃がん・大腸がん・口腔がんの5種類、女性は乳がんを加えた6種類です。結果は確定診断ではなく、値が高い場合に精密検査へつなげる位置づけです。陰性でもがんがある例、陽性でもがんがない例が含まれます。

FrontJournalの解説
  • ポリアミン細胞の増殖に関わるアミノ酸由来の物質の総称である。がん細胞が活発に増える過程で量が変化するため、だ液に含まれる量の違いが、がんのリスクを見分ける手掛かりとして使われる。

だ液がんリスク検査の未来|地域と職域へ

だ液がんリスク検査が変える未来|自宅で採取し郵送で受けられる/鶴岡市と組み膵がんリスク検査/がん以外の疾患へ応用を目指す

自宅で採取し郵送で受けられる

「サリバチェッカー」は、自宅でだ液を採取して送る形で受けられます。申込みの窓口は、個人、福利厚生として導入する法人、そして医療機関です。個人向けの価格は26,400円(税込)からで、法人や医療機関を通して受ける場合は提供元ごとに異なります。健診や人間ドックの機会に合わせて受けられる点が、受診の入り口を広げています。

自治体へ膵がんリスク検査を提供

同社は、自治体と組んで地域住民へ検査を届ける取り組みを進めています。2026年2月には、本社を置く山形県鶴岡市と「地域住民の健康増進に関する包括連携協定」を締結しました。この協定にもとづき、鶴岡市民を対象とした膵がんリスク検査特別価格で提供しています。2026年8月17日からは、鶴岡市民を対象に、膵がんのリスク検査だけを単品で申し込めるメニューの提供も始まりました。

がん以外の疾患へ応用を目指す

同社が目指すのは、「だ液メタボローム解析(だ液に含まれる多数の代謝物をまとめて測る解析)をがん以外の疾患へ広げること」です。2026年9月には、慶應義塾大学医学部 内科学教室(リウマチ・膠原病)との共同研究を発表しました。この研究では、疾患ごとのだ液の代謝物の変化病態との関連を明らかにし、体への負担が小さい低侵襲な診断法の確立を目指します。膠原病(免疫の異常で全身の臓器に炎症が起きる病気の総称)のように、診断までに複数の医療機関を巡ることがある領域で、気づきを早める手立てとなることが期待されます。

会社概要|サリバテックの事業内容と設立背景

慶應義塾大学の研究から創業

株式会社サリバテックは、2013年12月に山形県鶴岡市で設立されました。母体となったのは、鶴岡市に拠点を置く慶應義塾大学先端生命科学研究所です。同研究所で進められてきたメタボローム解析の研究成果を、検査サービスとして社会へ届けることを目的としています。代表取締役CEOは砂村眞琴氏です。支社は、東京都新宿区の慶應義塾大学信濃町キャンパスに置いています。

採択・連携

同社は、保険会社や自治体との連携を通じて提供先を広げています。2017年9月には日本生命保険とヘルスケア事業で提携しました。2018年には同保険会社の職員1,000名を対象としたトライアルを実施し、検査結果の検証を通じて検査の精度を改善しました。2026年の動きは、鶴岡市との包括連携協定の締結と、慶應義塾大学医学部との共同研究の発表です。ほかにも、生命保険会社や電力会社などとの業務提携を重ねています。

保険会社からの出資を受け入れ

同社は2019年8月、日本生命保険とSOMPOホールディングスから出資を受け入れました。日本生命保険による出資は2億8,750万円で、株式の保有割合は5.63%です。収益源は、個人向けの販売と、健康経営に取り組む法人や医療機関への検査の提供です。

会社情報

会社名株式会社サリバテック(SalivaTech, Inc.)
所在地本社:山形県鶴岡市覚岸寺字水上246番地2。支社:東京都新宿区信濃町35 慶應義塾大学信濃町キャンパス
設立2013年12月3日
代表代表取締役CEO:砂村 眞琴。取締役:杉本 昌弘(だ液メタボローム解析の研究)
資本金1億円
調達日本生命保険から2億8,750万円(保有割合5.63%・2019年8月)。SOMPOホールディングスも同時期に資本参加
事業スクリーニング検査事業。新規スクリーニング開発事業。検査受託におけるプラットフォーム開発。だ液によるがんリスク検査「サリバチェッカー」の提供(個人・法人・医療機関)
技術領域だ液メタボローム解析。キャピラリー電気泳動質量分析法(CE-MS)による多数の代謝物の同時測定。臨床研究データにもとづく学習モデルでのリスク評価
連携日本生命保険(2017年9月)。山形県鶴岡市 包括連携協定(2026年2月)。慶應義塾大学医学部 内科学教室(リウマチ・膠原病) 共同研究(2026年9月発表)
URLhttps://salivatech.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

がんの早期発見が大切だと分かっていても、検査そのものが負担であれば足は遠のきます。サリバテックがだ液という身近な検体を選んだのは、受診の入り口を広げるためです。慶應義塾大学先端生命科学研究所で積み重ねられた質量分析の研究が、健診の現場にまで届いている点に、社会実装としての厚みを感じます。

注目したいのは、単なる検査の簡便化ではなく、検診の枠組みから外れていた部位にも目を向けている点です。鶴岡市との連携では、膵がんという早期発見の難しい領域が地域の住民へ開かれました。がん以外の疾患への研究も始まっており、だ液から体の状態を読み取る手立ては広がると見込まれます。

気になったときに、負担なく体の状態を確かめられる日常が広がることを期待しています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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