株式会社エンネは社内の言語データから組織の課題を見つけるAIを開発する広島大学発の企業

株式会社エンネ

エンネ「自然言語処理」を研究|研究領域=社員の声を解析するAI/強み=組織の課題と改善策を示す/将来性=営業の現場にも活用を広げる

企業紹介|株式会社エンネとは?

文章や会話に表れた言葉の意味を、コンピュータで読み取る技術として、注目を集める「自然言語処理」。株式会社エンネは、その社会実装を目指す、広島大学発のAI系ディープテック企業です。社員の声や社内のやり取りを分析して組織の課題を見つけるAIサービス「CoreVoice」を、企業へ提供しています。

キーワード「自然言語処理」

「自然言語処理」は、人が日常で使う言葉を、コンピュータで解析して意味を読み取るAIの技術です。特徴は、大量の文章から話題の傾向や書き手の意見の傾向を読み取れる点にあります。人事の現場では、面談の記録や社内チャットに表れた社員の不満を、早い段階で把握できます。

市場課題|社員の本音がつかめず早期離職を防ぎにくい

現状の人事の課題|記録を読み切れず不満を見逃す/本音が伝わりにくく対策が遅れる

記録を読み切れず不満を見逃す

面談の記録やアンケートの自由記述は、件数が増えるほど、人手では読み切れない量になります。自由記述の回答が数千件規模になると、すべてに目を通して傾向をつかむことは現実的ではないとされています。記録に埋もれた不満は見逃されやすく、離職の防止に生かしにくい状態です。

本音が伝わりにくく対策が遅れる

社員が職場に抱く不満は、退職を決めた後でも会社に伝わりにくい傾向があります。人材サービスのエン株式会社(エンネとは別の会社)が2024年に公表した調査では、退職時に本当の理由を伝えなかった人44%に上り、伏せられた理由で最も多いのは、職場の人間関係でした。原因が見えないまま欠員を補うだけでは、同じ理由の離職が繰り返されるおそれがあります。

他にも、チャットや日報に散らばり集計しにくい社員の声、離職が起きてから原因を探る後手の対応、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 早期離職就職してから短い期間で会社を辞めることを指す。厚生労働省の調査では、2022年3月に大学を卒業して就職した人の33.8%が3年以内に離職している。

エンネの強み|「自然言語処理」を研究

エンネが「自然言語処理」を研究|社内の言葉で組織の課題を可視化/改善策までAIが提案する

社内の言葉で組織の課題を可視化

従来は、面談やアンケートの記録を担当者が読んで組織の状態をつかむ方法が中心で、読める量には限りがありました。

同社の「CoreVoice」は、社内の言語データ(文章や会話として残る言葉の記録)を自然言語処理で解析し、組織に潜む課題を可視化するサービスです。一般に自然言語処理では、文章を単語に分け、言葉の頻度やつながりを統計的に調べます。同社の解析の対象は、Slack(業務用のチャットツール)のやり取りや面談の記録、AIカウンセリング(AIが相談に応じる仕組み)の結果から、ネット上の文章にまで及びます。人事担当者が大量の文章を読み込まなくても、組織の課題の早期発見が可能です。

改善策までAIが提案する

従来は、離職が起きると新しい人を採用して教育する対応が中心で、そのたびに時間と費用がかかっていました。

CoreVoiceは、解析で見つけた組織の課題に対し、AIが具体的な改善策を提案します。同社が25社以上に行った聞き取りで、多くの企業が離職の本当の理由をつかめず、組織の改善に生かせていないと分かったことが、この仕組みの出発点です。改善策の実行は、同社が支援します。課題の可視化にとどまらず改善策まで示す点が、CoreVoiceの特徴です。企業は、組織の課題の把握から改善の実行までを進められるようになります。

FrontJournalの解説
  • 言語データ文章や会話として記録された言葉のデータを指す。社内では、チャットのやり取り、面談の記録、アンケートの自由記述などが該当する。人の考えや感情が表れやすく、組織の状態を知る手がかりになる。

自然言語処理の未来|人事と営業の現場への応用

職場を支える自然言語処理が変える未来|営業にも応用し顧客ニーズを把握/市と県の支援でサービスを改善/持続可能な組織を目指す

営業にも応用し顧客ニーズを把握

同社は、営業の現場に向けたサービス「CoreVoice for Sales」も提供しています。AIチャットボット(自動で会話に応じるプログラム)を用いて、営業活動を支援するサービスです。顧客とのチャットで蓄積したデータからは顧客のニーズを可視化し、営業戦略の立案まで支援します。社員の言葉と同じように、顧客の言葉からも課題を読み取る使い方です。

市と県の支援でサービスを改善

東広島市の支援制度を活用し、同社は地域での実証実験(実際の現場で効果を確かめる試験)でCoreVoiceの有効性を検証する計画です。市内の産業や研究機関と協働する機会を生かし、サービスの改善も進める方針です。同社は、地域発のAIサービスとして社会実装の加速を図ります。広島県の支援プログラムでも、機能の強化と導入企業への提供体制の拡充にも取り組む計画です。

持続可能な組織を目指す

同社は、CoreVoiceを通じて、持続可能な組織づくりを支援することを目指しています。その先にあるのは、言葉に関わる技術によって、すべての人にとってやさしい社会を実現するという目標です。CoreVoiceの認知拡大を図りながら、企業や自治体などでの導入検討も促していきます。同社は、人事・組織の分野での取り組みを広島から発信していく方針です。

会社概要|エンネの設立背景と事業

広島大学在学中に起業

株式会社エンネは、広島大学情報科学部に在学していた青貝悠汰氏が、2024年7月に東広島市で設立した企業です。青貝氏は高校時代に俳句を自動で作るシステムを開発し、言葉をコンピュータで扱う難しさに触れたことから、情報系の学部へ進みました。大学では、友人と立ち上げたものを含め約30件の新規事業に携わった経験を持ちます。社名は、良い出会いがあったときの「これも何かのご縁ですね」という言葉に由来します。

支援制度に採択され技育博で受賞

同社は2025年、東広島市と広島県のスタートアップ支援プログラムに相次いで採択されました。7月には東広島市の「スタートアップチャレンジ」に、8月には広島県の「PANORAMA」(新興企業の成長を支援するプログラム)の第9期に選ばれています。広島大学が公表する大学発ベンチャーの一覧にも載る企業です。同年には、エンジニアを目指す学生向けのイベント「技育博」で、CoreVoiceが「ウイングアーク1st株式会社賞」を受賞しています。

開発とIT教育も手がける

同社は、自社サービスのCoreVoiceを事業の中心に据え、システムやアプリの開発IT教育も手がけています。IT教育では、専門学校での授業や、企業のインターンシップ(学生の就業体験)の運営を支援しています。設立にあたっては「特定創業支援等事業」(会社設立時の登録免許税の軽減などを受けられる制度)を活用し、初期の費用を抑えました。

会社情報

会社名株式会社エンネ
所在地広島県東広島市鏡山2丁目313 広島大学ベンチャービジネスラボラトリー内
設立2024年7月23日
代表青貝 悠汰(代表取締役)
事業AIエンゲージメントサービス(社員の働く意欲や組織への愛着を高めるサービス)「CoreVoice」の開発・提供。AIボットの制作。RAG(検索と文章生成を組み合わせたAIの仕組み)システムの構築。言語データの解析。システム開発。IT教育等
技術領域自然言語処理(言語データの解析・AIチャットボット)
連携広島大学(同大学が大学発ベンチャーとして公表・2026年3月1日現在)
採択東広島市「スタートアップチャレンジ」(2025年7月)。広島県「PANORAMA」第9期(2025年8月)。「技育博」ウイングアーク1st株式会社賞(2025年)
URLhttps://enne.ltd/ja/

編集後記|FrontJournal編集部より

離職の話題は、辞めた人数や割合で語られがちです。エンネが目を向けているのは、その手前にある、言葉にされないまま職場に残る社員の声です。数字の裏にある理由へ光を当てようとする姿勢に、この会社らしさがあります。

注目したいのは、チャットや面談に残る日々の言葉そのものを手がかりにするという発想です。高校時代に俳句の自動生成で言葉をコンピュータで扱う難しさに触れた代表の経験が、事業の軸にそのまま生きています。課題の把握から打ち手までを1つの流れで示す作りは、人事担当者の負担を現実的に減らす工夫です。

広島大学のキャンパスから生まれた言葉の技術が、多くの職場で働く人の声を届ける仕組みへ育つことを期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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