株式会社フレンドマイクローブは油脂分解微生物で工場排水の油脂を処理する名古屋大学発スタートアップ

株式会社フレンドマイクローブ(Friend Microbe)

フレンドマイクローブ|研究領域=工場排水の油脂を微生物で分解する技術/強み=実証で24時間油脂99%以上減/将来性=微生物の分解を土壌の浄化へも

企業紹介|株式会社フレンドマイクローブとは?

工場排水に含まれる油脂を、微生物の働きで分解する「油脂分解微生物」。株式会社フレンドマイクローブは、その「油脂分解微生物」を使った排水処理の社会実装を目指す名古屋大学発のディープテックスタートアップです。排水処理システム「Mbisys(マビシス)」を、食品工場や油脂工場へ提供しています。

キーワード「油脂分解微生物」

油脂分解微生物」は、動植物油や工業油を栄養源として取り込み、分解する微生物です。同社の微生物は、油脂を分解する酵素を出す細菌と、その分解物を栄養源にする酵母を組み合わせている点に特徴があります。食品工場の排水処理では、前処理の加圧浮上分離装置に代わる方法として性能が確かめられています。

市場課題|排水に残る油脂の処理

現状の油脂を含む排水処理の課題|油の使用増で排水処理の負担が増大/微生物処理は現場で性能が安定しにくい

油の使用増で排水処理が高負荷

食品工場や油脂工場の排水には油脂が多く含まれ、処理設備の負担が大きくなります。前処理の加圧浮上分離装置(気泡で油脂を浮かせ回収する装置)は油脂を分離するだけで、回収分は産業廃棄物です。食用油や工業油の使用量は増え、処分費と清掃の手間はさらに膨らむと見込まれます。

微生物処理は性能が安定しにくい

油脂を微生物に分解させる方法は以前からありますが、現場で性能が安定しにくいのが課題です。油脂は水に溶けにくく、水と油の境目でしか分解が進みません。排水の温度やpH(水の酸性・アルカリ性の度合い)が適した範囲から外れると、菌の活性は落ちます。分解が進まなければ処理水に油脂が残り、放流の基準を満たし難くなります。

他にも、グリーストラップ(排水から油脂を分離する槽)の油脂の掻き出しに人手が要ります。配管や設備の油脂の汚れ、油脂由来の悪臭への対応、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 加圧浮上分離装置排水に微細な気泡を送り、油脂や浮遊物を泡に付着させて水面へ浮かせ、かき取って回収する装置。食品工場の排水処理では前処理として広く使われる。

フレンドマイクローブの強み|油脂分解

フレンドマイクローブが「油脂分解微生物」を開発|細菌と酵母の組合せで油脂を分解/既存の流量調整槽をそのまま活用

油脂を微生物で分解

分離して取り除く方法では、回収した油脂が廃棄物として残ります。

Mbisys」は、リパーゼ(油脂を分解する酵素)を出す細菌と、グリセロール(油脂の骨格)を取り込む酵母を組み合わせた排水処理システムです。リパーゼが油脂を脂肪酸とグリセロールに切り離し、酵母が分解物を取り込みます。分解物が溜まると反応は進みにくくなるため、分解が滞りません。共生効果は2009年に学術誌「Journal of Bioscience and Bioengineering」で報告されました。食品工場の実証では、油脂濃度3万mg/Lの排水を24時間処理し、油脂は99%以上減りました。

既存の流量調整槽を活用

微生物による処理は、現場で菌の数と活性を保ちにくく、排水の条件が変われば分解の速度が落ちます。

同社は、微生物を現場で増やして投入する装置で、菌の数と活性を保つ課題に対応しました。処理槽の横に据え付ける「微生物自動増幅投入装置」が、必要な量の微生物を増やし、自動で投入します。微生物を工場の規模で働かせるバイオリアクター(微生物に目的の反応を効率よく行わせる装置)の技術が土台にあり、この運用方法でも特許を取得しています。導入時に油分解槽を新設する必要はありません。既存の流量調整槽に曝気設備やpH調整装置を足すだけで運用でき、加圧浮上分離装置の撤去も不要です。

FrontJournalの解説
  • リパーゼ油脂を脂肪酸とグリセロールに分解する酵素の総称。生物が油脂を栄養として取り込む際に働き、微生物が分泌したものは排水中の油脂の分解にも利用される。

油脂分解の先へ|広がる微生物の用途

油脂分解微生物が変える未来|食品工場の排水処理で実際に稼働/GX事業の採択で実用化研究が進む/鉱物油や悪臭処理へ研究が拡大

食品工場の排水処理で稼働

「Mbisys」は、食品工場や油脂工場の排水処理ですでに使われています。現場実証を経て、前処理を加圧浮上分離装置に頼らない選択肢になりました。油脂を分離せずに分解するため、産業廃棄物として搬出する油脂の量と、その焼却工程を減らせます。掻き出し作業や設備の汚れが減ることで、現場の衛生環境の改善にもつながるとされています。

GX事業で実用化研究を推進

同社は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業」に採択されています。第3回公募のSTSフェーズ(実用化研究開発の前期)では、採択された企業は同社1社です。この支援のもとで、油脂分解の技術を実際の排水処理現場へ広げる研究開発を進めています。同社が目指すのは、処理工程の省力化と、焼却に由来する二酸化炭素の削減です。

微生物で循環型社会を目指す

同社は、油脂分解にとどまらない微生物による分解反応の用途を研究しており、分解しにくいカーボンナノチューブ(炭素の原子が筒状に並んだ微細な材料)の微生物による分解も報告されています。受託研究事業は、同社と名古屋大学の堀研究室、委託企業の三者による共同研究です。研究対象は、鉱物油の分解、土壌の浄化、悪臭処理、有機系固形廃棄物のコンポスト化などです。焼却してきた産業廃棄物を微生物の力で分解し、持続可能な循環型社会の実現を目指しています。

会社概要|フレンドマイクローブの事業

名古屋大学の研究から創業

株式会社フレンドマイクローブは、名古屋大学大学院工学研究科の堀克敏教授2017年6月に名古屋市で設立しました。堀教授は名古屋工業大学の准教授などを経て2011年から現職にあり、同社では取締役会長を務めています。代表取締役社長は蟹江純一氏です。公的な研究開発プロジェクトで生まれた技術を社会で使うために設立され、「微生物を友達に」という理念のもとで事業が始まりました。

公的事業での採択と受賞

同社は、NEDOのGX分野の支援事業に採択されています。経済産業省などが有望なスタートアップを選ぶ「J-Startup Central」(中部地域を対象とした支援プログラム)の第4期にも選ばれました。愛知県の「Aichi Deeptech Launchpad」(研究開発費をともなう支援プログラム)にも採択されています。受賞歴は、環境分野の取り組みを表彰する「愛知環境賞」の名古屋市長賞や、「MUFG ICJ ESGアクセラレーター2023」の大賞などです。技術面では名古屋大学の堀研究室との三者共同研究が続いており、受託研究事業の基盤になっています。

事業モデルと出資者

事業は、排水処理システム「Mbisys」を提供する油分解事業と、民間企業などからの委託を受ける受託研究事業の2つで構成されています。資本金は9,000万円。株主には、ベンチャーキャピタルのジェネシア・ベンチャーズのほか、豊田合成、住友商事、ハウス食品グループイノベーション2号ファンドといった事業会社系の出資者が並びます。

会社情報

会社名株式会社フレンドマイクローブ(Friend Microbe inc.)
所在地愛知県名古屋市千種区不老町1
拠点:名古屋医工連携インキュベータ(NALIC)104/クリエイション・コア名古屋 108
設立2017年6月
代表代表取締役社長:蟹江 純一
取締役会長:堀 克敏(名古屋大学大学院工学研究科 教授)
資本金9,000万円
調達株主:株式会社ジェネシア・ベンチャーズ/豊田合成株式会社/住友商事株式会社/ハウス食品グループイノベーション2号ファンド
事業油分解事業(排水処理システム「Mbisys」)/受託研究事業
技術領域油脂分解微生物、微生物製剤、バイオリアクター、排水処理、クリーンバイオテクノロジー
連携名古屋大学 大学院工学研究科 生命分子工学専攻 分子生命環境プロセス教室(堀研究室)および委託企業を交えた三者共同研究
採択NEDO「GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業」第3回公募 STSフェーズ/J-Startup Central(第4期)/Aichi Deeptech Launchpad アクセラレーションプログラム。受賞:愛知環境賞 名古屋市長賞/MUFG ICJ ESGアクセラレーター2023 大賞(MUFGモルガン・スタンレー賞、JT賞ほか)
URLhttps://friendmicrobe.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

排水に含まれる油脂は、これまで「分離して取り除くもの」でした。取り除いた先には産業廃棄物としての油脂が残り、処分費と焼却にともなう二酸化炭素の排出がついて回ります。フレンドマイクローブの「Mbisys」は、その前提を「分離」から「分解」へ置き換える試みです。

興味深いのは、微生物を選ぶだけで終わらせていない点です。リパーゼを出す細菌とグリセロールを食べる酵母という組み合わせで分解を滞らせず、さらに現場で菌を増やして投入する装置まで用意しています。既存の流量調整槽をそのまま使える設計も、導入する工場にとっては現実的な選択肢になりそうです。

「微生物を友達に」という理念が、食品工場の排水から土壌や悪臭の対策へどこまで広がるか。フレンドマイクローブの取り組みは、その裾野を静かに広げています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。