PLIMES株式会社は音で嚥下を測る電子聴診器を開発する筑波大学発スタートアップです

PLIMES株式会社(プライムス)

PLIMES「摂食嚥下モニタリング」を研究|研究領域=首もとの音から飲み込みを判定/強み=日常の食事を継続して記録/将来性=食品開発や海外の介護施設へ

企業紹介|PLIMES株式会社とは?

食事のときの飲み込みを日常的に測る技術として、注目を集める「摂食嚥下モニタリング」。PLIMES株式会社は、その「摂食嚥下モニタリング」の社会実装を目指す、筑波大学発の医療系ディープテック企業です。首に装着する電子聴診器GOKURI」を、医療機関や歯科クリニック、介護施設、在宅医療の現場へ提供しています。

キーワード「摂食嚥下モニタリング」

摂食嚥下モニタリング」は、食べて飲み込むまでの一連の動き(摂食嚥下)を継続して記録し、その状態を評価する手法です。従来の検査は、X線や内視鏡を使うため、実施できる場面や回数が限られます。「GOKURI」は首もとの音と姿勢から嚥下を判定するため、ふだんの食事の場面をそのまま測れます。

市場課題|嚥下の状態は日常的に測りにくい

現状の嚥下検査の課題|現状は、設備と人手が要り測る場が限られる|誤嚥性肺炎による死亡が増加/検査に設備と専門職が必要

誤嚥性肺炎で高齢者の死亡が増加

食べ物や唾液が気管に入る誤嚥は高齢になるほど起こりやすく、誤嚥性肺炎による死亡は増加しています。厚生労働省の人口動態統計によると、その死亡数は2023年の6万190人から2024年の6万3665人(概数)へ増えました。高齢化が進むほど、飲み込む力の低下を早い段階で把握する必要が高まります。

嚥下検査は設備と専門職が必要

嚥下の状態を詳しく調べる嚥下検査は、実施できる施設が限られます。嚥下造影検査(VF)はX線の装置と造影剤を使い、嚥下内視鏡検査(VE)は内視鏡とそれを扱う医師が必要です。日々の食事のたびに状態を確かめることは難しく、変化に気づくのが遅れがちになります。

他にも、専門職の少ない在宅や介護の現場での評価の難しさ、むせを伴わない不顕性誤嚥の見つけにくさ、食事の様子を多職種で共有する手間といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 不顕性誤嚥むせや咳といった目立つ反応を伴わないまま、食べ物や唾液が気管へ入る現象。本人も周囲も気づきにくく、肺炎の原因になっても発見が遅れるため、日常的な観察が重要とされる。

PLIMESの強み|首もとの音で嚥下を測る

PLIMESが「摂食嚥下モニタリング」を開発|今後は、首もとの音で日常の記録が可能に|音と姿勢から人工知能が判定/記録をクラウドで多職種が共有

音と姿勢から嚥下を判定

頸部聴診法(首に聴診器を当てて飲み込みの音を聴く方法)は簡便ですが、判断は聴き手の経験に左右されます。

「GOKURI」は、首もとに接触させたセンサーで体内の音(生体音)を集め、人工知能が嚥下音とそれ以外の音を判定する電子聴診器です。センサーには、筑波大学が保有する頸部装着型嚥下モニターの特許(第5952536号)の技術を実装し、小さな嚥下音を捉える高感度の集音を実現しました。あわせて頸部の角度も計測するため、食べる人の姿勢が保てているかも確認できます。取得した音は、アプリで波形として確認できます。

日常の食事を記録し共有

検査室で行う評価は、その場の様子を詳しく調べる方法で、日々の変化を追う目的とは用途が異なります。

「GOKURI」は、ネックバンド型のデバイス、アプリ、クラウドサービスを組み合わせた構成で提供されます。首に装着するだけで首もとの音や姿勢のデータをハンズフリーで取得でき、飲み込みやむせの様子はその場で確認できる点が特徴です。取得したデータはクラウドに保存され、離れた場所からでも一覧やPDFで確認でき、音声クリップを再生して実際の音を聴き直せます。医療や介護に関わる複数の職種が、同じ記録をもとに食事の見守りを分担できます。

FrontJournalの解説
  • 頸部装着型嚥下モニター首に装着し、飲み込みに伴う音や頸部の動きを計測する装置。筑波大学が特許を保有し、筑波大学と同大附属病院の研究成果として開発された。「GOKURI」の高感度な集音は、この技術を実装して実現されている。

GOKURIの未来|食品開発から海外へ

摂食嚥下モニタリングが変える未来|病院から食品開発、海外へ広がる|医療と介護の現場で活用/嚥下しやすい食品の開発へ/台湾の病院や介護施設へ

医療と介護の現場で活用

「GOKURI」は、医療機関や歯科クリニック、介護施設、在宅医療の現場ですでに使われています。同社は2023年1月に医療機器製造業の登録、6月に第二種医療機器製造販売業の許可を得たうえで、8月に電子聴診器としての医療機器認証を取得しました。同年11月からの販売開始が公表されています。歯科・医科の院内業務支援と、在宅診療サービスの支援が事業の柱です。

食品開発の根拠づくりへ

嚥下しやすい食品の開発にも、嚥下を測ったデータが使われ始めています。同社は2022年3月に明治ホールディングスと資本業務提携を結び、嚥下の評価にもとづく食品開発の支援に取り組んでいます。2026年6月には日本介護食品協議会で「GOKURI」の活用勉強会が開かれ、摂食嚥下の計測・解析の技術が紹介されました。嚥下しやすい食品や薬の選択を、経験だけでなく測定した記録で支える動きが広がると期待されます。

海外への展開を目指す

同社は「GOKURI」を海外の医療・介護の現場へ広げることを目指しています。2026年6月には、台北で開かれたMedical Taiwan 2026へ台湾のHabitz Medtechと共同で出展しました。その後、Habitz Medtechと販売代理店契約を結び、台湾市場への展開を始めています。Habitz Medtechは現地の医療機関やリハビリ施設、介護施設に対して、導入から運用の支援、専門職への研修までを担います。

会社概要|PLIMES株式会社の事業内容

筑波大学の研究から創業

PLIMES株式会社は、2018年4月に茨城県つくば市で設立されました。創業したのは、筑波大学教授鈴木健嗣氏と、下柿元智也氏らです。同社は筑波大学の人工知能やロボット工学を扱う研究室と、附属病院の研究成果を社会へ還元することを目的としています。代表取締役社長を鈴木健嗣氏、代表取締役副社長を下柿元智也氏が務めています。

採択と企業との連携

同社の開発は、公的機関の採択と事業会社との連携によって進んでいます。2018年4月には筑波大学発ベンチャーとして承認され、2022年4月にはAMED(日本医療研究開発機構)の事業に採択されました。2024年には福島イノベーション・コースト構想の事業にも採択されており、明治ホールディングスとは資本業務提携を結んでいます。

シードで1.5億円を調達

同社は2020年3月に、シードラウンド1.5億円の調達を完了しました。シードラウンドは、事業のアイデアを製品として形にしていく、ごく初期の資金調達段階にあたります。引受先は、同じ筑波大学発のロボット企業であるサイバーダインです。業務提携もあわせて結び、「GOKURI」の開発と市場展開を進めてきました。2022年3月には明治ホールディングスを引受先とする第三者割当増資も実施しています。

会社情報

会社名PLIMES株式会社(PLIMES Inc.)
所在地茨城県つくば市天王台1-1-1 産学リエゾン共同研究センター棟201室(静岡県浜松市に支店)
設立2018年4月18日
代表代表取締役社長:鈴木 健嗣(筑波大学教授)
代表取締役副社長:下柿元 智也
資本金7,500万円
調達2020年3月 シードラウンド 1.5億円(引受先:サイバーダイン)。2022年3月 明治ホールディングスを引受先とする第三者割当増資
事業医療福祉機器およびシステムの研究開発。摂食嚥下モニタリングサービス「GOKURI」の開発・販売。医療機器製造業(08BZ200133)、第二種医療機器製造販売業(08B2X10015)
技術領域頸部装着型嚥下モニター(特許第5952536号)、嚥下音の解析、電子聴診器(認証番号305AFBZX00070000)
連携サイバーダイン(業務提携・2020年3月)。明治ホールディングス(資本業務提携・2022年3月)。Habitz Medtech(台湾の販売代理店)
採択筑波大学発ベンチャー承認(2018年4月)/AMED事業(2022年4月)/福島イノベーション・コースト構想の事業(2024年7月)
URLhttps://www.plimes.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

飲み込みは、誰もが1日に何度も繰り返しているのに、記録として残ることがほとんどない動作です。PLIMESの「GOKURI」は、その見えにくい動作を首もとの音という手がかりから可視化し、検査室の外へ持ち出しました。医療機器としての認証を得たうえで、日常の食事の場面に置かれている点が特徴です。

注目したいのは、これが検査の道具であると同時に、食を支える情報の基盤でもある点です。嚥下の記録が積み上がれば、食品の開発や薬の選び方にも根拠が生まれます。医療、介護、食品という異なる分野が、同じデータを見て話し合える土台になります。

食べることを最後まで楽しむための技術が、大学の研究室から日々の食卓へ届こうとしています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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