リジェネソーム株式会社は日本酒の発酵で生じるナノ粒子を研究するバイオ企業

リジェネソーム株式会社

リジェネソーム「日本酒由来ナノ粒子」を研究|研究領域=日本酒の発酵で生じる小さな粒子/強み=清酒からフィルターで粒子を取り出す/将来性=食品での販売を開始し医療への応用を研究

企業紹介|リジェネソーム株式会社とは?

加齢にともなう体の変化に向き合う技術として、注目を集める「日本酒由来ナノ粒子」。リジェネソーム株式会社は、その社会実装を目指す、スペースシードホールディングス株式会社が設立したバイオ系ディープテック企業です。エイジングケア食品「SAISEI リジェネソームサプリメント」を、健康の維持に関心を持つ消費者へ提供しています。

キーワード「日本酒由来ナノ粒子」

「日本酒由来ナノ粒子」は、清酒の発酵の過程で生じる、直径が1〜500ナノメートルの微小な粒子です。特徴は、酵母麹菌に由来する糖とタンパク質の集合体を含み、フィルターでこし取る形で精製できる点にあります。同社はこの粒子を「SAKESOME」と名付け、日々の食生活に取り入れられるサプリメントの開発に生かしています。

市場課題|延びない健康寿命と精製の壁

現状の健康寿命と素材の課題|日常生活に制限のある期間が長く続く/細胞が出す小さな袋は取り出しにくい

日常生活の制限が長く続く

日本では、日常生活に制限のある期間が男女とも長く続いています。2022年の厚生労働省の集計では、平均寿命と健康寿命の差は男性で8.49年、女性で11.63年でした。高齢化が進むにつれ、介護や医療にかかる負担は今後も増えると見込まれます。

細胞外小胞は精製の効率が低い

体の中で細胞どうしが情報をやり取りする細胞外小胞(細胞から放出される小さな袋状の粒子)は、素材としてまとめて集めるのが困難です。培養した細胞の上澄みから超遠心分離機で取り出す方法では、1回に扱える量が数百ミリリットルにとどまり、回収率も20〜30%程度といわれています。装置そのものも高価なため、産業で使う量を安定して確保しにくい状況です。

他にも、細胞の種類によって大きく変わる1回あたりの収量、人に投与したときの安全性と有効性の検証、製品ごとにばらつく品質の評価基準、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 健康寿命介護を必要とせず、日常生活を制限なく送れる期間を指す。厚生労働省が国民生活基礎調査をもとに算出し、平均寿命との差が、支援を要しながら過ごす期間の目安となる。

リジェネソームの強み|日本酒由来ナノ粒子

リジェネソームが「日本酒由来ナノ粒子」を開発|細胞試験で免疫細胞に作用を確認/清酒をこして粒子を取り出す

細胞試験で免疫細胞に作用

清酒の機能性は、エルゴチオネイン(抗酸化作用を持つアミノ酸)やα-EG(グルコースとエタノールが結合した配糖体)といった成分ごとに調べられてきました。粒子としての働きは、把握しにくいままです。

同社は、細胞を用いた試験で、清酒から取り出したナノ粒子がB細胞T細胞を活性化する働きを確認しました。B細胞は抗体を産生する細胞、T細胞は感染した細胞を見分けて排除する細胞で、どちらも体を守るしくみの中核にあります。同社はこの働きをもとに、「免疫細胞活性化剤および免疫細胞の活性化方法」という発明について、2025年12月に特許を出願しました。粒子には酵母や麹菌に由来する糖とタンパク質の集合体が含まれ、ヒトでの効果は今後の検証課題です。

清酒からフィルターで精製

超遠心分離は、粒子を重さの違いで沈める手法です。大きさや密度の近い成分と分けにくく、得られる量は限られます。

清酒は、麹菌が米のでんぷんを糖に変え、その糖を酵母が同時に発酵させる「並行副発酵」という工程を経た酒です。この工程で生じるナノ粒子は、フィルターを用いた分離で回収できます。品質の確認に用いるのは、粒子の大きさと数を1粒ずつ数えるナノ粒子トラッキング解析(レーザーで粒子の動きを追い、粒径と個数を測る手法)です。原料となる清酒は既存の醸造設備で製造されるため、細胞を育てるための設備を新たに整える必要がありません。

FrontJournalの解説
  • 並行副発酵米のでんぷんを麹菌が糖へ変える糖化と、その糖を酵母がアルコールへ変える発酵が、同じ容器の中で同時に進む清酒特有の工程である。多様な微生物由来の成分が生じる。

日本酒由来ナノ粒子の未来|食品と医療へ

日本酒由来ナノ粒子が変える未来|食品として販売をすでに開始/免疫への影響をさらに解析/細胞での結果を生体で確かめる

エイジングケア食品を販売

同社は、エイジングケア食品の販売をすでに始めています。2025年6月1日には、「SAISEI リジェネソームサプリメント」のテスト販売が始まりました。1日あたり7錠に、ユーグレナグラシリスを1,000ミリグラム、酒粕粉末を320ミリグラム、カラハリスイカ粉末を50ミリグラム、高純度のエルゴチオネインを30ミリグラム配合しています。日本酒由来ナノ粒子は、試作品として展示会で紹介される研究段階にあります。

免疫への影響を詳しく解析

ナノ粒子が免疫応答に与える影響を詳しく調べる研究が進んでいます。2025年4月には、東京科学大学の安達貴弘准教授が主宰するジョイントリサーチ講座未病制御学講座」へ参画し、共同研究を開始しました。この講座は、症状が現れる前の段階を捉える超早期未病の検出と、予防や治療の方法の開発に取り組んでいます。この講座は2021年に設置され、複数の企業が参加しています。

知見の生体検証を目指す

同社が目指すのは、「細胞で得られた知見を、生体での検証へ進めること」です。研究は、老化の度合いを測る技術、成分を体内へ運ぶ技術、体の働きに効かせる技術の3領域で進めています。日本酒由来ナノ粒子が属するのは、このうち体の働きに効かせる領域です。今後はAIとラボオートメーション(実験工程の自動化)を組み合わせ、設計と評価の反復を速めることを目指します。

会社概要|リジェネソームの事業内容と設立背景

宇宙関連企業が設立した子会社

リジェネソーム株式会社を設立したのは、宇宙関連事業を手がけるスペースシードホールディングス株式会社です。設立は2024年7月12日でした。代表取締役CEOには、株式会社ユーグレナの共同創業者で農学と医学の博士号を持つ鈴木健吾氏が就任し、代表取締役社長を佐久間善太郎氏が務めています。2025年5月13日には、東京都港区の研究拠点LiSHに本社兼研究所「高輪ロンジェビティーラボ」を開設しました。

大学や企業との連携が拡大

同社は、大学や企業との共同研究を通じて研究領域を広げています。2025年4月には東京科学大学の「未病制御学講座」へ参画し、2026年5月には東京農工大学と、レチノールを安定して届けるバイセル製剤(成分を包む円盤状の微粒子)について特許を共同出願しました。2026年3月には、東京大学発のFastNeura株式会社と、低酸素の環境が認知機能に及ぼす影響を脳波の計測で評価する研究を始めています。日本酒由来ナノ粒子の研究では、津南醸造株式会社が原料の面から協力しています。

出資と融資で約1.3億円

同社が調達した資金は、2025年8月時点で出資と融資を合わせて約1億3,000万円です。2024年10月には日本システム技術株式会社からJ-KISS型新株予約権(将来の株式に転換できる権利を用いた、初期段階の調達手法)で8,000万円を調達し、2025年5月には都市銀行から3,000万円の融資を受けました。2025年8月には株式会社リバネスキャピタルから、同じくJ-KISS型新株予約権で2,000万円を調達しています。

会社情報

会社名リジェネソーム株式会社(Regenesome Inc.)。スペースシードホールディングス株式会社の子会社
所在地東京都港区高輪2-21-1 THE LINKPILLAR 1 NORTH 6F LiSH
設立2024年7月12日
代表代表取締役CEO:鈴木 健吾(博士:農学・医学)。代表取締役社長:佐久間 善太郎(経営学修士・米国公認会計士)
調達累計約1億3,000万円(2025年8月時点)。日本システム技術から8,000万円(2024年10月・J-KISS型新株予約権)。都市銀行からの融資3,000万円(2025年5月)。リバネスキャピタルから2,000万円(2025年8月・J-KISS型新株予約権)
事業エクソソームを活用したサプリメント・食品・化粧品の開発。細胞に由来する物質を用いた新商品や新サービスの開発。知的財産の管理。研究開発に関するコンサルティング
技術領域日本酒由来ナノ粒子「SAKESOME」の精製と機能解析。細胞外小胞(エクソソーム)の分離・精製。ナノ粒子トラッキング解析による品質評価。唾液のDNAメチル化を用いた年齢推定
連携東京科学大学 未病制御学講座(2025年4月参画)。東京農工大学(バイセル製剤の特許を共同出願・2026年5月)。FastNeura(脳波計測による研究・2026年3月)。津南醸造
URLhttps://regenesome.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

日本酒は、日本各地に醸造の設備と技術が積み重ねられてきた飲み物です。リジェネソームがそこにナノ粒子という視点を持ち込んだ点に、研究の面白さがあります。細胞を育てて集める従来の方法に比べ、原料の入手という入り口が広い点は、素材としての可能性を感じさせます。

注目したいのは、成分単位で語られてきた日本酒の機能性を、粒子としてのまとまりで捉え直している点です。B細胞とT細胞への働きが確かめられ、特許の出願にまで進んだ点に、研究の進展が表れています。未病という考え方とも重なり、食品から医療まで応用の幅は広がると見込まれます。

伝統の発酵技術が、健康寿命の研究を支える資源として受け継がれていくことを期待しています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。