ステムリム「再生誘導医薬」を開発|幹細胞を描いたイラスト

株式会社ステムリム

ステムリム「再生誘導医薬」を開発|研究領域=幹細胞を集めて・組織の再生を促す/強み=移植手術なしで・点滴で治療/将来性=皮膚の難病から・心臓や関節へ

企業紹介|株式会社ステムリムとは?

患者自身の体にある幹細胞を傷ついた組織へ集め、再生を促す薬として開発が進む「再生誘導医薬」。株式会社ステムリムは、その社会実装を目指す、大阪大学発のバイオ系ディープテック企業です。中心となる候補薬「レダセムチド」は、皮膚がはがれやすくなる難病、表皮水疱症を対象にした臨床試験で、主要評価項目(試験の成否を判定する指標)を達成しました。

キーワード「再生誘導医薬」

「再生誘導医薬」は、骨髄にある幹細胞を血液中へ呼び出し、傷ついた組織に集めて修復を促す薬を指す、ステムリムの登録商標です。細胞を体外で育てて移植する再生医療と違い、働くのは患者の体内にもともとある幹細胞です。点滴で投与できるため、細胞を採取して移植する手術を伴いません。

市場課題|失った組織を元に戻す治療は選択肢が限られていた

現状の組織再生の課題|現状は、失った組織を薬で戻しにくく細胞治療は負担が重い|失った組織は・薬で戻しにくい/細胞治療は・製造の負担が重い

失った組織は薬で戻しにくい

脳梗塞や心筋梗塞、皮膚の難病のように組織そのものが失われる病気では、従来の薬で組織を元に戻すことは難しいとされてきました。多くの薬は炎症や症状を抑える働きを持つ一方、失われた細胞を補う働きは持たないためです。治療の選択肢が限られたまま、後遺症や治りにくい傷を抱えて暮らす患者が残ります。

細胞治療は製造の負担が重い

組織再生を目指す細胞治療は、細胞を体外で培養して患者に移植するため、製造に大きなコストがかかります。細胞の採取や培養、専用の製造施設の運営が欠かせず、培養の途中で細胞の性質が変わるおそれもある点が課題です。こうした負担が続く限り、再生医療を受けられる患者や医療機関は限られます。

他にも、生きた細胞を扱うための保存と輸送の難しさ、他人の細胞を使う場合の免疫拒絶、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 細胞治療患者本人や他人から採取した細胞を体外で培養・加工し、患者の体に移植して病気を治療する方法を指す。失われた組織の再生が期待される一方、製造と品質管理に専用の設備を要する。

ステムリムの強み|「再生誘導医薬」を開発

ステムリムが「再生誘導医薬」を開発|現在は、塩野義製薬へ開発の権利を提供|体内の幹細胞を・患部へ集める/化学合成で・安定して製造

体内の幹細胞を患部へ集める

従来の薬の多くは、患部に直接作用して炎症や症状を抑える設計で、失われた組織を作り直す力は持っていませんでした。

同社の「再生誘導医薬」は、患者自身の幹細胞を呼び寄せて組織の再生を促します。中心となる「レダセムチド」は、傷ついた細胞から放出されるタンパク質HMGB1の一部をもとにしたペプチド(アミノ酸が短くつながった物質)です。静脈に投与すると、骨髄にある間葉系幹細胞(骨や軟骨などの細胞に変化できる幹細胞)が血液中へ移り、傷ついた部位に集まります。集まった幹細胞は炎症を抑え、組織の修復を助けると考えられています。点滴で治療できるため、患者は細胞の採取や移植手術の負担を負わずに済むのが利点です。

化学合成で安定して製造

細胞治療では生きた細胞を体外で増やすため、培養の途中で細胞の働きが落ちることがあり、品質を一定に保つことが難しくなります。

同社の薬の有効成分は、化学合成で製造するペプチドです。生きた細胞を扱わないため、一般的な医薬品と同じように、工場で必要な量を計画的に製造し、品質を一定に管理できます。実際に組織を治すのは患者の体内にある幹細胞なので、体外培養による細胞の働きの低下を避けられる点も利点です。細胞治療で課題となる製造・輸送・保管の手間が減るため、流通の負担が軽くなり、専用の設備を持たない医療機関にも薬を届けやすくなります。

FrontJournalの解説
  • 間葉系幹細胞骨髄などに存在し、骨や軟骨、脂肪などの細胞に変化できる幹細胞を指す。傷ついた組織へ移動し、炎症を抑える物質や細胞の増殖を助ける物質を出して、組織の修復に関わる。

再生誘導医薬の未来|皮膚の難病から、心臓や関節の病気へ広がる

点滴の再生誘導医薬が変える未来|皮膚の難病から、心臓や関節の病気へ広がる|難病の表皮水疱症・で効果を確認/希少疾病用医薬品・として発売へ/心臓や関節の・病気へ拡大を目指す

難病の表皮水疱症で効果を確認

レダセムチドは、栄養障害型表皮水疱症(皮膚の層をつなぐタンパク質の異常で、わずかな刺激で皮膚がはがれる遺伝性の病気)の臨床試験で、主要評価項目を達成しました。試験では、治りにくい潰瘍が4例中3例で閉じています。新たな安全性上の懸念は認められていません。国内の患者数は400名前後と想定され、根本的な治療法が確立していない病気です。

希少疾病用医薬品として発売へ

表皮水疱症を対象にしたレダセムチドは、国の承認を得て発売することを目指しています。厚生労働省は2023年5月、この用途のレダセムチドを希少疾病用医薬品(患者数の少ない病気の治療薬として国が指定する薬)に指定しました。指定を受けた薬は優先審査(国の承認審査を他の薬より先に受けられる制度)の対象となり、審査期間の短縮が期待されます。開発と販売の権利を持つ塩野義製薬は、2028年3月までの発売を予定しています。

心臓や関節の病気へ拡大を目指す

同社が目指すのは、同じ薬を、組織が傷つく幅広い病気の治療に使うことです。心臓の血管が詰まって心筋が弱る虚血性心筋症では、医師主導治験(医師が自ら計画して行う臨床試験)の患者登録が2026年4月に終わりました。慢性肝疾患と変形性膝関節症を対象にした、大学病院による臨床試験も終了しています。一方、急性期脳梗塞を対象とした国際的な後期第2相試験は、2026年9月に主要評価項目を達成しなかったと発表されました。これらの病気で効果が確かめられれば、心臓や関節の組織を失った患者も、点滴による再生医療を選べるようになります。

会社概要|大阪大学の幹細胞研究から生まれたステムリム

大阪大学の研究から創業

株式会社ステムリムは、2006年10月に株式会社ジェノミックスとして設立された、大阪大学発の企業です。設立の目的は、大阪大学大学院医学系研究科の玉井克人氏らが見つけた、骨髄の幹細胞を血液中へ呼び出す因子を医薬品にすることでした。玉井氏は同研究科の再生誘導医学寄附講座で教授を務めた研究者で、2026年9月に同社の代表取締役会長CSO(最高科学責任者)に就任しています。社名は2018年7月に現在のステムリムへ変わり、2019年8月には東京証券取引所マザーズに株式を上場し、現在は東証グロース市場に上場しています。

塩野義製薬と開発を進める

同社は2014年11月、レダセムチドについて塩野義製薬とライセンス契約を結び、開発を進めています。同社は、薬の開発・販売などの権利を製薬企業へ許諾し、契約一時金やロイヤリティ(売上に応じた使用料)を得る事業モデルをとっています。2020年6月に大阪大学内へ開いた「再生誘導医学協働研究所」は、大学と共同で設けた研究拠点です。JST(科学技術振興機構)やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、AMED(日本医療研究開発機構)の事業にも採択されてきました。

次の候補薬と遺伝子治療

同社は、レダセムチドに続くペプチドとして、全身に投与する「TRIM3」「TRIM4」と、局所に投与する「TRIM5」の開発を進めています。患者の幹細胞に正常な遺伝子を入れる幹細胞遺伝子治療「SR-GT1」は、2028年に治験を始める予定です。2026年7月末の現預金は約53億円で、2028年までの研究開発に必要な資金を確保しているとされています。

会社情報

会社名株式会社ステムリム(StemRIM Inc.)
所在地大阪府茨木市彩都あさぎ7丁目7番15号 彩都バイオインキュベータ3階
設立2006年10月30日(旧社名:株式会社ジェノミックス。2018年7月に現社名へ変更)
代表代表取締役社長CEO:岡島 正恒。代表取締役会長CSO:玉井 克人
資本金1,000万円(2025年7月末時点)
上場東京証券取引所グロース市場(証券コード4599)。2019年8月に東証マザーズへ上場
従業員69名(2025年7月時点・派遣社員を含む)
事業再生誘導医薬の研究開発。候補薬「レダセムチド」(塩野義製薬へライセンス済み)、新規ペプチド「TRIM3」「TRIM4」「TRIM5」、幹細胞遺伝子治療「SR-GT1」
技術領域骨髄の間葉系幹細胞を血液中へ動員し、損傷した組織に集めて再生を促すペプチド医薬
連携大阪大学(再生誘導医学協働研究所・寄附講座)。塩野義製薬(2014年11月にレダセムチドのライセンス契約)
採択JST「A-STEP」。NEDO「2013年度イノベーション実用化ベンチャー支援事業」。AMED「令和6年度 再生・細胞医療・遺伝子治療産業化促進事業」
URLhttps://stemrim.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

再生医療と聞くと、細胞を体外で育てて移植する姿を思い浮かべます。ステムリムの発想は逆で、体がもともと持つ修復の仕組みを、薬で後押しします。細胞を運ぶのではなく、体の中の細胞に来てもらう。この発想の転換が、素直に面白いと感じます。

着想のきっかけは、皮膚が繰り返しはがれる表皮水疱症の患者で、皮膚の再生が観察されたことです。その観察から見つかった仕組みが薬になり、同じ病気の患者に向けて最初の発売を目指しています。研究の出発点と出口が一本の線でつながっている点が、印象に残ります。

1つの薬が、皮膚から心臓、関節へと対象を広げていけるのか。臨床試験の結果を追いかけたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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