株式会社Luxonus|光と超音波で細い血管を立体的に描く光超音波3Dイメージング装置を開発する京都大学発ディープテック

株式会社Luxonus(ルクソナス)

Luxonus「光超音波3Dイメージング」を研究|研究領域=光と音で血管を立体的に映す装置/強み=半球型センサで細い血管も描く/将来性=大学病院から診療の現場へ

企業紹介|Luxonusとは?

体の細い血管を立体のまま映し出す技術、「光超音波3Dイメージング」。Luxonusは、この光超音波3Dイメージングの社会実装を目指す、京都大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。医療機器の承認を受けた光超音波イメージング装置「LME-01」を、大学病院や研究機関へ提供しています。

キーワード「光超音波3Dイメージング」

「光超音波3Dイメージング」は、体に当てたパルス光から生じる超音波を捉え、血管の形を立体的に描く画像化技術です。特徴は、半球型に並べた超音波センサで信号を受け、細い血管の走行をそのまま三次元で再現できる点にあります。形成外科や血管外科の診療で、皮膚の下を通る血管の状態を体の外から確かめられます。

市場課題|細い血管は画像で追いにくい

現状の血管画像検査の課題|現状は、造影剤や被ばくで再検査しにくい/細い血管の状態は画像で追いにくい/造影剤や被ばくで再検査しにくい

細い血管の状態は捉えにくい

皮膚の下を通る細い血管の状態は、体の外から捉えにくいままです。手足のむくみや傷の治りにくさには、太い血管ではなく毛細血管に近い細い血管の流れが関わるといわれています。血管の走行が画像で分からなければ、手術の計画にも治療の効果の確認にも、判断の材料が限られます。

造影剤と被ばくで反復しにくい

広く使われている血管の画像検査は、造影剤の投与やX線の照射を伴うものが中心です。造影剤は腎機能や体質によって使いにくい場合があり、X線を用いる検査では被ばくを伴うため、どちらも短い間隔では繰り返しにくい検査です。経過を何度も追う目的には向かず、治療の前後の変化を確かめにくくなります。

他にも、CTのX線遮蔽やMRIの磁気を遮る設備、検査のたびに生じる患者の身体的な負担、細い血管の画像を診療の判断へつなげる読み解きの難しさ、といった課題があるといわれています。

Luxonusの強み|光超音波3Dイメージング

Luxonusが「光超音波3Dイメージング」を開発|今後は、光と音で血管の反復撮影が可能に/半球型センサで血管を立体に/造影剤も放射線も使わずに撮影

半球型センサで血管を3D化

体の中で生じた超音波は全方向へ広がるため、平面に並べたセンサでは届く向きが限られ、立体の形を組み立てにくいという課題がありました。

体表へ近赤外(目に見えない波長の光)のパルス光を当てると、血液中のヘモグロビンが光を吸収して熱に変わります。照射が短時間に限られるため、熱が逃げる前に血液が急激に膨張し、その体積の変化が超音波として伝わる仕組みです。同社の装置は、この超音波を受ける素子(音を電気信号に変える部品)を半球状に並べ、血管をはじめから立体として捉えます。半球状に並べる利点は、平面より広い範囲の向きから超音波を受けられる点です。血管の走行がどの向きであっても信号が欠けにくくなります。

造影剤も放射線も使わない

造影剤やX線を用いる検査は、遮蔽設備や造影剤の管理を前提とするため、実施できる施設と場面が限られます。

同社の「LME-01」は、手足の血管を対象に、造影剤も放射線も使わずに撮影する装置です。患者が寝台と一体の装置へ手足を載せると、深さに応じて色を分けた血管の立体像が得られます。X線の遮蔽室や磁気を遮る専用設備も要りません。2022年9月15日に医療機器製造販売承認を取得し、形成外科(傷あとや変形を治す診療科)の術前検査などに用いられています。光音響(光を当てて音を生じさせる現象)の原理に基づく医療機器としては、2022年9月の時点で国内に先行する承認例が確認されていないとされます。

FrontJournalの解説
  • 光超音波3Dイメージング体に当てた短いパルス光を血液中のヘモグロビンが吸収し、そのときの熱膨張で発生する超音波を捉えて、血管を立体的に描く技術を指す。超音波を体外から送って反射を測る従来の超音波検査とは異なり、超音波そのものが体内で生じる。光の吸収の差を音として読み取るため、造影剤を使わずに血管を高いコントラストで描き出せる。学術分野では光音響イメージングとも呼ばれる。

光超音波3Dイメージングの未来|医療と研究への応用

体を傷つけない光超音波3Dイメージングが変える未来|患者の負担が減り、診療と研究へ広がる/大学病院の臨床で血管の変化を観察/研究用装置が海外の機関へ/小型化で地域の医療機関へ拡大

大学病院の臨床で使われる

「LME-01」は、すでに大学病院の臨床で使われています。2024年6月には慶應義塾大学病院へ装置が設置されました。2026年5月には、京都大学医学部附属病院形成外科との共同研究の成果が、国際学術誌「Photoacoustics」に掲載されました。ケロイド(傷あとが盛り上がって広がる状態)が再発する前に、まわりの血管の見え方が変わることを三次元の画像で捉えた報告です。

研究用装置が海外へ広がる

同社は、医療機器とは別に研究用の装置も展開しています。動物実験用の光超音波3Dイメージング装置「LRK-01」がその一つで、2025年5月には台湾の国家衛生研究院へ設置されました。「LRK-01」は薬効の評価や生体の観察に用いる装置で、診療に使う医療機器とは区別されます。基礎研究で得られた知見が積み重なることが、血管を立体で見る手法を診療で活用する土台になります。

小型の装置で普及を目指す

同社が目指すのは、「光超音波3Dイメージング」を使える施設を増やすことです。現在の装置は寝台と一体の据え置き型で、設置には一定の広さが必要です。2023年12月には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業に採択され、アームを動かし、任意の方向から撮影できる小型の装置を開発しています。装置の小型化によって、大学病院だけでなく地域の医療機関でも血管の立体像を撮れる状態を目指しています。

会社概要|株式会社Luxonusの事業内容

京都大学とキヤノンが起点

Luxonusの起点は、京都大学とキヤノンが2006年度に始めた共同研究「CKプロジェクト」です。この成果は2014年度から内閣府の「ImPACT」へ引き継がれ、光超音波イメージング装置として形になりました。同社は、そこで完成させた技術を実用化することを目的に、2018年12月に設立されています。代表取締役は、慶應義塾大学名誉教授の相磯貞和氏が務めています。

医療機器の承認とNEDO採択

開発は公的な事業の支援を受けて進んでいます。2019年には経済産業省の「J-Startup」(有望なスタートアップを選んで集中支援する制度)に選ばれ、同年、日本医療研究開発機構(AMED)の開発事業にも採択されました。「LME-01」の承認を受けた翌年の2023年には、内閣府の「第6回日本医療研究開発大賞」で「スタートアップ奨励賞」を受けています。2023年12月からはNEDOの「ディープテック・スタートアップ支援事業」に採択され、小型装置の開発を進めています。

シリーズC1で2.3億円を調達

資金面では、2023年7月にシリーズC1ラウンドで約2.3億円を調達しました。シリーズCは、製品を量産して事業を伸ばす段階にあたる資金調達です。引受先は京都大学イノベーションキャピタル、アイティーファーム、ケイエスピー、フューチャーベンチャーキャピタルなどの投資家です。この資金は、装置の開発による競争力の強化と、海外への事業展開の準備に充てる予定とされています。

会社情報

会社名株式会社Luxonus(ルクソナス/Luxonus Inc.)
所在地神奈川県川崎市幸区新川崎7-7 AIRBIC A22(2019年4月に開設した開発拠点)。登記上の本店は東京都品川区北品川三丁目6番43-502号
設立2018年12月
代表相磯 貞和(代表取締役/慶應義塾大学名誉教授・芝浦工業大学客員教授)
調達シリーズC1で約2.3億円(2023年7月)。シリーズBで約4.3億円(2021年9月)。シリーズAで約6億円(2019年11月)。引受先は京都大学イノベーションキャピタル、アイティーファーム、ケイエスピー、フューチャーベンチャーキャピタル、慶應イノベーション・イニシアティブ、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル ほか
事業光超音波技術を応用した画像撮影装置の開発と販売。光超音波イメージング装置「LME-01」(承認番号 30400BZX00212000・2022年9月15日承認)、動物実験用の研究装置「LRK-01」
技術領域光超音波3Dイメージング、光音響イメージング、半球型に並べた超音波センサ、血管イメージング、画像診断機器
連携京都大学医学部附属病院形成外科との共同研究(ケロイドの光超音波イメージング)。慶應義塾大学病院への装置設置。台湾・国家衛生研究院への研究用装置の設置
採択経済産業省「J-Startup」(2019年)。AMED 先進的医療機器・システム等開発プロジェクト(2019年)。NEDO「ディープテック・スタートアップ支援事業」(2023年度)。第6回日本医療研究開発大賞 スタートアップ奨励賞(2023年)
URLhttps://www.luxonus.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

血管を画像で見る検査は、これまで造影剤やX線を用いるものが中心でした。これらの検査は広い範囲を写せる一方で、細い血管を一本ずつ立体でたどることは簡単ではありません。Luxonusが取り組むのは、光と音という別の組み合わせで、その一本を描き出す技術です。

この装置の価値は、造影剤も放射線も使わずに同じ場所を短い間隔で見返せる点にあります。手術の前に血管の走行を確かめ、治療のあとに変化を追えることが実務上の利点です。同じ患者を時間軸で見比べられることが、診療の判断を確かなものにしていくと期待されます。

京都大学とキヤノンの共同研究から始まった約20年の蓄積が、血管を診る方法を変えようとしています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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