発酵長寿研究所「アルプス酵母の清酒」を開発

株式会社発酵長寿研究所

発酵長寿研究所「アルプス酵母の清酒」を開発|技術領域=3種の酵母の酒の・ブレンドと氷温熟成/強み=3酵母の酒を・一本にブレンド/将来性=味の見える化を・目指す

企業紹介|株式会社発酵長寿研究所とは?

長野県の酒蔵で使われてきた、吟醸酵母「アルプス酵母」。株式会社発酵長寿研究所は、その酵母を使った清酒の開発・販売に取り組む、信州大学発のスタートアップです。3種の酵母で造った酒をブレンドし、氷温(凍る直前の低い温度帯)で熟成させた純米吟醸酒「Yeast Alps Special」を販売しています。

キーワード「アルプス酵母」

「アルプス酵母」は、同社の公式サイトによると、平成の初めに育種(目的の性質をもつ酵母を選び出すこと)された吟醸酵母です。吟醸酒の香りの中心「カプロン酸エチル」は、リンゴに似た果実香をもつ成分で、酵母の性質で生成量が変わります。同サイトの代表あいさつには、この成分を多く作る株として得られたと記載されています。

市場課題|清酒の製造量が減り、吟醸酒の製造場も減っている

現状の清酒製造の課題|現状は、製造数量が減り製造場も減少|清酒の製造数量が・減っている/吟醸酒の製造場も・減っている

清酒の製造数量が減っている

国税庁の調査では、令和6酒造年度の清酒の製造数量(アルコール分20度換算)は285,636kLで、前年度より6.2%減っています。清酒を製造した蔵(製造場)の数も1,104場で、前年度より13場減りました。製造数量と製造場の数が、ともに減っている状況です。

吟醸酒の製造場も減っている

吟醸酒を造った場数は649場で、前年度の687場から38場減りました。吟醸酒は、酵母が生む香りが個性を左右する酒です。吟醸酒を造る場が減ると、吟醸酒の造り手が減り、選択肢が狭まる可能性があります。

他にも、本醸造酒の製造数量が10.8%減ったこと、一般酒を造る場数が715場から696場へ減ったこと、特定名称酒(吟醸酒や本醸造酒などの総称)の製造数量が1.9%減ったこと、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 酒造年度国税庁が清酒の製造量や製造場の数などを集計する期間で、7月1日から翌年6月30日までを1年度とする区分である。

発酵長寿研究所の強み|「アルプス酵母」の清酒を開発

発酵長寿研究所が「アルプス酵母の清酒」を開発|現在は、ブレンドした純米吟醸酒を提供|3酵母の酒を・ブレンドで設計/氷温熟成で・まろやかな風味に

3酵母の酒を混ぜて設計

清酒の香りと酸味は、発酵に使う酵母の性質で変わります。酵母ごとに、生み出す香り成分や酸の量が異なります。

公式サイトによると、「Yeast Alps Special」は、アルプス酵母、高い吟醸香を生成する「長野D酵母」、キレのあるリンゴ酸(酸味の成分)を多く作る「長野R酵母」の3種で発酵させた酒を、ブレンドした純米吟醸酒です。代表あいさつには、ブレンドの狙いが、育種当初のアルプス酵母で造った酒の印象に近づけることだと記載されています。3種それぞれの長所を組み合わせた設計です。飲む人は、3種の酵母の特徴を組み合わせた味を、一本で味わえます。

氷温熟成でまろやかな風味に

清酒は、貯蔵する温度が高いほど成分の変化が速く進みます。変化が進みすぎると、香りが損なわれたり色づいたりする場合があります。

同社は、3種の酵母で造った酒をブレンドして氷温(凍る直前の低い温度帯)で貯蔵し、「まろやかで、風味豊か」な味に仕上げています。氷温貯蔵で品質の劣化を抑えられる点も、公式サイトで説明されています。ブレンドする3種類の原酒(水を加える前の酒)の質や配合は毎年異なるため、年ごとに味が微妙に違うビンテージ(醸造年ごとの個性)が生まれる点が特徴です。飲む人は、年ごとの違いを飲み比べて、自分の好みに合う年の味を選んで楽しめます。

FrontJournalの解説
  • 氷温熟成清酒などを、凍る直前の低い温度帯で貯蔵し、成分の変化をゆるやかに進めて、味をまろやかになじませる手法である。

「アルプス酵母」の未来|長野の清酒を、国内外の飲み手へ

「アルプス酵母」の清酒が変える未来|長野の清酒を、国内外の飲み手へ|長野バスターミナルで・販売を開始/豪州の商談会に・参加/味の見える化を・目指す

長野の販売先が加わる

長野バスターミナル会館内の「発車オーライ」で、「清酒アルプス酵母スペシャルブレンド」を購入できるようになりました。2025年12月11日に同店で同社による清酒酵母と熟成の講話が行われ、そのご縁で販売が決まったと、2026年1月19日に公式サイトで告知されています。購入できる場所は、長野県内の交通拠点です。

豪州の商談会に参加

同社は、2025年11月10日のメルボルンと11月13日のアデレードで開かれた、国税庁主催の商談会に参加しました。告知には、「清酒アルプス酵母スペシャルブレンド」の販路開拓活動を行ったと記載されています。この参加は、海外の飲み手に清酒を届けるための販路開拓にあたります。

味の見える化を目指す

同社は九州大学などと、味センサ(味の成分を電気的に測る装置)による分析で清酒の味を示す「味の見える化」を目指しています。公式サイトによると、1993年(平成5年)の信州博(松本市)にきき酒ロボット(味センサ)を出展して以来の取り組みです。味センサの発明者として九州大学の都甲名誉教授の名も挙げられています。現時点では目指す段階です。味が数値で示せれば、飲む前に味の傾向を比べやすくなり、年ごとに異なるビンテージの違いも説明しやすくなる見込みです。

会社概要|発酵長寿研究所の事業内容・設立背景

信州大学発として認定

株式会社発酵長寿研究所は、信州大学の「信州大学発スタートアップ認定企業」の一覧(2025年7月18日現在)に掲載されています。設立は2021年5月19日です。本社は長野県長野市青木島町にあります。代表取締役は蟻川幸彦氏です。同サイトには、長野県が2018年に「発酵・長寿」県を宣言した旨が記載されています。

発売と取扱いの歩み

2023年5月19日には、「Yeast Alps Special」の2023年版にあたる「YAS2023」の販売を開始しました。YAS2023は、アルコール濃度18%の純米吟醸原酒で、720mlと300mlの2種類の容量があります。2024年9月22日には、長野県信州そば協同組合の依頼を受け、同組合が海外向けに開発した干しそば「NAGANO SOBA」の国内取り扱いも始めています。

清酒の開発と販売が事業

主な事業は、「清酒アルプス酵母スペシャルブレンド(Yeast Alps Special)」の開発と販売です。3種の酵母で発酵させた酒をブレンドし、氷温で熟成させた純米吟醸酒です。公式サイトのオンラインショップのほか、長野市内の販売店で購入できます。販売店には、善光寺外苑の「西之門 よしのや」などがあります。

会社情報

会社名株式会社発酵長寿研究所
所在地長野県長野市青木島町大塚1411
設立2021年5月19日
代表蟻川 幸彦
事業清酒「Yeast Alps Special」の開発・販売。「NAGANO SOBA」の国内取り扱い
技術領域吟醸酵母のブレンドと氷温熟成による清酒の開発
連携九州大学など(味の見える化)
URLhttps://www.hakkochoju.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

日本酒の香りは、使う酵母で大きく変わります。株式会社発酵長寿研究所の「Yeast Alps Special」は、3種の酵母で造った酒を氷温で熟成させ、香りと味と酸の重なりを一本にまとめようとする取り組みです。特徴は、長野県の酒蔵で使われてきた吟醸酵母を軸に、3種の酵母の長所を一本に組み合わせている点にあります。

長野県の酒蔵で使われてきた酵母が、海外の商談会を経て、国内外の飲み手にどう受け止められるのか、今後も注目していきます。

FrontJournal編集部

出典:信州大学 信州大学発スタートアップ認定企業一覧

出典:国税庁 清酒の製造状況等について(令和6酒造年度分)

出典:株式会社発酵長寿研究所 公式サイト

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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