京都フュージョニアリング|「核融合炉の周辺機器」を研究

京都フュージョニアリング株式会社(Kyoto Fusioneering)

京都フュージョニアリング「核融合炉の周辺機器」を研究|研究領域=炉心の周囲で加熱と燃料を担う/強み=ジャイロトロンと燃料サイクル/将来性=発電と水素製造へ用途を広げる

企業紹介|京都フュージョニアリングとは?

核融合の実用化を装置の側から支える技術として、注目を集める「核融合炉の周辺機器」。京都フュージョニアリングは、その「核融合炉の周辺機器」の社会実装を目指す、京都大学発のディープテック企業です。プラズマ加熱装置ジャイロトロン燃料サイクル設備を、国内外の核融合研究機関や企業へ提供しています。

キーワード「核融合炉の周辺機器」

「核融合炉の周辺機器」は、炉心の周囲に置かれ、加熱・燃料の供給・熱の回収を担う装置群です。特徴は、炉の方式が違っても共通して必要になり、装置ごとに専門の製造技術が求められる点にあります。日本や欧米で建設が進む核融合の実証設備では、建設を担う機関がこれらの装置を外部から調達します。

市場課題|核融合の実用化には課題が残る

現状の核融合開発の課題|現状は、装置の開発が重く実証が進みにくい/1億度の加熱が装置の負担に/燃料は炉の中で自給が前提

1億度の加熱が装置の負担に

核融合を起こすにはプラズマ(原子核と電子に分かれた高温の気体)を1億度以上に保つ必要があり、その装置の開発が重い負担になっています。使うのは、大電力のマイクロ波発振管や、高速の粒子を撃ち込む中性粒子ビーム入射装置です。装置の性能が伸びなければ、反応を長く維持する実験が進みにくくなります。

燃料のトリチウムは自給が前提

核融合の燃料となるトリチウム(水素の同位体の1つ)は自然界にほとんど存在せず、炉の内部での自給が前提になります。そのため炉のブランケット(炉心を囲み熱と燃料を担う機器)では、反応で生じる中性子をリチウムに当て、燃料を増殖しながら回収する仕組みが必要です。この仕組みを実物の設備で確かめられなければ、自給の見通しは立ちにくくなります。

加熱と燃料は、実験炉の段階から続く課題です。他にも、高速の中性子に耐える構造材料1,000度級の熱を取り出す設計、長時間のプラズマの維持、といった課題があるといわれています。

強み|ジャイロトロンと燃料サイクル

京都フュージョニアリングが「核融合炉の周辺機器」を開発|今後は、装置の製造まで実証が可能に/ジャイロトロンを開発して製造/燃料の循環を一体で実証

大電力のジャイロトロンを製造

加熱に使う大電力のマイクロ波発振管は、高い出力と長時間の安定した発振を両立しにくく、製造できる主体は世界的に限られるといわれています。

同社の中核事業は、核融合炉に使うプラズマ加熱装置ジャイロトロンの開発と製造です。ジャイロトロンは、電子ビームと磁場の作用で大電力のマイクロ波を発振し、それをプラズマへ入射して1億度以上への加熱を担う装置の1つです。内部は、電子を打ち出す電子銃、マイクロ波を生む空洞共振器、電子を受け止めるコレクタ、波を外へ出す出力窓で構成されます。2024年1月には、35ギガヘルツ帯の装置で1メガワット級の出力を3秒間維持しました。滋賀県高島市には、2026年秋ごろの稼働を予定する生産拠点を整備中です。

燃料サイクルを一体で実証

燃料のトリチウムを扱う設備は、供給から回収までを1つの系統として通しで動かす機会が多くありませんでした。

同社は、燃料の供給から排気・精製・同位体分離(質量の差で同じ元素を分ける操作)・貯蔵までを一体で回す燃料サイクル設備を開発しています。核融合炉では燃え残った燃料が排気に混ざるため、不純物の除去濃度の調整を経て炉へ戻す工程が必要です。「UNITY-2」は、商用の規模に相当する重水素とトリチウムの燃料サイクルを一括して実証する設備で、試運転は2026年後半を予定しています。稼働すれば、燃料を炉へ戻すまでの工程を実物の設備で確かめられます。

FrontJournalの解説
  • 核融合炉の周辺機器核融合炉の炉心を取り囲み、加熱・燃料の供給と回収・熱の取り出しを担う装置の総称である。炉心でプラズマを閉じ込める磁石とは役割が分かれ、プラズマを1億度以上へ温めるジャイロトロン、燃料を循環させる燃料サイクル、熱と燃料を同時に扱うブランケットが含まれる。炉の方式が違っても共通して必要になるため、専門の製造技術が産業として成立する。

周辺機器の未来|発電と熱利用への応用

核融合炉の周辺機器が変える未来|実験炉の機器から発電と熱利用へ/ITER向け機器の試作を受注/熱を使う発電の実証が進む/水素や合成燃料も熱から製造へ

ITER向け機器の試作を受注

同社の装置は、国際協力で建設が進む実験炉「ITER」(日本や欧米など7極が参加する国際熱核融合実験炉)の関連機器として、すでに採用されています。2026年5月には、量子科学技術研究開発機構から、ITERのテストブランケット系統で使うトリチウム回収システムの試作を受注しました。海外拠点は英国・米国・ドイツなどにあり、そこから各国のプロジェクトへ機器を届けます。研究機関が担ってきた領域に、民間企業の製造が組み込まれ始めています。

熱を使う発電の実証へ

京都府久御山町の「UNITY-1」では、核融合炉から熱を取り出して発電する工程の実証が進んでいます。現在の段階は、リチウム鉛の液体金属(熱の運搬と燃料の増殖を兼ねる合金)を最大4テスラの磁場のもとで循環させ、流動の挙動と熱の伝わり方を確かめる試験です。この設計では、液体金属が運ぶ500度の熱を熱交換器で空気へ移し、その空気でタービンを回します。2026年秋以降には、発電と水素製造の統合試験を予定しています。

発電以外の熱利用を目指す

同社が目指すのは、核融合で得た熱を発電以外の用途へも広げることです。将来の炉で取り出す1,000度級の熱は、水素の製造合成燃料(二酸化炭素と水素から製造する燃料)の生成にも使えるとされています。熱を取り出しながら燃料を増やせるかを確かめるため、米国オークリッジ国立研究所と増殖性能を測る施設「UNITY-3」を建設する計画です。日本・カナダ・米国の3拠点で実証を重ね、核融合を産業として成立させることを目指します。

会社概要|京都フュージョニアリング

京都大学の研究から起業

京都フュージョニアリングは、2019年10月に設立されました。創業の中心となったのは、京都大学エネルギー理工学研究所の教授だった小西哲之氏と、長尾昂氏の2名です。設立の狙いは、長年の核融合研究の成果を炉の周辺機器という産業の形へ移すことです。現在は小西氏が共同創業者・代表取締役CEOを務め、代表取締役社長COOには世古圭氏が就いています。

研究機関と企業に連携を拡大

連携先は、研究機関から企業へ広がっています。2023年9月にはカナダ原子力研究所と提携し、2024年5月には燃料サイクルの合弁会社「Fusion Fuel Cycles」を設立しました。2024年2月には英国原子力公社と枠組みを結び、増殖ブランケット(燃料を増やす型のブランケット)の技術で連携しています。2026年7月には、日本ガイシとフッ化リチウムとフッ化ベリリウムからなる溶融塩FLiBeの技術で戦略的覚書を結びました。

統合実証プラント「UNITY-2」は、この合弁会社がチョークリバー研究所のトリチウム施設で建設しています。ジャイロトロンの実証は、核融合科学研究所筑波大学英国原子力公社などとの共同研究で進めてきました。装置は米国・英国・ドイツ・チェコのプロジェクトで採用されています。

累計約330億円を調達

同社は、2026年8月時点でエクイティ(株式)による調達が累計約330億円に達しています。直近は、2026年8月に公表したシリーズDの1回目の締切です。シリーズDの内訳は株式167.2億円で、融資・与信枠(金融機関が貸せる上限)90億円を合わせると257.2億円になります。それ以前は、2023年5月のシリーズCが総額105億円、2025年9月が株式と融資を合わせて67.5億円です。資金は「UNITY」の開発と量産体制の準備に充てるとしています。

会社情報

会社名京都フュージョニアリング株式会社(Kyoto Fusioneering Ltd.)
所在地東京都大田区平和島六丁目1番1号 東京流通センター 物流ビルA棟 AW1-S。京都リサーチセンター(京都府久御山町)。滋賀県高島市の生産拠点(2026年秋ごろ稼働予定)。英国・米国・ドイツの子会社
設立2019年10月1日
代表小西 哲之(共同創業者・代表取締役CEO)。世古 圭(代表取締役社長COO)。坂本 慶司(取締役CTO)
資本金1億円
従業員167人(2026年6月30日時点。派遣・業務委託・海外子会社を含む)
調達累計の株式による調達額 約330億円(2026年8月時点)。シリーズDで株式167.2億円と融資・与信枠90億円。主な投資家はJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、Coral Capital、JERA、三井住友信託銀行ほか
事業核融合炉の周辺機器の研究開発・設計・製造。ジャイロトロン。燃料サイクルシステム。ブランケット・熱回収システム
技術領域核融合、プラズマ加熱、ジャイロトロン、燃料サイクル、ブランケット
連携カナダ原子力研究所と合弁会社「Fusion Fuel Cycles」を設立(2024年5月)。英国原子力公社と枠組みを締結(2024年2月)。オークリッジ国立研究所と「UNITY-3」を建設(2026年8月公表)。日本ガイシと戦略的覚書(2026年7月)
採択ITER向けトリチウム回収システムの試作を受注(QST・2026年5月)
URLhttps://kyotofusioneering.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

核融合の話題は、炉の中心の反応に集まりがちです。発電には、周辺の装置も同じ精度で揃う必要があります。同社が選んだのは、この周辺を引き受ける立ち位置です。

同社が手がけるのは、部品ではなく、炉の外側を構成する装置の体系です。加熱と燃料と熱回収が一社でつながっていることは、実証の速さに効くはずです。3拠点に設備を並べる構えにも、その狙いが表れています。

京都大学から出た技術が、世界の核融合を支える日を待ちたいです。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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