Symbiobe|「海洋性紅色光合成細菌」を研究

Symbiobe株式会社(Symbiobe Inc.)

Symbiobe「海洋性紅色光合成細菌」を研究|研究領域=海水に生息する/紅色の光合成細菌/強み=海水を養分にして/大量に培養/将来性=肥料の原料に/魚のエサにも

企業紹介|Symbiobe株式会社とは?

空気と海水を資源に変える技術として、注目を集める「海洋性紅色光合成細菌」。Symbiobe株式会社は、その「海洋性紅色光合成細菌」の社会実装を目指す、京都大学発の環境系ディープテックスタートアップです。窒素を約11%含む有機質肥料(生物由来の肥料)「Air Fertilizer」や養殖用飼料「Air Feed」を、農業や水産養殖の現場へ向けて開発しています。

キーワード「海洋性紅色光合成細菌」

海洋性紅色光合成細菌」は、光を受けて海水中のCO2と空気中の窒素を同時に取り込み、体内へ有機物として蓄える微生物です。特徴は、常温常圧のまま窒素をアミノ酸などの有機物へ変えられる点にあります。

市場課題|窒素肥料の製造は燃料を多く消費

現状の窒素肥料の課題|現状は、合成に燃料を使い原料も輸入に依存/合成に高温高圧/燃料を多く消費/原料の多くを/輸入に依存

肥料の製造が脱炭素の課題に

窒素肥料の原料アンモニアは、合成に多くのエネルギーを使います。合成には高温高圧を要する「ハーバー・ボッシュ法」(窒素と水素の反応法)が使われ、アンモニアの製造は、国際エネルギー機関(IEA)の集計で世界の最終エネルギー消費の約2%を占めます。脱炭素が進み、食料増産とCO2排出削減の両立が課題です。

肥料原料の輸入依存が供給を左右

肥料の主な原料は輸入に依存し、価格や供給の変動を受けやすい状況です。農林水産省の資料によれば、尿素などの主な原料はほとんどを輸入で調達しています。肥料は経済安全保障推進法の特定重要物資(供給不安時に国が指定する物資)に指定され、国内での原料確保が求められています。

他にも、家畜のふん尿による堆肥は成分がばらつきやすく、有機質肥料は効き方が緩やかです。産地が偏ることによる価格の変動、輸送にともなう燃料の消費、といった課題があるといわれています。

Symbiobeの強み|海洋性紅色光合成細菌

Symbiobeが「海洋性紅色光合成細菌」を開発|今後は、光と海水で肥料の製造が可能に/常温常圧で/CO2と窒素を固定/空気と海水から/有機質肥料を製造

光合成でCO2と窒素を固定

アンモニアの合成には高温高圧が必要で、その条件を保つために大量の燃料を使ってきました。

同社が使う「海洋性紅色光合成細菌」は、光合成をしながら海水中のCO2と空気中の窒素を体内へ取り込みます。常温常圧のまま、窒素をアミノ酸などの有機物へ変えられる点が、高温高圧の合成との違いです。同社は、海水とミネラルを養分にこの細菌を大量培養する技術を確立してきました。京都大学桂キャンパスでは4,000リットル規模の実証プラント(本格生産前の規模確認設備)が稼働し、生産の規模を広げています。培養から粉末にするまでの工程で、アミノ酸の組成を保つ独自の製法も開発しています。

空気と海水から肥料を製造

肥料の原料は産地が限られ、国内で生産する手段が乏しいまま、輸入した資源を加工する流れが続いてきました。

同社の「Air Fertilizer」は、空気と海水を出発点として製造する有機質肥料です。培養した細菌を破砕し、乾燥させて粉末にしたもので、重量の約11%が窒素にあたります。炭素と窒素の比(C/N比)が4程度と小さく、有機質肥料でありながら化学肥料に近い速さで効きます。理化学研究所、京都大学、科学技術振興機構(JST)との共同研究では、無機肥料の4倍施肥しても発芽や生育に悪影響が見られない、耐性も示されました。小松菜やブロッコリーの栽培でも、良好な生育が確認されています。

FrontJournalの解説
  • C/N比肥料に含まれる炭素と窒素の重量の比。値が小さいほど窒素の割合が高く、土のなかで分解されて作物へ早く届く目安になる。化学肥料は即効性が高い一方、有機質肥料は分解を待つ分だけ効き方が緩やかになりやすい。C/N比の低さは、有機質肥料でありながら化学肥料に近い速さで作物へ栄養を届けられることを示している。

海洋性紅色光合成細菌の未来|農業と水産へ

紅色光合成細菌が変える未来|肥料から飼料や繊維へ、用途が広がる/魚粉に代わる/養殖の飼料へ/実験室と工場の/中間規模で実証/クモの糸と同じ/タンパク質で繊維

魚粉に代わる飼料を研究

同社の技術は、養殖飼料の原料である魚粉(魚を乾燥させて粉末にした飼料原料)に代わる素材としても研究されています。京都大学との共同研究では、「海洋性紅色光合成細菌」を用いた養殖用飼料の作出に成功しました。給餌試験では、市販の飼料と遜色のない成長が確認されています。魚粉は天然の水産資源に由来しており、価格の変動も大きい点が背景です。

年産1トンの実証設備を構築

生産の規模を広げる実証設備が、山口県山陽小野田市に構築されました。出光興産と、その子会社である西部石油の敷地内に新設されたベンチプラント(実験室と量産設備の中間規模の設備)で、製造の規模は年間1トンです。出光興産がプロセス技術と規模拡大の知見を、同社が微生物開発の知見を持ち寄ります。培養の実証試験は、2026年2月を目処に開始するとされています。

飼料や繊維へ用途拡大を目指す

同社が目指すのは、空気と海水を出発点とする資源の生産を、肥料の外へ広げることです。クモの糸のタンパク質を細菌に生産させる繊維「Air Silk」も、その一つです。地域で排出されたCO2を細菌が取り込み、その地域の農業へ肥料として戻す循環の仕組みも検討されています。どこにでもある大気と海洋を原料とする生産の確立を目指します。

会社概要|Symbiobeの事業内容・設立背景

京都大学の研究から事業化

Symbiobe株式会社は、2021年1月に京都市で設立されました。創業の中心となったのは、京都大学大学院工学研究科 材料化学専攻の沼田圭司教授です。光合成細菌とバイオ高分子(微生物や植物が生み出す高分子)の研究成果を、産業へ応用することを目的としています。代表取締役には伊藤宏次が就任し、沼田は取締役CSO(最高科学責任者)を務めています。

出光興産などと実証で連携

連携先は、エネルギーや計測の分野へ広がっています。2021年度には京都大学、島津製作所などとともに、桂キャンパスでの大量培養の実証に取り組みました。2024年6月には出光興産と戦略的パートナーシップを結び、ベンチプラントでの培養実証を計画しています。地域での事業化に向けては、京都産業21の「産学公の森」推進事業にも採択されています。

累計約10.7億円を調達

同社は2024年9月時点で、累計約10.7億円の資金調達を完了しています。直近はシリーズAラウンドで8.0億円を調達しました。シリーズAは、試作した製品を現場で使える形に育て、量産へ進むための資金調達の段階にあたります。資金は、培養プラントの規模拡大や生産能力の増強、製品を高める研究開発、人材の獲得に充てます。

会社情報

会社名Symbiobe株式会社(Symbiobe Inc.)
所在地京都府京都市西京区御陵大原1-39 京大桂ベンチャープラザ南館
設立2021年1月8日
代表代表取締役 伊藤 宏次。取締役CSO 沼田 圭司(京都大学教授)。CTO Geoffrey Liou
調達累計約10.7億円(2024年9月時点)。直近はシリーズAラウンドで8.0億円。投資家は環境エネルギー投資、出光興産、Shimadzu Future Innovation投資事業有限責任組合(運営者:グローバル・ブレイン)、三菱UFJキャピタル、Beyond Next Ventures、京都大学イノベーションキャピタル、京都キャピタルパートナーズ、山口キャピタル
事業海洋性紅色光合成細菌を用いたCO2と窒素の固定技術の研究開発、有機質肥料や養殖用飼料の製造
技術領域海洋性紅色光合成細菌(Rhodovulum sulfidophilum)の大量培養、CO2と窒素の同時固定、有機質肥料「Air Fertilizer」、養殖用飼料「Air Feed」、タンパク質繊維「Air Silk」
連携出光興産、西部石油(年産1トンのベンチプラント。培養の実証試験は2026年2月を目処に開始)。京都大学、島津製作所ほか(桂キャンパスの実証プラントでの大量培養)。理化学研究所、京都大学、科学技術振興機構(窒素肥料としての利用に関する共同研究)
採択京都産業21「産学公の森」推進事業。泉佐野スタートアップ支援プログラム(産業排水の資源化に関する実証)
URLhttps://www.symbiobe.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

窒素肥料は、20世紀の食料増産を支えてきた一方で、高温高圧の合成という重い工程を抱えたままでした。同社は、その工程を生き物の代謝へ置き換えようとしています。強い温度と圧力で効率を上げる道とは、逆の方向を向いています。

注目したいのは、同じ細菌から肥料・飼料・繊維という複数の出口が伸びている点です。培養した菌体をどう扱うかで、届く産業が変わります。単なるCO2の削減ではなく、空気と海水を原料に読み替えたところに、この会社の面白さがあります。

京都の研究室で育った赤い細菌が、畑と海、そして繊維の分野へ広がろうとしています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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