炎重工「水上ドローン」を開発

炎重工株式会社

炎重工「水上ドローン」を開発|開発領域=遠隔操作で・水域を点検・測量/強み=軽量機体と・下水道点検モデル/将来性=水域インフラの・点検を省人化へ

企業紹介|炎重工株式会社とは?

ダムや橋梁、下水道といった水域のインフラを、人が近づかずに点検・測量できる技術「水上ドローン」。炎重工株式会社は、その社会実装を目指す、筑波大学発の水域ロボット系ディープテック企業です。軽量な水上ドローン「Swimmy Eye」と下水道点検モデルを開発し、水域インフラの調査・点検・測量の現場へ提供しています。

キーワード「水上ドローン」

「水上ドローン」は、人が乗らずに水面を航行し、カメラやセンサで水域を調べる機体(USV)です。空を飛ぶドローンのように高度な操縦技能を要さず、水中ドローンのように有線で接続する必要もありません。同社の機体は、無線の遠隔操作で、人が近づきにくい場所の映像を記録できます。

市場課題|水域インフラの点検に残る、落水と有毒ガスの危険

現状の水域点検の課題|現状は、落水と有毒ガスのリスクが残る|水際の作業は・落水の危険を伴う/下水道管内は・有毒ガスの危険

水域作業は落水の危険を伴う

ダムや橋梁、下水道といった水域インフラの点検・測量は、単純な作業でも落水のリスクを伴います。同社は、水域の現場が危険と人手不足に直面していると位置づけています。インフラの老朽化が進むなか、点検の重要性は増す一方です。

下水道管内は有毒ガスの危険

下水道管の内部は汚水が流れる環境で、硫化水素などの有毒ガスが発生する可能性があります。管径の小さな下水管には人が入れない箇所もあり、管内を調べること自体が容易ではありません。2025年1月に埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故を受け、国土交通省は同年3月、全国の自治体に下水道管路の全国特別重点調査を要請しました。

他にも、沿岸部の治水施設の点検、小口径の下水管の管内調査、高水位や高流速の大口径管での調査、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 硫化水素下水中の有機物が分解される過程で発生する無色の有毒ガスである。腐った卵のようなにおいがあり、高濃度では人の命にかかわる。

炎重工の強み|「水上ドローン」を開発

炎重工が「水上ドローン」を開発|現在は、水域の点検用ドローンを提供|軽量な機体で・水域を遠隔点検/管内を航行して・下水道を点検

軽量な機体で水域を遠隔点検

従来の水域の点検・測量は、人が水際まで近づく作業が中心で、落水のリスクを避けられませんでした。

同社の「Swimmy Eye」は、全長62cm・重さ約7kgの小型の水上ドローンで、現場への持ち運びから使用、片づけまでを1名で行えます。無線で遠隔操作するため、人が近づけない場所でもデータを取得できます。飛行ドローンのような高度な操縦技能も、水中ドローンのような有線接続も、船舶免許も不要です。取得したデータは記録として残るため、点検結果をあとから見直せます。1名で運用でき遠隔操作もできるため、点検や測量を少ない人数で行え、作業員が水際に近づく場面を減らせます。

管内を航行して下水道を点検

従来の下水道管の点検は、作業員が有毒ガスの発生しうる管内に入る必要がある点が課題でした。

同社の「下水道点検モデル」は、水面を航行する小型の点検用ドローンです。Φ600mm以上の管に対応し、マンホールから投入して、管の外から無線で遠隔操作する方式です。4K画質のカメラと照明を積み、標準のバッテリーで、最長4時間まで稼働します。録画したデータは、経年変化の確認や、新人研修などの教育にも使える記録です。管内に作業員が入る場面を減らせるため、有毒ガスの危険を避けた点検が、安全に行いやすくなります。

FrontJournalの解説
  • USVUnmanned Surface Vehicleの略で、人が乗らずに水面を航行する機体の総称である。無線で操る型も、自動で航行する型も含まれる。

水上ドローンの未来|水域インフラの点検を省人化へ

水上ドローンが変える未来|水域インフラの点検を省人化へ広げる|水域インフラの・点検に導入/下水道点検の・全国導入を進める/水域作業の・自動化を目指す

水域インフラの点検に導入

水上ドローンは、ダムや橋梁、下水道など水域インフラの調査・点検・測量の現場で使われています。機体はハードもソフトも自社開発の国産で、量産は、製造実績のある協力工場に委託する体制です。用途に合わせて高輝度の照明やセンサなどを搭載できるため、現場ごとの必要に応じた構成にできます。水域の調査で、少人数で運用できる機体が使われています。

下水道点検の全国導入を進める

同社は、国土交通省が進める下水道施設の老朽化対策やストックマネジメント(施設を計画的に維持管理する手法)に役立てるため、下水道点検モデルの全国への導入を進める方針です。2025年1月には、千葉市の雨水管で水陸両用ドローンの実証を行いました。同年4月10日には、下水道点検モデルを使い、カンツールの協力のもと、Φ600mmのヒューム管(遠心力で成形した鉄筋コンクリートの管)で航行と撮影の検証を行いました。下水道の点検で、安全に調べられる手段が1つ加わります。

水域作業の自動化を目指す

同社は、水上ドローンの開発で、水域産業の作業の自動化を目指しています。機体は無線での遠隔操作に加え、オプションで自動航行にも対応します。自社で開発した制御技術を軸に、量産機のほか、受託造船として用途に合わせた設計の水上ドローンも開発できる体制です。水域の点検や測量が遠隔化・省人化されれば、人手不足の現場でも、作業員の落水や有毒ガスの危険を減らしながら、インフラの維持管理を続けやすくなります。

会社概要|炎重工の事業内容・設立背景

滝沢市に本社を置く企業

同社は2016年2月に設立され、本社を岩手県滝沢市に置いています。代表取締役は古澤洋将です。2017年には筑波大学発ベンチャーとして認定されました。研究所は、東京都江東区の東京海洋大学にある海の研究戦略マネジメント機構の1階に置いています。

受賞・選定と実証事業

2019年には経済産業省のJ-Startup(有望スタートアップの選定プログラム)に選ばれました。2021年にはCEATEC AWARDのスタートアップ&ユニバーシティ部門で準グランプリ、2025年には東京都ベンチャー技術大賞の特別賞を受けています。2024年度には、国土交通省の「海の次世代モビリティの利活用に関する実証事業」に選定され、千葉市で水陸両用ドローンの実証を行いました。2025年の大阪・関西万博では、総務省と情報通信研究機構(NICT)による期間展示に参加しています。

ファンドからの出資

2025年4月、もりおかSDGs投資事業有限責任組合から出資を受けました。同ファンドは、盛岡市、滝沢市などの自治体と、盛岡信用金庫、ミライドアTohoku株式会社が出資する投資組合です。盛岡広域などに本社や拠点を置き、社会課題の解決に寄与する企業を投資対象としています。

会社情報

会社名炎重工株式会社(ほむらじゅうこう)
所在地岩手県滝沢市穴口57番地9
設立2016年2月25日
代表代表取締役 古澤 洋将
調達もりおかSDGs投資事業有限責任組合から出資(2025年4月・直近)
事業水域産業向けの制御技術を活用した自動化製品の企画、開発、製造、販売、保守
技術領域水上ドローン(USV)。下水道点検
連携筑波大学(2017年に筑波大学発ベンチャーとして認定)。カンツール(2025年4月の管内撮影に協力)
採択J-Startup(2019年)。国土交通省 海の次世代モビリティの利活用に関する実証事業(2024年度)
URLhttps://www.hmrc.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

水域の点検は、人が近づけるかどうかで、やり方も危険の大きさも変わります。水上ドローンは、その近づく役目を機体に任せる技術です。点検や測量が遠隔になるほど、作業員は安全な場所から判断に集中できます。

炎重工の特徴は、持ち運べる小型の機体から下水道の管内を調べる専用モデルまで、現場の条件に合わせて水上ドローンを開発している点です。人が入れない場所の映像を記録できるため、これまで調べにくかった水域の状態を、点検の記録として残せます。用途に合わせた設計ができる点も、現場ごとに事情が異なる水域の点検では強みになります。

水域インフラの老朽化が進むなか、点検の担い手が減っても調べ続けられる手段は欠かせません。水上ドローンが現場に根づき、水辺の安全を支える日を期待しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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