Makino「軟磁性材料」を開発

株式会社Makino(マキノ)

Makino「軟磁性材料」を開発|研究領域=磁化しやすい・ナノ結晶の薄帯/強み=鉄損が小さく・大量生産できる/将来性=モータとトランスの・省エネ化を目指す

企業紹介|株式会社Makinoとは?

モータやトランスの鉄心に使われ、電力損失を左右する「軟磁性材料」。株式会社Makinoは、その社会実装を目指す、東北大学発の素材系ディープテック企業です。合金「M alloy」の薄帯(厚さ数十μm以下の薄い帯状の金属)と、ナノ結晶化済み(ナノメートル級の微細な結晶を含む状態)の円環状の鉄心(トロイダルコア)の販売を手がけています。

キーワード「軟磁性材料」

「軟磁性材料」は、小さな磁界でも磁化しやすく、磁界を取り除くと磁気をほとんど残さない磁性材料です。モータやトランスの鉄心に使われ、材料の特性が機器の電力損失を左右します。株式会社Makinoは、この分野でナノ結晶材料「M alloy」を扱っています。

市場課題|モータとトランスの損失とケイ素鋼の限界

現状の電気機器の課題|現状は、鉄心の損失とケイ素鋼の限界が課題|損失の半分超が・モータとトランス/ケイ素鋼の・損失改善は飽和

損失の半分超がモータとトランス

国内の電力損失全体の半分以上は、モータとトランスに起因するとされています。これらは、電気を動力や別の電圧へ変える機器です。鉄心を繰り返し磁化するとき、熱として失われる電力(鉄損)が無駄になります。

ケイ素鋼の損失改善は飽和状態

ケイ素鋼は、損失特性の改善が飽和状態とされます。モータやトランスの鉄心には、鉄にケイ素を加えたケイ素鋼が広く使われています。鉄損をさらに下げるには、新しい材料の登場が望まれる状況です。

他にも、大型の機器に使える幅の広い薄帯を作る難しさ、大型の熱処理炉で最適な条件を決める難しさ、熱処理で材料がもろくなる脆化(ぜいか)を定量的に評価する難しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 鉄損磁性材料を交流の磁界で繰り返し磁化したとき、材料の内部で熱として失われる電力である。単位はW/kgで表し、小さいほど損失が少ない。

Makinoの強み|「軟磁性材料」を開発

Makinoが「軟磁性材料」を開発|これまでに、急冷法で薄帯の量産を実現|高磁束密度と・低損失を両立/安価な材料で・大量生産できる

高磁束密度と低損失を両立

軟磁性材料の分野では、高い磁束密度と優れた軟磁気特性の両立が課題とされてきました。磁束密度は材料をどこまで強く磁化できるかの指標(単位はT=テスラ)で、軟磁気特性は磁化しやすく磁気を残さない性質です。

同社の「M alloy」は、磁束密度が約1.7Tと公式サイトに記載。同サイトの表では、商用電源の周波数50Hz・磁束密度1.0Tの鉄損は、トロイダルコアでM alloyが0.05W/kg、Fe基アモルファス(結晶構造を持たない鉄系合金)が0.35W/kg、従来のナノ結晶材料(FeSiBPCu系)が0.17W/kgです。同条件の単板では、M alloyの0.32W/kgに対し、無方向性電磁鋼板(ケイ素鋼を板にした一般的な鉄心材料)は0.81W/kgです。鉄損が小さいと、熱で失う電力が減ります。

安価な材料で大量生産できる

ナノ結晶材料は、研究室の試作では優れた特性を示しても、安価な材料で安定して大量生産する工業化が課題でした。

「M alloy」は、安価な材料で安定的に大量生産でき、研究室レベル以上の磁気特性を持つ材料として工業化され、小型部品用として完成しているといわれています。製造は単ロール液体急冷法(溶けた合金を回転するロールで急冷する方法)で、自動化された設備で連続的に行われるとされています。薄帯の板厚は14〜25μm、板幅は20〜210mmです。ナノ結晶化済みのトロイダルコアやシートは任意の形状で販売され、少量から購入できます。

FrontJournalの解説
  • ナノ結晶材料ナノメートル(10億分の1メートル)サイズの微細な結晶を含む金属材料である。軟磁性材料の分野で、低損失化の手段として研究されている。

軟磁性材料の未来|モータとトランスの省エネ化

低損失の軟磁性材料が変える未来|モータとトランスの省エネ化を目指す|小型部品用の・材料として完成/大型のモータと・トランスへの適用/損失の低減で・省エネ社会を目指す

小型部品用の材料として完成

「M alloy」は、小型部品用の材料として完成しているとされています。一方、EV(電気自動車)のモータ向けには、2022年度のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援事業で、サンプルを板状でナノ結晶化する熱処理について、基本パラメータの検証が終わりました。熱処理時に軟磁気特性へ影響するパラメータを整理し、安定した特性を得る条件も明らかになっています。2023年4月時点で、大手企業からの問い合わせが増え、数社との共同開発が始まったとされています。

大型のモータとトランスへの適用

大型のモータとトランスへの適用を目指しています。2023年度の「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」に、省エネ型モータとトランスのテーマが採択されました。技術開発の項目は三つです。幅広薄帯の作製に使う新組成と製造法の開発、大型熱処理炉の開発と最適パラメータの決定、脆化の定量的評価法の決定です。

損失の低減で省エネ社会を目指す

同社は、「M alloy」による損失の低減で、電気機器の省エネルギー化を目指しています。NEDOの採択テーマ概要は、見込まれる成果として、コアの損失が70%以上改善されると記しています。比較の基準は記載がありません。EVのモータに使うと、電費(一定距離を走るのに要する電力)の4%程度が低減し、電池への負荷も下がると予測されています。

会社概要|Makinoの事業内容・設立背景

東北大学の材料研究から設立

株式会社Makinoは、東北大学の研究シーズを基に、2021年11月1日に設立されました。代表取締役の牧野彰宏は、東北大学金属材料研究所の教授などを務めた研究者で、同大の名誉教授です。2009年には、東北大学在職中に、高磁束密度と優れた軟磁気特性を兼ね備えたFe基ナノ結晶材料(鉄を主成分とし、組成はFeSiBPCu)の開発に成功しました。同社は2022年4月1日に、宮城県仙台市のLABO・CITY仙台へ移転しています。

採択と大学との連携

2022年度に、NEDOの「研究開発型スタートアップ支援事業/NEDO Entrepreneurs Program(NEP)」のType-Bに採択されました。テーマは、省エネ・低炭素社会の実現に資する超低損失軟磁性材料の社会実装です。2023年度の省エネ型モータ・トランスのテーマでは、同社が助成事業者を務め、国立大学法人東北大学が共同研究先・委託先に入っています。

素材の販売と技術供与

同社の事業は、「M alloy」の薄帯と、ナノ結晶化済みのトロイダルコアやシートの販売です。共同研究開発と技術相談も手がけます。熱処理技術は、技術ライセンス契約に基づき有償で供与します。

会社情報

会社名株式会社Makino
所在地宮城県仙台市青葉区南吉成6丁目6番地の3 LABO・CITY仙台
設立2021年11月1日
代表代表取締役 牧野 彰宏
事業磁性材料の研究開発、販売及び技術移転並びにコンサルティング業務
技術領域軟磁性材料。ナノ結晶材料
連携国立大学法人東北大学(2023年度NEDO採択テーマの共同研究先・委託先)
採択NEDO Entrepreneurs Program(NEP)Type-B(2022年度)。省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム(2023年度)
URLhttps://www.akmakino.com

編集後記|FrontJournal編集部より

電気機器の損失は、使う側からは見えにくい無駄です。鉄心の材料を変えることで機器の効率が上がるなら、省エネルギーへの寄与は大きくなります。稼働時間の長い機器ほど、その差は積み上がります。

株式会社Makinoの特徴は、研究室で生まれたナノ結晶材料を、薄帯とトロイダルコアとして届ける点です。材料を用途に合わせたサイズで少量から供給するため、新しい鉄心材料が製品へ入る道筋が見えます。機器メーカーにとっては、鉄心材料の選択肢が増える変化です。

モータやトランスの鉄損を材料から下げる取り組みが、電力を使う社会の土台を支える日を期待しています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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