株式会社フィルダクト|AIと3Dテクノロジーで支えるマウスピース矯正「DPEARL」を提供する東京科学大学発の歯科系ベンチャー

株式会社フィルダクト

フィルダクト「マウスピース矯正」を開発

企業紹介|フィルダクトとは?

費用と通院の負担で矯正に踏み出せない課題を解く手がかりとして、普及が進む「マウスピース矯正」。フィルダクトは、その社会実装を目指す、東京科学大学発の歯科医療系ディープテック企業です。透明なマウスピース型の歯科矯正サービス「DPEARL」(ディパール)を、3Dプリンターでの製造とAIによる経過観察、提携歯科医院を組み合わせて提供しています。

キーワード「マウスピース矯正」

マウスピース矯正は、透明な樹脂製の装置(マウスピース)を歯にはめ、段階ごとに装置を替えながら歯並びを整える方法です。金属のワイヤーを使う方法と比べて目立ちにくいことが特徴です。「DPEARL」では、歯科医が装置が合うと診断した場合に契約し、自宅でのオンラインサポートと定期的な通院で治療を進めます。

市場課題|歯列矯正は費用と通院の負担が大きい

現状の歯科矯正の課題

費用が高く始めにくい

歯列矯正は、費用が始める前の壁になりやすい治療です。国内の価格相場は約100万円が目安です。費用の負担が大きいままでは、矯正を必要とする人が治療を見送りやすくなります。

通院の回数と見た目の悩み

ワイヤー矯正(歯に付けた金属の装置で歯を動かす方法)は、矯正期間中の通院回数が多く、金属の装置が目立つことが課題です。通院のたびに仕事や学業の予定を調整する必要があり、見た目への懸念から治療をためらう人もいます。通院と見た目の負担が重なったままでは、治療を始めても続けにくくなります。

他にも、治療の完了まで長い期間がかかりやすいこと、金属の装置が頬や唇に当たって口の中が傷つきやすいこと、歯みがきがしにくく虫歯や歯周病のリスクが高まりやすいこと、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ワイヤー矯正歯の表面に付けた金具に金属のワイヤーを通し、その張力で歯を少しずつ動かす矯正方法を指す。装置が目立ちやすく、調整のための定期的な通院が必要になる。

フィルダクトの強み|「マウスピース矯正」を開発

フィルダクトが「マウスピース矯正」を開発

デジタル製造で費用を抑制

従来の歯列矯正は、装置が患者さんに届くまでに複数の工程と中間コストが重なり、費用が膨らみやすい面がありました。

同社は「DPEARL」(透明なマウスピース型の矯正サービス)の装置を、3Dプリンターと、コンピューター上で形を設計するCAD(Computer-Aided Design)で製造しています。工程を効率化して中間コストを削減したことで、価格は従来の約2分の1とされています。価格は、治療の期間に応じて税込30万8,000円から69万3,000円です。この価格により、矯正を検討する人が費用面で始めやすくなります。

AIの経過観察で通院を削減

従来の矯正は、歯の動きを確認する手段が通院時の診察に限られ、経過の確認のために通院を重ねる必要がありました。

同社は、専用の機器とスマートフォンで撮影した歯の画像をAIが解析し、130項目を自動でチェックする仕組みを、2025年4月から提携医院へ順次導入しています。AIが治療計画からのずれを検知してアラートを出すため、歯科医の早めの対応が可能です。患者さんが週1回など定期的にセルフスキャン(自分で行う歯の撮影)をすれば、歯科医が状態を遠隔から確認できるため、不要な通院を避けられます。撮影の頻度は、治療の計画によって異なります。

FrontJournalの解説
  • CADコンピューター上で製品の形を設計するソフトウェアや技術を指す。マウスピースのように、一人ひとり形が異なる製品の設計に使われる。

マウスピース矯正の未来|口の健康を身近にする

マウスピース矯正が変える未来

提携医院が130拠点超に拡大

提携医院は2025年5月に130拠点を超え、展開エリアは23都府県となりました。契約の前に歯科医院で診察を受けるため、装置が合うかどうかを先に確かめられます。近くの医院に相談の窓口があることで、最初の一歩の負担が下がります。

歯科医院の業務を支援

同社は、歯科医院向けの歯科技工所(装置を製造する専門の施設)と連携するクラウドシステム「MediLeap」(メディリープ)を提供しています。2025年5月には、クラウド歯科業務支援システム「Dentis」を提供するメドレーと協業を始めました。両社は、歯科業界の課題解決に向けて協力しています。

口の健康を支える事業を目指す

同社は、歯科矯正を入り口に、口の健康(オーラルヘルス)を身近にする事業の社会実装を目指しています。近年は、口の状態と全身の病気とのつながりが研究で明らかになり、口の健康に取り組む重要性が高まっているとされています。2025年4月には、東京科学大学とのマウスピースの素材の特性に関する共同研究の開始を発表しました。全国の歯科医院との連携を広げることを目指す方針です。

会社概要|フィルダクトの事業内容・設立背景

大学院在学中に創業

フィルダクトは、代表の金子奏絵氏が東京医科歯科大学(現・東京科学大学)の修士課程に在学中の2018年3月に設立しました。2019年11月に「DPEARL」の先行受付を始め、2020年に正式リリースしています。本社は東京都千代田区神田鍛冶町にあり、COO(最高執行責任者)には春名航佑氏が就いています。事業は、マウスピース型の歯科矯正サービスと、歯科医院向けシステムの提供です。

認定と選出の実績

2023年に、小学館「DIME」の「最強のスタートアップ100」に選ばれました。同じ2023年には、「東京医科歯科大学発ベンチャー」に、歯学分野で初めて認定されています。2024年度には、日経トレンディの「未来をつくるスタートアップ大賞」の10社にも選出されました。

累計約5億円の資金調達

2022年6月に、Mistletoe Japanが主導する約1.5億円のプレシリーズA(シリーズAの前の段階の資金調達)を実施し、累計の調達額は約2億円となりました。2024年10月には、GHOVCが主導し、朝日メディアラボベンチャーズが加わる約3億円のシリーズA 1st(シリーズAの1回目)を実施し、累計の調達額は約5億円となりました。2025年5月には、メドレーを引受先とする第三者割当増資(特定の相手に株式を割り当てる増資)も実施しています。

会社情報

会社名株式会社フィルダクト(Philduct Inc.)
所在地東京都千代田区神田鍛冶町3-3-1
設立2018年3月6日
事業マウスピース型歯科矯正サービス「DPEARL」、歯科医院向けシステム「MediLeap」の提供
技術領域マウスピース矯正、3Dプリンター、CAD、AIによる経過観察、歯科医院向けクラウドシステム
連携東京科学大学(素材特性の共同研究)、メドレー(協業)
URLhttps://philduct.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

歯列矯正は、必要とされながら踏み出せない人が多い分野です。費用と通院の負担を、デジタルの製造工程とAIによる経過観察で下げようとする発想が目を引きます。矯正の装置そのものに加えて、届け方を設計し直している点に、同社の着眼点があります。

同社の事業は、装置を製造する工程、歯科医院、患者さんをつなぐ流れ全体にわたります。提携医院が130拠点を超えたことは、この流れが歯科医院の側にも受け入れられていることを示す数字です。提携先が増えるほど、矯正を相談できる地域も広がります。

今後は、歯科医院向けシステムとの連携や、大学との素材の共同研究がどのように形になるかが注目されます。矯正の質を保ちながら、受けやすさをどこまで高められるかが、次の焦点です。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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