VitroVo「MEA計測」を研究

株式会社VitroVo(ヴィトロボ)

VitroVo「MEA計測」を研究

企業紹介|株式会社VitroVoとは?

薬の候補物質が神経の働きに与える影響を、培養した細胞の電気信号から調べる「MEA計測」。株式会社VitroVoは、その社会実装を目指す、東北工業大学発のバイオ系ディープテック企業です。神経細胞の電気信号を測る受託試験とデータ解析を、製薬企業を中心に提供しています。

キーワード「MEA」(微小電極アレイ)

「MEA」は、培養皿の底に微小な電極を並べた基板です。細胞が出す電気信号を波形として記録でき、この計測を「MEA計測」と呼びます。薬の候補物質が神経や心筋の働きに与える影響を、培養した細胞で調べる創薬の現場で使われます。

市場課題|動物実験の代替が求められる

現状の薬の評価の課題

動物実験の代替への期待

薬の候補物質の評価では、動物実験にはヒトと動物の違いが残り、費用と時間もかかる点が課題です。背景は、ヒトiPS細胞(さまざまな細胞に変わる能力を持つ細胞)から作った神経細胞や心筋細胞を評価に使う流れです。精神・神経疾患やALS(筋萎縮性側索硬化症)、アルツハイマー病などの研究でも、CMOS-MEAシステムは、これらの新薬研究への活用が想定されています。

他にも、ヒトと動物の種差、動物実験にかかる費用と時間、非臨床試験(ヒトに投与する前の動物や細胞での試験)における安全性評価の精度向上、といった課題があるといわれています。

従来のMEAは電極が少ない

電極が少ないMEAでは、一度に調べられる細胞の範囲や細かさが限られる点が課題です。電極が多く高密度なほど、細胞の活動を細かく調べられます。このため、より多くの電極を備えた計測系の開発が進められています。

FrontJournalの解説
  • ヒトiPS細胞ヒトの体の細胞から作る、さまざまな細胞に変わる能力を持つ細胞である。神経細胞や心筋細胞に変えて、薬の候補物質が細胞の電気信号へ与える影響を調べる評価に使われる。

VitroVoの強み|「MEA計測」を研究

VitroVoが「MEA計測」を研究

神経の波形で薬の影響を調べる

VitroVoは、ヒト由来の細胞を使った評価で、動物実験の課題を補うことを目指しています。

同社は、ヒトiPS細胞由来の神経細胞をMEAの培養皿で育て、薬の候補物質を加えたときの電気信号(細胞が出す微弱な電気の変化)の波形を記録します。波形の変化から神経の活動の変化を調べ、薬の候補物質が神経へ与える作用を読み取る仕組みです。この計測は、薬の候補物質による神経への思いがけない作用を調べる用途です。機械学習による波形の解析も取り入れており、既知の化合物との近さの判別や、作用機序(薬が働く仕組み)の特定に使われます。波形から、神経への作用を調べることができます。

多数の電極で広く記録する

電極の数が少ないMEAでは、細胞の活動を細かくとらえにくい点が弱みでした。

ソニーセミコンダクタソリューションズが開発する高密度のCMOS-MEA(半導体の製造方法で作る電極アレイ)は、約23.7万個の電極で検出した電気信号を、画像データとして出力する計測系です。記録と同時に、神経細胞の発火の様子を確認できる点も特徴です。広い範囲を一度に記録でき、細胞1個ずつの活動データを得られます。VitroVoは、このデータから薬の候補物質を評価するアルゴリズムの提供と受託試験を担います。電極が多い分、細胞1個ずつの活動の記録が可能です。

FrontJournalの解説
  • 発火神経細胞が電気信号を出すことである。電極がその信号を検出し、頻度などを数値にして、薬の影響を調べる解析に使う。

MEA計測の未来|創薬と食品への展開

高密度のMEA計測が変える未来

高密度MEAの試験提供

2025年6月、VitroVoはソニーセミコンダクタソリューションズ、SCREENホールディングスとともに、約23.7万電極のCMOS-MEAシステムの試験提供を始めました。ソニーセミコンダクタソリューションズが高密度のCMOS-MEAを開発し、SCREENホールディングスが計測・解析ソフトウェアの開発と試験提供の窓口を担い、VitroVoが薬の候補物質の評価向けのアルゴリズム、培養・解析のコンサルティング、受託試験を担います。VitroVoは、薬の候補物質の評価向けに最適化したアルゴリズムを実装しています。3社は、利用者の要望を集め、製品化に向けた開発と市場調査を進める計画です。

食品分野への受託の広がり

近年は、食品・飲料メーカーから、機能性食品の開発のための成分の評価依頼が増えています。同社の事業は、製薬企業からの受託試験が中心です。そこで蓄積した細胞分析の知見が、食品成分の評価にも生かされます。

海外の受託事業の拡大を目指す

同社は、受託事業を海外の顧客へ広げることを目指しています。あわせて、チップの上に臓器のモデルを作る「MPS」(マイクロ・フィジオロジカル・システム)の分野にも取り組んでいます。

会社概要|VitroVoの事業内容・設立背景

2023年に設立

株式会社VitroVoは、2023年12月27日に設立された、東北工業大学発のスタートアップです。同大学で初の大学発ベンチャーとして設立され、代表取締役の鈴木郁郎氏は、2003年ごろからMEAの研究を続けてきました。社名は、試験管内の実験を指す「in vitro」と、生体内を指す「in vivo」を組み合わせた名称で、生体内の結果を外挿(推定)できる試験管内の試験を目指す意味です。

連携と体制

主な連携先は、ソニーセミコンダクタソリューションズ、SCREENホールディングス、東北工業大学です。代表取締役は、長嶋竜介氏と鈴木郁郎氏の2名です。所在地は、宮城県仙台市青葉区にあります。

事業内容

事業は、受託試験、データ解析、共同研究開発、フェノタイプスクリーニング(細胞の見た目や働きの変化から化合物を選ぶ手法)、コンサルティングです。ヒトiPS細胞由来の中枢神経や心筋の細胞を使い、MEAやCaイメージング(細胞内のカルシウムの変化を画像で記録する手法)などで評価します。資本金は700万円、従業員は9名です。

会社情報

会社名株式会社VitroVo
所在地宮城県仙台市青葉区中央4丁目4-19 アーバンネット仙台中央ビル3F
設立2023年12月
代表代表取締役CEO 長嶋竜介/代表取締役 鈴木郁郎
資本金700万円
従業員9名
事業受託試験/データ解析/共同研究開発/フェノタイプスクリーニング/コンサルティング
技術領域MEA計測によるヒトiPS細胞由来神経細胞の評価
連携東北工業大学、ソニーセミコンダクタソリューションズ、SCREENホールディングス
URLhttps://vitrovo.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

薬の評価を、培養した細胞の電気信号から進める手法は、動物実験を減らしながら薬を評価したいという要望に応える手段です。2023年末に設立された会社ですが、鈴木氏のMEA研究は20年以上にわたります。その研究の経験が、受託試験の土台です。高密度のMEAシステムは3社の連携で試験提供され、VitroVoは解析と受託試験で、高密度のMEAシステムを評価の現場へつなぐ役割を担います。

とくに注目したのは、約23.7万電極のMEAシステムの試験提供です。製品化はこれからで、3社は、利用者の要望を集める段階にあります。創薬から食品へ広がる評価の場で、どのような使われ方をするのか、今後の展開を見守りたいと考えます。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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