エクイタスメディカル株式会社は後継者のいないクリニックの事業承継と医療DXを担う東京科学大学発の企業

エクイタスメディカル株式会社

エクイタスメディカル「クリニックの事業承継」を研究|事業領域=診療以外の運営を引き受ける/強み=医師は診療に経営は専門会社が/将来性=病院と診療所をつなぐ

企業紹介|エクイタスメディカル株式会社とは?

後継者がいないまま診療所が閉じる事態を防ぐ手立てとして、関心が高まる「クリニックの事業承継」。エクイタスメディカル株式会社は、その受け皿づくりに取り組む、東京科学大学認定ベンチャーの医療経営支援企業です。診療以外の運営業務を引き受け、生成AIとクラウドを使った医療DXとあわせて提供しています。

キーワード「クリニックの事業承継」

「クリニックの事業承継」は、引退する医師の診療所を、患者やスタッフを引き継いだまま次の担い手へ渡すことです。土地や設備を売り渡す取引と違い、通院先雇用を保つことを目的とします。難しさは、後継者が見つかった後も経営の負担が残る点にあります。

市場課題|閉じていく地域の診療所

現状のクリニック承継の課題|院長の高齢化で引退が重なる/経営の負担が重く後継者が決まらない

院長の高齢化が進む

地域の診療所では、医師の高齢化が進んでいます。厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師統計によると、2024年12月31日時点で診療所に従事する医師の平均年齢は60.1歳で、病院(大学の医学部に付属する病院を除く)の47.9歳を大きく上回りました。年齢層でも60〜69歳が最も多く、引退の時期を迎える院長が今後まとまって増えるとみられています。

経営の負担で後継者が来ない

後継者が決まらない理由は、診療の腕ではなく経営の負担にあります。診療所を継ぐと、診療のかたわらで採用、勤怠(出退勤の管理)、経理、保険請求、集患(患者を集めること)までを一人で背負うためです。勤務医にとって、この負担は開業をためらう理由になるといわれています。

診療所が閉じれば、患者は別の医療機関を探すことになります。他にも、スタッフの雇用カルテの引き継ぎ在宅医療の担い手といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 保険請求診療にかかった費用のうち、患者の窓口負担を除いた分を公的な医療保険へ請求する事務である。毎月まとめて明細を作るため、診療所では院長と医療事務の負担が大きい業務にあたる。

エクイタスメディカルの強み|診療所の経営を代行

エクイタスメディカルが「クリニックの事業承継」の仕組みを開発|医療と経営を分けて診療所を引き継ぐ/診療以外の業務をクラウドで代行

経営の実務を会社が担う

診療所の承継は、後継者を探して引き合わせるところで終わることが多く、引き継いだ医師が採用も経理も一人で抱えます。

同社は、医療機関を運営する法人が診療を担い、自社が診療以外の運営を担うMS法人(メディカルサービス法人、医療機関の非医療業務を引き受ける会社)の形をとります。株式会社は医療機関を開設できないため、経営の実務だけを切り離して別の会社が受け持つ設計です。採用、勤怠、経理、保険請求、集患といった業務は、医師が代わっても同社の側に残ります。2026年9月には、大阪府茨木市の診療所で、この体制による運営を始めました。

事務をクラウドで代行

予約も問診も会計も別々のシステムで回している診療所では、紙とファクスでの転記が残り、医師と医療事務の手が事務作業に取られます。

同社は、クラウド型の電子カルテ「CLINICS」を軸に、予約、問診、決済までを一つの画面でつなぎます。患者が受診の前に入力した内容は、そのまま診療の記録になります。院内マニュアルやスタッフの教育資料、患者への案内文は、生成AIが下書きを作り、職員が内容を確認する流れです。文書づくりの時間を減らし、その分を診療に充てることをねらいます。予約数や患者数といった経営の数字も同じ仕組みに蓄積されるため、院長は集計を挟まずに運営を見直せます。

FrontJournalの解説
  • MS法人医療機関の非医療業務を引き受ける会社である。株式会社は医療機関を開設できないため、人材や設備、事務の管理だけを別会社が担い、医師が診療に専念できる体制をつくる仕組みとして使われる。

クリニックの事業承継の未来|病院と診療所をつなぐ

運営ごと引き継ぐ承継が変える未来|大阪で運営支援を開始/関西圏と首都圏へ承継を広げる/病院と診療所の連携を目指す

大阪で運営支援を開始

同社は2026年9月1日、大阪府茨木市の茨木こうもと内科クリニック運営支援を始めました。運営は一般社団法人シームリンクメディカルが担い、エクイタスメディカルは診療以外の業務を引き受けます。狙いは、院長が診療を続けられなくなっても地域の医療を止めないことです。クラウド電子カルテと生成AIを前提とした運営の型を、ここで確かめます。

関西圏と首都圏へ広げる

承継する診療所は、関西圏と首都圏で増やす方針です。対象として挙げているのは、内科、小児科、耳鼻咽喉科、整形外科、在宅医療など、地域で必要とされる診療領域です。複数の診療所をまとめて運営するロールアップ(同じ業種の小さな事業者を次々に取り込んで規模を広げる手法)の形をとることで、採用や事務の仕組みを共通化できます。集めた運営の知見は、次に引き継ぐ診療所へそのまま持ち込めます。

病院と診療所の連携を目指す

同社は、病診連携(病院と地域の診療所が役割を分けて患者を診る仕組み)の受け皿を各地につくることを目指しています。退院した後のフォローや、糖尿病などの慢性疾患の管理を担える診療所が増えれば、病院は入院の必要な患者に力を注げます。同社は、病院の中の診療データの活用や勤務医の事務作業を減らす取り組みも進める考えです。国内で積み上げた運営の知見をもとに、アジアを中心とした海外への展開も目指すとしています。

会社概要|エクイタスメディカルの事業内容と設立背景

診療所の受け皿として創業

エクイタスメディカル株式会社は、2026年1月16日に設立されました。本社は東京都中央区日本橋堀留町で、代表取締役は九鬼嵩典氏です。掲げる理念は「すべての人に、途切れない医療を。」で、働きにくさや通いにくさを理由に医療が途切れない状態を目指しています。事業は、クリニックの経営支援、事業承継支援、医療DXの推進の3つです。

採択・連携

2026年7月3日、同社は東京科学大学認定ベンチャーに選ばれました。この認定は、東京科学大学の研究成果や人的資源を活用する企業に与えられます。東京科学大学は、東京工業大学と東京医科歯科大学が統合して生まれた大学で、理工学と医歯学の双方に基盤を持ちます。医療とテクノロジーが交わる同社の事業が、この基盤と近い領域にあると位置づけられました。

運営支援の対価が収入源

同社の収益は、診療所から受け取る運営支援の対価です。医療行為そのものは担わず、医療機関の独立性と医師の判断を尊重する立場をとるとしています。資金面では、2026年8月3日に第三者割当増資(特定の相手に新しい株式を引き受けてもらう資金調達)の実施を発表しました。引受先は、みらい創造インベストメンツ、メドレー、住商ベンチャー・パートナーズなどです。メドレーは、同社が使うクラウド電子カルテ「CLINICS」の提供元にあたります。

会社情報

会社名エクイタスメディカル株式会社(Equitas Medical Co., Ltd.)
所在地東京都中央区日本橋堀留町1-3-16-1011
設立2026年1月16日
代表代表取締役:九鬼 嵩典
調達第三者割当増資の実施を発表(2026年8月3日)。引受先はみらい創造インベストメンツ、メドレー、住商ベンチャー・パートナーズなど
事業クリニック経営支援。事業承継支援。医療DX推進(公式サイトの3事業)。発表資料では、クリニック事業承継とロールアップ、医療と経営を分ける運営、生成AIを前提とした医療DX、病診連携ネットワークの構築の4本柱として説明
技術領域クラウド電子カルテ「CLINICS」を軸とした予約・問診・決済の統合。生成AIによる院内マニュアル、教育資料、患者案内文の作成支援。経営データの分析
連携一般社団法人シームリンクメディカル 茨木こうもと内科クリニックの運営支援(2026年9月1日開始)
採択東京科学大学認定ベンチャー(2026年7月3日選定)
URLhttps://equitas-medical.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

診療所が閉じるとき、失われるのは建物ではなく、通い慣れた場所と、そこにいたスタッフの仕事です。エクイタスメディカルが選んだのは、後継者を紹介して終わるやり方ではなく、経営そのものを引き取る道でした。医療と経営を分けるという発想は目新しいものではありませんが、承継の場面に据えたところに独自性があります。

注目したいのは、クラウド電子カルテ生成AIを、承継の後に必ず来る事務作業へ向けている点です。引き継いだ医師が事務に埋もれれば、承継は一代限りで終わります。運営の型を持ったまま次の診療所へ移せるかどうかが、この取り組みが広がるかどうかの分かれ目になると見込まれます。

設立から日が浅く、公表されている実績は始まったばかりです。地域の医療が途切れない仕組みとして育つことを期待しています。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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