株式会社ガイアバイオメディシン|「他家NK様細胞」を研究

株式会社ガイアバイオメディシン

ガイアバイオメディシン「他家NK様細胞」を研究|研究領域=ドナーの血液が原料の/がんを攻撃する細胞/強み=遺伝子改変を行わず/培養だけで製造/将来性=固形がんの治療へ/適応を広げる

企業紹介|株式会社ガイアバイオメディシンとは?

あらかじめ製造して凍結保存し、必要なときに投与できる技術として、注目を集める「他家NK様細胞」。株式会社ガイアバイオメディシンは、その社会実装を目指す、九州大学発のディープテック企業です。他家NK様細胞を用いた再生医療等製品(細胞や組織を用いる医薬品の法律上の区分)「GAIA-102」を、小児固形がんや腹膜播種の治験の現場へ提供しています。

キーワード「他家NK様細胞」

他家NK様細胞」(NK細胞に似た性質を持つ細胞)は、患者本人ではなく健康なドナーから採った血液を原料につくる、がんを攻撃する免疫細胞の製剤です。特徴は、あらかじめ大量に製造して凍結保存し、必要なときに解凍して投与できる点にあります。治療の現場では、患者ごとの製造を待たずに使えるため、投与までの時間を短くできます。

市場課題|患者ごとに作る細胞医薬品の制約

現状の細胞医薬品の課題|現状は、患者ごとの製造で投与が遅れる/患者本人の細胞は/製造に時間を要する/固形がんは細胞が/内部へ届きにくい

患者ごとの製造で投与が遅れる

細胞医薬品の多くは患者本人の細胞を原料とするため、採取から投与までに時間と費用がかかります。患者ごとに製造ラインを立て、品質を確かめる工程を一人分ずつ繰り返すからです。病状の進行が速い患者ほど、製造を待つあいだに投与の機会を逃しやすくなります。

固形がんは免疫細胞が届きにくい

血液のがんで成果を上げてきた細胞医薬品も、胃や膵臓などの固形がんでは適応が限られ、効果が現れにくいとされています。固形がんは塊を形成し、周囲を線維や免疫を抑える物質で覆うため、投与した細胞が腫瘍の内部まで入り込みにくいからです。そのため、腫瘍へたどり着く力と、内部で働き続ける力の両方を備えた細胞が求められています。

他にも、採取時の体調に左右される細胞の品質、遺伝子改変に伴う設備と規制対応の負担、製造に失敗したときの投与機会の逸失、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 細胞医薬品生きた細胞そのものを有効成分とする医薬品。化学合成した低分子薬と異なり、原料の採取から培養、品質確認までを製造工程に含む。
  • NK細胞生まれつき備わった免疫の一種で、異物やがん細胞を見つけて直接攻撃する細胞。自然に殺す細胞を意味する Natural Killer の頭文字からNKと呼ぶ。
  • 固形がん胃や膵臓、肺などの臓器で塊をつくるがんの総称。血液のがんと違い、薬剤や免疫細胞が塊の内部まで到達しにくいという特徴を持つ。

ガイアバイオメディシンの強み|他家NK様細胞

ガイアバイオメディシンが「他家NK様細胞」を開発|今後は、凍結保存で待たずに投与が可能に/ドナーの血液から/まとめて製造し凍結/培養の条件を工夫し/腫瘍へ入り込む力

凍結保存して必要時に投与

患者本人の細胞を使う方法では、採取から投与まで一人分ずつ工程を積み上げる必要がありました。

GAIA-102」は、健康なドナーの末梢血単核球を原料に、あらかじめ製造して凍結保存する他家NK様細胞です。複数のドナーの細胞を混ぜ合わせることで、ドナーごとの個体差を抑えつつ大量に製造できます。凍結した製剤は必要なときに解凍できるため、患者ごとの製造を待つ工程がなくなります。一般名は「fulamleucel」で、2026年4月に世界保健機関(WHO)の推奨国際一般名のリスト(第95回公表分)へ収載されました。

腫瘍へ届き内部で攻撃する

体外で増やした免疫細胞は、腫瘍の内部まで入り込む力を保ちにくいという課題がありました。

同社は、遺伝子改変を行わず培養の条件だけで細胞の性質を引き出す製造方法を確立しました。この方法で得られる細胞は、腫瘍へ向かうホーミング、内部への浸潤(塊の中へ入り込むこと)、獲得免疫の誘導という働きを併せ持つとされています。2026年4月には、性質を保ったまま製造量を増やす改良製法の前臨床研究(人に投与する前の段階の研究)が、専門誌「Journal for ImmunoTherapy of Cancer」に掲載されました。

FrontJournalの解説
  • 末梢血単核球血液から赤血球や血小板を除いて取り出す、丸い核を持つ細胞の集まり。NK細胞やT細胞を含み、細胞医薬品の原料に使われる。
  • ホーミング血流に乗った免疫細胞が、目的の組織を見分けて、そこへ向かって移動する性質を指す。
  • 獲得免疫一度出会った異物の特徴を記憶し、次に同じものが現れたときに狙って攻撃する仕組み。T細胞や抗体がこの働きを担う。
  • 推奨国際一般名世界保健機関が医薬品の有効成分に付ける、世界共通の名称。国や企業をまたいで同じ成分を指せるようにする仕組み。

他家NK様細胞の未来|固形がんへの応用

凍結保存する他家NK様細胞が変える未来|治験から製造まで国内の拠点で担う/小児の固形がんで/治験が進んでいる/胃や膵臓のがんへ/適応を広げる/自社の施設で/製造から供給まで

小児固形がんで治験が進行

同社の他家NK様細胞は、医師主導治験ですでに患者へ投与されています。九州大学病院では、再発や難治の神経芽腫(子どもに多い、神経のもとになる細胞から生じる固形がん)などを対象とした第Ⅰ相試験(少人数で安全性と投与量を確かめる最初の試験)が2022年9月に始まりました。この試験は臨床研究等提出・公開システム(jRCT)に登録され、被験薬は同社が提供しています。2025年11月には、第67回日本小児血液・がん学会学術集会で中間データが報告されました。

腹膜播種の治験へ適応拡大

胃がんと膵臓がんの腹膜播種を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相の医師主導治験も、九州大学病院で並行して進んでいます。腹膜播種は、がん細胞が腹腔内に散らばった状態で、血流に乗せる薬剤が届きにくい領域です。この領域へ細胞を行き渡らせる手段として、腹腔内への直接投与が検証されています。2025年3月に開かれた第97回日本胃癌学会総会では、このうち胃がんの腹膜播種に関する中間報告が優秀演題賞に選ばれました。

国内一貫の製造体制を目指す

同社が目指すのは、細胞医薬品を国内で製造し、必要な患者へ安定して届ける体制です。2026年1月には、九州大学病院のキャンパス内に自社の細胞培養加工施設(CPC)の整備を始めました。空調設備を手がけるダイダン株式会社とは、清浄な生産環境の構築で連携しています。治験から製造までを同じ拠点に集め、固形がんへの適応を広げることを目指します。

FrontJournalの解説
  • 医師主導治験製薬企業ではなく医師が計画し、実施の責任を負う治験。企業が開発しにくい希少疾患や小児の領域で用いられることが多い。
  • 腹膜播種胃や膵臓のがんが腹腔の内側を覆う膜へ広がり、種をまいたように散らばった状態。血流に乗せる薬剤が届きにくい。
  • 細胞培養加工施設細胞を無菌の環境で培養し、製剤へ加工する専用の施設。空気の清浄度や動線が法令で細かく定められている。

会社概要|ガイアバイオメディシンの事業内容

九州大学の研究から事業化

株式会社ガイアバイオメディシンは、2015年10月に福岡市で設立されました。創業の中心となったのは、九州大学大学院薬学研究院の米満吉和です。創業以来、同社は同大学で進めてきた免疫細胞の研究成果を、がん治療の製品として実用化することを目指しています。代表取締役社長CEOは倉森和幸、米満は創業者取締役CSO・CMOです。

AMEDの支援と企業連携

開発は、公的機関と事業会社との連携によって支えられています。「GAIA-102」は、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて、九州大学との共同開発が進められてきました。2020年には空調設備を手がけるダイダン株式会社が出資し、清浄な生産環境の構築で協力しています。治験を実施する九州大学病院へは、同社が被験薬を提供しています。

Dラウンドで19.3億円を調達

資金面では、2025年7月にDラウンドとして総額19.3億円の調達を完了しています。Dラウンドは、製品の実用化に向けて臨床試験製造体制を整える段階の資金調達にあたります。この調達には、UntroD Capital Japanと野村アセットマネジメントが運営する「UntroD野村クロスオーバーインパクトファンド」などが参加しました。これに先立つ2021年6月には、大阪大学ベンチャーキャピタルが1億円を出資しています。

会社情報

会社名株式会社ガイアバイオメディシン(GAIA BioMedicine, Inc.)
所在地福岡県福岡市東区馬出3-1-1-3 エフラボ九大病院
設立2015年10月28日
代表代表取締役 社長CEO 倉森 和幸
創業者米満 吉和(九州大学大学院薬学研究院/創業者取締役 CSO・CMO)
資本金1,000万円
調達2025年7月にDラウンドで19.3億円。2021年6月に大阪大学ベンチャーキャピタルが1億円。2020年2月にダイダン株式会社が出資(金額非開示)
投資家UntroD野村クロスオーバーインパクトファンド、大阪大学ベンチャーキャピタル、ダイダン株式会社ほか
連携九州大学・九州大学病院(「GAIA-102」の共同開発と医師主導治験)。ダイダン株式会社(生産環境の構築)
技術領域遺伝子改変を行わずに培養する他家NK様細胞の製造技術。「GAIA-102」(一般名 fulamleucel)は小児固形がんと腹膜播種を対象に治験段階。「GAIA-151」はIL-2アンカー技術(免疫を活性化する物質を細胞につなぎ留める技術)を用い、製造工程の整備段階
採択AMEDの支援(九州大学との共同開発)
URLhttps://gaia-biomed.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

細胞を使ったがん治療は、長く患者一人ひとりのための製造と切り離せませんでした。効き目を高めるほど工程は複雑になり、届く人数は限られます。同社が選んだのは、培養の条件だけで性質を引き出す道でした。

興味深いのは、その選択が製品の形を決めている点です。まとめて作れる量が増えれば、届く患者の数も増えます。単に強い細胞を得たのではなく、多くの患者へ届きうる形に整えたところに価値があります。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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