株式会社テックシンカーはCO2排出量の算定をAIで自動化する東京科学大学の認定ベンチャー

株式会社テックシンカー

テックシンカー「脱炭素AIエージェント」を研究|研究領域=AIが人の代わりにCO2算定を自動化/強み=取引先の排出情報を集約し補完/将来性=取引先の排出量まで把握を目指す

企業紹介|株式会社テックシンカーとは?

CO2排出量の算定から削減計画の作成までを自動で進める技術として、注目を集める「脱炭素AIエージェント」。株式会社テックシンカーは、その社会実装を目指す、環境系ディープテック企業です。脱炭素の実務を自動化する「OffEmission AI Agent」や、製品ごとの排出量を算定する「商品炭素簿」を、製造業や自治体へ提供しています。

キーワード「脱炭素AIエージェント」

「脱炭素AIエージェント」は、担当者が担ってきたCO2排出量の算定削減計画づくりを、代わりに進めるソフトウェアです。特徴は、業種ごとの削減施策や使える補助金まで含めた資料を出力できる点にあります。専門の担当者がいない企業でも、光熱費購買のデータからCO2排出量を把握できます。

市場課題|集まらないCO2データ

現状のCO2算定の課題|CO2の算定に人手と時間/取引先の排出データが乏しい

CO2算定が手作業で長期化

CO2排出量の算定は、いまも手作業です。電気やガスの明細や購買の記録を集め、排出原単位(使った量に掛けると排出量が出る係数)を掛けて積み上げる作業が、表計算ソフトの上で続きます。算定に時間を取られ、削減策の検討まで手が回りません。

取引先のCO2データが乏しい

自社の外で生じる排出を示すScope3は、実態の把握が難しい区分です。自社の排出だけを減らしても、製品全体の排出量は下がりません。取引先から集まる情報は書式も水準もそろいません。その結果、Scope3は推計に依存し、取引先からCFP(カーボンフットプリント、製品ごとの排出量)の開示を求められても応えにくくなります。

課題は算定の現場だけにとどまりません。他にも、改正の続く開示制度を追う負担、削減投資の費用対効果を経営層へ示す難しさ、Jクレジット制度(削減量を国が認証する制度)の煩雑な手続き、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • Scope3事業者の温室効果ガス排出量を分類したうちの一つで、原材料の調達や製品の輸送、使用や廃棄など、自社の外で生じる排出を指す。製造業では総排出量の大半を占める場合がある。

テックシンカーの強み|CO2算定をAIで自動化

テックシンカーが「脱炭素AIエージェント」を開発|AIがCO2の算定と計画を自動化/取引先の排出量を集約し推計で補完

AIがCO2の算定と計画を作成

CO2排出量の算定や計画づくりを外部の専門家へ委託する方式は、費用と期間の負担が大きいといわれています。

OffEmission AI Agent」は、入力された数値の分析から施策の立案までをAIが進めるサービスです。入力する情報は、電気やガスの使用量、原材料の質量、輸送や廃棄の量といった活動量(排出の元になる使用量や重量)です。これに国内外のデータベースが持つ排出原単位を掛け合わせて算定します。出力されるのは、年度ごとの削減施策の予定表、投資の回収期間を含む投資対効果の試算、取引先別の排出量の順位づけです。政策や補助金の制度情報を継続して取り込むため、改正のたびに前提を組み直す手間が減ります。

取引先のCO2データを集約

取引先ごとに書式の異なる表計算ソフトやPDFを集める方式では、算定の水準がそろわず、製品単位の排出量まで積み上げにくくなります。

同社の「OffEmission Trace」は、取引先専用の入力ポータルを備え、集まった排出情報を製品単位で自動的に集約します。同社はCFPの算定にあたり、GHGプロトコル(温室効果ガスの算定と報告の国際基準)と、ISO(国際標準化機構)の規格「ISO 14067」に準拠するとされています。データを提出していない取引先の分を埋めるのは、AIによるデータの補完です。製品ごとの排出量はダッシュボード(数値を一覧できる画面)で確認でき、調達先の見直しや低炭素材料への切り替えといった判断につながります。

FrontJournalの解説
  • 排出原単位活動量あたりの排出量を示す係数である。電力1キロワット時や材料1キログラムごとに定められ、使用量に掛け合わせて排出量を算出する。国や業界の統計をもとに整備される。

脱炭素AIエージェントの未来|自治体と取引先へ

脱炭素AIエージェントが変える未来|省エネ投資をJクレジットに/自治体と組み地域へ広げる/取引先の排出量まで把握を目指す

省エネ投資をJクレジットに

同社が提供するのは、省エネや再エネの設備投資をJクレジットにする認証支援です。AIと専門チームが、プロジェクトの設計から評価、登録、販売までを担います。削減した分は売買できる環境価値(削減の実績を証書にして取引できるようにしたもの)になり、設備投資の回収に新たな道筋が生まれます。制度の要件に合うかどうかを事前に見る適合性評価も、支援メニューの一つです。

自治体と組み地域へ広げる

テックシンカーの取り組みは、地域ぐるみの脱炭素にも広がっています。2025年11月には、相模原市の「Sagamihara Innovation Gate 2025」で東急建設との共創プロジェクトが採択されました。2026年2月には、鎌倉市と組み、ゲームとAIで住民の行動変容(生活の中の行動を変えること)を促す実証実験を始めました。行政と企業が参加する形で、地域の脱炭素を進める枠組みづくりが動き出しています。

取引先のCO2まで把握を目指す

同社が目指すのは、「Tier2・Tier3と呼ばれる二次三次の取引先まで排出量を追跡できる状態へ広げること」です。製品に付けた二次元コードから排出量を開示する仕組みや、使用後のリサイクルの受け付けまでを、同じ基盤で扱う構想です。AR(現実の映像に情報を重ねる技術)やゲームを使った行動変容の取り組みは、消費者の参加を促す役割を担います。取引網の端まで情報が届けば、調達の判断に排出量を組み込みやすくなります。

会社概要|テックシンカーの事業と設立背景

技術経営を学んだ代表が創業

株式会社テックシンカーは、2022年に東京都で設立されました。創業したのは、代表取締役洪 偉豪氏です。台湾中央大学を卒業後に来日し、東京工業大学大学院で修めたのは、機械制御システムです。その後はパナソニックで研究開発に、富士電機でJCM(二国間クレジット制度)を使ったクレジット創出に携わりました。同大学院で技術経営修士号(MOT)を取得したのち、外資系コンサルティングファームで脱炭素戦略の支援に従事しました。

大学の認定と受賞が相次ぐ

同社は、公的機関や事業会社との連携を重ねています。2025年3月には「東京科学大学(旧東工大)認定ベンチャー」の称号を授与されました。2025年11月には、東京都中小企業振興公社の「デジタル技術を活用した先進的サービス創出支援事業」に採択され、同月の「岡山ガスビジネスコンテスト2025」では大賞を受けています。2026年3月には、環境省の「グリーン・バリューチェーン促進ネットワーク」へ支援会員として登録し、同月には「Business Model Award 2026」で特別賞も受けています。同大学の認定企業を集めた記事が東京科学大学発スタートアップ10選です。

収益はAIと伴走支援から

収益源は、AIエージェントの提供と、脱炭素の実務を伴走して支援するサービスです。加えて、Jクレジットの創出支援や、カーボンオフセット(自社で減らしきれない排出を他の削減分で埋め合わせる方法)に使うクレジットの調達支援も手掛けています。製品単位の排出量を扱う「商品炭素簿」や、催事向けの「イベント炭素簿」など、用途ごとにサービスを分けている点も特徴です。

会社情報

会社名株式会社テックシンカー(TechThinker Inc.)
所在地東京都品川区西五反田2丁目19-12
設立2022年
代表代表取締役:洪 偉豪(コウ イゴウ)
事業AIエージェントによる脱炭素経営の支援と環境価値の創出。AR・ゲーム技術を使った行動変容の促進。製品ごとの排出量の追跡とデータ管理。地域の脱炭素の推進と、カーボンクレジット取引所の運営
技術領域脱炭素AIエージェントによるCFP算定・削減計画の自動化。GHGプロトコルおよびISO 14067に準拠した製品カーボンフットプリントの算定。Scope3のトレーサビリティ。Jクレジット・JCMの創出支援
連携東急建設(Sagamihara Innovation Gate 2025・2025年11月)。鎌倉市(2026年2月)。環境省 グリーン・バリューチェーン促進ネットワーク 支援会員(2026年3月)
採択東京科学大学(旧東工大)認定ベンチャー 称号授与(2025年3月)。東京都中小企業振興公社「デジタル技術を活用した先進的サービス創出支援事業」(2025年11月)。岡山ガスビジネスコンテスト2025 大賞(2025年11月)。Business Model Award 2026 特別賞(2026年3月)
URLhttps://www.offemission.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

脱炭素が経営課題になって久しいものの、現場で起きているのは表計算ソフトとの格闘でした。テックシンカーが向き合っているのは、理念ではなく、この実務の重さです。算定から削減計画、環境価値の創出までを一本の流れとして設計している点に、事業としての手触りを感じます。

注目したいのは、単なる算定ツールではなく、環境価値を生み出す側まで踏み込んでいる点です。省エネ投資がJクレジットに変わるなら、脱炭素は費用の項目から投資の判断へと位置づけが移ります。地域や取引網へ広げる取り組みも、その延長線上にあります。

データが取引網の端まで行き渡ったとき、脱炭素は特別な取り組みではなく、日々の経営判断の一部になるはずです。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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