次なるディープテックの飛躍を支える:ベンチャーキャピタルの新時代

次なるディープテックの飛躍を支える:ベンチャーキャピタルの新時代

AI・半導体・ロボティクスなどのディープテックは、事業になるまでに長い時間と多額の資金がかかります。このセッションでは、米国のベンチャーキャピタル(VC)の投資家4人が、まだ市場が見えない段階で何を基準に投資を決めるのか、日本の企業と起業家に何を期待するのかを語りました。

Front Journal編集部は、2026年10月6日・7日に大阪で開かれたスタートアップの国際イベント「Global Startup EXPO 2026」に参加しました。本記事では、10月7日のセッション「次なるディープテックの飛躍を支える:ベンチャーキャピタルの新時代」で語られた、創業者の選び方、企業や政府が顧客になる役割、日本への期待を紹介します。

セッション概要:ベンチャーキャピタルの新時代

セミナー概要・登壇者

タイトル次なるディープテックの飛躍を支える:ベンチャーキャピタルの新時代
日時・会場2026年10月7日 12:20〜13:05/コングレスクエア グラングリーン大阪
登壇者Winter Mead氏(Coolwater Capital Founder/CEO)、Shahin Farshchi氏(Lux Capital パートナー)、Ben Bayat氏(NextGen Venture Partners Managing Partner)、Shaun Johnson氏(224 Ventures)

出典:Global Startup EXPO 2026 公式セッションページ

内容

セッションは2026年10月7日、大阪のコングレスクエア グラングリーン大阪で行われました。Coolwater CapitalのWinter Mead氏、Lux CapitalのShahin Farshchi氏、NextGen Venture PartnersのBen Bayat氏、224 VenturesのShaun Johnson氏の4人が登壇しました。

ディープテックを事業に育てるには、技術の不確実性、長い開発期間、多額の資金、まだ育っていない市場と向き合う必要があります。VCのファンドはおおむね10年で投資を回収する仕組みのため、10年のうちに大きく育つ会社を選ぶ必要があります。本セッションは、その条件のもとで投資家が何を見ているかを語る内容でした。日本で起業を考える研究者や技術者、スタートアップとの連携を考える企業にとって、米国の投資家の判断基準を知る手がかりになります。

【POINT①】最初のアイデアより、10年走り続けられる創業者を選ぶ

創業初期の投資では、アイデアよりも人物が重視されています。224 VenturesのJohnson氏は、10年続く挑戦に耐えられる人物に投資すると語りました。例に挙げたのはPerplexityです。投資した時点では最初のアイデアに賛成できなかったものの、創業者がすぐに方向を変え、約18カ月で企業価値10億ドルに達したといいます。売上を12カ月で0から1億ドルまで伸ばした例もあり、成長の速さはこれまでにない水準だと述べました。

Lux CapitalのFarshchi氏は、創業者に上場や売却などの出口戦略を尋ねることは逆効果だと語りました。判断の軸は、将来その会社の株を欲しがる人が増えるかです。周囲にまだ理解されていない段階で投資し、評価が固まるにつれて価値が上がるという考え方です。

【POINT②】企業や政府は、資金を出すより先に「顧客」になる

スタートアップを育てるうえで、企業や政府の役割は資金を出すことより顧客になることにあります。Farshchi氏は、米国では政府が顧客として製品を買ったことが半導体産業を育てたと説明しました。日本でも、補助金を配るより、実際に取引して製品を採用することを優先すべきだと述べました。企業が早い段階で顧客になれば、そのスタートアップは後から入る投資家にとってリスクの低い投資先になり、資金が回る流れが生まれます。

別の登壇者は、日本の企業は社内の研究開発費と同じ額を、スタートアップへの投資などの「社外の研究開発」に充てるべきだと提案しました。AIによって産業が大きく変わる中で、社外への投資は企業が生き残るための条件だという指摘です。

【POINT③】日本の起業家と投資家に、もっと大胆な挑戦を求める

投資家たちは、日本の市場と技術に期待を示しました。Lux Capitalは日本のSakana AIに投資しています。Farshchi氏は、日本は市場の大きさ、産業の基盤、技術力の面で有利な位置にあると語りました。そのうえで起業家には自分を小さく見積もらずに大胆に挑戦することを、投資家には市場規模や目先の利益より起業家の信念を支えることを求めました。

Johnson氏は、AIを使った建築設計のCADに取り組む日本の若い起業家に投資したことを紹介しました。起業家への助言は、自分の投資家がどうやって利益を得ているかを理解することでした。別の登壇者は、業界で10年ほど経験を積んだ人の知識には価値があり、起業に挑戦してほしいと述べました。日米関係と日本の半導体の強みは、米国が目指す供給網の強化とも合っていると指摘しました。

まとめ:人に投資し、顧客として支える

本セッションでは、米国の投資家4人が、ディープテックへの投資で重視する点を語りました。創業初期はアイデアより人物を見て投資すること、企業や政府が最初の顧客になることで資金の流れが生まれること、そして日本の起業家と投資家に大胆な挑戦を求めることです。ディープテックは事業になるまで時間がかかるため、市場の評価が固まる前に支える仕組みが日本でも求められています。

編集部の感想

投資家が「最初のアイデアは変わるもの」と言い切り、人物を最優先にしていたことが印象に残るセッションでした。日本の企業が研究開発費の使い道を社外にも広げ、スタートアップの最初の顧客になれるかが、ディープテックが日本で育つかの分かれ目になります。引き続きイベントの現場から技術と事業の動きを伝えていきます。

作成:FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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