日米間のアクセラ・VCの連携で、世界でスケールするスタートアップは創れるのか

日米間のアクセラ・VCの連携で、世界でスケールするスタートアップは創れるのか?【Global Startup EXPO2026レポート】

日本のスタートアップが世界で事業を広げるには、海外の投資家や支援者とのつながりが欠かせません。このセッションでは、米国のアクセラレーターとベンチャーキャピタル(VC)、日本のVCが、日本のスタートアップに今、好機が来ている理由と、国をまたいだ連携の形を語りました。

Front Journal編集部は、2026年10月6日・7日に大阪で開かれたスタートアップの国際イベント「Global Startup EXPO 2026」に参加しました。本記事では、10月6日のセッション「日米間のアクセラ・VCの連携で、世界でスケールするスタートアップは創れるのか?」で語られた、日本の環境の変化、日米をつなぐ双方向の橋、投資家がAIやディープテックの企業を見る目を紹介します。

セッション概要:日米のアクセラ・VCが語る世界展開

Global Startup EXPO 2026のセッション「日米間のアクセラ・VCの連携で、世界でスケールするスタートアップは創れるのか?」の会場

セミナー概要・登壇者

タイトル日米間のアクセラ・VCの連携で、世界でスケールするスタートアップは創れるのか? Techstars × Lightspeed × Global Brain:Day 1から世界を目指すスタートアップと国境を越えてスケールする方法
日時・会場2026年10月6日 14:10〜14:55/ナレッジキャピタル コングレコンベンションセンター
登壇者David Cohen氏(Techstars Co-Founder and CEO)
都 虎吉氏(グローバル・ブレイン株式会社 General Partner)
Amber Yang氏(Lightspeed Venture Partners)
樽谷 範哉氏(日本貿易振興機構(JETRO) イノベーション部 次長(スタートアップ))

出典:Global Startup EXPO 2026 公式セッションページ

内容

セッションは2026年10月6日、大阪のナレッジキャピタル コングレコンベンションセンターで行われました。創業初期のスタートアップを支援するアクセラレーターTechstarsのDavid Cohen氏、日本のVCであるGlobal Brainの都 虎吉氏、米国のVCであるLightspeed Venture PartnersのAmber Yang氏、JETROの樽谷 範哉氏が登壇しました。

議論の軸は、日本のスタートアップを世界へ送り出し、海外のスタートアップを日本へ呼び込むにはどうすればよいかです。TechstarsとGlobal Brainの提携を例に、それぞれの強みの組み合わせ方が語られました。海外展開を考える起業家や、スタートアップと組みたい企業の担当者にとって、海外の投資家が日本をどう見ているかを知る手がかりになる内容でした。

【POINT①】日本は、資本・大企業・政府の足並みがそろった

登壇者は、日本のスタートアップの環境が大きな転換点にあると口をそろえました。Cohen氏は、日本の成長は一夜で起きたように見えても、実際は20〜30年の積み重ねの結果だと述べました。最近は創業初日から世界を目指す起業家が増えているといいます。

都氏は、最大の変化として、資本、大企業、起業家、政府の足並みがそろったことを挙げました。2015年ごろには珍しかった政府の補助金や大企業との協業が、今では当たり前になったといいます。例として、米国のVCと日本の大企業の両方から資金を集めたSakana AIを紹介しました。政府の5か年計画が、2027年までに10兆円の投資を目指していることにも触れました。

【POINT②】TechstarsとGlobal Brainの提携は「双方向の橋」

Cohen氏は、Global Brainと組んだ理由として、得意な段階が違うことを挙げました。Techstarsは事業をゼロから立ち上げる段階に強く、Global Brainは大きな出資と大企業とのつながりで事業を広げる段階に強いといいます。どちらも見返りを求める前にまず相手に与える「Give First」の考え方を持っていることも、提携の決め手になったと語りました。

都氏は、この提携を、海外のスタートアップが日本へ入り、日本のスタートアップが海外へ出るための「双方向の橋」だと説明しました。Global Brainは300社を超える大企業とのつながりを持ち、調達や予算、営業の進め方を熟知しています。日本へ進出する時期については、できるだけ早くと答えました。ただし、顧客や市場を深く学ぶことが前提で、事務所を構えるだけでは足りないといいます。Cohen氏も、AIの時代には信頼できる関係が市場に入るために欠かせないと述べました。

【POINT③】AI企業を見るときは、売上の伸びより粗利

Yang氏は、AIのスタートアップを見るとき、契約ベースの年間売上(ARR)の伸びは過大に評価されがちだと指摘しました。短期間で売上を大きく伸ばしても、AIの推論や計算にかかる費用のために、粗利がマイナスや不安定になる会社が多いといいます。こうした変動費を事業の規模に合わせて管理する戦略があってこそ、本当に市場に受け入れられたといえると語りました。

ロボットのように売上が立つまで時間がかかる分野については、伝統的な産業が自動化を受け入れやすくなっていると述べました。一方で、資金と技術のリスクが大きい投資であることに変わりはないといいます。重視するのは、現実の製品を世に出し、大企業から信頼を得た実績があるチームです。Cohen氏は、創業間もない会社では、技術力、取り組む理由、10〜20年後に何を変えたいかという長期の構想を見ると語りました。

【POINT④】起業家には10倍の野心を、投資家には新しい資金化の手段を

最後に、登壇者は日本の起業家へのメッセージを送りました。Yang氏は、AIが急速に進む今は限られた好機であり、10倍の野心を持ってほしいと呼びかけました。都氏は、政府と資本の支えがこれまでになくそろった今こそ、高い目標を掲げてほしいと述べました。

Cohen氏は、起業家に対して、信頼と長期の関係を築くことを最優先にするよう勧めました。投資家に対しては、創業者が家族の生活のために早く会社を売らずに済むよう、株式を資金に換える手段を広げる必要があると述べました。

まとめ:日本の好機を世界へつなぐ連携

本セッションでは、日本のスタートアップの環境が、資本・大企業・政府の足並みがそろったことで転換点を迎えていることが示されました。TechstarsとGlobal Brainは、得意な段階の違いを組み合わせ、日米をつなぐ双方向の橋を目指しています。投資家は、AI企業の売上の伸びだけでなく粗利と変動費の管理を見ており、起業家には信頼の構築と大きな野心が求められていました。

編集部の感想

米国のアクセラレーターとVCが、日本を投資先と顧客の両方として見ていることが伝わるセッションでした。特に、AI企業の売上の伸びより粗利を見るという指摘は、AIを使う事業を評価するうえで具体的な視点です。海外の支援者と組むときも、信頼できる関係づくりが出発点になります。引き続きイベントの現場から技術と事業の動きを伝えていきます。

作成:FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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