Dアミノ酸ラボ「尿中D-アミノ酸検査」を研究

Dアミノ酸ラボ株式会社(ディーアミノサンラボ)

Dアミノ酸ラボ「尿中D-アミノ酸検査」を研究

企業紹介|Dアミノ酸ラボ株式会社とは?

猫の尿に含まれるD-アミノ酸の量から、腎臓の健康度を確かめる技術である「尿中D-アミノ酸検査」。Dアミノ酸ラボ株式会社は、その社会実装を目指す、名古屋大学発のライフサイエンス(生命科学を産業に生かす分野)のディープテック企業です。尿を郵送するだけで検査できる「じんにゃんチェック」を、猫の飼い主向けに提供しています。

キーワード「D-アミノ酸」

D-アミノ酸は、一般的なアミノ酸と化学式が同じで、手の左右のように向きが逆の分子で、動物の体内には微量しか存在しません。特徴は、特定の生理的変化や病気の際に量が増減することが知られている点です。同社は、尿中のD-アミノ酸を酵素で測り、腎臓の状態を知る手がかりとして検査に使います。

市場課題|猫の腎臓病は、早い段階で気づきにくい

現状の腎臓病の課題

初期は症状が現れにくい

同社の案内によれば、腎臓病は猫の死因の中でも高い割合を占める病気です。初期段階では症状が現れにくく、症状が出たときには、すでに進行している場合が多いとされています。そのため、飼い主が日常の様子から早期に気づくことは難しく、定期的な検査が推奨されています。

血液検査は負担が大きい

腎臓の状態は、動物病院での血液検査で、BUN(血中尿素窒素)やクレアチニン(筋肉で作られる老廃物)の値を調べて確かめます。血液を採るため、猫にも飼い主にもストレスがかかります。そのため、気になったときに気軽に検査を受けにくい状況です。

他にも、費用の負担、検査の手間、結果が出るまでの時間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • BUN(血中尿素窒素)血液中の尿素に含まれる窒素の量を示す値である。腎臓の働きが落ちると高くなるため、腎臓の状態を調べる血液検査の項目に使われる。

Dアミノ酸ラボの強み|尿中D-アミノ酸で腎臓を確かめる

Dアミノ酸ラボが「尿中D-アミノ酸検査」を研究

尿の数値で腎臓を確認できる

腎臓の病気は、症状が出たときには、すでに進行している場合が多いとされています。

尿中のD-アミノ酸の数値から腎臓の健康度を確認する技術を、同社は開発しました。動物病院の協力で、健康な猫とBUN濃度が高い猫を比べたところ、D-アミノ酸の濃度に明確な差が認められています。この値は、血液検査のBUNやクレアチニンのデータと高い相関性(一方が変われば他方も変わる関係)があるといわれています。結果は「HPA3インデックス」という値で、定期的に測り、下がり始めたら注意が必要です。このため飼い主は、腎臓の状態を数値で確認できます。

採血せず、自宅から検査できる

従来の血液検査は、動物病院で血液を採る必要があり、猫にも飼い主にもストレスがかかります。

同社の「じんにゃんチェック」は、猫の尿を専用スポンジに吸い込ませ、付属のキットに入れて郵送する検査です。血液を取る必要はなく、採尿は、ペットシーツにくぼみを作り、たまった尿をスポンジで吸い取る方法などで行えます。40℃と60℃で2週間保管してもHPA3インデックスに影響がなかったと同社は確かめており、常温の郵送で測定できます。1キットは税込5,940円(検査料金を含む)です。このため飼い主は、自宅で、従来の血液検査より安価に検査を始められます。

FrontJournalの解説
  • バイオマーカー病気や体の状態の変化を、数値で示す目印となる物質や指標のことである。同社は、尿中のD-アミノ酸をこの目印として使っている。

尿中D-アミノ酸検査の未来|動物の腎臓の検査から飲食料品まで

D-アミノ酸の測定が変える未来

動物用の腎機能検査を社会へ

同社は、2026年8月に、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のディープテック分野の起業家育成事業「NEP(NEDO Entrepreneurs Program)」の躍進コースに採択されました。この公募には241件の応募があり、33件が採択されています。同社が取り組む課題は、「D-アミノ酸をバイオマーカーとする動物用腎機能検査技術の社会実装」です。検査の技術を、研究の段階から広く使われる形へ進める取り組みです。

D-アミノ酸を使う飲食料品へ

機能性飲食料品は、同社が事業分野の一つに挙げる領域です。製品の一つが、D-アラニンとD-アスパラギン酸を高く生産する乳酸菌「Dをつくる乳酸菌LBF1171」です。さらに、島根県産の津田かぶ由来の乳酸菌で焼酎粕を発酵させた粉末「en-ne(エンネ)」も扱っています。これらは、D-アミノ酸を使った飲食料品づくりに向けた製品です。

新しい測定法の開発を目指す

2025年3月に、同社はWellness AP Science株式会社と、D-アミノ酸とオートファジーに関する包括的な業務提携を結びました。また、名古屋大学の中野教授とともに、新規なD-アミノ酸の免疫測定法の開発に取り組んでいます。免疫測定法とは、抗体を使って物質の量を測る方法です。提携では、新商品の共同開発、研究の推進、人材育成を進めるとしています。

会社概要|D-アミノ酸を事業にするDアミノ酸ラボ

2020年に設立

Dアミノ酸ラボ株式会社は、2020年7月に設立された企業です。本社は愛知県春日井市にあります。滋賀県草津市の立命館大学びわこ・くさつキャンパスにはラボを、大阪市には大阪オフィスを置いています。事業は、D-アミノ酸の情報提供と、酵素を使った測定、畜産・水産用の飼料、ペット用の診断キット、機能性飲食料品などです。

名古屋大学との関わり

同社の技術顧問の一人は、名古屋大学名誉教授で、D-アミノ酸学会の学会長を務める吉村徹氏です。同社は、日本農芸化学会の産学連携の研究助成に採択され、名古屋大学の中野教授とともに、D-アミノ酸の免疫測定法の開発に取り組んでいます。経済産業省の大学発ベンチャーデータベースでは、名古屋大学の研究成果をもとにした企業として掲載されている企業です。

事業の広がり

2023年11月に、同社は高専オープンイノベーションプログラム「KOP」に採択されました。2024年7月には、技術顧問の吉村徹氏による猫の腎臓疾患のスクリーニングの発表が、日本ペット栄養学会の最優秀発表賞に選ばれています。2024年10月は、NEDOのNEP躍進コースへの採択です。2025年1月には「じんにゃんチェック」のクラウドファンディングを始め、3月にはWellness AP Science株式会社と業務提携を結びました。2026年8月には、NEDOのNEP躍進コースに再び採択されています。

会社情報

会社名Dアミノ酸ラボ株式会社
所在地愛知県春日井市穴橋町1612番地4
設立2020年7月
代表代表取締役社長 黒野 剛
資本金500万円
事業猫の腎機能検査サービス「じんにゃんチェック」の提供。D-アミノ酸の情報提供、酵素法による定性・定量
技術領域D-アミノ酸の酵素による測定。D-アミノ酸を作る乳酸菌
連携Wellness AP Science株式会社(業務提携)。名古屋大学(D-アミノ酸の免疫測定法の共同開発。技術顧問が名誉教授)
URLhttps://d-aminoacidlabo.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

猫は不調を訴えないため、腎臓の異変は気づきにくい病気です。Dアミノ酸ラボの取り組みは、その異変を、尿という採りやすい検体から数値で捉える試みです。採血を伴わず自宅から送れる検査は、気になったときに気軽に確かめられる手段になります。

検査の仕組みより、D-アミノ酸という指標を軸に、検査から飲食料品の原料まで用途を広げる点に注目しました。同社が示す数値の根拠が、動物病院での検証を通じて積み上がるかが、事業の価値を左右すると考えます。早い段階で腎臓の変化に気づける日が来れば、飼い主が受診を考えるきっかけが増える可能性があります。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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