FAI「トポロジー最適化」を開発

株式会社FAI(ファイ)

FAI「トポロジー最適化」を開発

企業紹介|株式会社FAIとは?

荷重を受ける部品の材料の置き場所を計算で求め、軽くて強い形を導く「トポロジー最適化」。株式会社FAIは、その社会実装を目指す、名古屋大学発の設計ソフトウェア系ディープテック企業です。同社は、設計の初期段階で1,000ケース以上の設計と評価を自動で実行する構造設計探索ソフトウェア「Φ-Designer」を、製造業の設計者に向けて提供しています。

キーワード「トポロジー最適化」

「トポロジー最適化」は、荷重や固定の位置などの条件を与えると、必要な剛性(変形しにくさ)を保ちながら不要な材料を取り除く配置を、コンピュータが計算する手法です。従来は、設計者が形を描いて解析し、結果を見て直す試行錯誤が中心でした。この手法は、形の案を人が描かず、材料を置く場所そのものを計算で求める点が異なります。

市場課題|製造業の設計開発は手戻りが多い

現状の製造業の設計開発の課題

試作後の手戻りで開発が長期化

自動車部品など製造業の設計開発は、試作後の手戻りで長期化しやすい分野です。軽量化、剛性、振動特性、耐久性、コストなど多様な性能の両立が求められ、設計、解析、試作、評価を繰り返すため、後の工程で不具合が見つかるたび設計へ戻ります。開発期間の長期化が、新製品の投入時期に影響します。

解析が難しく経験頼みになりがち

トポロジー最適化などの解析は専門性が高く、設計者が使いこなせず経験頼みになりがちです。これは、性能の変化を設計変数(部品の寸法や形を決める値)で微分して求める設計感度の計算や、最適化のアルゴリズムが複雑なためで、感度情報は従来、解析技術者が手作業で導いていました。そのため、設計案の評価には専門人材の手間がかかりやすくなります。

他にも、設計工数の増加、感度計算の手間、就労者人口の減少、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 設計感度設計変数を少し変えたとき、目的とする性能がどれだけ変わるかを表す値である。最適化の計算で、形を更新する向きを決める手がかりになる。

FAIの強み|「トポロジー最適化」を開発

FAIが「トポロジー最適化」を開発

1,000ケース以上を自動探索

従来の設計は、1案ごとに解析、試作、評価を回すため、後の工程で不具合が出るたびに設計へ手戻りが生じます。

「Φ-Designer」は、設計の初期段階で1,000ケース以上の設計と評価を自動で実行する、構造設計探索ソフトウェアです。剛性や重量、固有振動数(部品が自然に揺れる周波数)など、両立しにくい要件を入力すると、高速なトポロジー最適化とAIによる探索を組み合わせ、複数の設計案を作る流れです。各案の性能の違いは性能マップに示され、設計者は性能の高い案を選んで後の工程に進められます。試作の前に案を絞れるため、設計のやり直しが減り、開発の期間を短縮しやすくなります。

感度を自動で導出し要件を追加

従来は、設計感度を解析技術者が数式から手作業で導いていたため、新しい性能要件を扱うたびに手間がかかります。

「Φ-Designer」は、設計感度を自動で導出して計算する仕組みを備えたソフトウェアです。この仕組みにより、座屈強度(圧縮荷重で部材が急にたわみ始める荷重)やエネルギー吸収性能など、ソフトウェアに未搭載の性能要件にも対応できるとされています。計算は、材料の配置を探すトポロジー最適化に加え、既存形状の表面を滑らかに動かす形状最適化にも対応する構成です。設計で広く使われる形状・解析データの形式で読み込みと出力ができるため、設計者は変換の作業を削減でき、結果を図面作成や試作へ引き継ぎやすくなります。

FrontJournalの解説
  • 固有振動数部品が外から力を受けずに自然に揺れるときの周波数である。外からの振動の周波数と近いと共振が起き、部品が大きく揺れて壊れやすくなる。

トポロジー最適化の未来|鋳造部品へ広がる設計探索

FAIのトポロジー最適化が変える未来

お試し計算で導入を始められる

「Φ-Designer」は、すでに無料のお試し計算を受け付けています。提供を受けた部品データでFAIが計算を行い、結果を返す流れです。結果を一緒に読み解いたうえで、導入コンサルティングとワークステーションをまとめた月額のトライアルパッケージ(目安は3〜12か月)に進めます。設備や環境を用意しなくても、設計者が自社の部品で効果を確かめられます。

鋳造部品の設計探索を開発中

2026年7月、FAIはアイシン高丘と、鋳造製造性を考慮した多目的設計探索システムの共同開発を始めました。鋳造に特有の製造制約を設計の初期から織り込み、軽量化、剛性、振動特性、コストを同時に満たす案を自動で探します。AIが設計案を整理して比較する機能も加え、用途や設計方針に合う案を選びやすくする計画です。開発が進めば、自動車部品の設計で試作の前に案を絞れるようになり、手戻りの削減が見込まれます。

設計プロセスの変革を目指す

FAIは、鋳造部品を対象にした設計支援技術を高度化し、製造業の設計プロセスそのものの変革を目指しています。設計の初期から膨大な案を自動で探索し、性能、製造性、コストを総合して評価する構想です。就労者人口の減少が予測されるなか、限られた資源で質の高い製品を生み出せる企業が次の時代を開くというのが同社代表の考えです。繰り返しの作業を計算機に任せられれば、製造業で働く人は判断や検討に時間を使えるようになり、軽くて強い製品の開発が進む可能性があります。

会社概要|FAIの事業内容・設立背景

2024年に名古屋大学発で設立

株式会社FAIは、2024年2月に設立された名古屋大学発のスタートアップです。代表取締役CEOの海老原寛氏は、約20年間、製造業でCAE(構造解析・最適化)の実務に従事した後、名古屋大学大学院の博士後期課程でトポロジー最適化などの数理を学びました。取締役CTOの渡邉大貴氏は同大学院の博士後期課程を修了し、取締役COOの森部天仁氏は共同創業者として技術営業と試作を担います。社名のFAIは、基盤技術の確立(Foundation)、応用による価値創出(Application)、社会や産業への統合(Integration)の頭文字です。

Go-Tech採択と共同開発

2025年6月30日、FAIは経済産業省のGo-Tech事業(成長型中小企業等研究開発支援事業)に採択されたと発表しました。感度情報を自動で算出し、軽さや剛性など複数の目的の優先度を変えながら最適設計を行えるシミュレーションツールの開発を目指す内容です。2026年3月には、圏論や量子確率論(数学の研究分野)を専門とするZEN大学の西郷甲矢人教授が、技術顧問に就きました。同年7月16日には、アイシン高丘との共同開発の開始を発表しています。

DX支援とソフト提供の事業

事業は、DXソリューション事業、設計者向けソフトウェア・SaaS事業、シミュレーション・数学教育事業の3本です。DXソリューション事業では、課題の整理からシミュレーションシステムの開発・導入までを支援します。ソフトウェア・SaaS事業は、「Φ-Designer」の提供と導入支援が中心です。教育事業では、博士課程や博士号取得レベルの人材がシミュレーションを指導します。

会社情報

会社名株式会社FAI(ファイ)
所在地愛知県名古屋市昭和区鶴舞1丁目2-32 STATION Ai。開発拠点は名古屋市千種区の名古屋大学インキュベーション施設
設立2024年2月
代表代表取締役CEO 海老原寛。取締役CTO 渡邉大貴。取締役COO 森部天仁
事業DXソリューション。設計者向けソフトウェア・SaaS。シミュレーション・数学教育
技術領域トポロジー最適化。構造設計探索ソフトウェア「Φ-Designer」
連携アイシン高丘(2026年7月に鋳造部品向け設計探索システムの共同開発を開始)。技術顧問に西郷甲矢人(ZEN大学 教授)
採択経済産業省 Go-Tech事業(2025年6月に採択)
URLhttps://fai-inc.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

設計は、描いた形を解析で確かめる作業から、条件を与えて計算が形を導く作業へ移りつつあります。複数の案を並べて性能の違いを見比べられれば、設計者が判断に使える時間が増えるといえます。この変化は、設計者の仕事を置き換えるというより、判断の材料を増やす方向です。

とくに注目したのは、鋳造部品を対象にしたアイシン高丘との共同開発です。成果はこれから確かめられる段階ですが、名古屋大学発のスタートアップが、ものづくりの現場と組んで設計の進め方を変えようとする姿勢を、今後も見守りたいと考えます。名古屋大学発では、物理シミュレーションと機械学習で製造条件を探索するアイクリスタルもあります。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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