ファインメトリクス「拒絶理由通知の分析」を開発

株式会社FineMetrics(ファインメトリクス)

ファインメトリクス「拒絶理由通知の分析」を開発

企業紹介|株式会社FineMetricsとは?

特許庁から届く拒絶理由通知書の文面を分析し、出願書類の品質向上に生かす技術「拒絶理由通知の分析」。株式会社FineMetricsは、その社会実装を目指す、横浜国立大学および鹿児島大学発の知財系ディープテック企業です。2023年までの公式サイトは、拒絶理由通知書の分析による提言や米国特許費用の予測を、同社のサービスとして紹介しています。

キーワード「拒絶理由通知の分析」

「拒絶理由通知の分析」は、特許庁が出願を拒絶しうる理由を伝える通知書の文面を、データとして集計して評価する手法です。特徴は、通知書に表れた拒絶の傾向から、明細書(発明の内容を記した書類)の書き方の課題を読み取れる点にあります。特許事務所や企業の知的財産部門で、出願書類の品質を見直す材料になります。

市場課題|拒絶理由通知の分析に多大な労力がかかる

現状の拒絶理由通知の分析の課題

通知は違反の類型まで示さない

拒絶理由通知書は、拒絶の根拠となる特許法の条項を示す一方で、違反した類型までは明記していません。類型とは審査基準に定められた違反の型のことで、たとえば「技術的手段の記載が抽象的又は機能的である場合」などがあります。そのため、どの類型が多いのかは文面から読み取るほかなく、明細書作成を改善する手がかりが見えにくくなります。

大量の通知を人手で分類しにくい

年間に数千件の出願を行う企業では、拒絶理由の類型を人手で分類する作業が、多大な労力を要するといわれています。同じ類型でも通知書の表現は多岐にわたり、正確な判別は容易ではありません。分類が進まなければ、拒絶の原因を社内で共有しにくく、対処に費用と時間がかかり続けかねません。

他にも、指摘内容を読み解く手間、特許事務所ごとの書き方の違いを比べる難しさ、審査対応の費用の見通しの立てにくさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 拒絶理由通知書特許庁の審査官が、出願された発明を特許にできない理由を出願人へ知らせる文書である。根拠となる特許法の条項が記され、出願人は意見書や補正書で応答する。

FineMetricsの強み|「拒絶理由通知の分析」を開発

ファインメトリクスが「拒絶理由通知の分析」を開発

文面から違反の類型を判別

従来は、通知書に違反の類型が明記されないため、どの類型が多いのかを担当者が文面から読み取る必要がありました。

取締役らの2022年の論文では、過去の拒絶理由通知書の文面を学習し、条項ごとに違反の類型を判別する分類モデルが提案されています。対象は、特許法第36条の実施可能要件(発明を実施できる程度の記載)、サポート要件(請求の範囲が明細書に裏付けられていること)、明確性要件(記載が明確であること)です。文面の単語の出現回数を特徴量(予測に使う数値)とし、特許事務所の情報も加えます。これにより、どの類型の違反が多いかを集計でき、明細書の書き方を見直す根拠を確認できるようになると、論文は見込んでいます。

複数モデルの統合で自動分類

従来は、拒絶理由の類型を人手で分類するため、年間に数千件の出願を行う企業では作業量が大きくなっていました。

同論文は、スタッキングという手法で、拒絶理由の類型を自動で判別する方法を提案しています。スタッキングは、複数の予測モデルの出力を、別のモデルへ入力して最終判定を出す手法です。国内の大手メーカー1社が2018年から2019年に受けた通知書を使った検証では、類型ごとの判別の正解率は平均で約81%となり、比較した他のモデルよりも高い結果でした。この自動判別により、類型別の傾向の把握にかかる人手の削減と、明細書作成の課題の発見が見込まれています。

FrontJournalの解説
  • スタッキング複数の予測モデルの出力を、別の予測モデルへ入力して最終的な判定を得る機械学習の手法である。単一のモデルを使う場合より、判定の精度を高められることがある。

拒絶理由通知の分析の未来|知財業務への応用

データに基づく知財業務が変える未来

出願書類の品質向上に活用

同社は、拒絶理由通知書の分析結果をもとに、特許事務所や企業の知的財産部門へ向けて、明細書の作成スキルを評価する指標と、向上策の提供を掲げています。公式サイトが挙げる提言の対象は、特許出願戦略の見直し、特許技術者のスキルアップ、特許経費の削減です。企業や特許事務所ごとに多い拒絶理由を把握すれば、対策を講じられます。

米国特許の費用を予測

次年度に発生する米国特許の費用をAIで予測するアルゴリズムの開発を通じて、同社は財務戦略の策定への貢献を掲げています。入力は、審査中の出願の状況一覧と、データベースにある手続きごとの平均処理単価です。案件ごとに直近の手続きを起点に設定し、手続きの種類ごとに最適な予測方法を選んで、次の手続きの種類と発生時期、回数を予測します。予測した手続きに平均処理単価を掛けて案件ごとの費用を求め、全案件を積算して次年度の費用を算出します。

知財業務のDX推進を目指す

同社は、AIを活用した知財業務支援システムにより、知財権の取得業務のDX(デジタル技術による業務の変革)の推進を目指しています。顧客企業の事務処理コストの削減と、知財力の強化への貢献を掲げています。知財情報の分析による、自社と競合の位置の把握も事業の一つです。

会社概要|FineMetricsの事業内容・設立背景

大学の研究成果から事業化

株式会社FineMetricsは、2021年11月1日に、横浜国立大学および鹿児島大学発の認定ベンチャーとして設立されました。公式サイトによると、取締役の真鍋誠司氏と本橋永至氏は横浜国立大学大学院国際社会科学研究院に所属しています。代表取締役の髙橋省吾氏は、弁理士で、博士(経営学)です。本社は横浜市保土ケ谷区にあります。知的財産とデータサイエンス、経営戦略の専門家が集まっていることを、同社は強みに挙げています。

NEP採択と展示会への出展

同社は、2021年度のNEDO Entrepreneurs Program(NEP)事業に採択され、2022年度にも同事業で採択されたと公表しています。2022年2月には、名古屋の総務・人事・経理Weekへの出展の告知がありました。2023年9月にも、東京の特許・情報フェア&コンファレンスへの出展を、公式サイトで告知しています。

横浜と鹿児島に拠点

本社は、横浜国立大学の地域連携推進機構の成長戦略教育研究センター内にあります。鹿児島事業所は、鹿児島大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー内にあります。

会社情報

会社名株式会社FineMetrics
所在地本社 神奈川県横浜市保土ケ谷区常盤台79番1号 横浜国立大学 地域連携推進機構成長戦略教育研究センター内。鹿児島事業所 鹿児島県鹿児島市名山町11-1 鹿児島大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー内
設立2021年11月1日
代表代表取締役 髙橋省吾
資本金200万円
事業拒絶理由通知書の分析、特許費用の予測、IPランドスケープ
技術領域AIによる知的財産情報の分析、スタッキングによる拒絶理由類型の判別
連携横浜国立大学、鹿児島大学
採択NEDO Entrepreneurs Program(NEP)事業(2021年度、2022年度)
URLhttps://finemetrics.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

拒絶理由通知書は、出願が拒絶されうる際に届く書類です。その文面から違反の類型を読み取り、明細書の書き方の改善につなげる着眼について、同社の取締役らの論文は、企業の知財部門が拒絶理由の傾向を把握する取り組みは、ほとんど行われていないと整理しています。とくに注目したのは、経営学とデータサイエンス、知的財産の専門家が共同で研究し、その成果を分析サービスとして紹介している点です。

出願費用の予測や経営戦略の提言まで事業の範囲に含めている点も特徴です。通知書の傾向を踏まえて書類を磨く手段が増える意義は大きいと考えます。データに基づいて知財業務を見直す動きが広がることに、期待しています。なお、公式サイトの掲載内容は2023年9月の出展告知が最新で、サービスの現況は同サイトからは確認できませんでした。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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