ハプキタス|温冷の同時刺激で痛みの感じ方を測る近畿大学発ディープテック

ハプキタス株式会社

ハプキタス「痛みの可視化」を研究|研究領域=温冷の同時刺激で痛みの感じ方を測る/強み=携帯型の装置で約30秒の測定/将来性=職場の不調評価へ広げることを目指す

企業紹介|ハプキタスとは?

本人にしか分からない痛みの感じ方を、約30秒の測定で数値にする技術「痛みの可視化」。ハプキタス株式会社は、その社会実装を目指す、近畿大学発の感覚計測系ディープテック企業です。携帯型の痛み評価装置「ペインコンパス」を、全国の研究機関を中心に提供しています。

キーワード「痛みの可視化」

「痛みの可視化」は、言葉で伝えるしかなかった痛みの感じ方を、装置で測って数値にする考え方です。特徴は、温かい刺激と冷たい刺激を同時に当てて起こる錯覚への反応を、約30秒で測れる点にあります。研究の現場で、問診だけでは捉えにくい感じ方を、数値で確かめられます。

市場課題|痛みの強さは本人にしか分からない

現状の痛みの評価の課題|現状は、検査で異常が出にくく対策が後回しにされがち/検査で異常が出にくい痛み/2023年時点の診断は問診中心

検査で異常が出にくい痛み

組織や神経に損傷がないのに続く痛みは、痛覚変調性疼痛(脳の神経回路の変化が関わるとされる痛み)と呼ばれます。目に見える原因がないため、通常の検査では異常が見つかりにくい痛みです。患者は全国に1,400万人と、同社代表の和田氏は推定しています(2023年11月時点)。

2023年時点の診断は問診中心

2023年の時点で、診断は問診を中心とした聞き取りが主で、定量的なデータに基づく診断はないとされていました。そのため適切な診断がなされず、患者の治療に対する満足度は低いままとされていました。痛覚変調性疼痛は、本人にも周囲にも分かりにくく、対策が後回しにされがちな課題です。

他にも、職場での不調の見えにくさ、プレゼンティーズム(出勤していても本来の力を発揮できない状態)、健康経営(従業員の健康を経営の課題として扱う考え方)での把握の難しさ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 痛覚変調性疼痛組織や神経に損傷がないにもかかわらず続く痛みを指す。中枢神経系の変化が関わるとされ、国内の痛み関連8学会が2021年に呼称を決めた。線維筋痛症などもこれに含まれる。

ハプキタスの強み|「痛みの可視化」を研究

ハプキタスが「痛みの可視化」を研究|現在は、研究機関へ携帯型の装置を提供/錯覚への反応で痛みを測る/携帯型で約30秒の測定

錯覚への反応で痛みを測る

従来の痛みの評価は、問診による聞き取りが中心で、感じ方を数値で示すことが難しいという課題がありました。

ペインコンパスとは、温かい刺激と冷たい刺激を同時に皮膚へ当て、サーマルグリル錯覚(温冷の同時刺激で熱さや痛みを感じる錯覚)への反応から、痛みの感じ方を測る装置です。温度は約42℃と約18℃で、この組み合わせを当てると、脳の中で熱いように感じる錯覚が生じます。痛覚変調性疼痛の患者は、この錯覚を健常者より鋭敏に感じるといわれており、その反応の大きさが評価の手がかりです。体を傷つけない方式で錯覚への反応の大きさを記録でき、痛みの感じ方の傾向を数値で確認できるようになります。

携帯型で約30秒の測定

従来のサーマルグリル錯覚の測定には、8本のプローブ(皮膚に当てて温冷の刺激を与える端子)を備えた設置型の装置が先行研究で使われており、持ち運べるものではありませんでした。

ペインコンパスは、本体が70×40×65mm、重量140gの携帯型の装置です。グラフェン(炭素原子が薄く1層に並んだ素材)を使った2本のプローブを備え、温度の制御はiPhoneやiPadのアプリで行います。測定は1回あたり約30秒です。健常者52名を対象にした検証では、従来の装置の測定値と、項目ごとに中等度から優れた対応関係(測定値どうしの結びつきの強さ)が確認されましたが、患者を対象にした検証は今後の課題です。持ち運べるため、研究室の外でも測定できるようになります。

FrontJournalの解説
  • サーマルグリル錯覚単独では熱いと感じない温かい刺激と冷たい刺激を同時に皮膚へ当てると、熱さや痛みを感じる錯覚現象を指す。痛みの感じ方を調べる研究で使われる。

未来・応用|痛みの感じ方を職場の不調評価へ広げる共同研究

痛みの可視化が変える未来|職場の不調評価へ広げることを目指す/研究機関で導入が進む/職場の不調評価を共同研究/他者が把握できる形を目指す

研究機関で導入が進む

ペインコンパスは、2025年2月に販売が始まり、研究機関を中心に導入が進んでいます。2026年7月時点の導入は、全国の研究機関などの29機関です。装置の妥当性と信頼性を検証した論文は、痛みの研究分野の国際学術誌の2026年8月号に掲載されました。検証は畿央大学の研究チームが行い、患者を対象にしたさらなる検証は、今後の課題とされています。

職場の不調評価を共同研究

2026年8月24日、同社は神戸大学と、業務遂行適合性評価プロトコルの開発と有用性検証を目的とした共同研究契約を締結しました。プロトコルとは評価の手順のことで、ペインコンパスの計測データから、「今、業務を遂行できる状態にあるか」を確かめる手順の確立を目指しています。出勤していても本来の力を発揮できない状態は、健康経営や産業保健の現場で、見えにくいコストとして注目されています。研究期間は、2027年1月29日までの予定です。

他者が把握できる形を目指す

同社が目指すのは、本人にしか分からない感覚を、他者が客観的に把握できる形に変えることです。同社は、理念に「すべてに触覚で喜びを」を掲げています。医療やリハビリ、AR(拡張現実)・VR(仮想現実)の分野をはじめ、感覚の可能性を広げることが目標です。ペインコンパスのほかに、上に立つだけでバランス機能の状態を確認できる「バランスマット」を、2026年10月から自治体や健康施設向けに販売しています。

会社概要|ハプキタス株式会社

近畿大学発で2023年に設立

ハプキタス株式会社は、2023年9月1日に設立されました。代表取締役の和田潤氏は、前職で触覚計測システムの開発を担っていました。社名は、触覚を意味するHAPTICと、いつでもどこでもを意味するUBIQUITOUSを組み合わせた造語です。2023年11月21日には、近畿大学理工学部の池田篤俊准教授との共同研究契約の締結と、同大学発ベンチャー企業としての認定を発表しています。

認定と連携で事業を拡大

2025年11月17日、ペインコンパスは京都府の新商品・サービス販売促進支援制度(チャレンジ・バイ。府内中小企業の新商品を認定し、販売を支援する制度)の認定商品になりました。2026年8月27日には、バランスマットも同制度の認定商品になっています。九州ヘルスケアスタートアップラボ(KSLab)も、ペインコンパスを支援しています。和田氏は、令和5年度の京都府起業支援事業費補助金を活用して、痛みの診断を補助するシステムの試作に取り組みました。

製品と支援事業の広がり

同社の事業は、ペインコンパスやバランスマットの開発・販売に加え、医療・リハビリ機器開発の共創、研究開発から社会実装までの支援、研究用機器の供給などです。製品には、転倒予防や筋力強化を掲げる「アビリティマット」や、触覚フィードバックによるリハビリの「アクティブiNems」もあります。本社は京都市伏見区にあり、福岡市に、リサーチ&ビジネスを担う福岡オフィスを置いています。

会社情報

会社名ハプキタス株式会社
所在地京都府京都市伏見区。福岡オフィス(福岡県福岡市東区)
設立2023年9月1日
代表和田 潤(代表取締役)
資本金675万円
事業痛みの感じ方を測る携帯型評価装置「ペインコンパス」の開発・販売。フレイル・前庭機能評価用「バランスマット」の開発・販売。医療・リハビリ機器開発の共創、研究開発・実証・社会実装の支援、研究用機器の供給
技術領域サーマルグリル錯覚、痛みの可視化、触覚計測、リハビリテーション
連携近畿大学理工学部の池田篤俊准教授と共同研究契約(2023年11月発表)。神戸大学と共同研究契約(2026年8月)
採択近畿大学発ベンチャー認定(2023年11月発表)/令和5年度京都府起業支援事業費補助金を活用(2023年度)/京都府チャレンジ・バイ認定(ペインコンパス=2025年11月、バランスマット=2026年8月)
URLhttps://hapquitous.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

痛みは、本人にしか分からない感覚だと考えられてきました。その感じ方を、温冷の刺激への反応という形で数値にしようとする試みです。この試みは、診断や職場の健康管理に、新しい物差しを加える可能性を持ちます。

同社は、携帯型で約30秒の装置にまとめ、研究機関から導入を広げています。他者が客観的に把握できる共通の物差しを目指す姿勢が印象的です。神戸大学との共同研究で、職場の不調の評価にどこまで使えるかが注目されます。

患者を対象にした検証は今後の課題とされており、今後の成果が待たれます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。