イントロン・スペース「尿ケア用具」を研究|尿を本体に溜めてトイレで流す仕組みを描いたイラスト

イントロン・スペース株式会社

イントロン・スペース「尿ケア用具」を研究|研究領域=漏れた尿を・本体に溜める/強み=皮膚よりも・柔らかい素材/将来性=薬局で販売し・アジアを目指す

企業紹介|イントロン・スペース株式会社とは?

尿もれを気にせず外出や介護を続けられる製品として、注目を集める「尿ケア用具」。イントロン・スペース株式会社は、その社会実装を目指す、ヘルスケア系ディープテック企業です。男性用の尿ケア用具「TIMESHIFT」(タイムシフト)を、前立腺の手術を受けた方や介護の現場へ提供しています。

キーワード「尿ケア用具」

「尿ケア用具」は、尿もれのある人が身につけて、漏れた尿を受け止める製品です。特徴は、受け止めた尿を製品の中に溜めておき、自分の都合に合わせてトイレで流せる点にあります。長時間の外出先や介護の現場で、装着したまま過ごし、交換のたびにトイレへ向かう手間を減らせます。

市場課題|尿もれのケアは吸収材が中心で、皮膚と生活の両方に負担が残る

現状の尿もれケアの課題|現状は、吸収材が皮膚と生活の両方に負担を残す|濡れた面が皮膚に・触れ続ける/使い捨ての交換が・生活を縛る

吸収材は皮膚トラブルの原因

尿を吸わせるケアは、皮膚のトラブルを招きやすいといわれています。尿取りパッドやおむつは、受け止めた尿を吸収材に保つ仕組みで、濡れた面が皮膚に触れ続ける構造です。皮膚がふやけると、失禁関連皮膚炎(尿や便が皮膚に触れて起きる炎症)や床ずれの悪化につながるとされます。

使い捨ての交換が生活を縛る

使い捨ての吸収材は、交換の手間が生活を縛ります。一定量を吸うたびに新しいものへ替える必要があり、外出先ではトイレの場所と時間が気がかりです。介護の現場では交換と拭き取りが介助者の作業時間を押し上げ、使用済みの吸収材は可燃ごみとして処理されます。

介助を受ける場面では、交換のたびに人手を借りる心理的な負担も生じます。他にも、尿のにおいが周囲へ広がる不安、替えを持ち歩く荷物の多さ、使用後の廃棄にかかる費用、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 失禁関連皮膚炎尿や便が皮膚に長く触れることで起きる炎症である。角質がふやけて刺激に弱くなり、赤みやただれを生じる。寝たきりの人では床ずれを悪化させる要因になるため、皮膚を濡らさないことが対策の基本となる。

イントロン・スペースの強み|「尿ケア用具」を開発

イントロン・スペースが「尿ケア用具」を開発|今後は、尿を溜めトイレで流すことが可能に|尿は本体に溜まり・皮膚の負担が減る/トイレで立ったまま・尿を流せる

尿を溜めて皮膚に触れさせない

尿を吸収材に吸わせる方式では、濡れた面が皮膚に接したままになり、交換までの時間だけ刺激が続きます。

同社の「TIMESHIFT」は、漏れた尿を本体へ溜めておく構造の尿ケア用具です。身体に触れる部分には超軟伸性素材(皮膚よりも柔らかく、よく伸びる樹脂)を用い、リング状の部品で装着の位置を保ちます。溜まった尿が戻らないよう、人の静脈を模した逆流を防ぐ構造を設けました。溜められる量は、立った姿勢で300ml、横になった姿勢で500〜800mlが目安です。尿が皮膚に触れないため、濡れた面による刺激そのものが生じず、皮膚への負担を抑えられます。

交換せずトイレで排出できる

吸収材を使う方式では、替えの品を持ち歩き、交換できる個室を探すことが前提になります。

「TIMESHIFT」では、溜まった尿を、トイレで立ったまま通常と同じ姿勢で流せます。装着は製品を身体に当て、専用のアンダーウェアで押さえる手順で、所要はおよそ30秒です。尿を捨てる動きが普段の排尿とほぼ同じなので、介助者の手を借りずに、利用者が自分の都合に合わせてトイレへ行き、溜まった尿を処理できます。交換のたびにトイレの個室へ入る必要がなくなり、使用済みの吸収材を外出先から持ち帰る手間も減らせます。

FrontJournalの解説
  • 超軟伸性素材皮膚よりも柔らかく、大きく伸びる性質を持つ樹脂を指す。身体の動きに合わせて形が変わるため、装着したときの締めつけやずれが起きにくい。肌に直接触れる医療・介護用の製品で、装着感を左右する要素となる。

尿ケア用具の未来|薬局の店頭から海外の市場へ

溜める尿ケア用具が変える未来|薬局の店頭から、海外の市場を目指す|薬局の店頭で・手に取れる/洗って繰り返し・使えるモデル/アジアの市場へ・展開を目指す

薬局の店頭に並ぶ

「TIMESHIFT」は、薬局の店頭で手に取れる製品になっています。2024年11月に正式な販売が始まり、2025年4月からは石川県のコメヤ薬局の複数店舗で店頭販売が始まりました。そのうちの1店は金沢大学附属病院に隣接し、手術を受けた方が受診の帰りに立ち寄れる場所にあります。通信販売だけでなく、実物を見て相談しながら選べる経路が広がっています。

洗って繰り返し使えるモデル

同社は、繰り返し使えるモデルで毎日の費用を下げようとしています。従来のモデルは1回ごとに使い切る設計で、毎日使う利用者からは費用の負担を指摘する声が寄せられていました。2026年6月25日から7月31日まで、クラウドファンディング(賛同者から少額ずつ資金を募る仕組み)で新しいモデルを先行公開しました。洗って複数日にわたり使えるため、日々の支出を抑えながら使い続けられます。

アジアへの展開を目指す

同社は、日本で育てた尿ケア用具を、アジアの市場へ広げることを目指しています。2026年1月に、医療機器メーカーのクリエートメディックとの協業を始めました。東南アジアとインドで「TIMESHIFT」が受け入れられるかを調べ、クリエートメディックの自己導尿カテーテル(自分で尿道に入れて尿を出す管)の技術と、同社の超軟伸性素材を組み合わせた新しい製品も検討します。高齢化が進む地域で、尿もれを理由に外出をあきらめる人を減らすことが、この取り組みの狙いです。

会社概要|イントロン・スペース株式会社の事業内容・設立背景

2019年に東京で設立

イントロン・スペース株式会社は、2019年10月に東京で設立されました。代表取締役の今井茂雄氏は、住宅設備メーカーで衛生管理と排泄のケアの研究開発に携わってきました。自身の父の介護をきっかけに、最期まで自分らしく生きられる社会に必要な製品を考え、創業に至っています。事業内容は、超軟伸性素材を用いたパーソナルケア・ヘルスケア製品の研究開発、企画・設計、製造、販売です。

採択・連携

同社は、医療機関との臨床研究と、自治体・団体からの評価を重ねてきました。金沢大学附属病院では、前立腺の手術を受けた方を対象に臨床研究を行い、生活の質が向上することを確認しています。2023年度の「スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ」では、今井氏が最優秀起業家賞を受けました。「TIMESHIFT」は、2025年1月に「東京TASKものづくりアワード2024」の優秀賞、同月に「モノづくりブランドara!kawa」の認定、同年3月に「荒川区新製品・新技術大賞」の優秀賞を受けています。

累計約2億2,000万円を調達

同社は、2024年4月時点で累計約2億2,000万円を調達しています。同月に、TNPグループなどを引受先とする第三者割当増資(特定の相手だけに新株を発行する方法)で約1億円を集めました。調達した資金は、人員の増強による正式販売に向けた体制づくりと、開発の加速に充てられます。

会社情報

会社名イントロン・スペース株式会社(Intron Space Inc.)
所在地〒110-0015 東京都台東区東上野3-12-11。デザインセンター:埼玉県八潮市大瀬5-7-20
設立2019年10月3日
代表代表取締役:今井 茂雄
調達累計約2億2,000万円(2024年4月時点)。2024年4月に第三者割当増資で約1億円(TNPグループほか)
事業超軟伸性素材を用いたパーソナルケア・ヘルスケア製品の研究開発、企画・設計、製造、販売。主な製品は男性用の尿ケア用具「TIMESHIFT」
技術領域超軟伸性素材と逆流防止構造により、漏れた尿を本体に溜める尿ケア
連携金沢大学附属病院(前立腺手術後の患者を対象とした臨床研究)。クリエートメディック(東南アジア・インドでの市場調査と共同製品開発の検討/2026年1月)。コメヤ薬局(石川県内での店頭販売/2025年4月)
採択スタートアップビジネスプランコンテストいしかわ 最優秀起業家賞(2023年度)。東京TASKものづくりアワード2024 優秀賞(2025年1月)。モノづくりブランドara!kawa 認定(2025年1月)。荒川区新製品・新技術大賞 優秀賞(2025年3月)
URLhttps://intronspace.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

「溜めて流す」という選び方に、なるほどと感じました。尿を吸収材へ移すのではなく、身体の外に置いた容器へ導き、トイレまで持ち越す。この発想の転換が、皮膚の問題と交換の手間を同時に軽くしています。

興味深いのは、素材と構造の両方が身体に寄せて設計されている点です。皮膚より柔らかく伸びる樹脂、静脈を模した逆流防止の構造。単なる介護用品ではなく、身体のしくみを写し取った製品だと受け取ると、開発の筋道が見えてきます。

尿もれを理由に出かけるのをやめる人が、一人でも減る日を楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら

この企業について、
もっと深く知りたい方へ

パートナーシップ・お問い合わせはこちらから。