JITSUBO株式会社|液体の中でペプチドを合成する技術を開発する東京農工大学発企業

JITSUBO株式会社(ジツボ)

JITSUBO|研究領域=液体の中でペプチドを合成/強み=工程ごとに反応を確認/将来性=スイスとデンマークの2社と契約

企業紹介|JITSUBOとは?

ペプチド医薬品の製造費と廃棄物を抑える技術として、注目を集める「Molecular Hiving」。JITSUBO株式会社は、その技術を開発する、東京農工大学発の企業です。反応を液体の中で進めるペプチド合成技術を開発し、合成の受託と技術のライセンスを提供しています。

キーワード「Molecular Hiving」

「Molecular Hiving」は、アミノ酸が2〜49個つながった分子であるペプチドを、液体の中で合成する技術です。東京農工大学の千葉一裕氏の研究室で開発されました。反応が均一な液体の中で進むため、工程ごとに反応の進み具合を確かめられます。

市場課題|ペプチド医薬品の製造費と品質管理

現状のペプチド合成の課題|樹脂の上の反応は直接調べにくい/原材料の使用量と廃棄量が課題

安価な製造が期待される

化学合成で作れるペプチド医薬品は、安価な医薬品として期待されています。抗体医薬品が比較的高価なためです。ペプチドは、代謝性慢性疾患や癌などの医薬品に使われる分子です。ペプチドは、低分子と抗体医薬品の中間の大きさのため中分子と呼ばれます。

固相法は反応を確認しにくい

固相法では、反応が樹脂の上で進む不均一な系のため、一般に、合成途中の物質(中間体)を反応液から直接サンプリングしにくいとされます。固相法は固体の樹脂にアミノ酸を1つずつつないで合成を進める方法です。Molecular Hivingのような液相法では、反応液を直接調べられます。

他にも、原材料の使用量、廃棄物の量、製造規模の拡大、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 固相法固体の樹脂にアミノ酸を1つずつ結合させてペプチドを伸ばす合成法。反応が樹脂の上で進むため、途中の中間体を反応液から直接調べにくい。

JITSUBOの強み|「Molecular Hiving」を開発

JITSUBOが「Molecular Hiving」を開発|原材料と廃棄量を従来法より削減/反応液から直接サンプリング

原材料と廃棄量を減らせる

従来法では、原材料の使用量が多くなり、製造費も廃棄物も増えやすくなります。

Molecular Hivingは、疎水性タグという足場になる分子に、アミノ酸を1つずつ結合させる方法です。タグは固相法の樹脂と同じ担体(反応の足場になる土台)の役割ですが、反応液に溶けるため、反応は均一な液体の中で進みます。加えるアミノ酸と縮合剤(アミノ酸どうしを結合させる試薬)は1.1〜1.3当量(反応に必要な理論量を1とした比)で、各工程で目的物が得られる割合(収率)は約99%です。この仕組みで、従来法より原材料の使用量と廃棄量を減らせます。

工程ごとに反応を確認できる

合成の途中経過を確かめながら進めたい場面では、反応液を直接分析できる方法が役立ちます。

Molecular Hivingでは、反応が均一な液体の中で進むため、反応液から直接サンプリングできます。サンプルはUHPLC(成分を高精度に分離して測る分析法)で調べ、不純物の生成や反応率を一工程ごとに確認する流れです。一般的な固相法では、反応が樹脂の上で進むため、この直接確認が難しいとされています。使う有機溶媒は、CMR free(発がん性・変異原性・生殖毒性を持つ物質を含まない)溶媒も選べる設計です。

FrontJournalの解説
  • 疎水性タグ水になじみにくく有機溶媒に溶ける性質を持つ分子。アミノ酸をタグに結合させてペプチドを伸ばし、合成後に脱保護試薬(保護基を外す薬剤)でタグを外す。

Molecular Hivingの未来|医薬品や化粧品への応用

ペプチド合成技術が変える未来|化粧品用ペプチドの製造に展開/糖尿病・肥満の医薬品で独占的に使用/Bachemが国際会議で紹介

化粧品用ペプチドにも展開

応用先の1つが、化粧品用ペプチドの製造です。同社は2020年に、スイスのペプチド原薬(医薬品の有効成分となる物質)メーカーBachemと独占的な技術移管契約を結びました。化粧品原料の情報サイトin-cosmeticsには、この技術でペプチドを低コストかつ環境に配慮して製造できるとする記事が掲載されています。

糖尿病や肥満の医薬品製造に展開

2023年6月、同社はデンマークのNovo Nordiskと、糖尿病・肥満および関連疾患の分野でMolecular Hivingを独占的に使用して製造するライセンス契約を結びました。この契約は、同社の公式サイトのニュースで2023年6月15日付で公表されています。2025年7月には、ペプチド・核酸医薬品の国際会議「TIDES USA 2025」で、技術移管契約を結んだBachemがこの技術を紹介しました。

安価な医薬品の供給を目指す

同社が目指すのは、高品質で環境負荷を抑えた、費用を抑えたペプチド医薬品原薬の研究開発です。事業としては、合成法の開発に加え、研究段階のサンプルから治験薬までのペプチド合成を受託しています。Molecular Hivingは、一度に製造できる量(バッチ規模)に制限がないとされています。

会社概要|JITSUBOの事業内容・設立背景

千葉氏のコンセプトで設立

JITSUBO株式会社は、東京農工大学の千葉一裕氏が生み出した技術のコンセプトをもとに、2005年4月に設立されました。拠点は神奈川県横浜市鶴見区です。同社はペプチド合成技術を手がけています。ペプチドの用途は、医薬品、化粧品、機能性食品です。代表取締役社長の水船秀哉氏は、2021年12月に就任しました。

連携先

連携先は、スイスのBachemとデンマークのNovo Nordiskです。Bachemとの契約では、同社が製造プロセスを開発して移管し、Bachemが生産を担う分担です。2023年にはNovo Nordiskとも独占的なライセンス契約を結んでいます。

受託合成とライセンスで展開

同社の事業は、ペプチドの合成法の開発、研究段階のサンプルから治験薬までの合成受託、技術のライセンスです。技術ネットワークとアライアンスパートナーとの関係を生かし、状況に応じて柔軟にビジネスモデルを構築するとしています。従業員数は、公式サイトによると15名です。

会社情報

会社名JITSUBO株式会社(ジツボ)
所在地神奈川県横浜市鶴見区末広町1-1-43 ライフサイエンス研究センター4-1
設立2005年4月8日(公式サイト記載)
代表水船 秀哉(代表取締役社長)
資本金1,000万円(公式サイト記載)
従業員15名(公式サイト記載)
事業ペプチド合成法「Molecular Hiving」の開発。原薬の受託製造及び技術のライセンス。研究段階のサンプルから治験薬までのペプチド合成受託
技術領域ペプチド合成、タグ液相法、ペプチド医薬品原薬、製造プロセス開発
連携Bachemと独占的技術移管契約(2020年)。Novo Nordiskと独占的使用及び製造ライセンス契約(2023年6月)
URLhttps://www.jitsubo.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

ペプチド医薬品は、糖尿病や肥満などの治療に使われる一方で、製造の費用と廃棄物が課題とされてきました。Molecular Hivingは、反応を液体の中で進めることで、工程ごとの確認と廃棄物の抑制を両立しようとする技術です。固相法で難しかった中間体の確認を、反応液の直接分析で補う設計が特徴です。

日本の大学の研究室で生まれた手法が、スイスやデンマークの企業との契約につながっている点が印象的です。費用と環境負荷を抑えながら品質を確認する設計は、ペプチド医薬品を安価に届ける基盤になり得ます。受託合成から技術ライセンスまで、事業の形が複数ある点も特徴の1つです。

横浜に拠点を置く企業から広がる技術が、ペプチド医薬品の製造を変えていく日が来るかもしれません。今後は、国内外の製造現場での採用がどう広がるかが焦点です。同社のこれからの歩みに注目したいところです。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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