フルエリア「マイクロ湿式紡糸」を開発|微細な流路から繊維を紡ぐ装置と、並んだ繊維を拡大する虫眼鏡のイラスト

株式会社フルエリア

フルエリア「マイクロ湿式紡糸」を開発|研究領域=微細な流路で・原料を繊維化/強み=熱に弱い原料も・常温で紡糸できる/将来性=医療や電子材料へ・展開を目指す

企業紹介|株式会社フルエリアとは?

サステナブル原料や機能性の高い高分子を繊維にする技術として、独自に開発が進められている「マイクロ湿式紡糸」。株式会社フルエリアは、その社会実装を目指す、岡山大学発の素材系ディープテック企業です。微細な流路で原料の溶液を繊維にする手法を使い、魚由来のコラーゲン繊維を提供し、導電性高分子を原料にした導電性繊維も提供可能としています。

キーワード「マイクロ湿式紡糸」

「マイクロ湿式紡糸」は、原料を溶かした溶液を微細な流路の中で凝固液に触れさせ、液の中で固めて繊維にする方法です。原料を加熱して溶かす必要がないため、熱に弱い原料にも使えるのが特徴です。溶液を液中で固める湿式紡糸のうち、同社は、凝固液で原料溶液の流れを縮める flow-focusing の技術を適用しています。

市場課題|サステナブル原料への転換と、高機能な繊維素材の需要

現状の繊維素材の課題|現状は、原料の転換と素材への要求水準が課題に|化石由来原料の・転換が課題/電子機器で素材への・要求が上昇

化石由来原料の転換が課題

化石資源を原料とする合成繊維は、サステナブル原料への転換が課題です。化石資源の枯渇や環境問題を背景に、バイオマス(生物に由来する資源)などへの代替が進められています。また、原料を熱で溶かす溶融紡糸は、熱に弱い原料には向きません。

電子機器で素材への要求が上昇

電子機器の高度化に伴い、素材への要求水準が上がっています。スマートフォンや電気自動車では、半導体デバイスの電磁波対策に使うシールド材(電磁波を遮る材料)が重要になり、シールド材を含む素材にも一段と高い水準が求められています。導電性を持つ繊維は、電磁波シールド材や静電気防止の用途に向けた素材候補の一つです。

他にも、食品の加工で出る残渣(加工後に残る部分)など動物由来の未利用成分を活用する難しさ、大型の設備で新しい材料を少量では試作しにくいこと、衣料や建材に偏りがちな繊維の用途、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • バイオマス動植物など生物に由来する再生可能な資源である。石油などの化石資源とは異なり、適切に管理すれば繰り返し得られ、燃料や素材の原料として利用される。

フルエリアの強み|「マイクロ湿式紡糸」を開発

フルエリアが「マイクロ湿式紡糸」を開発|現在は、微細な流路で機能性繊維を提供|熱に弱い原料を・常温で繊維化/流路で細く・高配向な繊維に

熱に弱い原料を常温で繊維化

繊維の主流である溶融紡糸(原料を加熱して溶かし、押し出して固める方法)は、熱で変質するサステナブル原料には適しません。

同社の「マイクロ湿式紡糸法」は、微細な流路に原料の溶液を送り、その流れを凝固液で絞り込んで繊維にする方法です。流れを凝固液で絞り込むため、一般的な湿式紡糸より細く、分子の並びがそろった繊維を連続して得られる点が特徴です。紡糸は常温かつ低電力の条件で進みます。そのため、熱に弱い動物由来の原料(食品の加工で出る残渣などの未利用成分を含む)も、常温で繊維にできるようになり、石油由来以外の原料を使う道が開けます。

流路で細く高配向な繊維に

一般的な湿式紡糸では、繊維を細くすることにも、分子配向(分子の並びのそろい方)を高めることにも限りがあります。

同社の手法では、流路内で流れを絞り込むと線速度(繊維が進む速さ)が増し、その結果、紡糸の速度と分子配向がともに高まります。設計上、繊維を数十ナノメートル(ナノは10億分の1)の太さまで細くできます。PEDOT:PSS(導電性を持つ高分子の一種)を原料にした繊維では、高配向化が寄与したとされる導電性の向上が見られ、電気伝導率は約1,900 S/cm(シーメンス毎センチメートル)に達しました。導電性を高めた繊維は、電磁波シールド材などの素材開発に向けた選択肢として提供できます。

FrontJournalの解説
  • 分子配向高分子の鎖が一定の方向にそろっている度合いを指す。繊維では、強度や導電性などの性質に影響し、細く引き伸ばす工程で高められる。

マイクロ湿式紡糸の未来|医療・電子材料から食品への展開を目指す

マイクロ湿式紡糸が変える繊維の未来|医療や電子材料から、食品への展開を目指す|魚由来コラーゲン・繊維は医療で期待/導電性の繊維は・電磁波対策を想定/化粧品や食品へ・展開を目指す

魚由来コラーゲン繊維を展開

魚由来のコラーゲンを使った繊維を、同社は製品として紹介しています。2025年12月には、魚由来の高強度コラーゲン繊維の試作品の展開を始めました。開発した繊維の径は約30マイクロメートルで、引張強度は絹を上回り、生体適合性(体になじみやすい性質)も備え、細胞の付着も良好です。細胞の足場材料や縫合糸など、医療分野の素材としての利用が期待されています。

導電性繊維で電磁波対策

導電性を持つ高分子のPEDOT:PSSを原料とする高導電性の繊維も、製品として紹介しています。高配向化によって導電性を高めた繊維です。想定される用途は、電磁波シールド材、静電気防止、車載センサー、ウェアラブルデバイス、航空宇宙材料などです。半導体デバイスを支える素材として、繊維そのものの機能性を高める開発を続けています。

分野を超えた素材開発を目指す

同社は、サステナブル原料の繊維化を軸に、医療材料、化粧品、ヘルスケア、食品(培養肉など)へ用途を広げることを目指しています。原料を持ちながら活用に困る事業者と、機能性の高い繊維を求める側を結ぶ、素材のプラットフォーム事業が土台です。共同研究開発や有償PoC(事業化前の試験導入)、技術アドバイスを通じて、異なる分野の研究機関や企業との市場開拓を進めます。実現すれば、石油由来以外の原料でできた機能性素材を、医療や化粧品などの分野で選べるようになります。

会社概要|フルエリアの事業内容・設立背景

岡山大学の研究から創業

株式会社フルエリアは、2022年1月11日に設立されました。代表取締役の小野努氏は、岡山大学でマイクロ流路デバイスやマイクロリアクター(微小な流路で化学反応を行う装置)の研究を重ね、その過程でマイクロ湿式紡糸の手法を生み出しました。2023年9月30日には、同大学から「岡山大学発ベンチャー」の称号を授与されています。

受賞・採択の歩み

小野氏は、2021年2月に、ビジネスプランコンテスト「岡山テックプランター」の第3回で最優秀賞、同年9月に「ディープテックグランプリ」で三井化学賞を受けました。同社は、2023年9月の「Health Tech Innovation Challenge 2023」のピッチコンテストで最優秀賞に選ばれています。2024年9月から2025年8月にかけては、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「NEP(NEDO Entrepreneurs Program)躍進コース500」に採択され、動物由来コラーゲン繊維の製品開発と新たな市場構築に取り組みました。2024年11月には、イノベーションリーダーズサミットのマッチングで大手企業からの人気が高かった上位100社「ILS TOP100 STARTUPS」にも選ばれています。

素材と技術の提供が事業

事業は、機能性繊維や素材の研究開発・製造・販売と、その製造プロセスの開発・販売です。製品としてコラーゲン繊維を提供し、導電性繊維も提供可能です。共同研究開発や技術アドバイスも手がけ、新しい原料は100mL以下から試作できます。2026年1月には、「nano tech 2026」にNEDOのブースで出展しました。

会社情報

会社名株式会社フルエリア
所在地岡山県岡山市北区芳賀5303 岡山リサーチパークインキュベーションセンター
設立2022年1月11日
代表代表取締役 小野努。設立メンバーは小野努、渡邉貴一ほか
資本金200万円
事業機能性繊維、素材、材料の研究開発・製造・販売。同素材製造のためのプロセス開発・販売。共同研究開発、有償PoC。技術アドバイス。製造設備の導入支援。製品はコラーゲン繊維。導電性繊維は提供可能。粒子・カプセルの製造技術
技術領域マイクロ湿式紡糸法(マイクロ流路を使う湿式紡糸)
連携岡山大学(2023年9月に岡山大学発ベンチャーの称号を授与)
採択NEDO NEP タイプA(2021年8月〜2022年3月・小野氏個人)。NEDO NEP 躍進コース500(2024年9月〜2025年8月)。ILS TOP100 STARTUPS(2024年)
URLhttps://flueria.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

繊維の原料を石油由来から切り替えるには、原料の性質に合った紡ぎ方が要ります。熱に弱い原料を常温で繊維にできる湿式紡糸は、その入口になる技術です。原料の転換が進められるなか、湿式紡糸は有力な選択肢の1つです。

フルエリアの特徴は、微細な流路で流れを絞り込む紡糸法により、熱に弱い原料を常温で細く分子配向の高い繊維にでき、新しい原料を100mL以下から試作できる点です。魚由来コラーゲンの繊維は医療分野の素材として、導電性繊維は電磁波対策などの素材として提供可能とされています。医療と電子材料の両方に向けた繊維を持つため、用途を具体的に検討できる点も強みです。

岡山大学の研究から生まれた技術が、新しい素材の選択肢として広がる日を期待しています。岡山大学から生まれたほかの企業は、岡山大学発スタートアップ10選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年10月3日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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