奈良・先端画像技術「誘電体多層膜フィルタ」を開発

奈良・先端画像技術株式会社

奈良・先端画像技術「誘電体多層膜フィルタ」を開発|研究領域=白黒センサーを・カラー化する膜/強み=無機の多層膜で・色を分離する/将来性=近赤外などへ・対応拡大に期待

企業紹介|奈良・先端画像技術株式会社とは?

薄い膜を何層も重ねて、特定の波長の光だけを通す光学フィルタ「誘電体多層膜フィルタ」。奈良・先端画像技術株式会社は、その社会実装を目指す、奈良先端科学技術大学院大学発のエレクトロニクス系ディープテック企業です。放射線に強い白黒のイメージセンサーに、無機のフィルタを組み合わせてカラー画像を得る技術を研究しています。

キーワード「誘電体多層膜フィルタ」

「誘電体多層膜フィルタ」は、屈折率の異なる薄い膜を何層も重ねて、光の干渉を利用して色を分ける光学フィルタです。一般的なカラーカメラでは、有機色素のフィルタで赤・緑・青を分けますが、この方式には色素がありません。膜に無機の材料を使うため、色素の劣化を気にしにくい点が特徴です。

市場課題|放射線環境でのカラー撮像

現状のカラーフィルタの課題|現状は、有機色素の劣化が懸念されカラー化しにくい|有機色素は・放射線で劣化する恐れ/センサーは・白黒の画像になる

有機色素フィルタの劣化

有機色素のフィルタは、放射線の強い環境で劣化が懸念されています。市販のカラーイメージセンサーのフィルタは、この有機色素を使う方式が主流です。そのため、放射線の強い環境では、市販のカラーセンサーに劣化が懸念されます。

白黒に限られる画像

放射線に強いイメージセンサーだけでは、得られる画像は白黒になります。色の情報を得るには、センサーの前に色を分ける手段が必要です。白黒の画像では、色による判別ができません。

他にも、放射線による色素の劣化、白黒画像での色の判別、画素の大きさに合わせたフィルタの加工、といった課題があるといわれています。放射線に強い白黒のセンサーに、どう色の機能を足すかが論点になります。

FrontJournalの解説
  • イメージセンサー光を電気信号に変えて画像を得る部品のこと。カメラの目にあたり、画素と呼ばれる小さな受光部が規則正しく並んだ構造をしている。

奈良・先端画像技術の強み|「誘電体多層膜フィルタ」を開発

奈良・先端画像技術が「誘電体多層膜フィルタ」を開発|これまでに、試作でRGB並置を実現|酸化チタンなどを・交互に重ねる/画素の大きさで・フィルタを加工

無機の多層膜で色を分離

有機色素のフィルタは、放射線を受けると劣化が懸念される点が弱点です。

同社は、酸化チタンと二酸化ケイ素を交互に重ねた誘電体多層膜のカラーフィルタを開発しています。ガラスの基板に赤・緑・青のモザイク状のフィルタを形成し、放射線に強い白黒のイメージセンサーの前に取り付ける構成です。膜はスパッタリング(材料を基板に付ける方法)で形成し、フォトリソグラフィとイオンミリング(イオンで表面を削る加工)で加工する流れです。膜が無機の材料でできているため、有機色素のような放射線による劣化を抑えられると見込まれ、放射線環境でのカラー画像の取得につながると期待されています。

画素の大きさで加工

白黒のセンサーに色を足すには、画素の大きさに合わせたフィルタの加工が必要になります。

同社は、センサーの画素と同じ大きさのパターンでフィルタを形成する技術を持っています。報告された試作では、1画素を12マイクロメートル角として、赤・緑・青のフィルタを並べました。画素ごとに通す波長を決められる点も特徴です。画素の大きさのパターンを形成すれば、白黒センサーをRGB(赤・緑・青)のカラーセンサーやマルチバンド(複数の波長帯を分けて撮る方式)のセンサーへアップグレードできるといわれています。白黒センサーを活かしたまま、カラーや多波長の撮像ができるようになると見込まれます。

FrontJournalの解説
  • フォトリソグラフィ感光する材料に光で模様を焼き付け、微細なパターンを作る加工方法のこと。半導体の製造にも使われ、数マイクロメートル以下の形も作れる。

誘電体多層膜フィルタの未来|短波赤外などへの期待

無機の誘電体多層膜が変える未来|短波赤外の事例と共同研究、動作確認予定|短波赤外の撮像・事例を紹介/眼底カメラを・共同で研究/軌道上の動作確認・予定と記載

短波赤外の撮像事例の紹介

同社は、短波赤外(SWIR)を使った撮像の事例を、工業・農業・医療などの用途とともに紹介しています。短波赤外は、波長1.4〜3マイクロメートルの帯域で、近赤外より霧や煙を透過しやすい性質があります。紹介の事例は、工業の材料検査や農業への利用と、医療への応用です。

眼底カメラの共同研究

近赤外のマルチスペクトル(複数の波長帯で撮る方式)眼底カメラの共同研究に、同社も関わっています。眼底とは、眼球の奥にある網膜などの部分です。共同研究先は、奈良先端科学技術大学院大学、公立千歳科学技術大学、九州大学です。2023年12月には、光学系と画像処理技術について海外の学会で発表し、同月の国内の学会では、小型化に向けた照明の不均一性を低減する画像処理の検証を発表しています。

軌道上での動作確認の予定

奈良先端科学技術大学院大学などとの共同研究による耐放射線カラーカメラについて、衛星軌道上での動作確認が予定されていると記載されています。これは2023年9月の発表に示された内容で、誘電体薄膜のモザイクRGBフィルタを載せたセンサーを使うカメラシステムが対象です。軌道上は、宇宙放射線にさらされる環境で、カメラの部品には放射線への耐性が求められます。この確認は、宇宙で使うカラーカメラの動作を確かめる取り組みです。

会社概要|奈良・先端画像技術の事業内容・設立背景

大学発の設立と認定

2023年8月4日に設立された同社は、2024年11月5日に、奈良先端科学技術大学院大学の「奈良先端大発スタートアップ」の称号を授与されています。代表取締役は竹原浩成で、博士(工学)です。同大学の客員教授も兼任しています。

研究成果の発表

2023年9月の応用物理学会で、誘電体薄膜モザイクRGBフィルタを搭載した、耐放射線カラーカメラについて発表しました。2024年3月には、学術誌『表面技術』に、耐放射線カラーカメラ用の誘電体多層膜RGBフィルタに関する記事が掲載されています。2024年7月には、エレクトロニクス実装学会の「実装フェスタ関西2024」で、ポスター発表を行いました。2025年1月には、台湾と日本の若手研究者のワークショップで、招待講演を行っています。

事業領域と拠点

事業は、光学製品、電子部品、電子機器、ソフトウエアの企画、研究開発設計および販売です。技術は、光学素子、半導体、電子回路、画像処理とソフトウェア、カメラシステムの各分野にわたります。画像処理の技術として、深層学習による超解像、残像の低減、不要な画像の消去、ゴーストの除去を挙げています。2026年4月1日には、奈良先端科学技術大学院大学の構内へ移転しました。

会社情報

会社名奈良・先端画像技術株式会社(Nara Advanced Imaging Technology, Co., Ltd.)
所在地奈良県生駒市高山町8916番地5
設立2023年8月4日
代表竹原 浩成
資本金360万円
事業光学製品・電子部品・電子機器・ソフトウエアの企画、研究開発設計および販売
技術領域誘電体多層膜フィルタ。光学フィルタ。カラーイメージセンサー
URLhttps://nara-ait.co.jp

編集後記|FrontJournal編集部より

放射線のある環境では、カメラの色を分けるフィルタの劣化が課題になります。市販のカラーセンサーの多くは、有機色素でこの色の分離を行っています。無機の膜で色を分ける方式は、その課題への一つの答えです。

奈良・先端画像技術の特徴は、センサーの画素の大きさに合わせてフィルタを加工できる点です。既存の白黒センサーにカラーや多波長の機能を足せるといわれており、用途の広がりが期待されます。短波赤外などへの対応も、今後の注目点です。同社は、光学、半導体、電子回路、画像処理の知見を併せ持つことも掲げています。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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