マイクロエミッション|北陸先端科学技術大学院大学発の「液体電極プラズマ」で液体の元素を現場で分析する分析機器系ディープテック企業

株式会社マイクロエミッション

マイクロエミッション「液体電極プラズマ」を開発|研究領域=液中の泡で光らせる分析法/強み=コンセントで動く小型の分析装置/将来性=工場の液を現場で分析

企業紹介|マイクロエミッションとは?

工場の液体に含まれる金属を、その場で分析する方法として研究が進む「液体電極プラズマ」。マイクロエミッションは、その社会実装を目指す、北陸先端科学技術大学院大学発の分析機器系ディープテック企業です。アルゴンガスを使わない小型の元素分析装置を開発し、製造業の現場や国内外の大学・研究機関へ提供しています。

キーワード「液体電極プラズマ」

「液体電極プラズマ」は、細い流路を満たした液体の試料に電圧をかけ、液体の中に生じた泡の中でプラズマを発生させる技術です。プラズマの熱で試料中の元素が光を放ち、光の波長から元素の種類を、光の強さから濃度を調べられます。アルゴンなどのガスを使わないため、分析装置を持ち運べる大きさにできる点が特徴です。

市場課題|液体の元素分析は現場で行いにくい

現状の液体の元素分析の課題|現状は、外部依頼で結果が遅れ、装置は工事が要る/外部依頼で分析結果が遅延/アルゴンと設備工事が必要

外部依頼で分析結果が遅延

工場の廃液やめっき液に含まれる金属の濃度は、社内の分析室や外部の分析機関に試料を送って測ることが多く、結果が出るまでに時間がかかります。結果を待つあいだは、液の補充や工程の調整の判断が難しい状況です。液の異常に気づくのが遅れると、トラブルへの対応が後手に回りやすくなります。

アルゴンと設備工事が必要

液体の元素分析で広く使われる「ICP発光分光分析法」(ICP=誘導結合プラズマ。高温のアルゴンプラズマで元素を光らせる分析法)は、大量のアルゴンガスと、それを流すための設備工事を必要とします。装置にはガスボンベや配管、排気ダクトをつなぐ必要があり、置き場所が限られます。さらに、ガス代を含むランニングコスト(運用にかかる費用)も負担になりやすい状況です。

他にも、固体の試料を溶かして液体にする前処理の手間、分析機関へ試料を運ぶ手間、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • ICP発光分光分析法アルゴンガスに高周波の電力を加えて高温のプラズマを作り、霧状にした試料を送り込んで元素を光らせる分析法である。多くの元素を一度に測れ、元素分析の標準的な手法として広く使われる。

マイクロエミッションの強み|「液体電極プラズマ」を開発

マイクロエミッションが「液体電極プラズマ」を開発|現在は、現場で使える小型の分析装置を提供/液中の泡で光らせ装置を小型化/コンセントだけで手軽に設置

液中の泡で光らせ装置を小型化

従来のICP発光分光分析法は、ガスの流れの中で大きなプラズマを保つ仕組みのため、装置が大型になりやすい方式でした。

マイクロエミッションの「液体電極プラズマ」は、中央を細く絞った専用の容器に液体の試料を入れ、両端から電圧をかけてプラズマを作る方式です。細い部分に電気のエネルギーが集中して液体が沸騰し、生じた泡の中で1000分の1秒以下の短い放電が繰り返されます。放電の中心は7000℃近くに達し、試料中の金属などの元素がそれぞれ固有の波長の光を放つ仕組みです。この光を小型の分光器(光を波長ごとに分ける装置)で読み取るため、装置は持ち運べる大きさに収まり、工場の現場や出張先でも液体を分析できるようになります。

コンセントだけで手軽に設置

ガスでプラズマを作る方式では、分析のあいだアルゴンガスを流し続ける必要がありました。

液体電極プラズマは、液体の試料そのものの中でプラズマを作るため、アルゴンなどのガスを一切使いません。電源は一般的な100Vのコンセントで足り、ガスボンベの交換や、配管と排気ダクトの工事も要りません。測定の対象は、リチウムやベリリウムから始まる約60の元素で、酸性とアルカリ性のどちらの液も測れる容器を選べます。既存の設備の隣にも置きやすく、ガス代がかからない分、工場や研究室は分析にかかる費用を抑えられるようになります。

FrontJournalの解説
  • 分光器光を波長ごとに分けて、それぞれの強さを測る装置である。元素は種類ごとに決まった波長の光を出すため、波長と強さを読み取ると、元素の種類と濃度が分かる。

液体電極プラズマの未来|工場の液を現場で分析

液体電極プラズマが変える未来|工場の液を現場で測り、判断を早める/めっき液を現場で管理/廃炉や海外の現地調査で活用/製造業DXのセンサーを目指す

めっき液を現場で管理

同社の装置は、金属精錬やめっき、電子部品などの製造業で、工程の液を現場で分析する用途に使われています。同社は、金めっき液に含まれる金の定量(含まれる量を測ること)や、無電解めっき液に含まれるニッケルとパラジウムの定量について、応用例をまとめて公開しています。主な用途の一つが、24時間稼働する工場での現場管理です。試料を採った直後にその場で結果を得られるため、液の補充や交換の時期を早く判断できます。

廃炉や海外の現地調査で活用

装置が小さいことから、研究機関の現地調査にも使われています。納入先の一つは、日本原子力研究開発機構の福島廃炉安全工学研究所です。原発の廃炉の現場では、使い終えたあとの廃棄に場所を取らない点も評価されているとしています。東南アジアの農業研究では、土の肥沃度(作物を育てる力)の診断に使った報告もあります。

製造業DXのセンサーを目指す

同社が目指すのは、液体の元素分析を現場の工程に組み込み、製造業DX(デジタル技術による製造業の変革)に欠かせないデータを早く得られるようにすることです。2012年には、工程に組み込むための「MH-7000オンライン元素モニター」の試作品が新聞で紹介されました。最近は、洗浄液に含まれるナトリウムの濃度管理について問い合わせが増えているとしています。分析を外部に頼らず自分の部署で結果を得られれば、工場は操業時間を短縮し、資源を無駄なく使えるようになります。

会社概要|株式会社マイクロエミッション

JAISTの研究成果から創業

マイクロエミッションは、2006年8月に設立された北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)発のベンチャー企業です。代表取締役の山本保氏と、同大学教授の高村禅氏が共同で創業しました。創業のきっかけは、同大学で生まれた液体電極プラズマの研究成果です。2021年には、同大学から大学発ベンチャーの認定を受けました。本社は石川県能美市の「いしかわクリエイトラボ」に置き、同大学の構内にも共同実験室を構えています。

技術賞などを受賞

同社は創業前の2004年に、科学技術振興機構の大学発ベンチャー創出推進に採択されました。2009年には第21回中小企業優秀新技術・新製品賞で「中小企業庁長官賞」を受け、2011年には新エネルギー・産業技術総合開発機構の開発助成事業に採択されています。2016年には「TECH PLANTER ディープテックグランプリ」で「オムロン賞」、2020年には化学とマイクロ・ナノシステム学会の「技術賞」を受けました。

国内外の研究機関に納入

現在の主力製品は、ポータブル元素分析装置「MH-6000シリーズ」です。納入先には、国内の大学や産業技術総合研究所、電力中央研究所などの研究機関のほか、金属精錬や表面処理、電子部品などの製造業が含まれます。旧モデルのハンディ元素分析器「MH-5000」を含めて、米国やブラジル、台湾、韓国、フィンランドなどへ輸出しています。

会社情報

会社名株式会社マイクロエミッション(Micro Emission Ltd.)
所在地石川県能美市旭台二丁目13番地 いしかわクリエイトラボ(本社)。共同実験室:北陸先端科学技術大学院大学 ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー
設立2006年8月(北陸先端科学技術大学院大学発ベンチャー 認定番号第3号)
代表山本 保(代表取締役)。共同創業者:高村 禅(北陸先端科学技術大学院大学 教授)
資本金2,300万円
事業液体試料を対象とした元素分析装置の開発・製造・販売。ポータブル元素分析装置「MH-6000C」(L325×W180×H188mm・約4.8kg、検出限界は元素と試料により5µg/L〜100mg/L程度)。ハンディ元素分析器「MH-5000」(廃番、L204×W105×H114mm・約1.4kg、試料0.1mLで測定)。発光スペクトル確認・レンタル・定量評価の受託
技術領域液体電極プラズマ、プラズマ発光分光分析、微小流路の応用
採択科学技術振興機構 大学発ベンチャー創出推進(2004年)。中小企業優秀新技術・新製品賞 中小企業庁長官賞(2009年)。経済産業省 新連携事業の認定(2010年)。新エネルギー・産業技術総合開発機構 開発助成事業(2011年)。TECH PLANTER ディープテックグランプリ オムロン賞(2016年)。化学とマイクロ・ナノシステム学会 技術賞(2020年)
URLhttps://www.microem.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

元素分析といえば、分析室に据え付けた大きな装置を思い浮かべます。マイクロエミッションが取り組むのは、その分析を液体のある現場まで運ぶことです。液体の中の小さな泡でプラズマを作るという発想が、ガスボンベも工事も要らない装置につながりました。

持ち運べるハンディ元素分析器「MH-5000」は、2019年にテレビドラマ「科捜研の女」でも使われました。研究室の装置が「現場の道具」として画面に映るのは、この小ささがあってこそです。同じ北陸先端科学技術大学院大学からは、Q-Lightsのように研究成果を製品にする企業も生まれています。

工場の液の状態を、その場で数値として確かめられるようになれば、ものづくりの判断はもっと速くなるはずです。現場分析がどこまで広がるのか、引き続き注目していきたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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