株式会社調和技研(CHOWA GIKEN)|「AIエンジン」を研究

株式会社調和技研(CHOWA GIKEN)

調和技研「AIエンジン」を研究|研究領域=AI導入を支援する3系統のエンジン/強み=170件を超える受託開発の実績/将来性=検査や文書業務へ活用が広がる

企業紹介|株式会社調和技研とは?

業種ごとに異なる業務へAIを合わせる手段として、共通する処理を部品化した「AIエンジン」の活用が広がっています。株式会社調和技研は、北海道大学大学院情報科学研究院・調和系工学研究室発の、AI系ディープテック企業です。言語・画像・数値の3系統のAIエンジン「Lango」「Visee」「Furas」を基盤に、オーダーメイドのAI開発を170件以上手がけています。主な事業は、AI導入支援と受託開発、AI人材の育成等です。

キーワード「AIエンジン」

AIエンジンは、開発のたびに繰り返し使う処理を、あらかじめ部品としてまとめたものです。文章を読み取る、画像を見分ける、数値から将来を予測するといった処理には、業種が違っても共通する部分が多くあります。その共通部分を再利用し、案件ごとに各社のデータで調整して使う仕組みです。ゼロから開発する場合に比べ、短い期間で試作に入れるため、導入の負担を抑えられるとされています。

市場課題|AIを現場へ実装する難しさ

現状のAI導入の課題|現状は、人材とデータの不足で導入が遅れる/人材が不足し着手しにくい/学習データが集まりにくい

人材不足でAI導入が進みにくい

AIの導入を検討しても、社内で設計と運用を担える人材が足りない企業が少なくありません。AIの開発では、解くべき課題の設定、データの整備、精度の評価といった工程に専門的な知識が必要です。人材が都市部の大企業に集まるほど、地方の中小企業や自治体はAI活用から遠ざかりやすくなります

学習データ不足で自動化しにくい

製造現場の外観検査では、学習に使う不良品の画像が集まりにくく、自動化を進めにくくなります。品質管理が行き届いた工程ほど不良は少なく、異常の画像は種類も枚数も限定的です。検査の負荷は熟練の検査員の目視に集中したままです。

他にも、機密を含む社内データをクラウドへ預けにくい事情、実証から本番運用へ移す体制づくり、部署ごとに散らばった文書やログの整理、担当者の異動による知見の途切れ、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 外観検査製品の傷や欠けなどを表面の見た目から判定する検査。人の目に頼る工程が多く、製造業では自動化の要望が大きい。
  • 実証研究室ではなく実際の業務環境に仕組みを置き、性能や効果を確かめること。運用の条件を含めて評価できる。

調和技研の強み|3系統のAIエンジン

調和技研が「AIエンジン」を開発|今後は、良品学習で異常検出が可能に/相談から運用まで一貫して担う/良品だけを学習し異常を検出する

相談から運用まで一貫して担う

AIの導入では、構想を描く会社、開発する会社、運用を担う会社が分かれることが多く、引き継ぎのたびに前提の共有が必要でした。

調和技研の受託開発は、業務課題の整理からモデルの開発、現場での運用までを一つの窓口で担う体制です。土台にあるのは、言語系の「Lango」、画像系の「Visee」、数値系の「Furas」という3系統のAIエンジンで、企業ごとのデータへ合わせて調整します。170件を超える受託開発の実績を通じて、業種ごとに使える設計の型が蓄積されてきました。発注する側は、専門の人材を自社で抱えずにAIの導入を進められます

良品だけを学習し異常を検出

一般的な画像認識では、正常と異常の両方を大量に学習させる設計が基本でした。不良がほとんど出ない工程では、異常の事例が集まらず精度を高めにくくなります。

画像系エンジン「Visee」の異常検出は、良品の画像だけを学習し、その特徴から外れた製品を異常として見つける方式です。同社がトヨタ自動車衣浦工場と共同で開発した「良品学習による製品異常検出AIエンジン」は、2021年12月から試験的な利用が始まりました。実際の製品では、ケースによって100%に近い検出精度が得られたとされています。不良品の画像を集めにくい現場でも、外観検査の自動化に取り組めるようになります。

FrontJournalの解説
  • 良品学習正常な製品の画像だけを学習し、その特徴から外れたものを異常と判定する手法。不良品の事例が少ない工程で使える。
  • 画像認識画像に写る対象の種類や状態を、学習したモデルで判別する技術。検査や監視、文字の読み取りなどに用いられる。
  • 受託開発発注元の業務に合わせて仕組みを設計し、開発から納品までを請け負う形態。既製品では合わない要件に対応できる。

AIエンジンの未来|産業と人材への広がり

現場のAIエンジンが変える未来|製造ラインの外観検査で稼働/ローカルLLMで社内文書を扱う/国内外でAIの人材育成を目指す

製造ラインの外観検査で稼働

異常検出AIは、すでに自動車部品の製造ラインで使われています。トヨタ自動車衣浦工場で量産品の外観検査に使われているのは、良品学習で構築したモデルです。人の目視では、検査員ごとの判断のばらつきや、長時間の集中による見落としが避けにくくなります。見逃しが許されない部品の検査でも、AIの活用が検証されています。

ローカルLLMで社内文書を扱う

同社は、社内のデータを外部へ出さずに扱うローカルLLMの活用も進めています。不動産広告の校閲では、表示の規約をRAGで検索し、その規約に適合しているかをローカルLLMが判定する仕組みを試作しました。社内に置いたワークステーション(高性能な業務用の計算機)で動かしたところ、おおむね80〜90%の精度で、約2分で回答が得られたとされています。大分キヤノンマテリアル株式会社や株式会社CHINTAIの現場でも、検証事例が公開されています。

国内外でAI人材の育成を目指す

同社が目指すのは、AIを使いこなす人材を国内外で育てることです。札幌では産学官のプログラム「札幌AI道場」に参画し、2026年5月に第5期が始まりました。技術者向けの資格取得を支援する「E資格チャレンジ」も、2026年度の受講者募集を開始しています。バングラデシュでのAI人材育成事業は、2026年4月に経済産業省の補助事業へ採択されました。

FrontJournalの解説
  • ローカルLLM自社の設備の中で動かす大規模言語モデル。社外へデータを送らずに文章の生成や判定を行えるため、機密情報を扱いやすい。
  • RAG質問に関係する文書を検索し、その内容を根拠として言語モデルに回答させる仕組み。社内規程や規約の参照に向く。

会社概要|株式会社調和技研の事業内容

北海道大学の研究室から創業

株式会社調和技研は、2009年11月に札幌市で設立されました。共同創業者の一人が、北海道大学大学院情報科学研究院で調和系工学研究室を率いる川村秀憲教授です。研究室が積み上げてきた人工知能の研究成果を、企業の課題解決へ応用することを目的としています。2011年に加わった中村拓哉氏が代表取締役社長を務め、川村教授は社外取締役として技術面を支えています。北海道大学発スタートアップのなかでは、設立が早い1社です。

企業や自治体との連携が拡大

連携は、大手製造業から中小企業、自治体まで広がっています。2026年6月には、中小企業と自治体のDX・AX(AIによる業務変革)推進に向けて、株式会社フォーバルと業務提携を結びました。人事院北海道事務局が主催する研修では、公務でのAI活用をテーマに講義を担当しています。

2022年に3億円を調達

2022年4月に、3億円の資金調達を完了しました。引受先は、生活協同組合コープさっぽろ、ダイコク電機株式会社、大地みらい信用金庫、株式会社DTSインサイト、中西金属工業株式会社、北海道グロース1号投資有限責任組合等です。調達の目的は、AIプロダクト事業の強化と技術者の採用です。

会社情報

会社名株式会社調和技研(CHOWA GIKEN Corporation)
所在地北海道札幌市中央区南2条西12丁目324-2 902。東京支社:東京都中央区日本橋浜町2-1-10 ACN日本橋浜町ビル301号室。
設立2009年11月4日
代表代表取締役社長 中村 拓哉。共同創業者 川村 秀憲(北海道大学大学院情報科学研究院 教授・社外取締役)、鈴木 恵二(公立はこだて未来大学 学長・社外取締役)。
資本金1億円(資本準備金1億円)
従業員82名(役員5名、正社員63名、臨時雇用7名、顧問7名。2025年6月時点)
調達2022年4月に3億円
投資家生活協同組合コープさっぽろ。ダイコク電機株式会社。大地みらい信用金庫。株式会社DTSインサイト。中西金属工業株式会社。北海道グロース1号投資有限責任組合等(2022年4月の調達時)。
連携トヨタ自動車 衣浦工場(良品学習による製品異常検出AIエンジンの共同開発)。株式会社フォーバル(2026年6月、DX・AX推進の業務提携)。
技術領域言語系AIエンジン「Lango」。画像系AIエンジン「Visee」。数値系AIエンジン「Furas」。ローカルLLMとRAGの導入支援。AI人材育成。
採択北海道大学発認定ベンチャー。経済産業省の令和6年度補正グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(小規模実証・FS事業/2026年4月、バングラデシュでのAI人材育成事業)。
URLhttps://www.chowagiken.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

AIの話題は日々更新されますが、企業の現場で問われるのは「自社の業務で動くか」です。調和技研は2009年の設立以来、研究室の成果を受託開発の形で現場へ運び続けてきました。相談から運用までを一つの窓口で引き受ける体制は、担当者が社内に一人しかいない企業にとって心強い選択肢になります。

興味深いのは、データが足りない現場から設計を始めていることです。不良品の画像が集まらないなら良品だけを学び、機密を外に出せないなら社内の設備で動かします。制約を前提として設計を組み替える発想が、AIエンジンという共通の土台の上で積み重なっています。

札幌で育った技術が、バングラデシュの人材育成まで届こうとしています。

フロントジャーナル編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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