アミンファーマ研究所「脳梗塞リスク評価」を研究

株式会社アミンファーマ研究所

アミンファーマ研究所「脳梗塞リスク評価」を研究

企業紹介|株式会社アミンファーマ研究所とは?

採血だけで、自覚症状のない小さな脳梗塞のリスクを知る手がかりを得る「脳梗塞リスク評価」。株式会社アミンファーマ研究所は、その社会実装を目指す、千葉大学発のバイオ系ディープテック企業です。血液中の物質から脳梗塞のリスクを示す検査サービスを、臨床検査会社を通じて、人間ドックや健診を行う医療機関へ提供しています。

キーワード「脳梗塞リスク評価」

「脳梗塞リスク評価」は、血液中のアクロレインとIL-6、CRPの量を測り、年齢と合わせて脳梗塞のリスクを示す検査です。MRIなどの画像検査と違い、採血だけで受けられます。結果は「ローリスク」「境界値」「ハイリスク」の3段階で示され、脳梗塞を診断する検査ではありません。

市場課題|症状のない脳梗塞は、画像検査を受けなければ見つかりにくい

現状のかくれ脳梗塞の課題

かくれ脳梗塞は自覚しにくい

無症候性脳梗塞(かくれ脳梗塞)は、手足のしびれなどの自覚症状がないため、本人が気づきにくい小さな脳梗塞です。見つけるには、MRI(磁気で体の内部を撮影する装置)などで脳の画像を撮る必要があります。無症候性脳梗塞がある人は脳卒中(脳梗塞や脳出血などの総称)や認知症になりやすいといわれており、気づかないまま過ごすと、生活習慣を見直す機会を逃しかねません。

脳ドックは費用の負担が重い

かくれ脳梗塞を調べる脳ドックは、MRIなどの大型の装置を使う検査で、費用が高くなりがちです。症状のない段階で、誰もが気軽に受けられる検査とはいえません。脳梗塞のリスクを発症前に知る手段が乏しいため、生活習慣を見直すきっかけをつかみにくいのが現状です。

他にも、超高齢社会での脳卒中への備え、発症後の介護の負担、認知症の早期発見、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 無症候性脳梗塞手足のまひやしびれなどの症状を伴わない、小さな脳梗塞である。MRIなどの画像検査で脳を撮影して見つかる。将来、脳卒中や認知症になりやすいといわれている。

アミンファーマ研究所の強み|「脳梗塞リスク評価」を研究

アミンファーマ研究所が「脳梗塞リスク評価」を研究

採血でリスクの手がかりを得る

従来、かくれ脳梗塞の発見は画像検査が中心で、血液から手がかりを得る方法は限られていました。

同社が注目したのは、ポリアミン(細胞の増殖に欠かせない分子)から酵素で生じるアクロレインです。検査は、その血中量にIL-6とCRP(いずれも炎症で増えるタンパク質)の量と年齢を組み合わせ、リスクを計算する仕組みです。2009年の論文は健常者53人とかくれ脳梗塞の人44人を比べ、患者を見分けた割合(感度)を89%、健常者を見分けた割合(特異度)を91%と報告しました。これは研究段階の値で、同社が示す検査サービスの精度は約85%です。症状のない段階でも採血でリスクの手がかりを得ることができます。

健診の採血に追加して受検

脳ドックで行う画像検査は大型の装置を使うため、費用の負担が重くなりがちです。

同社の検査は、医療機関で採った血液を臨床検査会社を通じて検査し、結果を医療機関が受診者に伝える仕組みです。測った値から、脳梗塞のリスクを「ローリスク」「境界値」「ハイリスク」の3段階で示します。人間ドックや脳ドックのオプションとして追加できるほか、この検査だけを受けられる医療機関もあります。費用は医療機関によって異なり、7,000円から10,000円前後です。リスクが高いと示された場合は、その結果を材料に、医師と相談して画像検査を検討できます。

FrontJournalの解説
  • アクロレイン細胞の中にあるポリアミンが酵素で分解されるときに生じる、反応性の高い物質である。細胞を傷つけることが実験で報告されている。脳卒中の患者の血液で増えると報告されており、脳梗塞の目印として研究されている。

脳梗塞リスク評価の未来|血液から尿へ、脳梗塞から認知症のリスク評価へ

採血の脳梗塞リスク評価が変える未来

健診の選択肢として提供中

脳梗塞リスク評価は、すでに医療機関で受けられる検査サービスです。実施医療機関は、公式サイトで都道府県別に公開されています。2026年2月には、千葉市花見川区の最成病院でも人間ドックのオプションとして受けられるようになりました。リスクを知った受診者は、医師と相談しながら生活習慣を見直す材料にできます。

尿で認知症リスク評価を準備

同社は、尿を使って認知症のリスクを評価する事業の準備を進めています。同社が関わった研究では、尿に含まれるアミノ酸結合型アクロレインとタウリン(アミノ酸の一種)が、認知症の人では健常な人より低いと報告されました。この2つの物質の量と年齢から算出したリスクの値は、認知症の人で最も高く、軽度認知障害(認知症の手前の段階)の人、健常な人の順に低かったと報告されています。尿は針を刺さずに採れるため、実用化されれば、採血をせずに認知症のリスクを調べる手段が加わります。

予防薬の開発を目指す

同社は、脳梗塞や認知症の予防薬の開発を目指しています。アクロレインの毒性を調べた培養細胞の実験では、過酸化水素(活性酸素の一種)の約27分の1という低い濃度でも細胞の増殖を妨げたと報告されています。アクロレインは、血液と尿の検査で目印にしてきた物質であると同時に、細胞を傷つける物質です。検査で積み上げたその知見を、予防薬の開発へ広げる構想です。

会社概要|千葉大学の研究から生まれたアミンファーマ研究所

薬学研究の成果で2007年設立

代表取締役社長の五十嵐一衛氏(千葉大学名誉教授)は、千葉大学大学院薬学研究院の教授として、ポリアミンの働きを研究してきました。同社は、その研究成果を基に2007年4月に設立された千葉大学発ベンチャーです。本社は千葉市中央区の千葉大亥鼻イノベーションプラザにあり、医療に付帯するサービス業と、体外診断用医薬品の研究・開発を事業としています。五十嵐氏は、2020年春の叙勲で瑞宝中綬章を受章しました。

NEDOの支援と主な受賞

その基となる研究は、同社の設立前からNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業に採択されてきました。2014年には「第39回発明大賞」の本賞と、「第12回産学官連携功労者表彰」の経済産業大臣賞を受賞しています。2022年には、尿を使った認知症の重症度診断に関する研究開発が「ちばぎん研究開発助成制度2022」に採択され、千葉大学と連携して開発を進めています。2024年には、脳梗塞リスク評価サービスが「第29回元気印企業大賞」の優秀技術賞を受けました。

臨床検査会社と組む事業モデル

同社のサービスは、連携する臨床検査会社を通じて医療機関へ提供される仕組みです。導入を希望する医療機関は臨床検査会社へ問い合わせ、運用の概要や価格の案内を受ける流れです。医療機関は、健診や人間ドックのオプションとして組み込むほか、この検査だけを行う「簡易型」としても導入できます。神奈川県の「ME-BYOブランド」(未病の改善に役立つ商品・サービスを県が認定する制度)にも認定されています。

会社情報

会社名株式会社アミンファーマ研究所
所在地千葉県千葉市中央区亥鼻1丁目8番15号(千葉大亥鼻イノベーションプラザ402)
設立2007年4月
代表代表取締役社長 五十嵐一衛(千葉大学名誉教授)
資本金7,445万円(公式サイト掲載)
従業員10名(役員・非常勤を含む。公式サイト掲載)
事業医療に付帯するサービス業。体外診断用医薬品の研究・開発。脳梗塞リスク評価サービス
技術領域ポリアミン由来のアクロレインを目印にした脳梗塞・認知症のリスク評価
連携千葉大学
採択NEDO 大学発事業創出実用化研究開発事業(2005〜2007年度・設立前の研究段階を含む)。NEDO イノベーション推進事業(2009〜2010年度)。第39回発明大賞 本賞(2014年)。第12回産学官連携功労者表彰 経済産業大臣賞(2014年)。ちばぎん研究開発助成制度2022(2022年)。第29回元気印企業大賞 優秀技術賞(2024年)
URLhttps://www.amine-pharma.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

細胞の増殖に欠かせない分子から、細胞を傷つける物質が生まれる。アミンファーマ研究所の検査は、ポリアミンという細胞に欠かせない分子の研究から、脳梗塞のリスクを血液から評価する発想へつながった技術です。基礎研究の積み重ねが、健診の現場で使えるサービスになった点に、大学発の技術らしさを感じました。

この検査は、脳梗塞を診断するのではなく、自分のリスクを知って行動を変えるきっかけを届けるものです。採血のついでに脳梗塞のリスクを気にかけられる手軽さが、自分の脳の状態に目を向ける入り口を広げると思います。健診の結果票に脳のリスクが並ぶ光景は、健診の新しい形に見えます。

血液から尿へ、脳梗塞から認知症へと広がる研究の先に、年齢を重ねても自分の脳の健康に目を向ける人が増える日を楽しみにしています。千葉大学から生まれたほかの企業は、千葉大学発スタートアップ10選で紹介しています。

FrontJournal編集部

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月29日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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