オルバイオ株式会社|L-グルコースでがん細胞へ薬を届ける弘前大学での発見をもとにしたバイオベンチャー

オルバイオ株式会社

オルバイオ「L-グルコース」を研究|研究領域=がん細胞に取り込まれる糖/強み=2つの抗がん剤候補を開発/将来性=副作用を抑えた薬への期待

企業紹介|オルバイオとは?

抗がん剤が正常な細胞まで傷つける課題を解く手がかりとして、研究が進む「L-グルコース」。オルバイオは、その社会実装を目指す、弘前大学発のバイオ系ディープテック企業です。L-グルコースにがん細胞を攻撃する分子を結んだ抗がん剤候補「CLG」「ALG」(同社が名付けた分子)を、難治がんの治療薬として研究開発しています。

キーワード「L-グルコース」

L-グルコースは、ブドウ糖(D-グルコース)と鏡に映したように左右が逆の構造をもつ糖です。自然界にほとんど存在せず、正常な細胞は栄養として取り込まないことが知られています。一方、がん細胞は、蛍光の目印をつけたL-グルコースを取り込むことが弘前大学の研究で見つかっており、オルバイオはこの性質を、がん細胞へ薬を運ぶ運び役に生かしています。

市場課題|がんの薬は副作用と対象の幅が課題

現状のがん治療の課題|現状は、副作用と対象の限定が課題/抗がん剤は副作用が出やすい/薬は遺伝子の違いに左右される

抗がん剤は副作用が出やすい

抗がん剤は、がん細胞と正常な細胞の両方に作用しやすいことが課題です。一般に、効果が現れる量と副作用が現れる量が近く、薬の量を増やしにくくなります。副作用が重いままでは、患者さんが治療を続けにくくなります。

薬は遺伝子の違いに左右される

分子標的薬(がん細胞の特定の分子を狙う薬)は、遺伝子やたんぱく質の違いに合わせた薬の開発が必要なことが課題です。個人による違いや、腫瘍の部位による違いも大きく、1つの薬が幅広いがんに効きにくくなります。

他にも、難治がんで治療の選択肢が限られること、ブドウ糖の取り込みを調べるPET検査(体内の目印薬剤の集まりを画像にする検査)などでは見つからない小さな転移巣があること、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 分子標的薬がん細胞がもつ特定の分子を狙って作用する薬を指す。狙う分子をもつがんには効きやすい一方、対象が限られやすい。

オルバイオの強み|「L-グルコース」を研究

オルバイオが「L-グルコース」を研究|今後は、糖でがんへ薬を届けることが可能に/がん細胞に取り込まれる糖/2つの抗がん剤候補を開発

がん細胞に取り込まれる糖

従来の抗がん剤は、がん細胞と正常な細胞を区別しにくく、副作用が出やすいという弱点がありました。

同社は、正常な細胞が取り込まない糖であるL-グルコース(ブドウ糖の鏡像異性体)を、がん細胞へ「武器」の分子を運ぶ「トロイの木馬」に見立てています。L-グルコースに「武器」の分子(がん細胞に作用する成分)を強い化学結合でつなぎ、がん細胞に取り込ませる方法が「オルバイオ法」です。蛍光の目印をつけたL-グルコースは、これまでに調べられた範囲で、膵臓がんなどの腺がんや肉腫の細胞に選んで取り込まれました。がん細胞に薬を届けられれば、正常な細胞への影響を抑えた治療につながります。

2つの抗がん剤候補を開発

従来の分子標的薬は、狙う分子をもつがん細胞が対象で、遺伝子やたんぱく質の違いに合わせた薬の開発が必要という弱点がありました。

同社は、「武器」の分子を変えた2つの抗がん剤候補「CLG」「ALG」を開発しています。CLGはクマリン(ニンジンなどに含まれる天然物)を結んだ分子で、取り込まれたがん細胞の増殖を抑えます。培養細胞の試験では、濃度が高いほど増殖が抑えられ、細胞の塊が崩れる様子が見られました。ALGは金原子を結んだ分子で、細胞毒性(細胞を死なせる性質)を示します。「武器」を替えて候補を増やせるため、治療薬の選択肢を広げやすくなります。

FrontJournalの解説
  • 鏡像異性体分子の構造が、鏡に映したように左右が逆の関係にある2つの分子を指す。D-グルコースとL-グルコースがその例にあたる。

がん治療の未来|難治がんへの応用

糖の運び役が変える未来|膵臓がんなどの難治がんが対象/副作用を抑えた薬への期待/診断と治療の両方への応用/難治がん治療の実用化を目指す

副作用を抑えた薬への期待

L-グルコースが正常な細胞に取り込まれない性質は、副作用の少ない治療への期待につながります。同社は、CLGが培養したがん細胞の増殖を抑えること、ALGが細胞毒性を示すことを確認しています。現在は、候補分子の性質を調べる、研究開発の段階です。副作用を抑えた薬が実現すれば、治療を続けやすくなる患者さんが増える可能性があります。

診断と治療の両方への応用

L-グルコースは、がん細胞に取り込まれる性質を、診断にも治療にも使える点が特徴です。弘前大学の共同研究講座は、蛍光L-グルコースによる、より精度の高いがん診断の開発も掲げた拠点です。同社の事業内容にも、がん診断薬と治療薬の創製が挙げられています。同じ性質で診断と治療をつなげられれば、早い段階の発見から治療までを一貫して考えやすくなります。

難治がん治療の実用化を目指す

同社が目指すのは、膵臓がん・胆道がん・卵巣がん・肉腫といった難治がんの治療薬を、医療の現場へ届けることです。蛍光の目印をつけたL-グルコースは、これらのがん細胞に特に選んで取り込まれることがわかっています。弘前大学には、2021年4月にオルバイオとの共同研究講座が設けられました。大学の研究と企業の開発を結び、実用化への道を進めています。

会社概要|オルバイオの事業内容・設立背景

弘前大学の発見を事業化

オルバイオは、2010年に弘前大学で見つかったL-グルコースの現象を事業化するため、2018年4月に京都大学で創業しました。本社は、京都市左京区の静市市原町にあります。この現象を見出した研究チームの山田勝也氏が、取締役CSO(最高科学責任者)を務めています。事業は、がん治療技術の研究開発と、がん診断薬・治療薬の創製です。

経営チームには、代表取締役の山口慧氏、取締役の飯嶋秀樹氏と山口栄一氏らが名を連ねます。山口栄一氏は京都大学の名誉教授で、2018年の創業に関わりました。飯嶋氏は、弘前大学の招へい准教授も務めています。

弘前大学に共同研究講座を設置

2021年4月、弘前大学大学院医学研究科に、共同研究講座「分子輸送学講座」が設けられました。講座の目標は、より精度の高いがん診断と、副作用の少ない治療薬の開発。膵臓がん・胆道がん・卵巣がんなどの難治がんが対象です。山田氏は、この講座の特任教授も務めています。研究拠点は、青森県弘前市にある「弘前大学LAB」で、医学研究科の中にあります。

3回の増資を実施

同社は、創業初期の資金として、2020年1月にプレシード増資で1,800万円、2021年2月にシード増資で8,600万円、2022年2月にシード増資エクステンションで3,000万円を調達しました。

会社情報

会社名オルバイオ株式会社(ORBIO Corporation)
所在地京都府京都市左京区静市市原町1001-34
設立2018年4月
事業L-グルコースを用いたがん治療技術の研究開発、がん診断薬・治療薬の創製
技術領域L-グルコース、ドラッグデリバリーシステム、抗がん剤、がん診断
連携弘前大学(共同研究講座「分子輸送学講座」)
URLhttps://orbio.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

がんの創薬は、効く成分を見つけるだけでなく、その成分をがん細胞へ届ける工夫が問われます。正常な細胞が取り込まない糖を、がん細胞への運び役に選ぶ発想が目を引きます。薬の側の設計だけでなく、届け先の性質に着目した点が、この分野の着眼点です。

同社の方法は、運び役の糖と「武器」の分子を分けて設計する点が特徴です。「武器」を替えれば、候補を増やしていける構造です。薬の効き目だけでなく、届ける仕組みが治療を左右することを、この分野は示しています。

難治がんは、治療の選択肢が限られてきた領域です。弘前大学で見つかった現象が、どのように薬へ育っていくのか。同社の今後の開発の進展が注目されます。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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