フィジオロガス「在宅血液透析」を開発

フィジオロガス・テクノロジーズ株式会社

フィジオロガス「在宅血液透析」を開発

企業紹介|フィジオロガス・テクノロジーズ株式会社とは?

自宅で血液から老廃物を取り除く治療「在宅血液透析」。フィジオロガス・テクノロジーズ株式会社は、その社会実装を目指す、北里大学発の医療系ディープテック企業です。水道水を使わない在宅専用の血液透析装置を開発し、透析を受ける患者への提供を目指しています。

キーワード「在宅血液透析」

「在宅血液透析」は、腎臓の働きが低下した人が、自宅で血液から老廃物と余分な水分を取り除く治療です。特徴は、通院にかかる移動の時間や手間を省けることです。通院が難しい患者や、仕事や家事と治療を両立したい人が、自分の生活の場で治療を受けられます。

市場課題|自宅で受ける透析が広がらない

現状の在宅血液透析の課題

通院に時間を取られる

日本の透析患者は約34万人にのぼり、その多くが通院して、1回4時間の血液透析(血液から老廃物と余分な水分を取り除く治療)を週3回受けています。治療のたびに移動と4時間の拘束が必要になり、仕事や家庭の予定を治療に合わせる暮らしが続く状況です。このままでは、患者と家族の生活に制約が残るおそれがあります。

在宅の装置が普及しにくい

在宅で血液透析を受けている患者は、国内で約800人にとどまるといわれています。従来の装置は給排水設備の改修が要るなど、導入のハードルが高いことが、普及が進みにくい背景です。その結果、通院が難しい人が自宅で治療を受ける選択肢は、限られたままになるおそれがあります。

他にも、装置の安全性への懸念や、装置を扱う患者と家族の負担といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 血液透析腎臓の働きが低下した人の血液を体外に取り出し、フィルターを通して老廃物や余分な水分を取り除き、体内に戻す治療である。国内では、クリニックなどで週3回ほど受ける例が多い。

フィジオロガスの強み|「在宅血液透析」を開発

フィジオロガスが「在宅血液透析」を開発

水道水なしで自宅に設置

従来の血液透析装置は、透析液(血液から老廃物を移すための専用の液体)をつくるための水の給排水設備を前提とするため、自宅に置くには設備の改修が必要でした。

同社は、透析中に血液から取り除いた尿毒素(腎臓から排出されずに体内にたまる老廃物)を吸着して除き、使い終えた透析液を装置内で再循環させて再び使う方式を開発しています。このため、水道水を使わず、給排水の設備も要りません。同社の装置は小型で、患者自身が準備や管理をしやすく、家庭で簡易に操作できる設計とされています。これにより、家庭環境を大きく改修せずに設置でき、通院にかかる時間と移動の負担を減らせる治療の形につながります。

センサーで安全性を確保

在宅での血液透析は、操作や状態の確認を患者自身が担うため、安全面の不安が導入の壁になってきました。

同社は、装置に各種のセンサーを搭載し、安全性を確保する設計を進めています。装置と、消耗品(使い終えたら交換する部品)をあわせて開発しており、患者が家庭で使う場面を想定した製品づくりです。現在は試作機の設計と製造を進める開発段階にあり、非臨床試験(人に使う前に性能と安全性を調べる試験)や臨床試験に対応させる計画です。計画どおり進めば、患者と家族が、通院せずに自宅で治療を受けるという選択肢を、安全面の確認を踏まえて検討できるようになります。

FrontJournalの解説
  • 尿毒素腎臓の働きが低下すると排出されず、体内にたまって体に悪影響を及ぼす老廃物の総称である。血液透析では血液から取り除く。同社の装置は尿毒素を吸着して、透析液を再利用する。

在宅血液透析の未来|自宅で受ける治療の広がり

在宅血液透析が変える未来

公的支援で開発が進む

同社は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と東京都の公的な支援事業に採択され、在宅専用の血液透析装置の開発を進めています。NEDOの「ディープテック・スタートアップ支援事業」では、「在宅専用血液透析装置及び消耗品の開発」を、2027年度までの予定で進めます。東京都の「先端医療機器アクセラレーションプロジェクト(AMDAP)」では、「水道水を使用しない在宅血液透析装置の開発」が補助の対象です。NEDOの事業では、試作機を設計・製造し、日米欧での薬事承認(各地域で医療機器として販売を認めてもらう手続き)に向けた準備を行います。

非臨床試験を進める

短期の取り組みは、装置と消耗品の設計・試作と、非臨床試験の実施です。2026年6月に発表した資金調達の使途として、電気的安全性、電磁両立性(EMC)、生物学的安全性の試験が挙げられています。電磁両立性とは、装置が出す電磁波が他の機器に影響せず、周囲の電磁波でも誤作動しにくい性質です。まず安全性を試験で確かめる段階です。

在宅専用の透析装置を目指す

同社は、日本・米国・欧州での薬事承認の取得に向けた準備を進め、在宅専用の血液透析装置の実用化を目指しています。NEDOの事業では、米国でFDA(米国食品医薬品局)との事前相談も計画しています。承認と実用化が実現すれば、通院が難しい患者も、自宅で治療を受けられる選択肢が増えるという変化です。患者と家族が仕事や家庭の予定を組みやすくなることが期待されます。

会社概要|フィジオロガス・テクノロジーズの事業内容・設立背景

2020年に設立

フィジオロガス・テクノロジーズ株式会社は、2020年3月に設立され、神奈川県相模原市の北里大学相模原キャンパス内に本社を置いています。創業の中心となったのは、代表取締役の宮脇一嘉氏と、取締役CTOの小久保謙一氏です。小久保氏は北里大学医療衛生学部の准教授を兼ねています。設立時の社名は株式会社Physiologas Technologiesで、2022年2月に現在の社名へ変更されました。

採択・連携

同社は、2026年1月にNEDOのディープテック・スタートアップ支援事業への採択を発表し、同年3月に東京都のAMDAPの補助事業対象者の採択も発表しました。受賞では、2025年9月にMedTech Actuatorの「Global Pitch Showdown」(国際ピッチコンテスト)で最優秀賞を受けたほか、2024年12月に「Hello Tomorrow Japan Challenge」で大賞を受けています。NEDOの事業では、パートナーのVC(ベンチャーキャピタル)としてロッテホールディングスが参加しています。

シリーズAを実施

同社は、2025年8月の発表から2026年5月末にかけて、シリーズAの資金調達を4回に分けて実施しました。シリーズAは、製品の開発と事業化を本格化していく際の資金調達にあたります。調達先は、ロッテホールディングスのCVC(事業会社の投資部門)、京都大学イノベーションキャピタル、ちば興銀キャピタルパートナーズ、トヨタ・コニック、ほくほくキャピタルなどです。2026年6月時点で、資金は装置と消耗品の設計・開発・試作と非臨床試験に使う計画です。

会社情報

会社名フィジオロガス・テクノロジーズ株式会社
所在地神奈川県相模原市南区北里1丁目15番1号 北里大学相模原キャンパス内
設立2020年3月16日
代表代表取締役 宮脇一嘉。取締役CTO 小久保謙一
資本金約3億4,956万円(2026年5月29日時点)
調達シリーズA(2025年8月の発表〜2026年5月末に4回のクローズ)。ロッテホールディングスのCVC、京都大学イノベーションキャピタル、ちば興銀キャピタルパートナーズ、トヨタ・コニック、ほくほくキャピタル
事業在宅専用の血液透析装置と消耗品の開発
技術領域尿毒素の吸着による透析液の再循環
連携北里大学、ロッテホールディングス(NEDO事業のパートナーVC)
採択NEDO ディープテック・スタートアップ支援事業(2026年1月に採択を発表)、東京都 先端医療機器アクセラレーションプロジェクト(2026年3月に補助事業対象者として発表)、MedTech Actuator Global Pitch Showdown 最優秀賞(2025年)、Hello Tomorrow Japan Challenge 大賞(2024年)
URLhttps://physiologas.co.jp/

編集後記|FrontJournal編集部より

通院せずに自宅で透析を受けられるかどうかは、患者と家族の毎日の時間の使い方を大きく左右します。フィジオロガス・テクノロジーズの取り組みは、透析液を装置内で循環させて水道水を使わない方式にした点が印象的です。給排水の工事という導入の壁を、装置の仕組みから下げようとする発想といえます。

製品は開発の途中にあり、非臨床試験や薬事承認など、越えるべき工程が続きます。安全性をセンサーで確かめる設計や、日米欧を見据えた準備がどのように結実するのか、今後の展開を見守りたい取り組みです。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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