RadioNano Therapeutics「ホウ素中性子捕捉療法」を開発

RadioNano Therapeutics株式会社(ラジオナノセラピューティクス)

RadioNano Therapeutics「ホウ素中性子捕捉療法」を開発|研究領域=がん細胞を・放射線で狙う/強み=ナノ粒子で・ホウ素を届ける/将来性=臨床試験の・実施を計画

企業紹介|RadioNano Therapeuticsとは?

がん細胞を狙って攻撃する放射線治療として、診療で使われる「ホウ素中性子捕捉療法」。RadioNano Therapeutics株式会社は、その社会実装を目指す、京都大学発のライフサイエンス系ディープテック企業です。ホウ素を含む薬剤候補「RN-501」を、第I/IIa相臨床試験の実施に向けて開発しています。

キーワード「ホウ素中性子捕捉療法」

「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)は、がん細胞に取り込ませたホウ素に中性子を当て、細胞の内側で放射線を出させる治療法です。特徴は、放射線の飛ぶ距離が細胞1個分ほどと短く、ホウ素を取り込んだ細胞を狙って攻撃できる点にあります。国内では2020年から保険診療に加わりました。添付文書に記された対象は、切除不能な局所進行または局所再発の頭頸部がんに限られます。

市場課題|ホウ素中性子捕捉療法の薬剤は腫瘍に集めにくい

現状のホウ素中性子捕捉療法の課題|現状は、BPAが腫瘍に残りにくい|BPAは腫瘍に・残りにくい/正常な細胞にも・取り込まれる

ホウ素薬剤が腫瘍に残りにくい

ホウ素中性子捕捉療法では、ホウ素薬剤を腫瘍へ十分に届けることが課題です。従来のBPA(ホウ素を含む低分子の薬剤)は分子が小さく、腫瘍や血液中にとどまりにくいとされています。また、添付文書では、中性子の照射前に2時間、照射中も続けて点滴で投与するとされています。

正常な細胞にも取り込まれる

BPAは水に溶けにくい薬剤です。また、がん細胞だけでなく、正常な細胞にも取り込まれます。ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素を取り込んだ細胞を攻撃する治療です。そのため、がん細胞と正常な細胞への取り込み量の差が、効果と副作用の両面に関わります。

他にも、腫瘍に集めるホウ素の量の確保、薬剤の水への溶けやすさ、保険診療の対象を頭頸部がん以外へ広げること、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • BPAホウ素を含む薬剤の名称(ボロノフェニルアラニン)。がん細胞がフェニルアラニンを取り込みやすい性質を利用して、ホウ素をがん細胞に届ける。

RadioNano Therapeuticsの強み|「ホウ素中性子捕捉療法」を開発

RadioNano Therapeuticsが「ホウ素中性子捕捉療法」を開発|これまでに、マウスで腫瘍への集積を実現|ナノ粒子で・腫瘍にとどめる/集まりやすい・設計にする

ナノ粒子で腫瘍にとどめる

腫瘍に集まるホウ素の量は、治療の効果を左右します。

同社の「RN-501」は、ホウ素を含む無機のナノ粒子を、親水性のポリマー(水になじむ高分子)で包んだ薬剤です。粒子の大きさは約50nmとされ、1nmに満たない分子であるBPAと比べて大きな粒子といえます。包むことで、粒子どうしの凝集を防ぐ設計です。マウスの実験では、1回の注射から2日後に、腫瘍へのホウ素の集積が確認されたとされています。腫瘍に集まるホウ素が増えれば、中性子を当てる治療の効果を高められる可能性があります。

集まりやすい設計にする

従来のBPAは、がん細胞だけでなく正常な細胞にも取り込まれます。

同社は、薬剤が腫瘍に集まるように設計し、副作用の軽減を目指しています。JSTnewsによると、マウスの実験では、RN-501を1回注射し、熱中性子(エネルギーの低い中性子)を照射した3週間後に、5匹中4匹で腫瘍が消失しました。腫瘍が消失したマウスに同じ腫瘍細胞を再び移植しても、腫瘍は生着(定着)しませんでした。これはマウスでの結果で、人での有効性と安全性は確立されていません。腫瘍に集まり、長くとどまる性質から、従来の薬剤よりも低用量での治療ができるようになる可能性があります。

FrontJournalの解説
  • ナノ粒子直径がおよそ1〜100nmの微小な粒子を指す。粒子が小さく表面積が大きいため、表面に別の分子をつけて性質を変えやすい。

「ホウ素中性子捕捉療法」の未来|臨床試験から治療の選択肢の拡大へ

ナノ粒子薬剤のホウ素中性子捕捉療法が変える未来|今後は、臨床試験で人での安全性を確認|人を対象に・臨床試験を計画/治験薬の・製造法を開発/治療の・選択肢拡大を目指す

臨床試験の準備が進む

同社は、RN-501を主力の開発品とし、人を対象とする第I/IIa相臨床試験の実施を計画しています。第I/IIa相臨床試験(安全性と、有効性の初期の確認をあわせて調べる試験)は、人での結果を確かめる最初の段階です。同社は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)との相談で得た助言も踏まえ、非臨床試験を進めています。調達した資金は、この試験の実施に充てるとしています。

治験薬の製造法を開発する

臨床試験には、人に使う薬である治験薬を、安定して製造する方法が必要です。同社は、治験薬と製剤の製造プロセスおよび試験法の開発を進めています。あわせて、開発体制と人材基盤の強化にも取り組みます。

治療の選択肢の拡大を目指す

国内では、ホウ素中性子捕捉療法の保険診療の対象は、現在は頭頸部がんのみです。同社は、これまで治療が難しかったがん腫にも適用できる薬剤として、RN-501を位置づけています。仮に人での有効性と安全性が確かめられた場合は、既存の薬剤とは異なる選択肢が、がん治療に加わる可能性があります。ただし、現在開発中の薬剤であり、有効性と安全性は確立されていません。

会社概要|2024年設立の京都大学発企業RadioNano Therapeutics

京都大学の研究から事業化

RadioNano Therapeutics株式会社は、2024年4月に、京都大学の吉田キャンパス内で設立されました。製剤の開発には、京都大学大学院人間・環境学研究科の小松直樹教授と、同大学複合原子力科学研究所の鈴木実教授が関わっています。代表取締役は千葉雅俊氏で、本社は京都市左京区吉田本町に置いています。資本金は1億円です(2026年10月時点)。

出資と採択の実績

JST(科学技術振興機構)は、2024年11月に、同社への出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS)による出資を公表しました。2025年4月には、AMED(日本医療研究開発機構)の橋渡し研究プログラム(シーズF)に採択されています。公式サイトには、京都産業21の「産学公の森」への採択と、池田泉州銀行の第22回イノベーション研究開発助成金での大賞も掲載されています。

シリーズBの1st Close

同社は2026年10月9日に、シリーズBのファーストクローズ(最初の資金調達の締め)を発表しました。引受先は、三井金属株式会社と、京都大学イノベーションキャピタル株式会社です。

会社情報

会社名RadioNano Therapeutics株式会社(ラジオナノセラピューティクス)
所在地〒606-8317 京都府京都市左京区吉田本町36番地1
設立2024年4月1日
代表千葉 雅俊(代表取締役)
資本金1億円(2026年10月時点)
調達シリーズB ファーストクローズ(2026年10月9日。引受先は三井金属、京都大学イノベーションキャピタル)。JST SUCCESSによる出資(2024年11月公表)
事業ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用の薬剤の研究開発。開発品は、親水性のポリマーで包んだホウ素ナノ粒子の薬剤「RN-501」
技術領域ホウ素中性子捕捉療法、ホウ素ナノ粒子、がん治療
採択AMED橋渡し研究プログラム(シーズF)(2025年4月)。京都産業21「産学公の森」本格的事業展開コース。池田泉州銀行 第22回イノベーション研究開発助成金 大賞
URLhttps://www.radionano-tx.com/
出典:RadioNano Therapeutics公式サイト(トップ)、PR TIMES(2026年10月9日)、JST(2024年11月29日)、ASCII.jp(RN-501の記事)、国立がん研究センター(資料)。確認日2026年10月13日

編集後記|FrontJournal編集部より

ホウ素中性子捕捉療法は、がん細胞を狙って攻撃できる治療です。同社は、その治療に使う薬剤の側から、腫瘍にホウ素を届ける方法を見直しています。ホウ素を含む粒子をポリマーで包むという設計は、治療の使い道を広げる入口になり得るのか。その答えが、今後の焦点です。

放射線でがん細胞を狙う領域では、アルファフュージョン株式会社が、アスタチン211を用いる標的アルファ線治療の薬剤を開発しています。ホウ素ナノ粒子と中性子を組み合わせる同社とは手法が異なりますが、どちらもがん細胞を狙って攻撃する取り組みです。薬剤の設計という別の入口から同じ領域に挑む点が、この分野の広がりを示しています。

マウスで得られた結果が、人でも確かめられるか。第I/IIa相臨床試験の結果を、楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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