2026.10.09 │ 京都大学・科学技術振興機構(JST) │ 元発表:2026.10.08

京都大学、デジタル錠剤向けに0.79nWの超低電力タイマー回路を開発

ニュース紹介

「デジタル錠剤向け超低電力時計回路を開発~体内発電に対応し、極小面積を7nmで実証~」

京都大学 大学院情報学研究科の新津葵一教授、劉昆洋助教らの研究グループは、大塚製薬株式会社と共同で、のみ込んで体内を計測するデジタル錠剤に向けた超低消費電力のタイマー(時計)回路を開発し、7nm(ナノメートル)世代の半導体製造技術で試作して動作を確かめたと発表した。研究グループは、同じ回路を電圧方向に積み重ねて電流を再利用する技術を発展させ、回路モジュールごとにウェル(トランジスタを作る領域)を分離することで、従来は再利用できなかったゲートリーク電流も再利用できるようにした。その結果、従来の約47分の1の面積(0.00015mm²)、0.79nW(ナノワット)の消費電力で0.96Hz(ヘルツ)のクロック信号を生成できたという。研究グループは、体内環境を時間情報と共に継続的に記録するデジタル錠剤の実現につながると期待している。成果は2026年10月8日~10日に韓国・仁川で開催される国際会議「IEEE BioCAS 2026」で発表される。研究はJSTのムーンショット型研究開発事業、戦略的創造研究推進事業 情報通信科学・イノベーション基盤創出(CRONOS)の支援を受けた。

出典:京都大学・科学技術振興機構(JST) 2026年10月8日 プレスリリース
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20261008/index.html

FrontJournalの解説

この研究分野について

デジタル錠剤は、センサーや電子回路を組み込んだ、のみ込むタイプの小さな機器です。米国では、大塚製薬などが開発した服薬の記録用の製品が承認されており、胃酸を電解質として使って発電するタイプが知られています。研究の段階では、胃や腸の中の温度やpH(酸性・アルカリ性の度合い)を測る用途も検討されています。

体内で使う機器は電池を大きくできないため、体内発電で得たわずかな電力で動くことが求められます。京都大学と大塚製薬の研究グループは2025年にも、胃酸で発電した電力を集積回路の中のコンデンサに蓄える技術を発表しています。今回の成果は、こうした錠剤の中で常に動き続ける部品の電力と大きさを減らす取り組みにあたります。

①測った値に「いつ」を付ける時計

体内の温度やpHを記録するとき、測った値がいつのものかが分からなければ、変化を追えません。そのため錠剤の中では、時間を刻むタイマー回路が止まらずに動き続ける必要があります。ほかの回路が休んでいる間も電力を使い続けるため、タイマー回路の消費電力は、錠剤全体の電力の使い方を左右します。今回の回路は、約1秒に1回の信号を0.79nWで生み出しました。1nWは1ワットの10億分の1にあたります。

②漏れる電流を回収して使う

一般に、トランジスタを細かくすると、スイッチを切っている間も流れるリーク電流(漏れ電流)が増えやすくなります。研究グループは、回路を電圧方向に積み重ね、上の段で使った電流を下の段でもう一度使う方式を採りました。さらに回路モジュールごとにウェルを分けることで、これまで捨てていたゲートリーク電流まで回収できるようにしています。この工夫により、7nm世代の製造技術でも、面積0.00015mm²という小さな回路で1Hzを下回る信号を作れることを示しました。

編集部からひとこと

のみ込む機器では、電池の大きさも使える電力も限られます。今回の研究は、その中でも常に動く時計という目立たない部品に注目し、電流の再利用で電力と面積を同時に減らした点に特徴があります。発電・蓄電の技術と組み合わさることで、体内の変化を時間に沿って記録する錠剤にどこまで近づけるのか、今後の展開に注目したい成果です。

FrontJournal編集部

プレスリリース原文を読む

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

この企業の方へ

内容に誤り・更新が必要な点があれば、可能な限り速やかに修正します。お気づきの点はお問い合わせまでご連絡ください。

掲載情報の修正・写真の追加・更新はこちら