マサインタナショナル「光合成速度の高速測定」を研究|葉の光合成を測る装置を描いたイラスト

株式会社マサインタナショナル

マサインタナショナル「光合成速度の高速測定」を研究|研究領域=容器のCO2の減りで・光合成を測る/強み=葉の交換込みで・約30秒で測定/将来性=多数の品種を測り・品種改良へ

企業紹介|株式会社マサインタナショナルとは?

作物の生産を支える、葉の光合成の速さを短い時間で測る「光合成速度の高速測定」。株式会社マサインタナショナルは、その社会実装を目指す、植物計測系ディープテック企業です。中核にあるのは、葉を密閉した容器の中の二酸化炭素(CO2)の減り方から光合成速度を求める装置「MIC-100X」です。

キーワード「光合成速度の高速測定」

「光合成速度」は、葉が一定の時間に取り込むCO2の量で表す、光合成の活発さの指標です。葉を密閉した容器に入れると、光合成によってCO2が減るため、その減り方から速度を求められます。この測定を短い時間で数多く繰り返す手法が、光合成速度の高速測定です。

市場課題|品種ごとの光合成の差を生かす品種改良は、測定に手間がかかり進みにくい

現状の光合成測定の課題|現状は、測定に時間がかかり装置も高価で測れる数が少ない|測定が遅く・品種を比べにくい/装置が高価で・台数を増やしにくい

測定が遅く品種を比べにくい

光合成の能力の違いを生かして作物を改良するには、多数の品種で光合成速度を測る必要があり、この測定に多くの時間と労力がかかります。従来の測定器は葉1枚(1検体)の測定に2分以上かかり、1年間に測れる数が限られてきました。測定が追いつかなければ、品種ごとの差を見つける作業が進まず、収量を伸ばす品種の選抜も遅れやすくなります。

装置が高価で台数を増やしにくい

京都大学の研究者が同社へ装置の開発を相談した当時、従来の測定器は1台で約1000万円高価で、京都大学の農学部でも保有できたのは1台でした。当時の米国には、この測定器を5台ほど持つ大学や研究施設もありました。測れる数の差は、比べられる品種数の差になり、品種改良の研究の進み方にも差が出ます。

他にも、圃場(田畑)に運ぶ装置の重さ、測定作業にかかる人手、測定全体にかかる費用、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 品種改良作物の性質を、交配や選抜を重ねて人の役に立つ方向へ変えていく作業を指す。収量が多い、病気に強いといった性質を持つ品種を新しく生み出す。

マサインタナショナルの強み|「光合成速度の高速測定」を開発

マサインタナショナルが「光合成速度の高速測定」を開発|今後は、密閉式で約30秒の測定が可能に|葉を密閉し・約30秒で測定/専用設計で・価格と重量を抑制

葉を密閉し約30秒で測定

従来の開放型ガス交換式(容器に空気を流し続け、出入りするCO2の差から求める方式)の測定器は、圃場で一定時間に測れる葉の数が限られます。

同社の「MIC-100X」は、葉を密閉した測定容器に入れ、容器内のCO2の減る速さから光合成速度を求める装置です。容器の中にCO2濃度センサーを置き、光合成で下がる10ppm(100万分の10)ほどの濃度変化を、0.1秒間隔で読み取ります。従来の測定器が1検体に2分以上かかるのに対し、測定10秒と葉の交換20秒を合わせた1検体約30秒で測り終える設計です。植物の評価に適した約4時間の測定時間の中で、集められる葉の数が増え、多数の品種の比較を短い期間で実施できるようになります。

専用設計で価格と重量を抑制

従来の測定器は、圃場へ持ち出して多数の葉を測る作業の負担になる重さでした。

「MIC-100X」は、用途を光合成速度の測定だけに絞った設計です。葉の直下にある密閉式の測定容器にCO2センサーを内蔵し、光合成速度を演算して表示します。測定値はエクセル形式のファイルで保存され、各自のパソコンでの解析が可能です。機能を絞ったことで、総重量は約7kgに収まり、持ち運びの負担が軽くなります。標準タイプの価格は370万円(2026年9月時点の公表価格)で、価格を抑えた設計により、研究機関が複数台を用意しやすくなります。

FrontJournalの解説
  • CO2濃度センサー空気中の二酸化炭素の濃度を、ppm(100万分の1)の単位で測る部品を指す。光合成の測定では、葉が吸収して減ったCO2の量を、濃度の変化として読み取る。

光合成速度の高速測定の未来|大量のデータで、作物の光合成を強化する

大量の測定データが変える未来|イネの大規模測定から、収量増の手がかりへ|イネ78系統を・約4か月測定/光合成と遺伝子の・関連を解析/光合成の強化を・目指す

イネ78系統を約4か月測定

圃場での大規模測定は実現済みです。茨城大学の安達俊輔氏(共同開発時は東京農工大学の助教)らの研究グループは、同社が共同開発した「MIC-100」を使い、水田イネ78系統(系統ごとに遺伝的にそろった個体の集団)の光合成速度を、移植から収穫までの約4か月間、週1回以上測りました。その結果、系統間で差が最も大きい生育期間が分かり、その期間の光合成の積算量が収穫時の植物体の重さと密接に関わると明らかになりました。特に出穂後の4週間(稲の穂が出た後)の光合成の改良が、収量増の鍵になるといわれています。

光合成と遺伝子の関連を解析

同社の装置で測った光合成速度のデータは、遺伝子情報と結びつけた解析にも使われています。同社の公式サイトが挙げる研究には、日本型イネ(日本で主に栽培される型)の品種で光合成速度とゲノム(生物の全遺伝情報)全体の関連を調べる解析があります。遺伝子の働きから光合成速度を予測するモデルの改良と検証も、その一つです。遺伝子との関連が分かれば、光合成速度の高い品種を遺伝子の情報から絞り込めると期待されます。

光合成の強化を目指す

同社の装置を使う研究が目標とするのは、大量の測定データを光合成の理解と強化につなげることです。作物品種の光合成を大量に測定でき、光合成のビッグデータ解析が可能になると期待されています。光合成の能力が高い品種を見つけられれば、収量を伸ばす品種の開発が進む見通しです。その結果、同じ面積の農地から得られる収量が増える可能性があります。

会社概要|京都の光合成測定装置メーカー、マサインタナショナル

CO2測定に強い京都の会社

株式会社マサインタナショナルは、2010年12月に京都で設立された企業です。創業時から、オゾンを測る計測システムの開発や、大規模な植物工場の企画に取り組みました。2014年にはLED照明の販売を始めています。

光合成の測定装置の開発は、京都大学の田中佑助教(当時)が、CO2濃度の測定技術に強い同社へ相談したことから始まりました。京都大学の田中助教、東京農工大学の安達俊輔助教(当時)、同社の三者で、共同開発を進めました。装置「MIC-100」は2017年に量産が始まり、2023年には改良型の「MIC-100X」の販売が始まっています。

京都大学との共同開発と認定

同社は、2014年に始めたCO2測定器に続き、2015年には京都大学と植物用LED照明の共同開発も始めました。2016年9月には、京都市ベンチャー企業目利き委員会(市内のベンチャー企業を評価する委員会)でAランク企業に認定されています。2019年には半導体事業部を設け、早木電機株式会社とユニオンマテリアル株式会社と業務・開発で提携しました。2021年4月には、京都府のチャレンジ・バイ認定(府内の中小企業の新商品を認定する制度)でハンディーオゾン水生成器が認定されています。

資本金は5850万円

資本金は、設立時の300万円から増資を重ね、2023年に5850万円となりました。代表取締役は山本和夫氏で、2022年に就任しました。

会社情報

会社名株式会社マサインタナショナル(Masa International Corp.)
所在地〒600-8861 京都府京都市下京区七条御所ノ内北町84 ニューインダストリービル6F
設立2010年12月
代表代表取締役:山本 和夫(2022年就任)
資本金5850万円(2023年の増資後)
事業CO2測定関連事業(光合成速度高速測定装置「MIC-100X」)、LED関連事業(植物工場用LED照明)、オゾン関連事業(オゾン水生成器)
技術領域CO2濃度センサーを用いた植物の光合成速度の測定
連携京都大学(CO2測定器・植物用LED照明の共同開発)。京都大学・東京農工大学(光合成速度高速測定装置「MIC-100」の共同開発)。早木電機株式会社、ユニオンマテリアル株式会社(業務・開発提携)
採択京都市ベンチャー企業目利き委員会 Aランク認定(2016年9月)。京都府チャレンジ・バイ認定(2021年4月)
URLhttps://www.mic-masainter.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

光合成を測る作業の速さが、作物の品種改良の進み方に影響している、という整理の仕方が新鮮でした。マサインタナショナルは、光合成速度の測定装置「MIC-100X」を、光合成速度の測定だけに用途を絞って設計しています。この絞り込みの潔さが、装置の持ち味だと感じます。

面白いのは、研究者が装置を求めて、CO2の測定に強い会社へ相談した点です。現場の困りごとから出発し、測定容器を密閉式にして測定時間を短くし、機能をあえて絞ったことで価格も抑えました。密閉式による測定時間の短縮に加え、用途を絞る判断が価格の壁を越えた例だと感じます。

大量の測定データが、光合成の高い品種の発見にどうつながるのか。研究が実る日を楽しみに待ちたいと思います。

FrontJournal編集部

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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