ルネッサンス・エナジー・リサーチ「CO2選択透過膜」を開発

株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチ

株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチ「CO2選択透過膜」を開発

企業紹介|株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチとは?

混合ガスから二酸化炭素(CO2)を選んで分ける、薄い膜の「CO2選択透過膜」。株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチは、その社会実装を目指す、分離膜系のディープテック企業です。同社は、CO2を運ぶ物質を膜の中に持たせた「促進輸送膜」を、強みとしています。

キーワード「CO2選択透過膜」

「CO2選択透過膜」は、数十マイクロメートルの薄い膜で、混合ガスの中からCO2を選んで通す膜です。膜の中にCO2と結びつく物質を持たせ、CO2を分圧の高い側から低い側へ運びます。同社は、この膜を発電所の排ガスや大気中のCO2回収、バイオガスの精製に向けて開発しています。

市場課題|CO2の分離は大型の設備とエネルギーが課題

現状のCO2分離の課題

既存の分離法は設備が大型

既存のCO2分離法は、設備が大型になり、コストがかかる方法とされています。混合ガスから分ける方法には、化学吸収法(吸収液にCO2を化学反応で吸収させる方法)、物理吸収法(吸収液にCO2を物理的に溶かす方法)、PSA(圧力変動吸着法、多孔質の吸着剤にCO2を吸着させる方法)などがあります。分離に多くのエネルギーを使う点も、課題です。

大気中のCO2は低濃度

大気中のCO2は、400ppm(0.04%)程度と、低い濃度です。大気中のCO2を直接回収する技術は、DAC(Direct Air Capture)と呼ばれます。低濃度のCO2を選んで通す膜の性能が課題とされ、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の研究開発では、膜の選択性に目標値が設定されています。

他にも、バイオガスからのCO2除去、設備の省スペース化、分離の省エネルギー化、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 分離膜混合した気体や液体の中から、特定の成分だけを通して分ける膜である。成分ごとに膜の通りやすさが異なることを利用する。

株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチの強み|「CO2選択透過膜」を開発

株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチが「CO2選択透過膜」を開発

キャリアでCO2を運ぶ

化学吸収法などの従来法は、設備が大きく、エネルギー消費も多い方法とされています。

同社が強みとする「促進輸送膜」では、膜の中のキャリア(CO2と結びつく物質)が、CO2の分圧が高い側でCO2と結びつき、低い側で放出します。窒素や酸素は膜に溶けて拡散する遅い経路でしか通れないため、CO2が優先して膜を通ります。結びつく時の発熱が、放出に必要な吸熱をまかなうため、この過程では外部からの熱をほとんど必要としません。そのため、CO2の分離にかかるエネルギー消費の削減が見込まれる点が、利点です。

膜の形で膜面積を増やせる

従来法の設備は大型で、コストがかかる方法とされています。

膜の形は、モジュールに組み込む際の膜面積に関わります。バイオガス用などで実用化されているモジュール(膜を組み込んだ装置の単位)は、スパイラル型(膜を巻いて組み込む形)です。中空糸型(外径1mm程度の筒状の多孔質膜の上に、分離機能層を形成した膜)にすると、モジュール容積あたりの膜面積を大幅に増やすことが可能とされています。同じ容積の装置で、より広い膜面積を使えるようになり、CO2が通る面が増えます。

FrontJournalの解説
  • 選択性膜が、通したい気体と通したくない気体を見分ける度合いである。透過のしやすさの比で表し、値が大きいほど目的の気体だけを通しやすい。

CO2回収の未来|膜による分離を排ガスと大気へ

CO2選択透過膜が変える未来

バイオガス精製を事業に

同社の事業の一つが、バイオガスの精製です。精製の内容は、脱臭、脱硫、CO2除去です。バイオガスには主成分のメタンのほか高濃度のCO2が含まれ、CO2を分離してメタン濃度を高めると、バイオガス発電の高効率化・低コスト化につながるとされています。

2029年度のモジュール目標

NEDOのムーンショット型研究開発事業には、目標4があります。目標4のもとで東北大学の福島康裕プロジェクトマネージャーが進める「大気中CO2を利用可能な統合化固定・反応系(quad-C system)」の研究では、2029年度の最終目標は、パイロット規模(実用前の試験的な規模)のCO2分離膜モジュールの開発です。同社は、この研究に東北大学などとともに、NEDOの委託事業(令和2〜4年度)として参加しました。DAC向けの膜の性能目標の一つは、27℃・CO2濃度400ppmで、CO2の窒素・酸素に対する選択性が20,000以上です。

大気からのCO2回収を目指す

同社は、発電所の排ガスと大気中のCO2を膜で分離する用途に向けて、開発を進めています。これらの実用化に向けた研究開発が、現在の取り組みです。適用先の例には、水素製造プラント、天然ガス田、火力発電プラント、製鉄所などがあります。天然ガスの精製の現場でも、CO2除去が用途に挙げられています。

会社概要|ルネッサンス・エナジー・リサーチの事業内容・沿革

2004年7月に設立

株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチは、2004年7月6日に設立された企業です。代表は岡田治氏です。本社は大阪市旭区新森5丁目7-6-101にあり、神戸大学先端膜工学研究拠点内に神戸研究所、神戸市兵庫区に神戸開発センターがあります。2005年には神戸分室、京都分室、九州研究所を開設し、2007年には京大桂ベンチャープラザへ移転しました。従来は大阪と京都の2本社制でしたが、2026年8月に京都本社を廃止し、大阪市旭区新森の大阪本社に一本化しています。

受託研究・連携

公式サイトの技術ページには、NEDO、JST(科学技術振興機構)、環境省、近畿経済産業局、JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)の委託・助成事業などの事例が掲載されています。同社は2012年10月、住友化学、住友商事と、CO2分離膜モジュールの合弁会社を設立することで合意しました。合意時の出資比率の予定は、住友化学47.5%、住友商事47.5%、ルネッサンス・エナジー・リサーチ5%です。

事業内容

事業は、CO2選択透過膜の開発、水素分野の触媒とプロセス、バイオガスの精製の3分野です。CO2選択透過膜は、発電所の排ガスや大気中のCO2回収向けに開発を進めています。水素分野は、触媒とプロセスの設計、触媒の製造・販売・ライセンスです。バイオガスの分野は、脱臭・脱硫・CO2除去の精製です。

会社情報

会社名株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチ
所在地大阪府大阪市旭区新森5丁目7-6-101
設立2004年7月6日
代表岡田治
事業CO2選択透過膜の開発、水素分野の触媒とプロセス、バイオガスの精製
技術領域促進輸送膜によるCO2の分離
連携東北大学(NEDOムーンショット型研究開発事業)
URLhttps://www.r-energy.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

CO2を分ける設備の大型化とエネルギー消費という課題に対し、膜の中のキャリアでCO2を運ぶ仕組みを選んだ点が印象的です。排ガスから大気、バイオガスまで、用途を広げて開発を進めている点も心に残ります。公的な研究事業に参加し、膜の性能目標を掲げて開発を進めている点にも、注目しました。

大気中のCO2を直接回収する用途は、2029年度のパイロット規模のモジュール開発が最終目標の段階です。一方で、CO2を分ける設備を、省エネルギーにする選択肢を広げる取り組みといえます。今後の展開を見守りたいと思います。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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