QureDA Research「SiCウエハの欠陥」を研究

QureDA Research株式会社(キュレダリサーチ)

QureDA Research「SiCウエハの欠陥」を研究|研究領域=SiCウエハの欠陥を減らす研究/強み=高温で原子を制御、光で原因を測る/将来性=電動車などのパワー半導体へ

企業紹介|QureDA Research株式会社とは?

電力を制御するパワー半導体の性能と良品率を左右する課題として、注目を集める「SiCウエハの欠陥」。QureDA Research株式会社は、その低減に取り組む、関西学院大学発の半導体材料系ディープテック企業です。SiC(炭化ケイ素)のウエハ(基板)を扱うメーカー向けに、欠陥を無害化する「Dynamic AGE-ing」と、欠陥を測る評価技術を研究しています。

キーワード「SiCウエハの欠陥」

「SiCウエハの欠陥」は、結晶の成長や表面の加工で生じる原子配列の乱れで、パワー半導体の性能と良品の割合を下げる要因です。同社の特徴は、光の散乱で原因を測る評価技術と、超高温で欠陥を無害化する「Dynamic AGE-ing」を併せ持つ点にあります。ウエハメーカーは、品質のばらつきの原因を特定して改善策を検討できます。

市場課題|SiCウエハは欠陥が残り、品質をそろえにくい

現状のSiCウエハの課題|現状は、結晶と加工の欠陥で品質がそろいにくい/結晶と加工の欠陥は性能を下げる恐れ/品質差の原因を特定しにくい

結晶と加工の欠陥で性能低下

SiCのウエハは、結晶の成長段階から、原子配列の乱れである欠陥を多く含む材料です。表面を機械で削って磨く加工でも、傷やひずみといった欠陥が新たに生じ、性能を十分に発揮できないことがあります。このままでは、歩留まり(製造した製品のうち良品となる割合)が上がりにくくなりかねません。

品質差の原因を特定しにくい

品質のばらつきは、原因を特定しにくい課題です。同じインゴット(結晶のかたまり)から切り出したウエハでも、品質に差が出ることがあります。結晶と加工の品質は互いに影響し合うため、原因の切り分けが、改善の前提になります。

結晶に加える窒素の量のばらつきは、ウエハの硬さに差を生み、加工後の仕上がりのばらつきにつながります。熱によるウエハの反りも、研磨時の接触のむらを生む要因です。他にも、結晶欠陥、結晶の歪み、積層欠陥、といった課題があるといわれています。

FrontJournalの解説
  • 歩留まり製造した製品のうち、規格を満たす良品の割合を指す。ウエハの欠陥が多いほど不良品が増えて低下し、同じ原料と工程でも得られる良品が減るため、製造コストに影響する。

QureDA Researchの強み|「SiCウエハの欠陥」を研究

QureDA Researchが「SiCウエハの欠陥」を研究|今後は、超高温処理で品質の改善が可能に/超高温の処理で欠陥を無害化/光の散乱で原因を可視化

超高温処理で欠陥を無害化

従来の研削や研磨は、ウエハの表面に加工ひずみを生じる工程とされています。

同社の「Dynamic AGE-ing」は、SiCウエハを2,000℃領域の超高温の気相(気体)環境に置き、ウエハに触れずに処理する技術です。高温の環境でシリコンと炭素の原子を制御し、原子配列を整えて結晶の欠陥を修復します。基底面転位(BPD、結晶の層がずれた線状の欠陥)を別の種類の転位に変換し、積層欠陥(結晶の層の重なりが乱れた欠陥)の発生を抑える仕組みです。加工で生じた残留ひずみの層も除去し、表面を平らに整えます。パワー半導体の製造現場で、欠陥の少ないウエハを使える可能性が広がります。

光の散乱で原因を可視化

従来の評価手法では、品質のばらつきの起源を明確に特定するのが難しいとされています。

同社は、レーザー光を当てて散乱を調べる光散乱法を用い、ウエハの表面と内部の状態を可視化します。散乱の模様や強さの違いは、機械加工に由来する傷と、結晶に由来する欠陥の影響を調べる手がかりです。この結果をもとに、ウエハメーカーやデバイスメーカー(ウエハから半導体の部品を作る会社)へ、顧客ごとの課題に合わせた改善方針を提案します。原因が分かれば、結晶の成長と加工のどちらを見直すかを判断でき、品質の改善を計画的に進められるようになります。

FrontJournalの解説
  • 基底面転位結晶の原子が並ぶ層(基底面)に沿ってずれが生じた、線状の欠陥を指す。SiCウエハの品質を左右する欠陥の一つとして扱われ、BPDと略される。

ウエハ品質改善の未来|電動車向けパワー半導体への応用

欠陥の少ないSiCが変える未来|評価と量産化を進め、安定供給を目指す/品質差の原因を評価で特定/量産化に向けて準備を進める/SiCウエハの安定供給を目指す

評価で品質差の原因を特定

同じインゴットから切り出したウエハを、同社の評価技術で調べた事例があります。あるウエハでは機械加工による円形の模様が、別のウエハでは基底面転位に由来する強い散乱が検出されました。散乱の様子を可視化すると、結晶由来か加工由来かを切り分けられます。ウエハメーカーは、改善すべき工程を絞り込みやすくなります。

量産化に向けて準備中

同社は、トヨタ自動車との連携のもと、「Dynamic AGE-ing」で処理したウエハの2027年の量産化に向けて準備を進めています。2025年のICSCRM(SiCの国際会議)では、従来のバッファ層(結晶の品質を整える層)を「Dynamic AGE-ing」の層に置き換える手法を報告しました。この置き換えにより、キャリア寿命(電流を運ぶ粒子が消えるまでの時間)の低下を抑えられるとされています。デバイスの性能向上にも役立つ可能性があります。

SiCウエハの安定供給を目指す

品質のそろったSiCウエハを安定して供給できる体制の実現に貢献することを、同社は掲げています。SiCのパワー半導体は、電動車やAI向けサーバーの電源、太陽光発電、鉄道車両への搭載が進んでいます。2025年3月に始めたレーザーテック(ウエハの欠陥検査技術を持つ企業)との協業は、量産と低コスト化に必要な検査技術の構築が狙いです。ウエハの品質が安定すれば、電動車などに使うSiCのパワー半導体を、安定して量産しやすくなり、コストの低減も見込めます。

会社概要|豊田通商と関西学院大学が設立したQureDA Research

関西学院大学の研究から事業化

同社は、2023年3月16日に、豊田通商と学校法人関西学院の合弁で設立されました。事業の基盤は、同大学が2002年から続けてきた研究です。2017年から、豊田通商と関西学院大学がSiCウエハの量産プロセス技術の共同開発を進めています。「Dynamic AGE-ing」は関西学院大学の教授らが創出した技術で、同社は独占的な使用権を有しています。

量産と検査の分野で連携

同社は、量産と検査の分野で、事業会社と連携しています。2023年4月には、トヨタ自動車と技術開発業務委託契約を結びました。2025年3月14日には、レーザーテックとSiCウエハの評価技術の分野で、戦略的パートナーとして協業を始めました。同社は品質のばらつきを可視化して分析する力を、レーザーテックは明視野光学系(光を当てて反射光で観察する方式)によるウエハの表面と内部の欠陥検査技術を持ち寄ります。

豊田通商が過半を出資する体制

2023年10月の発表時点では、資本金は4.5億円で、出資比率は豊田通商と学校法人関西学院が各50%でした。現在は、資本金が4.9億円で、豊田通商が72%、学校法人関西学院が28%を出資し、豊田通商が過半を占めます。同社は、関西学院大学の研究開発力と、豊田通商のバリューチェーン(原料から製品までの事業の連なり)を創出する力を融合し、エネルギーの高効率化とカーボンニュートラルの実現に取り組みます。

会社情報

会社名QureDA Research株式会社(キュレダリサーチ)
所在地兵庫県三田市学園上ケ原1番 関西学院大学Ⅷ号館2F
設立2023年3月16日
資本金4.9億円(出資比率は豊田通商72%、学校法人関西学院28%)
従業員20名(2026年3月31日現在)
事業SiCウエハの品質改善に向けた研究開発。「Dynamic AGE-ing」に関連する事業。SiCウエハの品質評価技術に関連する事業
技術領域超高温の気相処理によるSiCウエハの欠陥の無害化。光散乱法によるSiCウエハの品質評価
連携豊田通商、関西学院大学。トヨタ自動車(技術開発業務委託契約、2023年4月)。レーザーテック(SiCウエハの評価技術分野で協業、2025年3月)
URLhttps://www.qureda-research.com/

編集後記|FrontJournal編集部より

ウエハの上にどれほど精緻なデバイスを作っても、土台のウエハに欠陥が残れば、性能は十分に発揮されません。QureDA Researchの取り組みは、その土台の品質を、原子の並びのレベルから整える試みです。電動車などに使うパワー半導体の裏側には、こうした素材の研究があります。

結晶の欠陥を無害化する「Dynamic AGE-ing」と、欠陥の原因を測る評価技術の両方を持つ点が、同社の特徴だと感じます。原因を測って欠陥を処理できれば、品質改善を進めやすくなります。ウエハ製造の現場で、品質の安定を支える取り組みです。

大学の長年の研究と、事業会社の量産の力が出会った点も、期待したい理由です。SiCとは別の材料でパワー半導体の性能向上に挑む企業は、酸化ガリウムを扱うFLOSFIAの記事で読めます。ウエハの品質が安定する日が来れば、電動車や太陽光発電などを支えるパワー半導体の性能向上にもつながると期待します。

FrontJournal編集部

出典:経済産業省 大学発ベンチャーデータベース2026

出典:「Gビズインフォ」(経済産業省)(2026年9月28日に利用)を加工して作成

本記事は、FrontJournalが公開情報をもとに独自に分析した第三者コンテンツであり、対象企業・研究機関の公式見解ではありません。

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